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(No190) 笑う亭あさひ寄席  鑑賞記 その2
          

 平成21年8月21日(土)の午後6時から旭区の区民センター大ホールで・・・・・・の続き。

 



笑福亭 伯枝 「住吉駕籠」

 以前聴いた時は、「落語界の織田無道です」というのが決め台詞だったが、今回は高座に座るなりどう言ったか?
 
 
 せんとくんです!

 これ、最初に言い出したん、うちの嫁さんでして。
 顔がいかついのに、目ぇだけ少女マンガみたいに可愛いとこが・・・・・・気持ち悪いて。

 うちの嫁さんは女優に似てるんです。そう、清水3丁目(旭区の地名)に住んでる嫁はん。
 横顔は萬田久子にそっくり。でも正面から見たら村田英雄
  

 

 なぜ「くも駕籠」と呼ばれるのかという解説が初めて聴くもので面白かった。

 曰く、ある日は駕籠かき、ある日は川越え人足、ある日は宿場で飛脚仕事と居場所定めぬ「雲」のよう・・・で「雲」駕籠というのが一つの説。

 もう一つの説は、蜘蛛の巣のように待ち伏せで獲物を狙うことから「蜘蛛」駕籠という説だとか。


 そこから「へい駕籠」「屁ぇ嗅ご、ゆうんか?ほな後ろ回れ」などのいつもの「住吉駕籠」へ。
 「ちょうど出そうや」まで付けるのは、あまり私は好きではない。

 茶店の親父に駕籠をすすめるところから、侍に偉そうにされるところを経て、酔っ払いとの絡みへ。

 特徴的なとこでは、「証拠を見せよう」と土産の料理包みを開いたところでやたら派手なくしゃみを連発するところ。

 あとは、包み直させて懐に戻したところで、にわかに、「う〜ふぅ〜〜 うぅ〜ふぅ〜」とこれまた派手に苦しむというか、えづきかけるというか。

 

 何度目かに、本当にやらかしてしまう。「あっ、あっ、駕籠のけろ。臭いが・・・」とか慌てるとこがリアル過ぎて、そこまでせんでも・・・・と思ってしまう。

 前回TVで聴いた南光の「住吉駕籠」は、「足が八本」「だから蜘蛛駕籠」という本来のサゲ(吉朝の「住吉駕籠」)まで行けずに、酔っ払いが嫁さんとの馴れ初めまで語り始めようとした・・・・・で終っていた。

 今回の伯枝は、その酔っ払いが「うちの嬶(かか)は貞女やぞ。女優の萬田久子や」と、嫁さんの話までしてしまう。

 いったいどうサゲるのか?と思ってると、駕籠かきの会話で「今の酔っ払い、南から来たのに、また南に戻っていくで。あれやったら家に帰られへん」「せやな。迷惑はかけられたけど憎い訳やなし。ちょっとゆうたろか」と親切心を。

 と、酔っ払いが「わいの家は堺のしんめいちょう(神明町?)や」「え?ほな、なんでこんなとこに?」「呑み過ぎて悪酔いしたさかい、駕籠屋なぶって酔い醒ましに来た」というのがサゲ。

 こんな後味の悪いサゲなら、南光のそれの方がいいなぁ。第一、「足八本」のサゲまで行かないなら、雲助駕籠はともかく、「蜘蛛」駕籠をマクラで説明しておく必然性がまるでないしなぁ。

 伯枝は、つるつるの容貌魁偉さがあり、声がでかい。で、やたら威圧感がある。もうちょっと迫力を抑え目にした方がいいような気がする。

 


 


桂 九雀 「質屋蔵」


 わたくしでいよいよ最後でして、今日、今までお笑いになっておられない方は最後のチャンスでございます。どうぞ積極的な意志をもって参加していただきたい。 

 よぉ噺家さんは普段は何してるんですか?て訊かれるんですね。今は天満天神繁昌亭がでけたんで説明がしやすなったんですが、それまでは定席ゆうもんがなかったんで、ある日は梅田でホール借りて、ある日は南森町の公民館で・・・・とばらばらでした。
 ですから、どんな仕事?て訊かれるとスケジュール帳、見せなしゃあなかった。ですから仕事場と一緒に歯医者の予約とか法事とかも知られることになってしもて・・・・。

