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陶磁器ゼミ(19) 美術史ゼミナール「中国の陶磁器」総集編 「中国陶磁セレクション 〜美術史ゼミナールの成果〜」報告その3

はじめに

 楽しかった美術史ゼミナールのゼミ生の皆さんと企画し、陳列した展示会の内容を、ごく簡単に振り返ってみたい・・・・・・の3回目にして最終回。


 最後の、第1大ケース、そして第3、第4小ケースを使って、青花を紹介することとした。

(右手前)
 青花 蓮池文玉壷春瓶(せいかれんちもんぎょっこしゅんへい。江西省景徳鎮窯。元。14世紀。高さ27.7、口径8.1、胴径14.6、底径7.9)

 玉壷春とは、いわゆるラッキョウ形の瓶。
 胴部の下向きの如意頭形3個の中には蓮花と青海波が描かれている。

 

玉壷春ほか

 なお、この三つの蓮花は開花具合がそれぞれ違うため、輪廻転生などを表わしているのではないかというのが先生の意見であった。
 頸部の蓮弁の中には雑宝(陰陽板、法螺、火焔宝珠)が、胴部の如意頭形の間には折枝文が、さらに胴部下半には8個のラマ式蓮弁が描かれる。

(左奥)
 青花 龍文方壷(せいかりゅうもんほうこ。景徳鎮窯。明。「大明嘉靖年製」銘。嘉靖期(1522〜66))

(右奥)
 青花 魚藻文洗(せいかぎょそうもんせん。景徳鎮窯。明。「大明嘉靖年製」青花銘。嘉靖期(1522〜66))

(左手前)
 青花 花替唐草文鉢(せいかはながわりからくさもんはち。景徳鎮窯。明。「大明宣徳年製」青花銘。宣徳期(1426〜35)。高さ10.2、口径21、底径7.8)

 宣徳期の青花は、斑点状のにじみが「青」の濃さを際立たせているといわれる。
 
青花鉢及び錠形盒

 見込みには枇杷折枝文(びわおりえだもん。多子の象徴)を中心に菊・サザンカの花唐草文と波涛文が、外面には菊蓮弁文と雷文(右奥)が描かれている。


 青花 回教文字文銀錠形盒(せいかかいきょうもじもんぎんじょうがたごう。景徳鎮窯。明。「大明正徳年製」青花銘。正徳期(1506〜21)。高さ9.8、長さ15.2)
 元代以降、貨幣は分銅形に鋳造された銀塊(銀錠)を用いるのが一般的であったが、本器は蓋付きの収納器(盒)で銀錠の形を借りて財貨が豊かになることを祈願したものと思われる。また、器面の回教文字(コーランの一節)は収納の守りとしたものと考えられる。

青花盤及び水注 (左手前)
 青花 花唐草文盤(景徳鎮窯。明代初期。15世紀)


(右中)
 青花 瑞果文水注(せいかずいかもんすいちゅう。景徳鎮窯。明代初期。15世紀)

 なお、蛇足ながら左奥の鉢と中央奥の盒は、上で紹介したものと同じ。

 それでは、続いて明末清初の青花の品々を。 捻花鉢ほか

(左奥)
 青花 群仙図鉢(景徳鎮窯。古染付。明代末期。17世紀。高さ9.7、口径22.5、底径9.9)  

(中央手前)
 青花 山水図長方盒(景徳鎮窯。清代初期。17世紀)

(右奥)
 青花 捻花文鉢(せいかねじはなもんはち。景徳鎮窯。祥瑞手(しょんずいて)。明代末期。17世紀。口径21,2)
 高台に「五良大甫呉祥瑞造」という銘をもつ(ないし、そうした銘をもつものと同質の)一群の作品を祥瑞(手)と呼び、明末の景徳鎮窯で日本の茶人の注文によって焼造されたと考えられている。
 口縁部を輪花にして、見込みの花卉文を中心に鉢全体を捻れた花に見立てている。

 続いて、清代の青花を。

睡起図洗など (左奥)
 青花 睡起図洗(せいかすいきずせん。景徳鎮窯。「玉堂佳器」青花銘。清代前期。17〜18世紀。高さ10、口径35.2、底径18)

(中央手前)
 青花 人物図六角植木鉢(景徳鎮窯。清。17世紀) 

(右奥)
 青花 梅花氷裂文水仙盆(せいかばいかひょうれつもんすいせんぼん。景徳鎮窯。清。18世紀)が左半分ほどだけ写っている。

(左手前)
 青花 蘭亭曲水図方瓶(せいからんていきょくすいずほうへい。景徳鎮窯。清代初期。17世紀。高さ31.3、口径2.6、底径11×11.3) 
青花方瓶など

 東晋の書聖王羲之が永和9年(353)に蘭亭で開いた曲水の宴の故事を描いたデカンタ(ワインなどの酒瓶)。
 6本の青花の線文がある凹凸の口頸部のつくりは他に類をみない。

(中央奥)
 古染付 花鳥文手付水注(こそめつけかちょうもんてつきすいちゅう。景徳鎮窯。明代?)

(右手前)
 青花 婦人図方瓶(景徳鎮窯。「VH」青花銘。清代前期。17世紀。高さ28.5、口径4.9、胴径10.6×10.7)
 なお、「VH」はイギリス東インド会社を示す銘。

青花釉裏紅など (左中)
 青花釉裏紅 氷裂文壷(せいかゆうりこう ひょうれつもんこ。景徳鎮窯。清代後期。18〜19世紀。高さ35.8、口径15.9)

 氷裂文とは、氷の裂け目のようにカクカクと直線で区切られた文様。

 複線で画した氷裂の中に石畳、亀甲、青海波、渦巻等の地文に菊花・梅花などの小花文を散らしたものと、花卉折枝文とを配するので、切紙文とも呼ばれる。

 切紙文はパッチワークを連想させる。
 青花はコバルトで青を、釉裏紅は銅で赤を呈色する。本器は、釉裏紅の地には青花の文様を、青花の地には釉裏紅の文様を配している。

(右手前)
 藍釉梅瓶(らんゆうめいぴん。景徳鎮窯。清代後期。18〜19世紀) 

 なお、左奥が上掲の六角鉢、右奥が上掲の睡起図洗。

 



 それでは、次回まで、ごきげんよう♪

 

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