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(No45) 米朝一門会 鑑賞記 その2  

 平成19年8月12日(日)、ホテルヒルトン大阪での上演分・・・・・・の続き。

 



(3) 桂ざこば 「強情」

 高座に上がるなり羽織を脱ぎ「こない、すぐ脱ぐんやったら初めから着てこなんだらええてなもんやけど・・・・。まあ、持ってるゆうとこだけでも見てもらわなあかんから」という、毎回繰り返すギャグを入れ、マクラへ。ざこばはマクラがいつもおもしろい。


 今はそうでもないんですが、わたいも昔、ウィークエンダー(相当昔のニュース形式のバラエティ番組。ざこばは当時、朝丸という名前で、レポーターをやっていた。「動物いじめ」というギャグでブレークした)やってた頃は、週に二へん、東京に行ってました。
 しゃあから、往復で週に4回、飛行機に乗ってたわけですな。

 何度も乗ってると怖い思いもします。いっぺん、こんなことがありました。
 飛行機て、飛行場の中を動いたりもしますが、さあ、いよいよ離陸!ゆう時は音が違いますな。
 
(と、片手で飛行機の形をつくり、それを動かしながら)だんだん音が大きなっていって、飛ぶぞ、飛ぶぞ、飛ぶぞ、さあ!離陸!ゆうとこでばぁ〜ん!て、えらい音がしました。
 車でゆうたらバックファイアゆうやつですな。直しますから、いっぺん降りてください、ゆうから飛行場戻って待ってました。

 しばらくして、直りましたからまた乗ってくださいゆうから、乗ったんだ。そしたら、また、おんなじように飛ぶぞ、飛ぶぞ、飛ぶぞ!ゆうとこでばぁ〜ん!
 直ってへんやないかい。遅い飛行機でしたさかい、マネージャーに「今日は泊まりや。ホテルも飯も飛行機会社持ちや。一杯呑んで、寝よか」とかゆうてたら、機長が「もう1回、やらせてください」。

 わたいら、「ええ?」てなもんだ。それで、また滑走路で、飛ぶぞ、飛ぶぞ。さあ、ここや、ここでばぁ〜ん!・・・ゆう思たら、いいまへんねん。そのまま、飛び立ちました。
 機内、し〜ん、としてましたで。そら、そうでっしゃろ。二へん、いいましてんで。そんなもん、いつゆうかわからへん。・・・・・・まあ、そんだけの話でっけど。

 おとつい、ベトナムから帰ってきました。
 あこの国は、バイクばっかりでんな。
 50ccのバイク。それに大人二人乗ってまんねん。
 ひどいのんになると、それに子供がもう二人乗ってまんねん。

・・・・・・・あんな国、つぶれまっせ。

 バイクはホンダが人気でんねん。
 せやけど、中国でHENDAゆうの、作ってまんねん。
 笑いまっせ。「O」が「E」になって。ちゃんと看板だして、店で売ってまんねん。

 ホンダは10万円するそうですわ。ヘンダやったら4万らしい。
 その代わり、ホンダはリッター50kmくらい走るらしいけど、ヘンダやと、その半分も走らんそうです。変わってまんなあ・・・・・。
 ほか、何の話、しよかな・・・・・。

 こないだね、ばくち場、カジノに行ったんだ。ちょっと遊んで、ホテル戻ろ思たら、店のもんが、関口さん、あ、これわたいの本名でっけど、何回か行ってるさかい、向こうも知っとるんだ。で「関口さん、ちょっと事務所へ」て、こない言いまんねん。
 わたい、「お?何や、VIP扱いしてくれよんのかな?」思て期待して行ったら、
「関口さん、イカサマしたらダメです。ビデオに映ってます」て、こないなこと言いよるんだ。

 わたい、むか〜っと来てねえ。何や聞いてたら、わたいが、「勝負!」ゆう時にチップを置き換えた、ゆうんですな。まあゆうたら、当たりのとこにチップを動かしたゆうんです。

 わたい、そんなことしてへんから「ほな、そのビデオ見せぃ!」ゆうたら、「ダメです。このビデオ見せたら、うちは警察に行かないといけない」
 何をゆうてんねん!ってやつですな。警察でもどこでも行ったる。かまへんからビデオ見せい!うちは、あなたが認めたら・・・。認めるか、そんなもん!日本大使館に電話する。番号教えい!ああ、いいですよ。番号は○○○〜。てな押し問答がありまして、結局、ビデオを見せることになりました。

