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(No222) 平成紅梅亭 TV鑑賞記 その2  
          

 平成22年11月11日(日)の平成紅梅亭。

 今回は、最近襲名した者の特集のようだ。

 



桂 文三 「四人癖」


 怪しいもんやおまへん。(両手を左右に向けて)文三でございます。文三でございます。

 私の方は5月16日に文三を襲名いたしました。先代の文三は90年前にお亡くなりになりまして。ですから、先代の芸は・・・と知ったはる人はおりませんので。これが気ぃが楽でして。
 先代の文三は、四代目を継いで半年でお亡くなりになりましてねぇ。

 一門の総帥、三枝がねぇ、何とか先代の寿命だけは超えてくれって。おかげさまで何とか超えました。・・・・・・・・中味で超えなあかんのですけどね。

 

 落語をご理解いただくのにも個人差がございましてね。

 晩、寝る寸前に「お〜!!」て気ぃついたりとかね。

 映画とかでしたら流しっぱなしですけど、私らは、この場の空気がうまいこと行かんと(手でバツ印を出し)ダメなんです。

 落語ゆうのは、ここで笑(わろ)てくださいゆうとこで、わっ!と笑うてもうて初めてうわぁ〜っと盛り上がる。
 ところが、たまに、え?何で?てなとこで受けることがある。それを私はイレギュラーと呼んでるんですが。

 と、以前にも聞いた、落語が初めてという観客の前で「時うどん」をやったというマクラへ。

 本編は、鼻の下を人差し指でこする、目を手の平(いわゆる「掌底」の部分)でこする、袖口をつかんで引っ張る、「こら、ええ!」と言ってぽん!と手を打つという癖を持つ4人の男の話。

 文三は一般に陽気で元気な芸風と考えられているだろう。罰金を取り合う寸前に思う存分「癖」をやり溜めする時、袖を強烈にバタバタさせ「お前、激しいなぁ・・・・・」と登場人物に言わせるのが、いかにも「文三」って感じ。

 我慢しきれずに、鳩を矢で狙うため弦を引きしぼる形で鼻の下をこする・・・・というのがサゲにかかる形なのだが、よくあるのは(米朝師匠がそうだったかな?)、じっくりこすり、往復するもの。
 しかし、文三は、慌てた感じで鼻の下を短いストロークでごしごしっ!と擦る。ちょっと取ってつけた感じに映る。

 中味は前に聴いた「四人癖」と同じ。 

 癖の描写が派手すぎる・・・・と感じたのは以前のニ乗と同じだが、さすがにニ乗よりは誇張が「芸」に近づいていたと思う。

 


笑福亭 枝鶴 「禁酒関所」

 
 10月22日に枝鶴を襲名しまして、3週間ほど経ったんですが・・・・何や名前がついていってないような。お客さんからも「お前、小つるやろ!このうそつき!」てなオーラを感じますが、私は枝鶴です!

 
 放送日が11月11日なら収録日はいつだったのだろう?
 お客が「お前、小つるやろ!」と言うなら襲名前だったのか?
 そうすると、後の、呂鶴が襲名興行に来なかったとか鶴瓶が口上の司会をしてえらいことになったと言ったのは、どうゆうことなんだろう?

 4代目、5代目、そして私の師匠の6代目松鶴も、その前、枝鶴を名乗っておりました。
 で、私が今度、枝鶴を襲名したんです。
・・・・・これ以上ゆうと、私は笑福亭から抹殺されます。何せうちの一門は、血の気の多い連中ばかりですので。
 筆頭の仁鶴は常識人なんですが、鶴光。これは大阪裏切って東京行きました。そして福笑。ご存知でしょ?痩せてガリガリですが酔うとヘビの目になって、傘で人の目ぇを突く
 松喬も常識人のように見えて大きいことをゆう。松枝は、殴ったりはせんのですが、自分の腕の内側にタバコの火ぃを押し付けながら人の話を聞く。こら怖いでっせぇ。いつ自分とこに火ぃつくかて思たら。
 呂鶴は腹ん中なぁ〜んにもない。ただ祭好きでね。ただ一人、私の襲名興行に来なんだ。何でかて訊いたら宝塚で祭りがあるゆうて。
 で、鶴志。こら見るからにヤカラ。声も見かけもヤカラそのものです。

