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(No181) 大阪市立美術館 没後150年歌川国芳展 鑑賞記 その5


 平成23年5月14日(土)に大阪市立美術館に「没後150年 歌川国芳展」を観に行った時のメモ。

 

 


第8章 戯画 溢れるウィットとユーモア

 

(秋田達也氏:大阪市立美術館の解説)

 戯画は、武者絵とならぶ国芳の得意ジャンルである。浮世絵史上において、これほどバラエティに富んだ戯画を多く描いた絵師は国芳をおいて他にない。
 天保の改革によって、役者絵、遊女・芸者風俗の絵が禁止され、錦絵の出版界は大打撃を受けたが、それがかえって国芳に縦横無尽に戯画の筆を揮わせることとなった。

 国芳の手に掛かれば、役者たちは猫や魚に変身し、猫や雀の遊郭も出現する。

また、動物たちばかりではなく、達磨や福神たちまで自由自在に遊び回り、化物たちもそれぞれのキャラクターを活かして登場する。
その他、まるでパズルのような影絵や嵌め絵、壁の落書きに似せ、引っ掻いたような描線を用いた造形など、国芳の機知に富んだアイデアは尽きることがない。


319 「道外化粧のたわむれ 花火」

 登場人物が化粧道具。「かがみ」が「まへざし」の手をひいている。
 花火は「かんざし」。後ろの両国橋は両国「くし」となっている。



 この絵の感じ、どっかで見たことあるような・・・・?と思っていた。

  

 右は、吉田戦車『武侠さるかに合戦』に出てくる「杵」。

 


324 「猫の当字」ふぐ

 前期展示なので現物は観ていない。後期は同シリーズの「たこ」だった。画像はチラシで。

 

 

 国芳には役者の似顔を猫や魚などで描く作品が多い。図録解説にあった、想定される役者名を参考まで書き込んでみた。名前の後ろの数字は○代目ということ。

326 「流行猫のおも入」 327 「猫の百面相」忠臣蔵

 

328 「似たか金魚」

 亀の甲羅の芝翫縞、金魚の模様(上中は八重桔梗、上右は丸に十の紋、下は菖蒲)で役者が特定されるそうだ。

 また、「似たか」は、金魚売りの売り声「めだかぁ〜金魚ぉ〜」をもじっているとのこと。


329 「魚の心」

 この絵には役者の紋を連想される模様などがないため、天保改革の一環として役者絵の出版が禁止された(天保13年6月=1843)後、検閲が最も厳しい時期の出版であったことが予想される。


 これまで、だいたい図録番号に従って紹介してきたが、ここは役者の似せ絵関係を先にまとめて紹介することとする。

 

 

367 「流行三ツびゃうし」

 弘化4年(1847)正月、河原崎座で上演された「とてつる拳」の大流行以来、江戸では拳遊びブームとなったそうだ。

 虎と狐と蛙が「狐拳」の格好をしている。

 虎は、狐拳の狐の格好をしているが、虎拳(虎、和藤内、婆様)代表。
 狐は、狐拳の庄屋の格好をしているが、狐拳(狐、庄屋、猟師)代表。
 ガマは、狐拳の猟師の格好をしているが、虫拳(蛙、蛇、蛞蝓=ナメクジ)代表・・・・・と実にややこしい。

 で、その動物は、「とてつる拳」を演じた役者に似せてあるそうだが、よく分からない。歌右衛門は鼻で何となく分かるが。

 

368 「つくものけん」


 何か「北斗の拳」みたいだが、違う。

 これも歌右衛門はともかく、九蔵なんかひどいし、梅幸に至ってはむちゃくちゃだ。

370 「荷宝蔵壁のむだ書」黄腰壁

 

 さっき「つくものけん」で梅幸は雀になってむちゃくちゃ・・・と書いたが、この「むだ書」の梅幸を見てるとまんざらイメージが出てないこともないと思った。

 四代歌右衛門はすごいね。どこでも強烈な個性を発揮している。

 画像はチラシでも。

 

371 「荷宝蔵壁のむだ書」黒腰壁

 八代目団十郎は優男のハンサム。九蔵は目がつぶらで、多見蔵は「ふっくら」なんてイメージを持った。

 

338 「金魚づくし いかだのり」

 前期展示なので現物は観ていない。後掲の「ぼんぼん」は観た。国芳HPの下部の展示作品一覧で。

 

339 「金魚づくし ぼんぼん」

 ひれで立って歩いている。小さなオタマジャクシが姉さん金魚に手を引かれている。画像はチラシで。

340 「十二支見立職人づくし」


 

 右上から順に十二支の動物を職人に見立てている。

 図録解説によると、

ねずみ:金網師。ねずみ取りの籠を作る自虐。

牛:車匠。牛車のゆかり。

虎:竹細工。虎と竹林のゆかり。

兎:船大工。かちかち山の船?

龍:玉師。龍玉のゆかり。

蛇:迷子札彫師。えらく細かい職業やなあ、と思う。執念深いことと関係するか?

馬:べっこう職人。馬の爪が鼈甲の代用になるそうだ。私は「櫛」職人で馬の「たてがみ」に由来するのか?と思った。

羊:髪結い。羊、山羊は紙を食う。で「かみ」つながりで髪結いか?

猿:股引仕立て。猿股つながり。

鶏:時計職人。説明不要か。

犬:碗職人。「わん!」と吠えるので。ダジャレかよ!

猪:造花職人。牡丹の花を作っている。ぼたん鍋の自虐。

 蛇のゴーグルのような職人メガネが抜群に似合っている。
 「蛇の目」との関連か?とも思った。

 

 これは漫画『銀魂』に出てくるカラクリ職人、平賀源外。

 やっぱ、職人は、このメガネだぜ。



 お疲れ様でした。

 
 
  

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