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(No40) 平成紅梅亭 TV鑑賞記 その1 

 第69回平成紅梅亭。平成19年7月17日(火)午前2:06〜4:30分放映分。



(1) 柳家三三 「悋気の独楽」

 東京から客演で来た。関西ではなじみがない。

 名前だけでも覚えてください。三三(さんざ)ってのもヤボなんで、かわいくミミちゃん・・・と。

まくらは、最近の若者言葉。自分に自信が持てないせいか語尾が上ると指摘する。

 
 「わたし?」もう、自分すら信じられない。

 これが車掌なんかになるとイヤですね。「次は新大阪?」

 
 吉本新喜劇の安尾という若手のギャグでこんなのがある。

「刑事の安尾です・・・・か?」
「いや、知りませんよ。〜か?はおかしいでしょ」
「わかりました。皆さんは、アリバイがあります」
「そこは聞いてくださいよ!」

 あと、若者がよく使う言葉に「微妙」というのがありますな。
「エミの彼、かっこいいの?」
「・・・・微妙」
「その料理、おいしい?」
「・・・・微妙」
「エミんとこの猫、何で死んだの?」
「・・・・寿命」

 会場大爆笑。しかし、そこまで受けるのかな・・・?と思ってると、三三自身が
「いや、噺家をそこまで甘やかさなくても・・・」

 面白さと会場の笑いのバランスに素早く気づく点なんざ、センスはよいようだ。

 「微妙」よりもっとひどい言葉もありまして、全部を否定しちゃう言葉もございます。

 「はははははははは!超おもしろいんですけど!(と、真顔に返り)・・・・ありえない

 我々も使う言葉の中で似たようなのがある。

 相手の言うことをえんえん聞いていて、最後に「いずれにいたしましても〜」と、やおら最終的な結論に持っていくことが多いのだ。リセット言葉とでも申しましょうか。

 あと、自分の嫁さんの実家がだらしないということで軽いまくらを振った後、本編の焼餅(悋気)に合わせて、奥さんが浮気してるのではと疑いだした男の小噺へ。

 こっそり家に戻ってみると、奥さんがしどけない姿で寝ている。しかし、部屋の中に浮気相手の姿は見えない。
 と、窓から下をのぞくと、ズボンをずり上げながら走り出そうとしている男の姿が見えた。こいつだ!そう思うと、頭に血がのぼり、火事場のばか力。台所から大きな冷蔵庫を抱え上げたかと思うと、下に向かって投げつけた。これがもののみごとに命中し、下の男はあえなく絶命した。ここでハッと我に返って、ああ、取り返しのつかないことをした・・・と悔やんで自殺してしまった。

 今も昔も、地獄、極楽は閻魔様がお決めになります。

「あ、ども。えんまで〜す。どしたの?あんた」
「いや、よくわからないんですが、あ、寝過ごした。会社に遅れると思って、ズボン上げながら走り出したら、上から何か落っこちてきて・・・」
「最悪だね。事故だ、そりゃ。極楽にお行きなさい。ん?あんたは?」
「はい、私は妻が浮気をしたという妄想に取り付かれ、罪もないこの方を殺めてしまいました。取り返しのつかないことをしてしまったと思い、自らの命を絶ちまして、ここへ参りました」
「そうかあ。もう、そんなことしない?反省してる?じゃ、いいよ。極楽で。で、その後ろのあんたは?」
「いや、私は冷蔵庫の中に隠れてたら急に・・・」 

 この小噺はおもしろかった。

 本編はまあ普通。

 三三は、ちょっと顔が怖いけど、才能が感じられた。


 

 

 



(2) 桂小米朝 「七段目」

 いつもの小米朝、いつもの「七段目」という感じ。

 自己紹介で「桂七光り」と名乗ったり、国宝の管理が大変だとか、初めて札幌で独演会をやったら「めくり」の表示が桂「子」米朝となっていた。ある種正解です、とか、皇太子殿下のご苦労が分かる今日この頃とか。

 
 
しかし、相変わらず小米朝の「七段目」はうまいね。こないだ、NHKで桂吉弥の「七段目」を聴き、その前に聴いた時に比べ、何かあせり口調で、「おもしろくないなあ。ヘタになったなあ」と感じたが、今日の小米朝の「七段目」は冴えていた。 


 



(3) 立川志の輔 「買物ぶぎ」

 
 三三と同じく、東京からの来演。

 まくらは、本編の買物ネタに合わせ、最近いろいろな商品が出ているというもの。弟子が誕生祝に金属の棒を贈ってくれた。この棒をワイングラスに入れて右に1回回すと、1年熟成するという。うそだ、と思ってやってみたが、本当に右に何回か回すとワインがまろやかになった。で、試しに反対に回してみたら、だんだん葡萄になってきたって話。