 繁昌亭がございます天満宮ゆうのはご存知のとおり天神さん、菅原道真公をお祀りしております。

 菅原道真公は時の権力者、藤原時平に憎まれ大宰府に流された。私、こないだまで流されたゆうから大宰府て離れ小島かと思てました。
 まあ、九州までは船を使わなならんことと、左遷されることを流されるとゆうので大宰府に流された、てゆうんですな。

 流されるにあたって大事にしていた庭の梅に、こんな歌を残したそうです。「東風(こち)吹かば匂いおこせよ梅の花 主人(あるじ)なしとて春な忘れそ」

 まあ、わしがおらんかっても春になったら、ちゃんと匂うんやで・・・と。梅にしたら、大きなお世話ですわな。

 でも、この梅、律義なもんで、春になったら九州まで会いにいったそうで、飛梅伝説ゆうのが残ってます。

 結局、道真公は大宰府の地で怨みをのんでお亡くなりになった。その崇りで、都では天変地異、いろんな災いがおこったそうで、それで天満宮をつくってお慰めをした。しかし、まだ崇りは残ってるそうで天満宮の辺りでは何百年、何千年かにいっぺんは大きな災いが起こるんやそうです。
 まあ、噺家に土地を貸したんも、その災いの一つなんやないかと思うんですが。

 

 今日の噺は「質屋蔵」ゆうんですが、質屋をよぉ利用される方?(と、会場で挙手を求める)

 言いにくいですわね。質屋ゆうのはお金を借りる時に担保というか、着物などの質草を入れるんですな。ほんで、元本に利息をつけて返すと、質草が戻ってくる。
 しやけど、それがでけなんだら、預けた質草は質屋のもんになってしまう。質屋さんは、その質草を売ったりして貸した金を回収するんですな。
 この、金を返せず質草が質屋のもんになってまうのを「流す」と申します。で、なかなか金はよぉ返さんねんけど質草は流したくない。そんな時どぉするかゆうと、利息の分だけを入れる。そうすると次の期限までは流さんと待ってくれる訳ですが、これを「利上げ」と申します。

 もともと我々噺家は、よぉ質屋を利用したそうです。今はあきませんが、昔は着物をけっこう高こぉに取ってくれたそうで、今は夏ですから絽(ろ)や紗(しゃ)の着物を着てますが、夏の間は冬の着物を質に入れておく。で、冬になったら夏の着物を質に入れて冬の着物を請け出すんですな。実に合理的でして。
 ほんで、質屋に入れとく方が管理がええんですな。預かりもんやから、ちゃんと樟脳とかも入れてくれるし。

 ・・・・・で、何でこないに天神さんのいわれと質屋のシステムを丁寧に説明したかとゆうと、これを頭に入れておいてもらわんと25分後に来るオチの意味が分からんのですね。

 質屋の主人が番頭に、うちの三番蔵に怪しげなものが出るという噂があるので夜明かしで確かめてくれと頼む。

 うちの三番蔵に納まっている質草は人の恨みのこもってるものも多いんやという主人の説明が上手い。

 かつぎの呉服屋が繻子(しゅす)の帯を言葉巧みにおかみさんに薦める。
 旦那にねだるのに正直に六円と言えず、五円と切り出す。旦那は「お前に今まで帯の一本も買うてやったことがない」と主家(おもや)から五円を借りてきてくれたが、一円足りない。
 おかみさんはけなげな「つもり貯金」で竹筒に小銭を貯めてようやく帯を手にするが、一、二度締めたか締めないかで金策のため質に入れてしまう。
 「都合ついたら、また請け出すからな」と旦那からは言われていたが都合がつかないうちにおかみさんは患いついてしまう。
 手伝いに来てくれたのは出戻りの妹。その妹に苦しげにつぶやく。

 うちはもうあかん。自分で分かる。わずかの金のためにお前に形見の一つも残してやれんとは。思えば憎いは、あの質屋・・・・とこう恨みを買うのや。こう説明されると番頭さんがはぁ〜っと感心してしまうのも無理はない。