 せやから8代目てな話したら、えらいことになる。

 ところが一人だけ、この一番ゆうてはならんことをすらっ!と言いはった人がいてて。

 春團治師匠んとこに挨拶に行った時「ほな、君が8代目になるんか」って。
 一緒に行ってくれた仁鶴が。あの齢
(よわい)70を過ぎ、名人との声も高い、あの仁鶴が、それ聞いたとたん大げさにこけましてね。さすがに「どんなんかなぁ〜」(若手だった頃の仁鶴のギャグ)とは言いませんでしたが。

 まあ、最近は襲名の挨拶を聞くばっかりやった仁鶴が、挨拶する側になったもんやから、緊張してたんでしょうなぁ。
 挨拶終えて帰る時、仁鶴は歌が好きでね。ロシア民謡かカンツォーネを歌うんですが、その日は、車窓から通り過ぎていく景色を見ながら口ずさんだのが、8月25日の暑い日ぃやったんですが「きよし この夜」
 よっぽどほっとしたのか、あったかい気持ちになったんでしょうか?


 そして、前の師匠、先代の枝鶴について触れる。先代枝鶴は、6代目松鶴の実子。放浪癖、すっぽかし癖があり、廃業・復帰を繰り返したが、父の追善興行もすっぽかし、松竹芸能を解雇され、現在も消息不明。

 一般に私らが「松鶴」と聞いて「上方落語四天王」(あと3人は米朝、小文枝、春團治)、酒呑みと連想するのは、この6代目。6代目の死後、誰が7代目を襲名するかについて、本人の遺言による仁鶴、実子の枝鶴などが取り沙汰されたが、種々の理由で決着せず、最終的に笑福亭松葉に落ち着いたのだが、病に倒れ、襲名披露の予定日に亡くなってしまった。死後追善されたので、一応松葉が7代目松鶴となっている。

 そんなこんなで、「8代目松鶴」というのは非常にデリケートな問題になっているのである。

 で、枝鶴(小つる)は、「私の師匠は、23年前に、『ちょっとサンマ買うてくる』ゆうて飛び出したなり、おらんようになってしまいました。そうゆうことにしといてください!名古屋のあんこトーストが好きやゆうて、行ったなりなんです。そうゆうことにしといてください!そうゆうことにしといてください!と、えらい大きな声で繰り返し、ちょっと異様な雰囲気がした。

 まあ、枝鶴(小つる)にしたら、自分の師匠(先代枝鶴)が名古屋の芸者に入れあげて廃業したり、帰ってきたかと思ったらビートたけし夫人との不倫スキャンダルだの、弟子(小つる)の面倒をみるどころじゃないんで6代目の松鶴の預かり弟子になったり、追善興行をすっぽかすの、恐喝容疑で捕まるの・・・・・とすごいトラウマになっているのは間違いないのだが、正直言って、その辺の事情を知ってる者の方が、今や少ないのではないだろうか。


 鶴志を表現する「ヤカラ」という言葉は関西以外では分かりにくいかもしれない。私らは「あいつはヤカラやからなあ」とちょっとシャレ言葉みたいな言い方をよくする。または「あんまりヤカラゆうたらあかんで」とか。

 「ヤクザ」というのもちょっと違うと思う。私としては「無茶もん」というのが一番しっくりくる。

 なお、左写真が「声も見かけもヤカラそのもの」と評された鶴志。


 「禁酒番屋」とか「禁酒関所」という噺は、酒の上のいざこざで優れた家臣を失った殿様が禁酒令をひいた。酒を持っていないか調べる場所を人呼んで「禁酒番屋(関所)」。

 酒飲みの侍が出入りの酒屋に、何とか寝酒を持ち込んでくれと頼む。

 一人目は進物用のカステラと偽るが、うっかり箱を持ち上げる時に「どっこいしょ」と言ってしまいバレる。
 二人目は、油徳利を装ったが、これも中味を改められてしまった。
 関所の役人に二升、タダで呑まれてしまった腹いせに徳利に「肥料用の小便」と言って、「本物」を持ち込む。

「ん?今度は燗をしてきたな」、「泡立っておる。新酒か」などと言いながら呑もうとして「・・・・ここな正直者めが!」がサゲ。

 枝鶴は、酒を呑む仕草がうまいと思った。6代目の代名詞ともいうべき「一升瓶を前に置かれましても、せいぜいコップに1杯。どない頑張っても2杯ほどしか・・・・・・・・よぉ残さん性質(たち)でして」というギャグをぱくっただけはあるなと感じた。

 


 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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