 で、本編は変な親父と、ドラッグストアの若い店員の会話。

「おい、お兄ちゃん。何だい、店の前に並んでる『たらこ』のドリンクてのは?」
「え?・・・・・ああ、すいません。これ、この前に『疲れ』って文字があるんですけど、別の商品で隠れてしまってるんです」
「何い?・・・・・・ああ、『疲れたら このドリンク』か。そりゃ、そうだな。
 まあ、いいや。うちのかみさん、風邪ひいてるだろ?」
「え?そうなんですか」
「でさ、可哀想だから風邪薬でも買ってきてやろうかって言ったら、じゃあお願いしますって言うんだ。
 で、出かける前に嫁さんが何て言ったでしょう?1番、早く帰ってきてね。2番、二度と帰ってくるな。3番、リメンバーパールハーバー。さあ、どれでしょう?」
「え?それ私が答えるんですか?じゃあ、1番でしょう」
「ブー!!正解は、これも一緒に買ってきてと言って買物メモを渡した・・・でした!」
「・・・・・・それ三つの中になかったじゃないですか」
「そんなもの、三つの中に入れて当てられちゃったら困るじゃないか。
 俺、買物がきらいなんだ。だから、お兄ちゃんに、いいものをズバッと選んでもらおうってわけさ。
え〜と、なになに。まずはトイレの消臭剤だ」

「じゃあ、これなんかどうでしょう。『森の妖精』って、よく売れてます。森の匂いがするんです」
「え?じゃあ、うちのトイレが森の匂いになるわけか。いいじゃねえか、それ。
 ただ一つ困るとすれば、森に行った時、便所を思い出すよな。どこの森の匂いだ?なに、ヨーロッパの森?なら、いいや。そんなとこ行くことねえしな。

・・・・・・これ、消臭剤ってのは匂いを吸い取るんだよな。じゃあ、森の匂いも吸い取っちゃわないかな?するってえと、何にもなくなっちまうんじゃねえか?」
「・・・・・・・いえ、お客様。吸い取るというより、トイレのいやな臭いを森の臭いが包む・・・とお考え下さい」
(と、手で大きな円を描く)
「あ、なるほど。とすると、何だな。便所の中じゃ、なるだけ動かない方がいいな」
「へ?」
「だってそうだろ。うまいこと、包んでる森の匂いんとこならいいけど、うっかり中に頭をつっこんでみろ、地獄だぞ」
「・・・・・・・・いえいえ、お客様。そんな大きいものじゃないいです。こういうトイレの臭いを森の匂いが包む。
(と、小さな円を描く。そして、少し横でまた小さな円を描き)トイレの臭いを森が包む。で、トイレを森が。ここでもトイレを森が・・・・」
「わかった、わかった。
 ええと、次は、掃除の洗剤だ」

「あ、お客様、どちらをお掃除されますか?お風呂でしたらバス・ユアペットというのがございます。台所でしたら、キッチン・ユアペット。あと、フローリング用のユアペットですとか、窓用のユアペットが・・・・」
「う〜ん、だから俺は買物がいやなんだ。まあいいや。どこを掃除するかなんて聞いてねえから、これは、かみさんが治ってからまた買いに来させるよ」
「お客様。それでしたら、ただのユアペットというのもございます」
「え?お金いらないの?」
「いえ、無料(ただ)ってことじゃなくて、あの、どこでも掃除できるユアペットなんです」
「・・・・・なら、それ1本ありゃいいんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・」
「それとバス・ユアペットの立場はどうなるの?」
「は?」
「いや、バス・ユアペットはこれまで、俺は風呂洗いの専門家だってゆうプライドを持ってたわけだろ?そこに、ただのユアペットが来て、俺だって洗えますよってなこと言ってごらん。そりゃ、気を悪くするよ。
 まあいいや。次は歯磨き粉だ」

「どのような歯磨き粉がよろしいでしょうか?歯を白くするホワイト系。歯槽膿漏(しそうのうろう)を防ぐやつ。今、流行(はやり)の歯周病対策。それと、口臭を防ぐエチケット系。たばこのヤニを落とす・・・・・」
「へへへ、それで最後に言うんだろ。これ一本あれば・・・ってやつが」
「いえ、そんなのはありません」
「・・・・・・何でねえんだよ。誰だって、歯は白くしたいよ。でも歯槽膿漏も防ぎてえじゃねえか。歯周病も口臭も防ぎたいだろ。じゃ何か?それ全部買わなきゃいけねえのか?
 第一、歯ブラシに全部乗せるのか?磨こうと思ったら、ボテッと落ちちまう。
 それに考えてみろい。歯が白くなったって、歯槽膿漏になってみな。せっかく白くなった歯が落ちるんだぜ。

 まあ、いいや。次は歯ブラシ見せてくれ。え?ずいぶんたくさんあるなあ。何だ、この歯ブラシは?首のとこがずいぶん曲がって山みたいになってるじゃねえか。
 え?お兄ちゃん、何で、こいつはこんなに曲がってるんだい?」
「・・・・・・・・・・歯を飛び越えるために」
「何で、歯を磨くブラシが歯を飛び越えなくちゃいけねえんだ?