 しかし、蔵の番をせえという申出には「来年のれん分けさせていただくことになっておりましたが、たった今、お暇をいただきます」。

 助っ人に手伝い(てったい)の熊はんを呼ぶことになった。呼んでこいと命じられた丁稚の定吉は立ち聞きを叱られたので、腹立ち紛れに「旦さん、えらい怒ってなはるで。だんだん増長しくさって、ゆうて」と混乱した口上。

 動揺した熊はんは「心づもりがあるから、旦さん、何で怒ってはんのか、手がかりだけでも」と定吉にすがり焼き栗までねだられるが、「かつぎの呉服屋・・・・茶店で弁当・・・番頭がおひま・・・・酒が半分で、足りん」ともう話はごちゃごちゃ。

 熊はんは「酒の一件でしょ?もう皆までおっしゃるな。言わなあかん、言わなあかんとは思てたんです」と必死の弁解。

 呑み残しの燗冷ましをおうち伺うたんびにニ、三合もろてましてんけど、まあ、ちょこちょこいただくんも、まとめてもらうのんも同んなじかいなぁ思て、こないだ伺った時ちょうど酒屋から酒樽が三丁着いてたさかい、ちょっと一丁を・・・・・と衝撃の告白を。

 旦那も、あれ、お前やったんか?蔵元に掛け合いに行かなあかんゆうてたが、行かんでよかったと驚くが、そんなことで呼んだんやないがなと言われ、「ほな漬物の一件でっか?」、「ほな、味噌の・・・・・」と次々馬脚をあらわし、「盗っ人、飼うてるようなもんやがな」と呆れ果てられる。

 腕っ節はともかく幽霊には弱い熊はん。

 力仕事は私が・・・と酒肴のお膳を持つが、それは燭台を番頭に持たせる(ということは、先導させる)ための計略だった。

 ろうそくに照らされ二人の影が大きなったり小さなったりすんのが怖いねんとか、身体が小刻みに震え、お膳の皿がカチカチゆうとかといった描写が細かい。

 箸が一膳足りず、取りに行こうとした熊はんに、番頭が取り残されてはたまらんと手拭いでくくりつけて「きりきり歩め」。
 女中さんに「箸一膳取りに来んのに二人がかり?まあ、仲のええこと」と皮肉られる。

 丑三つの頃合いに三番蔵から火の玉があがる。
 それを見た二人は腰が抜けて「抜けましておめでとう」

 旦さんはさすが胆がすわっていた。蔵の中をのぞくと、質草に魂が宿ったか、帯と羽織が相撲を取るやら、揃いの浴衣がかっぽれを踊るやら。

 九雀は、羽織の裏から手を入れて浴衣の踊りを再現してみせる。

 『桂枝雀爆笑コレクション5』でも『桂米朝コレクション2』でも小柳繻子の帯と龍門の羽織の相撲のみだったが、かっぽれは九雀のオリジナルなんだろうか。

 と、壁に立てかけていた箱の蓋が開き、中から掛け軸が転がり出て、菅原道真公の画像が浮かび出る。

 道真公の「そちゃ、当家の主人なるや」との問いに平伏して「へへぇ〜」。

「質置きし主に疾(と)く利上げせよと伝えよ。どうやら、また流されそうなわい」がサゲ。

 掛け軸の預け主は米朝師匠は角(かど)の藤原さん、枝雀師匠は角の四平さんといずれも藤原時平をもじった名前となっていたが、今回の九雀がどう言ってたかは覚えていない。

 いずれにせよ、米朝本、枝雀本とも特に今回の九雀のような説明はなかった。(枝雀本では、小佐田定雄氏が解説を加えている)

 やはり現代ではサゲの意味が分かりにくいので九雀の演出は的確だと思う。分かりにくいがサゲの出来自体はいいので、余計にそう感じる。「噺」を大切に考えているように思える。

 

 自分の好きな噺家を身びいきする訳ではないが、今夜の出演者では、やはりよね吉と九雀が頭一つ抜け出ているように感じた。 

 

 

 

 


 

 

 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録音はしてません。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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