 いいですか、この手があなたの手です、て言いよるんだ。時計も一緒でっさかいね、確かにわたいの手ぇです。で、映ってるんですが、まあ、確かに手ぇはチップの上を動いてるんですが、別にチップの山を崩してるわけでもないし、チップも握ってへん。

 わいはTVのスタッフらと一緒に来てんねん。今から、みんなにも見てもろて、どっちが正しいか聞いてみよやないか!ゆうたら、それはダメです、何でや?他の人に見せたら、うちのカジノ、どこにカメラ仕掛けてるかわかってしまう、そんなもん知るかい!とか押し問答になりまして、まあ、取りあえずはホテルに帰ったんです。

 そしたら、次の日、わたいの部屋まで来
(き)よってね。それも、昨日の奴とは違うスタッフが来てまんねん。これがおかしいでっしゃろ?
 しやけど、向こうもゆんべビデオをせんど
(千度、何度も)見よったんでっしゃろな。どうも、わたいがイカサマをしてないのはわかってきたらしく、ほんで何をゆうかゆうと、マナー違反やっちゅいまんねん。チップの上で、手ぇひらひらさすのは紛らわしいてね。
 わい、また、むか〜っと来ましてね。わいは、これまでラスベガスでもモナコでもカジノ行って、どこでもおんなじようにしてきたけど、お前とこみたいに文句言われたことはいっぺんもない!裁判にかけるぞ!こうゆうたったんだ。
 そしたら、向こうの奴、困ったような顔して「なぜ、ここまで話が大きくなりましたか・・・」
 知るかい!こっちが聞きたいわ。お前がイカサマやの警察やのゆうからやないかい。
 そしたら、この話聞いてた、カメラマンが「お前、この人知ってんのか?この人は、日本でも有名な芸能人やぞ。それに、俺は、この人は日本一の正直もんや思てる!」ゆうて顔真っ赤にして怒り出したんですな。
 わたい、嬉しいけど、何や急に、て思てたら、向こうが、
「・・・・・そんなことも、あるかもしれませんね・・・・。
 あなた、どうやったら気が治まりますか?」

 そないゆうから、わたい「とにかく、謝れ!」ゆうたんだ。
 そしたら「どうも すいませんでした。・・・・・・・・・・でもね」
「でもねぇ?”でもね”ゆうたら、謝ったことにならへんやないかい!」
「でもね、ホテル代は払って下さい」

 わたい、またムカムカ〜っと来てね。
「お前、そんなもん、カジノで100万使
(つこ)たら、ホテル代はタダやて、旅行社との間では、ちゃぁんとそない話がついてたやないかい!」
「・・・でも、関口さん、100万円、払ってない」
「当たり前やないか!お前らが1日目にいきなり、イカサマやの何やのゆうから、その気がなくなってしもたんやないか!わいは、そんなことさえなかったら、どこ行ったかて、100万はおろか、200万でも300万でも使てるんじゃ!」てね。ちょっと、やまこ
(ハッタリ)も交えてそうゆうたったんですが、まあ、日本の芸人がホテル代踏み倒したなんて報道されてもかなんので、払うことにしました。
 おまけに「・・・それと、うちのカジノ、三月は出入り禁止ですから」「二度と行くかい!」

 むかむかして、家に帰ったら、そのカジノ、セブンラックゆいまんねけど、そこから葉書が来てて、「いつもご利用ありがとうございます。この次もぜひお越しください」て。
 まあ、販促
(販売促進。営業)のもんと、現場のもんはバラバラなんでっしゃろなぁ。

 おもろいことに、その後すぐ、またその国に行く仕事がおましてな。わたい、わざとその葉書持って、その店行ったんだ。こう、店ん中歩き回って、こないだのスタッフおらんかなあ思て、探しまわってねぇ。結局、おらなんだったんでっけど。
・・・・・まあ、それだけの話でんねん。わたいねぇ、”こばなし”ゆうのができまへんねん。みな実体験ですわ。

 それでは落語にかかりま〜す。

・・・・・こんな話、してますとわたい、いかにも根性あるように聞こえまっけど、ほんまはからっきし根性おまへんねん。所帯もったんが35年前でんねんけど三々九度の時、緊張してえらい震えましてね。
 あれおもろいもんで、相手が震えてると、巫女さんも震えまんねんな。二人してがたがたがたがた震えてるさかい、盃ん中、酒あらへんようになって・・・・。

