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(No250) 京都・らくご博物館【春】〜新緑寄席〜 鑑賞記その3   
          

 平成23年4月22日(金)の落語会のメモ。

 



桂 米左 「豊竹屋」


 複雑な気持ちでございましてね。大きな名前と大きな名前にはさまれて。必然的に私の高座は休憩時間となりますからね。

 
 中入の間にトイレに行きそびれた方は、どうぞこの時間に。ご家庭に、何時頃に迎えに来てや、と連絡されたい方はどうぞ。
 ロビーに出るのが他の方に迷惑になるとお思いなら、何やったら、周りの方に断っていただいて、ここで携帯電話、かけてくれはっても。

 私、な〜んも思いませんから。

 ここまで残っていただいて。いや、それは次にお目当ての方がいるからですから、この時間に戻ってきていただいたことが嬉しい。

 私、次の方の用意ができたら、鉦がちん!と鳴ることになってますから。そしたら、噺が途中でも「ありがとうございました」ゆうて終りますので。

 出喝采(でがっさい)、私らのようなもんでも「待ってました!」て声がかかることがございます。

 私ら、それぞれ出囃子ゆうのがありますので、通の方は出囃子が鳴っただけで次、誰が出るか分かる。出囃子鳴っただけで「待ってました!」。一所懸命やらなあかんなぁ思いますねぇ。

 今日は、楽屋と高座が近いですが、中にはもう、ず〜っとね、100m近いようなとこもありますので、その途中で「待ってました!」。ああ、一所懸命やらなあかん思いますねぇ。

 お辞儀をしたとこで「待ってました!」。ああ、頑張らなあかん。噺を始めたとこで「待ってました!」。ああ、今日も一所懸命やらなあかんな、と。

 と、いわば物欲しげな表情で客席を眺め回すが、声がかからないので、
「今日は、一所懸命やらいでええ」

 次のマクラにもつながる内容なのだが、いかにもくどい。

 「待ってました!」を噺が終った段階で言われることがあり、楽屋で泣く・・・・というのもよく聴くギャグ。

 そういうお声がよぉかかる芸能ゆうのが歌舞伎。大向こうゆうのがありますのでね。「大向こう会」てのもあるそうです。もっとも正式な組織やのぉて、いわば愛好者のサークルです。

 「勘三郎」は「中村屋」というような屋号の紹介で、「市川左団次は、高島屋。阪神、阪急、ダイエー、ローソン・・・・」という「高島屋」が大阪なんばの百貨店と同じであることからのギャグは、「七段目」など歌舞伎が出てくる噺のマクラとしてはありふれたものだが、普通、「高島屋、松坂屋、三越・・・・」などと「〜屋」をはさむものだが、いきなり阪神とは。

 あの屋号というのは難しゅうございます。ぐわっ!・・・・・どう聞いても「成駒屋」でございますね。ぐわっ!・・・・成田屋にしか聞こえません。

 ところが大阪の方では、少し掛け声が違います。
「な・り・こ・ま・や・あ〜〜」・・・・・・・・・「な・ん・で・す・か・あ〜〜」

 もっちゃりしてます。

 片岡孝夫あらため仁左衛門の襲名披露では、なかなか一般の人ではチケットが取れなんだ。そこいくと、私ら、こうゆう商売してますだけに、それなりの伝手というものがございまして・・・・と3回くらい繰り返す。
 とにかく、繰り返しがくどい。

 何せ伝手がございますもんで、自慢するわけやないですが、一番高い席を取らせていただきました。・・・・・・値段ちゃいますよ。地べたから一番高い席。
 私の隣、今日初めて歌舞伎、観に来たゆう奥さんでして。