 おっと!俺は何のためにここに来たんだ。かみさんの風邪薬を買いに来たんじゃねえか。
 おっ、風邪薬はここか?何でえ、50種類くらいあるんじゃねえのか。
 おい、お兄ちゃん。何がいいんだい?」
「え〜と、症状は?」
「え?何だい、急に。
(照れたように)そうだな、昔、町内の餅の早食い競争で3位になって・・・・。賞状もらったって言ったらそのぐらいかな」
「いえ、その賞状じゃないんで。あ、熱は?」
「熱はあるよ」
「あ、じゃあちょっと待って下さい。
(振り返って、少し探して)はい、これをどうぞ。熱にはこれがよろしいです。何せ、クラシオペプチターゼ配合です」
「よっ!お兄ちゃん、かっこいいね。おいらと二言、三言言葉を交わしただけで、スッ!とこれをどうぞ、なんて。
 で、クラシオペプチターゼ配合って何だい?」
「ええ・・・・・・・・・・・・・・・あの、クラシオペプチターゼが入ってるんです」
「あのなあ、お兄ちゃん。おれだって『配合』ってことぐらい知ってるよ。誰がそこを解説してくれって言ったんだ。
 あ、そうだ。何だろ。このクラシオ何とかってのが風邪のばい菌と戦うんだろ?」
(救われたように、勢い込んで)そうです、そうなんです!」
「風邪と戦ってるとこ、見たことある?」
「・・・・・・・・・・・・・・あのお、私、この店に入ったばかりで、今、店長はお昼ご飯に行ってるんですが、もう少しで帰ってくると思いますんで」
「ああ、そうかい。なになに・・・・・いろいろ効能書きが書いてるなあ。熱、せき、鼻水、鼻づまり・・・・・・。あれ?鼻水と鼻づまりって、まったく逆なんじゃねえの?」
(涙ぐみながら)鼻水の人はねえ、止まるんです。で、鼻づまりの人は出るんですよぉ」
「ああ、そうか。じゃあ、店長が帰ってきたら一度聞いてみよう。

 おっ、しかし、何だな。今の薬屋ってのは何でも置いてるんだな。ドッグフードやキャットフードまで置いてるのかい。どれどれ・・・・・『おいしい猫缶』・・・。誰がおいしいって言ったんだよ?」
「・・・・・・・・・・・猫ではないと思います」
「当たりめえだろ。飼い主がいちいち自分で食っておいしいって言うわけねえしな。よし、これも店長に聞いてみよう。

 ん?ここはトイレットペーパーか。なになに・・・・・『便利な2枚重ね』?おい、お兄ちゃん。こいつは自分の手で2枚に重ねたのと何か違いはあるのかい?」
 すっかり壊れちゃった店員さん。戻ってきた店長に「一番ふびんなのはバスユアペットの立場です。いや、それよりも急がなくちゃいけないのは歯磨きの一本化なんですよ」などと問いかける。

 なかなか傑作な新作落語だった。


 

 



(4) 桂都丸 「時の氏神」


 都丸の最初のまくらは、いつもの小学校落語の話。
 次のまくらは、京都で飲んで、自分の家のJR摂津富田(せっつとんだ)へ帰る時、タバコを吸っている男にかちん!ときて注意した話。
 最初に注意して、後はこらえていたが、次の駅で降りる時に一つビシッ!と言ってやれと思った。降りる間際に注意したところ「やかましわい!俺は次の駅で降りるんじゃ!!」
 これを聞いた時の目が点になった都丸の表情が面白い。

 引っ込みがつかなくなって、お互い怒鳴り合いながら改札へ。
 ところが、たまたま改札を出た後の方向が左右に分かれ分かれだったので、立ち消えになってしまった。内心ホッとする都丸。