 落語に入ろう思たのに、これや。わたい、落語の前にクタクタになりまんねん。

「こんにちわ」
「おっ、誰や思たら、たっつぁんやないかい。どないしたんや」
「へぇ、今日はちょっと頼みたいことがあって。
 しやけどね、今日は、聞いてから無理や言われたら困りまんねん。
 せやさかい、何も言わんと、先に『うん』てゆうてもらいたい」
「ええ?そない無茶言いなや。先にうん、ゆえやなんて」
「ええがな。先、うん、ゆうて。な?うん!行こ!うん!うん!行こ!うん!」
「うん行こ、うん行こて、お前、赤ちゃんにウンコさしてんのやないで。まあ、ゆうてみいや」
「そうでっかぁ。実は、お金を貸してもらいたい」
「何ぼや?」
「50円」
「ええ?そら、たっつぁんのこっちゃさかい、10円や15円やったら、貸さんこたないが、ことが50円と、かたまると、うちかてあらへんで」
「いやあ、そんなことおまへんやろ。こんだけのお店したはって。わい、今日はお宅一軒にしぼって来てまんねんで」
「勝手にしぼりないや」

 よくよく話を聞いてみると、この月の初め、ある人にお金を無利子・無証文で50円貸してもらった。無理して返さんでも、遊んでる金が50円たまったら返してくれたらええというありがたい申し出。
 そこで自分の心の中で、このようなありがたい金は何が何でもひと月で返そうと決めた。それが返せんとなると、自分に自分がウソをついたようで辛い・・・というたっつぁんの心意気に感じたおやっさんは50円貸してくれた。 


「こんにちわ」
「おお、たっつぁんやないか」
「あの、これ、長いこと、えらいすんまへんでした。おおきに」
「何や、それ」
「いえ、あの、・・・50円」
「いや、50円くらいはあるやろなぁゆうのは、見たらわかるけど。これ、何やねん?」
「え?お忘れでっか?」
「忘れたりはせえへんで。しやけど、あん時、わいはどないゆうた?お前こそ忘れてるんちゃうか?
 遊んでる金がでけたら返してくれ、ゆうたんやで。この金、遊んでるか?どっから見ても、苦しい〜ってゆうてるやないか。受け取れんで、そんな金」
「いや、そんなこと言われたら困りまんねん。わいも、いややゆうてる人から無理に借りて、持ってきたんやさかい」
「何ぃ?誰がそんなことまでして返してくれ、ゆうたんや。とっと持って帰ってくれ。去
(い)(帰れ)。去にさらせ!かか!出刃包丁持って来い!さっさと去なんと、突っ殺すぞ!」
「うわあ!さいなら〜!

 ええ?何で金返しに来て、突き殺されなあかんねん?

 ただいま」
「おお、たっつぁんか。どや、返してすっきりしたか?」
「いや、受け取ってくれまへんねん。いややゆうのを無理に借りてきた金やさかい、受け取ってもらわな困るゆうたんでっけど。しゃあさかい、これ、ひとまずはお返ししますわ」
「あほか!そんなことゆうたら、受け取ろう思てたもんでも、受け取らんわ。
 嘘も方便ゆうやろがい。昔金を貸してた友達が急に返しに来てくれた、とか。ほれ、頼母子
(たのもし。頼母子講とも。数人が掛け金を払い込み、入札や抽選で特定人が総額を受け取るといった形式が多い)が落ちたとか。それこそ、道で拾(ひろ)たとか。何ぼでも言いようはあるやろが。
 わいかて、お前が返すゆうさかい貸したんや。今さら受け取れるか!もういっぺん行ってこい。何?受け取ってもらえそうにない?何ごじゃごじゃゆうてんねん!かか!ピストル持って来い!」
「さいなら〜!

 何でこないなことになんのかなあ?

 こんにちわ」
「何や、また来たんかい。遊んでる金持って来いってゆうたやろ!そない苦しんでる金は要らんのじゃ」
「あんたなあ、何で、この金、苦しんでるとか決め付けるねん?この金、ほんまにさっきまで遊んでたんやぞ」
「遊んでた?」
「ああ、そこの公園でブランコ乗って」
「何、わけのわからんことを」
「いや、ほんまに遊んでたんやて。
 ええ、金を貸してた友達が、急に返してくれた・・・・・・とか」
「”とか”って何じゃい?」
「頼母子が落ちた・・・・・・とか、それこそ、道で拾た・・・・・・・とか。
 ああ、もう、わい、やっぱ嘘は言われんわ。
 これな、最前
(さいぜん。さっき)ゆうたように人から借りた金や。いや!まあ、最後まで聞いて。
 あんた、この金貸してくれた時、たっつぁんやから無利子・無証文。ある時払いの催促なしで貸すゆうてくれはりましたやろ。
 わたい、それ聞いて嬉しかった。そやから、自分で、こんなありがたいお金、ひと月たったら必ず返そ、そない決めたんだ。そやから、この金、受け取ってもらわへんかったら、わたい、自分で自分に嘘ついたようでたまりまへんねん。
 もう、あんたのことは、どうでもよろしねん。わたいの、この苦しさを取りたいんでんねん。な!わたい、助ける思て受け取っとくんなはれ、頼んますわ」
「・・・・・・・・・・けったいな男やなぁ、あんた。返せんと自分が辛い・・・・か。まあ、そうゆう男やさかい、わいも金貸そう思たんやけどな。