 襲名披露の口上幕ゆうのは、あっちでも「たや!」、こっちでも「っまや!」、「ぐわぁ〜!!」。

 どうも、隣の奥さん、参加することに意義があると思いはったんですなぁ。とゆうか、私もゆうてもええ・・・と思いはったようなんです。ただ、屋号ゆうのは難しい。

 ほんで・・・・・これやったら、失礼はないやろぉと思いはったようで・・・・。
「中村さぁ〜ん!市川さぁ〜ん!片岡さぁ〜ん!!」

「お薬、三日分・・・・」て言わなしゃあない。

 あと、声を掛ける芸能ゆうのが、文楽、浄瑠璃ですな。あちらの掛け声は「どうする!どうする!」。聴かせ所になると「たっぷり!」とかね。

 こないだ、国立文楽劇場で、えらいもんを観ました。字幕が出てるんですよ。日本人が、日本の芸能を、日本人に日本語で語ってるのに・・・・。
 まあ、日本語ゆうのは、伸ばすと母音しか残りませんからな。それに節がついておりますから。

 それに浄瑠璃ゆうのは大層です。見台ゆうのも、私らみたいなベニヤ板ちゃいます。漆塗りで、金蒔絵。服装も恰幅のええ男が肩衣てなもの着ましてな。一方、お三味線の方は、お婆さんが座布団にめりこむようにして。

 音曲の司(おんぎょくのつかさ)と言われる芸能ですから、笑うのも大層です。私らやったら「あははははは」で終わりですけどな。

 だぁ〜〜〜〜。あの、おなか痛いんとちゃいますから。笑い始めです。
 だぁ〜〜〜〜
(と、顔を上げ)。はぁ〜〜〜〜(と、下を向き)。だぁ〜〜〜〜、はぁ〜〜〜〜。だぁ〜!はぁ〜!だぁ〜!はぁ〜!だぁ〜!はぁ〜!だぁ!はぁ!だぁ!はぁ!だはははははは!!!

・・・・・・・・・アホやがな。

 皆さんも笑っておられますが、こんなん町で会(お)うたら怖いでっせぇ。高座やさかい、飛び掛ってこうへんゆう安心感で笑(わろ)てられる。

 芸の上達の近道は一つの芸をじっくり続けることで、反対に、いろんな芸を少しやっちゃあ別の芸に・・・と気移りするのを「芸をかじる」といって、師匠方からは嫌がられる・・・というオチにつながる話。

 「豊竹屋」という噺では、何でも即興で浄瑠璃の節に乗せて歌い上げる豊竹屋節右衛門が風呂で湯当たりし、帰って飯を食べているところに同じく口三味線の花梨胴八(かりんどうはち)が訪ねてくる。

 いろいろやり取りがあって、
♪腹をこわして 駆け込む先は♪
♪はぁ〜 セッチン!セッチン!セッチンセッチンセッチン♪

「汚い三味線やなぁ」・・・・って豊竹屋、あんたが言わせたんやがなと言いたい。

 ネズミが出てきて、「大きいか?小さいか?」にネズミ自ら「チュウ!チュウ!」。

「さすが豊竹屋さんとこのネズミや、よぉひきますなぁ」
「いえ、かじってるだけです」がオチ。

 場内はよく受けていたし、尻上がりに良くなってきた感はあったが、冒頭の自虐ネタはええ加減にやめてほしい。



笑福亭 枝鶴 「竹の水仙」

 派っ手な落語やなぁ。笑福亭ゆうだけで、凄いアウェー感、感じます。ほか、みんな米朝一門ですからね。
 よぉ、枝雀さんの弟子ですか?って言われるんですが、枝雀師匠も笑福亭ではございません。私は枝に鶴ですからね。枝に雀でよぉ似てますけど。

 8月に都丸師匠が塩鯛を襲名しはったんで、真似して、小つるから六代目枝鶴を襲名させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

・・・・・・今、拍手いただいた方の半分以上が「今、初めて聞いた」て顔してはりましたね。

 笑福亭では、大体最初に光鶴名乗ったもんが枝鶴を名乗り、そのもんが大概、松鶴になる。

 私は六代目枝鶴ですから、五代目がいてるんですね。五代目枝鶴が私の師匠です。この辺から、何代目とか話、難しなりますよ。アホは置いていきますからね。

 松鶴というと皆さん思い浮かべるのが亡くなって28年になる六代目ですね。
 私の師匠の五代目枝鶴ゆうのは、この松鶴の実の息子なんです。
 ゆうたら何やけど、松鶴ゆうたら、笑福亭では大きい名前なんですよ。
 うちの師匠は、枝鶴を名乗って、松鶴の息子。ゆうたら、あと数年がまんしたら、ほっといても松鶴が継げたんです。
 そやのに・・・・・・女に走ったんです。 

