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(No80) 上方演芸ホール TV鑑賞記(梅團治 春若) きっちり記録していないので、放送日もよく覚えていないのだが、とりあえず記録しておきたい。
(1) 桂梅團治 「寝床」
初めて聴く噺家さんかな。
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先日、ラジオ聴いてたら、NHKの上方落語を聴く会の番組告知をしてましてね。「出演は桂春團治、橘家圓蔵、桂春若・・・ほか」ってゆうてまして。
一緒にラジオ聴いてた嫁さんに、「・・・・・誰が出てたんか知らんけど、ほかって、『ほか』とゆう時間あったら、名前くらい言えるやろに。可哀想になあ」てゆうてたんですが、後でスケジュール表見たら、そん時、出てたん・・・・・・・私でした。
・・・・・・・・・『ほか』でございます。よろしくお願いします。
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まあ、趣味もいろいろありますが、いわゆる鉄道マニアは多いんですが、鉄道模型なんかのマニアの方の気持ちなんかこれっぽっちもわかりまへんな。
また、とにかく乗るのんが好きな方もいます。電車に乗って、目的地に着いて・・・・そんで、観光も何もせんと、またすぐに電車に乗って帰る。とにかく電車に乗ってたら嬉しい。こんな人の気持ちもさっぱりわかりまへん。
しかし、鉄道の写真を撮る。こら、ええです。最高の趣味ですな。
趣味もね、力ゆうか権力が絡むとややこしいです。
師匠の春團治とね、たまにカラオケ行ったりしますが、師匠は、そんな力をふりかざすような所は全然ありません。透き通ったきれいなお声でね。一緒に行ってても、おいしくお酒が飲めます。
ま、昔は趣味ゆうのんも浄瑠璃、義太夫てなもんが多かったんですが、ああゆうのも、ちょっと凝りだすと、ただやってるだけやのうて、誰ぞに聞かしとぉなるんですな。
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・・・・・・と、店の旦那が下手な浄瑠璃を長屋の店子や店の使用人らに無理に聴かせようとする「寝床」へ。
本編の「寝床」については、特にこれ!といった印象はない。
まあ、店の主人(長屋の大家でもある)が、浄瑠璃の会に来ない店子(たなこ。借家人)に腹を立てて追い出そうとする時、「いつでも大家の都合で出て行きます、という証文が取ってあるのじゃ」と言うところが、権力の振りかざし方が現実的で生々しく、いやらしいなと感じたくらいか。
おそらく、この店立て(たなだて。店子を追い出すこと)の証文のくだりはポピュラーなもので、枝雀師匠で聴いた時には、なかったのか、あってもあまり気に留めていなかったので、今回耳障りだったのだろうと思う。
また、梅團治は、鉄道の写真集を出すほどのマニアであるそうだ。プロフィールなどは、写真も載ってるご自身のHPで。 |
(2) 桂春若 「夢の喧嘩」
左下写真は、何年か前の京都国立博物館での落語会のチラシより。今回は、写真より髪も白くなり、体もやせ、失礼だがかなり老けた印象がした。声も少ししゃがれ気味。
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睡眠と適度な運動とゆうのが、やはり健康にええそうですが。
私も趣味と実益を兼ねて、下向いて歩くゆうのを続けてます。うまいこと行ったら、金が拾える。
東京で、落し物センターゆうとこがあるんですが、1年間で30億円、拾ったっちゅう届出があるそうです。
30億円ですよ。30円、置くんとちゃいますよ。
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大阪ではどうか、思て調べたら、大阪には落し物センターがないそうです。何でや・・・とゆうと、大阪の人間は拾っても届けん。
ええ?お客さんらも、そうでっしゃろぉ?拾って、届けまっかぁ?