 わかった、そしたら、わいもその金受け取ろう。その代わり、きっちりひと月貸すことにしよやないか」
「ええ、せやさかい、今日が節季
(せっき。月末)
「わいがあんたに貸したんは、いつや?一日
(ついたち)の午前10時やないか。そやさかい、明日の午前10時になったら、ちょうどひと月やさかい、わいも気持ちよお受け取ろやないか。

 いや、いったん帰って、明日出直せなんて言わへんがな。今日は夜っぴて(一晩中)、こんなこと(盃で酒を呑む真似)しよやないか。
 おい、一升瓶持って来い!いや、酒はなんぼでも、あんねんで。

 そんで、アテ
(酒のさかな)は何かないか?何?ラッキョ?そんなもんで夜通し呑めるかいな。
 せや、すっきゃき
(すき焼き)しよ。牛肉で」
「え?わい牛肉、あきまへんねん。牛て、大きい体して、よだれしてまっしゃろ。鶏すきにしまひょ。鶏はよろしいで。こう、勢いがよろし」
「いや、牛肉の方がうまいて。な!若いねんし。牛肉にしよ」
「・・・・まあ、今日はわいの方が分が悪いさかいなあ。わかりました。牛肉、よばれます」
「おい、せがれ!たっつぁん、是非とも牛肉が食べたいゆうてるから、お前、ちょと、そこの肉屋行って、牛肉買
(こ)うて来てくれ」
「いや、別に是非とも、やないんやけど。え?今のん、息子さんでっか?」
「せや。まだ小学生やねんけどな。わいに似て強情なやつで。
 こないだも、朝、寝坊してな。『何で起こしてくれへんのや!』ゆうなり、ランドセルかついで学校へ走って行ったんやが、あいにく日曜でな。 
 せやけど、せっかく来たんやから、ゆうて教室入って、いちんち勉強しとったらしい。翌日休みよったけどな。
 

 ああ、あこに、将棋盤の前で腕組みして難しい顔してる奴おるやろ。あいつも、前にわいと将棋してて、わいが王手飛車取りしたったんや。
 そしたら、あいつも強情なやつで、”待った”は、していらんけど、その代わり考えさせてくれ、ゆうて、これで2年、考えとんねん。いっつも朝んなったら来て、考えて、夕方んなったら帰りよんねけどな。


・・・・・・・それにしても、せがれ、遅いな。肉屋て、ほん先にあるんやけど。ひょっと、途中で喧嘩でもしてたらあかんさかい、ちょっと様子見てくるわ。悪いけど、ちょっと待っててや。

 おや、道の真ん中に突っ立って、何してんねん?」

「あ、おとっつぁん。この人と鉢合わせになってんけどな。この人、道を譲ってくれへんねん」
「あ、あんた、この子のおやっさんか?頼むわ、ちょっと道譲るようにゆうてえや。
 わい、大きい道歩いてたんや。この子、路ぉ地から出てきたんやで。そっちが譲んのが当たり前やがな。
 わい、もう最終の電車に間に合わんようになんねん。頼むわ、のくようにゆうてぇや」
「最終電車?そんなもん、知るかい。せがれ、ようやった。
 しかし、困ったな。家で、たっつぁん待っとるしな。ええい、しゃあない。せがれ、お前、ええから肉買いに行ってこい」
「ええ?おとっつぁん、そんなことしたら、わいの負けになってしまう」
「なあに、お前に負けさせたりするかい。代わりにおとっつぁんが立っといたる」


 「強情」というのは初めて聴いた噺だったので、長めにメモしたが、あんまり面白い噺ではなかった。

 それより、噺が終わって高座を立とうとしたざこばが、前方に座り直すような格好になって、さらに後ろへ。要は足がしびれたか何かで、立ち損なったのである。

 


 

 

 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが、録音とかしてませんので、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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