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(No81) 平成19年度NHK新人演芸大賞(落語部門) TV鑑賞記  

 平成19年12月15日放送分。東京は二つ目、大阪は芸歴15年目までが参加資格。


(1) 春風亭一之輔 「鈴ヶ森」

 
東京の落語家。
   どじな男が兄貴分に連れられて鈴ヶ森に追い剥ぎに行く。

「仕度しろい」
「仕度?」
「顔がわからねえように墨でヒゲを描くんだよ」
「なら、早くそう言ってくれりゃいい。あたいもまんざらバカじゃないんだから」
「バカだよ」
(ヒゲを描くが、先をくるくる回して描く)
「おめえはトランプの王様か」 

 


 兄貴が追い剥ぎのセリフを教えるが、覚えきれず「Pardon?」

 こうしたとこは、いつの時代の噺や?って気がするので、私はこの手のギャグは嫌いである。

 カモを待つため、「けつをまくって、しゃがめ」と言われるが
「だめだよ」
「なんでだ?」
「あたい、日によってふんどし、締めたり、しなかったりすんの。
 今日は締めない日」
「いいから、しゃがめ」
「うわっ!」
「どうした?」
「・・・・・たけのこが直撃」


 ここは、ちょっとだけおもしろかった。全体的にもひとつ。

 サゲは、相手の方が強くて、「身ぐるみ脱ぐから勘弁してください」というもの。

 
 

 


(2) 林家たけ平 「紀州」

 
林家正蔵の弟子らしい。
 徳川300年、七代将軍が徳川家継・・・・・・もう落語に入ってますよ。大丈夫ですか?そこの奥さん、ぼぉ〜っとしている場合じゃないですよ。

 この方は、何と4歳で将軍になられました。しかし、ストレスがたまったんでしょうか。お七つにしてご他界あそばされました。

 さすが、将軍ともなると子どもでも「7歳で死んだ」・・・じゃなくて、「お七つでご他界」と言うんですよ。じゃ、皆さんも一緒に言ってみましょうか?

 はい、「お七つで、ご他界」・・・・・・・・。どうも非協力的な感じですねえ。

 将軍が亡くなっても、ちゃんと次の将軍をどこから補充するか、というシステムができていました。それが御三家です。

 御三家と言うと、橋幸夫、舟木一夫・・・・いや、違う。水戸、尾州、紀州の御三家です。

 この中でまず水戸家が脱落しました。それは、既に水戸光圀が天下の副将軍になっていたので、将軍にまでならなくてもいいいだろうとなったんです。
 第一、水戸家が将軍になると、由美かおるの入浴シーンが見られなくなる・・・・・ってくだらない冗談を言っておりました。

 そこで尾州と紀州の一騎打ちとなったのですが、年上の尾州様が将軍になるだろうと世間の評判になりました。尾州様の本名は尾張大納言継友。家臣がお殿様に尋ねます。お殿様が将軍になられるそうですがと家臣に尋ねられ「もちろん継ぐとも」・・・・・・・。

 尾州様がご城下をまわられた時、鍛冶屋が仕事をしていた。鍛冶屋というのは、まず「トン!」と槌をふるうと、相方が「テン!カン!」と合わせて槌をふるう。「相槌を打つ」とは、ここから始まりました。
 しかし、周りがあまり将軍になる、将軍になると言うものだから、この槌音がどうしても「トンテンカン」とは聞こえず「天下取る」と聞こえてしまう。

 思い込み。こういうことはあるんです。
 今、名アナウンサーになっている方ですが、午前4時の天気予報を放送しなくてはいけないことになったそうです。しかし、一度寝てしまうと4時には起きられないだろうと、徹夜麻雀をして時間を潰してスタジオ入りしました。
 最初はうまくやっていたそうですが、最後の最後で失敗しました。「沿岸部の風は東南から西北
(シャーペー)へ」・・・・・。

 で、将軍任命のお使いが・・・・・・皆さん、噺、覚えてます?
 大久保加賀守というご老体が、まず尾州様の所に来て「下万民
(しもばんみん)の撫育のため任官あってしかるべし」。
 ここで尾州様が「はい」と言えば、それで終りだったのですが、日本人らしい謙譲の美徳があったんです。一度断って、「そこを何とか」と言われてから引き受けた方が形がいいだろう、そう考えたんですね。

 そこで「余はその徳薄うして、その任に堪えず」。

 ところが、加賀守はそれを聞いて「ははぁ〜」と引っ込んでしまっって、次の紀州様のところへ。

 これで慌てたのが尾州様。「空気の読めない親父だね〜」。紀州がどう答えるか気が気じゃなかった。
 すると、紀州も「余はその徳薄うして・・・」と同じことを言った。胸を撫で下ろす尾州様。
 困ったのは大久保加賀守。尾州に断られ、紀州に断られ・・・・。仕方ないから、奥で他の者と相談しようと、引き下がろうとした時、「・・・・・・と言えども」。

 これは、あんまり良いことはない。逆説ですからね。英語で言うと but 。フランス語で言うと、ミット・・・・。てなくだらない冗談を言いながら、「下万民のためならば・・・・」と引き受けてしまった。5秒のためらいが、運命を分けたんですね。