ま、こら冗談でっけど、大阪では拾ったら警察に届ける。去年1年間で16億円の届出があったそうです。・・・・・・16円、置くんとちゃいますよ。
1日になおしたら、440万円のお金が街ん中に落ちてる、ゆうことですわ。
どうでっかぁ?皆さんも、こんなとこで落語聴いてる場合や、おまへんで。わたいも、今から拾いに行こかな。
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本編の噺は、いわゆる「天狗裁き」の半ばである。
「天狗裁き」というのは、ある男が眠りながら、何か楽しい夢でもみているのかニヤニヤしている。それを見た女房が、何の夢をみてたのか教えてくれとゆうが、男は覚えていないと答える。
すると女房は、夫婦の間で隠し事するなんて、と怒り出し、男は、覚えてるなら教えるが、実際、覚えてないんやと答え、喧嘩になる。
そこへ、通りかかった男の友人が仲裁に入り、女房をなだめるが、その後、「女房には言えんような夢、みることはあるわなぁ。わいだけには教えてくれ」と言い出して、「わからんやっちゃなあ。隠してるのんとちゃう。ほんまに覚えてへんねん」「小さい頃からの親友の俺に、水臭い」とこれまた喧嘩。
そこに通りかかった大家が、友人を「家賃をためてるくせに偉そうにすんな」と追い立てるが、その後で「あんな奴、誰にも言わんゆうても、ちょっとしゃべったら長屋中に知られてしまうで。そこ行くと、私は町役(ちょうやく。準公務員みたいなもの)もやってるし、口も堅い。店子といえば子も同然、大家といえば親も同然。私にやったら、話してくれるな?」と言い出したので、またも喧嘩に。
「そんなゆうことをきかん店子は置いてられん。いつでも大家の都合で出て行きますゆう証文も取ってある。出て行け」と言い出した大家。そんな理不尽な、と男は、おおそれながらと奉行所に訴えて出る。
さて、お裁きの日。お奉行は、大家の権力をかさにきて追い立てようとはけしからんと、男を勝訴させる。
しかし、奉行が、男に「大家が店立てしようとした時は驚いたであろう。それでも、男の信念を曲げず口を割らんとは、見上げた奴じゃ。どうじゃ、その夢、奉行になら話してくれるな?このとおり、人払いまでしたのじゃぞ」と言い出し、またも喧嘩に。怒った奉行は、無理にでも口を割らそうと男を奉行所の木に縛り付けて拷問しようとする。
で、「天狗裁き」では、それを天狗が救い出して深い山中に連れて行き・・・・・となる。今回の噺では天狗が出てくる前にサゲとなる。
天狗のくだりを省略したのは、もちろん時間の都合もあろうが、米朝師匠が速記本の解説で言っていたように、同工異曲の繰り返しになって、客にもわかってしまい、ダレる噺なんで、その点は別に問題ないと感じた。そうすると、「天狗裁き」という題もつけられない。
もっとも、「夢の喧嘩」という題は即物的すぎるな、とは思うが。
今回のサゲは、木にくくりつけられた男が苦しんで叫ぶ。
・・・・と、おかみさんが、寝ている男をゆすり起こして「えらい、うなされて」と言う。ここで、ああ、奉行所で縛られて・・・・というところも夢だったのか、とわかって場内に笑いが起こった。
しかし、春若は、その場内の笑いの中で「いったい、どんな夢見たん?」と続けて頭を下げた。
「えらい、うなされて」で場内は笑っているから、最後のセリフはほとんど聞き取れなかった。
ここは難しいところだ。私なら、「えらい、うなされて」だけで、しゅっと高座をおりてほしいタイプ。その方が、よほどすっきりしていて、しゃれている。
しかし、絶対、聴いている客の何割かは「えらいうなされて」だけでは分からない。
そこで、ヤボとは知りつつ、今までのくだり全部が夢だったんですよという構造そのものを知らしめるよう駄目押しのセリフを続ける。
この駄目「押し」を押すか押さないかは迷い所で、枝雀師匠の本を読んでいても、いろんな噺で「どこまで説明するか」という点に悩んでいることがわかる。
まあ、いずれにせよ「夢ネタ」というのは便利な一方、扱いはけっこう難しいと思う。
話は変わるが、多分20年以上昔、三遊亭円楽で「芝浜」を聴いた時、マクラで「酒を出されて冷やか、燗かと聞かれ、燗と答えたら、飲む前に目が醒めて、夢だとわかった。ああ、それなら冷やで飲んでおけばよかった」という小噺をはさんだので、口は悪いが、「バカか、この人は」と思ったことを思い出した。
「夢」、「酒」とこれだけかぶったマクラだと、「芝浜」のオチまでばれてしまうじゃないか、と思ったのだ。
しかし、よく考えれば、サゲまで全部知っていても楽しめるのが落語である。この円楽のマクラを、「巧妙な伏線」と評価する人も、ひょっとして中には、いるのかな? |
どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録画はしたのですが、きっちり聴き直してないので、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。
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