 2、3日して、また京都駅におったら、見慣れん人がこんなこと(と、軽く片手を挙げるさま)してるんですわ。
「あっ、ども!あ、ども」
「ええと、どちらさんでしたかな」
「いや、こないだ、これで」
(と、タバコを吸う手ぶり)
「あ、ああ〜あ!」
「いやあ、こないだはすんまへんでした。あん時、わたし、ちょっと酔うてまして。えらい乱暴な口ききまして」
「いや、こちらこそ、言葉が過ぎまして」

・・・・・・しゃべってみたら、えらい、ええやつでんねん。それから、ちょいちょい駅前で飲んでまんねん。

   本編は小佐田定雄氏による新作落語。
 「くま」の家を訪ね、親友の「たつ」と喧嘩したことを諌める「まったはん」の兄貴。

 何で喧嘩になったかと聞くと、たつが関東煮き(かんとうだき。おでんのこと)で大根が好きだと言ったのが原因だという。

「わいは、だいたい、大根の根性が嫌いでんねん」
「大根に根性みたいなもん、あるんか?」
「大根てなもん、ほとんど自分の味はありまへんねん。せやけど、すじやこんぶの出したええ味をちゅちゅちゅちゅ吸いやがって、さも、自分でええ味出しましたてな、顔しよって。
 いてまっしゃろ。人間でも、みいんな、自分の手柄や、自分だけが偉いんやてな顔しよる奴。わたいは、そんな大根の根性が気に入りまへんねん。

 そしたら、たつのがき、いちいち人の好みのことで理屈ゆうな。飲んでる酒がまずなるわい、てこんなことを言いよって。ええ?まったはん、どない思いなはる?」
「・・・・いや、どないも思わんけどな」
「わいは、おとなしいに、大根も、もうちょいすじやこんぶに感謝の気持ち持ってもええんちゃうか、てゆうただけやのに、たつが、どないもこないもゆうこときかんうえに、先に手を出しよったさかい、さすがのわたいも堪忍袋の緒が切れて、けんかになったちゅうわけでんねん。
 どうです。わいの方がすじ通ってまっしゃろ?わい、すじとこんぶの味方でんねん」


   まったの兄貴は、今度は「たつ」の家へ。
 ところが、たつは大怪我をして、家で寝ていた。

「わたい、ただ、関東煮きでは、大根が好きやゆうただけでんねん。そしたら、何ぃ?ゆうたかと思たら、言い返す間もおまへん」
「ええ?せやけど、くまはお前が先に手を出したゆうてたで」
「そら、手は出したかもしれまへんけど、その前にいやほど、くまはんの足が出てまんねん。あんまり蹴られたもんやさかい、わいが胸倉つかもうとしたら、下駄脱いで、わいの頭をが〜ん!と。わい、あ、頭割れたな、て思いました。
 そしたら、その次、拳固固めて、あばらの三本目あたりにがつ〜ん、と。あ、何本か折れたな、て思いました。
 あと、もう、むちゃくちゃに頭ぽかぽかと。わい、38発目までは勘定してましてんけど、あと、頭がぼぉ〜っとなって。
 そしたら、屋台の親父さんが、何やうちの関東煮きのことでもめてはるみたいですけど、何とか私に免じて納めてもらえまへんやろかゆうたら、くまはんも、屋台のおやっさんがそこまでゆうてくれてはるんやったらゆうて、納めてくれはったんですわ。
 くまはんも、あれでなかなかええとこあるねぇ」
(と言いつつ、泣きじゃくるたつ)

 再度、くまのところへ行くが、
「仲裁は時の氏神ゆうやろ」
「そんな氏神いらんねん!!」と兄貴にも暴力をふるう「くま」。

 町内のご隠居が仲裁に入り、またもめかけるが、
「いや、私があんたらの仲直りの段取りをする。一席設けるがな。いいや、私をみんなが仲直りするダシにしてくれたらええがな」
「いや、だしはこんぶで」というオチでした。


 

 



(5) 桂三枝 「日本一のコシヒカリ」

 森進一の「じゃがいもの会」に呼ばれたというまくら。

 さあ歌おうとした時、ゲストとして安倍晋三首相が来て、待たされ、再開の時、緊張のあまり声が裏返ってしまったそうだ。

 さて、コンサートが終わった後、安倍首相がゲストの山本譲二や菅原洋一、中村美律子さんに「素晴らしい歌声をありがとうございました」、「あなたは同郷です」、「妻が大ファンです」など、がっちり握手しながら言葉をかけていったそうだ。

 次は自分と緊張する三枝師匠。何を言われるかとドキドキしてると、「・・・・・・ごくろうさまでした」。

 さて、本編は大阪の都心近く、江坂で米作りをしている親子の話。まあ、悪いんだけど、あんまりおもしろくなかった。

  


 
 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが、録画はしてるんですが、きっちりメモはしてませんので、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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