 で、最近の若い人がなぜ、政治に関心がないかと言うと、言葉が分からないからだそうです。ですから、インタビューなんかでも
「総理、年金問題については、どうですか?」
「年金・・・・?超聞きたくない。マジ、やばいんですけど。ぶっちゃけ、ダメって感じ」
「今後の日本は?」
「・・・・・・微妙」

 こんな風にすればいいんですね。

 ともかく、紀州が将軍を継ぐことになって、困ったのが尾州。紀州
(奇襲)攻撃だ。これで、もう尾張(終り)だ・・・・ってくだらないことを言っていた。

 仕方ないので屋敷に帰ることにしました。やはり鍛冶屋がトンテンカンとやっていたが、やはり、どうしても「天下取る」と聞こえて仕方がない。
 ああ、紀州は如才ないから、いったん将軍を引き受けたが、やはり私には荷が重い、どうぞ兄さん、将軍になってくださいと言って来るに違いない。
 そう考えて尾州様が満面の笑みを浮かべた時、鍛冶屋が「天下取る」、「天下取る」と打ち上げた後、真っ赤に焼けた鉄を水の中へ。とたんに「キシュ〜〜〜」。

 珍しい噺が聴けたのは良かったが、しょうもない客いじりとかギャグがことごとく滑って、世にも寒〜い高座になっていた。


 


(3) 桂よね吉 「芝居道楽」

 
「芝居道楽」ってどんな噺なんだろうか、と思ったのだが、まるっきり「七段目」。なぜ、題名を変えているのだろう?
 どうも時間の関係なのだろうが、「七段目」という取り決めもなく、単に定吉が二階にあがったとたん立ち回りが始まり、いきなり落ちてしまうという設定になっていた。
 サゲも、定吉が黒い店のお仕着せのまま落ちてきて、旦那が忠臣蔵か?五段目か、六段目か?と尋ねて「てっぺんから」というサゲだったんで、「七段目」とは呼びにくいのかな。
 桂よね吉の「七段目」と言えば、以前にも聴いたことがあるが、師匠吉朝譲りの完成された高座であった。

 今回も、非常に達者な高座だった。

 やや残念だったのは、高座の途中から着物の裾が乱れていたこと。
 
 それにしても、他の噺家とはちょっとレベルが違うって感じがした。

 


(4) 古今亭菊六 「権助提灯」

 
菊六が高座に上がる時、屁っぴり腰のような、変な格好で登場してきた。
 「権助提灯」というのは、ある日、奥さんが旦那に、「風が強いと火事になりやすい。こんな日は、女は不安なもの。あの子(妾)の所に行っておあげなさい」とすすめる。

 旦那は、下男の権助に提灯を持たせてお供にして、妾宅へ。

 しかし、妾は「その言葉は涙が出るほど嬉しいけれど、それに甘えると私はものがわからない女になってしまう。今日は、どうぞ本宅にお帰り下さい」と帰らせる。

 その後は、正妻と妾の意地の張り合いで、旦那は権助と共に本宅と妾宅の間を行ったり来たり。そのたびに「権助、提灯に火を入れろ」と命ずるが、結局、朝を迎え、「提灯には及ばねえ。夜が明けた」・・・・・・という噺。

 
 冒頭で菊六は、「私の方は、立ち上がって(芝居の所作をして)こんな格好はしないので安心してください」と言った。
 明らかによね吉を揶揄しているのだ。

 そこで非常にいやな印象を受けた。

 「火の元が・・・」というところを「”し”のもと」と言うところも、何やら上方落語のよね吉憎しで、わざと江戸っ子ぶりを協調してるように邪推してしまう。

 自称「落語界の中村橋之助」。今日は得意の女性が出てくる噺です・・・というのが、当日の司会者の紹介だった。

 正妻の落ち着いたセリフまわしとか、権助の田舎者くさく、つけあがった口調、妾のしなだれた感じとか、力が入っていた。
 よほど、よね吉を意識していたのか。しかし、ちょっと「どうだ、俺はうめえだろう」って腹ん中でうそぶいてるようで、最初抱いた悪印象が災いしてか素直に聴けなかった。


 


(5) 林家笑丸 「看板の一」

 
林家染丸門下。「えみまる」と読む。紙切り、ウクレレ、英語落語と非常に多芸だそうだ。

 
 落語界の、収入の低いナインティナインの岡村です。

 大阪ゆうのは、おかしな町ですなあ。「安心のまちです」ゆう看板が出てたんですが、その横に、「ひったくりにご注意」。安心できんがな。


 噺は、以前もきん枝で聴いた。

 きん枝のそれと違うところは、老人が江戸っ子で、真似するアホも江戸っ子を気取るが、大阪弁が混じったり、「おめえら、江戸に行ったことがねえのか」「お前が行った一番東は、ひょうたん山やないか」などと突っ込まれる点。

 顔がぎらついた濃い顔なんで、江戸っ子風のセリフ回しとかだと、かなりきつい印象を受ける。

 


 大賞はよね吉。そらそやな、よね吉しかないわなって感じ。

 録画はしましたが、内容はうろ覚えなんで、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。



 

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