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(No267) 扇町寄席 TV鑑賞記  
          

 平成23年8月14日(日)の放送(・・・多分)。

 



桂 紅雀 「向こう付け」

 高座前の南光、八光との対談で、枝雀最後の弟子で「君、落語やめて養子に、家族にならへんか」と言われたという話が面白かった。

 師匠から「君は喜六みたいやな。ヒマな時はおもろいけど、忙しい時はめちゃ腹立つ」と言われた話もなかなか。
 今は大概の方が字が書けますが、昔はそうではございませんでした。

「おい、松っちゃん、字ぃ書けるらしいで」
「ええ、ほんまか?アホちゃう?」


(やたらニコニコ笑いながら筆をとっている男に)
「おい!お前、何してんねん?」
「え?兄貴に手紙書いてんねん」
「て、手紙て、お前字ぃ書かれへんやないか」
「ええねん。うちの兄貴も字ぃ読めへんから」

 そうゆうことで無筆の人が多いので、昔はご葬儀などの帳場、受付のところには字ぃの書ける人を置いてたもんでして。

「もう!あんた、どこほっつき歩いてたんや!あんたウロウロしてるうちにえらいことが起こったんやで!」
「火事か?」
「ちゃうがな!」
「差押か?」
「そら、先月やがな。
 ちゃうねん、あんたが世話なってたご隠居さんが、亡くなりはったんや」
「なくなったんやったら、探したらええがな」
「何ゆうてんねん。おかくれになったんやがな!」
「へえ、かくれたん?誰が鬼や?」
「あほ!ほれ、はよこれ持ってご隠居さんの家、行ってきなはれ」
「何や、これ?」
「線香やがな」
「いやや、そんなん持って行く時は何か難しいこと言わなあかんやろ。あの・・・・いやみ」
「葬式の時にいやみゆうて、どないすんねん。はよ行っといなはれ!その前に・・・・ちょっとハナ拭きなはれ」



 この爆発的な男が葬儀の場にやってまいりまして、
「あの〜、こんにちは!」
「ぷぷぷ、来たで、町内の人気者が」
「どういう訳か、ご隠居は、喜六のこと可愛がってたからな。

 ちょっと、喜ぃさん!奥で御寮人
(ごりょん)さんが呼んでたで」

「御寮人さん、こんちは!」
「ああ、喜ぃさんかいな。今日は朝からあんたのこと探してたんやで」
「ああ、これがご隠居さんでっか。キレかぶしてもうて。冷やご飯みたいですなぁ。ああ、にこ〜って笑ってはる」
「ありがとう。うちの人も喜んでますわ。せや、喜ぃさん、ちょっと頼みたいことがあんねんけどね。

 阿倍野の斎場の方に、帳場のもんがいてへんのでね、ちょっと行ってほしいんやわ。まあ、喜ぃさん一人やったら不安やさかい、後でしっかりした人をやるさかい」
「あ、そうですか。分かりました。そしたら家帰って、服着替えて、すぐ行きます。


 ただいま!」
「ただいまやないがな。何で手伝
(てった)いしてきいひんねん?え?帳場?
 アホやなあ、あんた、帳場が何すんのんか分かってんのか?
 お参りに来はった人の名ぁを書かんとあかんのやで!」
「ええ?そんなんでけへんがな。何で御寮人さん、わいにそんな役せえ、ゆうたんやろ?
 あ、後でしっかりした人、やるゆうてた」
「あぁ、そうかいな。

 そしたら、早めに行って、帳面とか筆用意して、墨もちゃんとすって、ほんで、後から来はった人に、
『すんまへん。満座の席で頼まれたさかい引き受けましてんけど、わたい無筆でんねん。どうかよろしく』て、ていねいに頼んだら、分かりましたゆうて引き受けてくらはるから。
 ほな、はよ行っといなはれ・・・・・・って、その前にハナを拭きなはれ」

 

 斎場の帳場に行くと先客がいて、喜六の姿を見ると、帳面や墨を用意してます。わたいは無筆なんで・・・・と喜六が教えられた台詞を先回り。

 喜六のことを後から来たしっかりした男と間違えているのだ。

 仕方ないので筆も帳面も弔問客の方に向け「今日は銘々付け。向こう付けで、勝手にお参り」とセルフサービス方式をとることとする。

 何とか順送りでやり繰りしたが、最後の棟梁の親方、「わい無筆でんねん。お願いしますわ」と頼む。

「ええ?あんた字ぃ書けまへんの!よぉそれで葬式に来はりましたなぁ」
「そんな人かていてますやろ!あんたらはどうでんねん?」
「わいら、無筆でっせ。なぁ〜」
(と、顔を見合わせ)
「なぁ〜」

「そしたら、あんたらは何してまんねん?」
「わたいらは誰が来たかの検分役」
「ええ?ほな、わいが送りに来たんはどうなりまんねん?」
「あぁたが送りに来たんは、この3人の・・・・・内緒にしときまひょ」

 



 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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