 

 すべてをその女のために反古にしてしもてんから、どんだけええおなごなんやろう・・・・・・って思いますやん?(手で顔をゆがめて)こんなんでっせ。
 色恋の道は分からんなあと思いました。

 今、どこで何してるか分からんのです。生きてるのは間違いないんですが。
・・・・・・・まあ、京都やし、アウェーやからゆうてしまいますわ。
 京都の三条の橋とかで、人にぶつかってサングラス落として、おい!どうしてくれんねん!て小遣い銭を稼ぐ。・・・・・まともに落語した方が、よぉけ稼げる思うんですけどねぇ。

 犯罪者なんですね。笑福亭一門には逮捕者が出てるんです。うちの師匠が恐喝でっしゃろ。小松ゆうのが覚せい剤で捕まって、福助ゆうのが詐欺未遂。米朝一門は、こんなもんは誰もいてへん。あっ、月亭可朝師匠がおったか。まあ、私ら、どっか狂気を含んでるもんですからね。

 この噺は、師匠がよぉしてはった噺で、もとは京山幸枝若師匠の講談で。

 
 噺にも流行があるのか、妙に「天災」、「豊竹屋」とか「竹の水仙」とかネタがかぶる時はかぶるなぁと思う。

 「買い手がつい”たら”?タラは魚屋に限るでぇ」とぼやきつつ、言われたとおり、竹の水仙を店先に出した宿屋の主人。

 そこに通りかかった肥後熊本藩55万5千石の細川越中守。大名行列の先触れは大槻玄蕃(おおつきげんば)。ヒゲ面の怖そうな侍だが、実は近眼の慌て者。

 よぉ大名行列といいますとTVの時代劇などでは「下にぃ〜下にぃ〜」と申しますが、実は「下にぃ〜」と言えるのは将軍家と御三家に限ったそうでして。そいたら、ほかの大名は何てゆうたかとゆうと「脇寄れ〜」とか、「脇ぃ〜」とゆうた。
・・・・・・ここらが、他の噺家と違うとこです。私の落語は聴いたらためになる。他の噺家の落語は聴いたらダメになる。

 私は、習(なろ)たんに忠実にやります。

「下にぃ〜 下にぃ!これ、町人、そこな二階の町人!足が出ておる。引っ込めよ!
 下にぃ〜 下にぃ!町人!足を引っ込めんか!足袋が出ておる!・・・・・・・ん?何じゃ、足袋屋の看板か」


 朝陽を浴びてぱちんとはじけ、ええ香りがただよう竹の水仙。お殿様が、玄蕃に求めよと命じる。「こんなんが欲しけりゃ、なんぼでもこしらえたんのに」とぼやきながら値を訊ねる。

 ぎょうさん作って安ぅ売れと主人は忠告するが、男のつけた値段は200両。斬られはせん、二、三発どつかれるくらいと言われた主人、言いにくいのを我慢して玄蕃に告げる。

 玄蕃はにこやかな顔をして、相分かった。さように離れていては話がしにくい。もそっと寄れと呼び寄せておいて「法外なことをぬかすな!」と殴って立ち去った。

 ぼやく主人に男は、侘びを入れて戻ってくると予言。「風呂の中で屁ぇ踏んでるような話やなぁ」と呆れる主人。

 一方、戻る玄蕃は「こんなもんが200両やと?こんなんが200両やったら、道の両側に水仙の問屋が並ぶわ」とぼやく。どうも玄蕃のぼやきが先ほどといい、くだけた大阪弁なんで違和感あり。

 殿に首尾を訊かれ、「宿屋の亭主が困んのん無理ないわ」と悩みつつ、言われた値段が高かったと指を二本出す。

「ん?2万両か?」と殿に言われ「ムチャクチャゆうなぁ」と絶句する玄蕃に殿は、
「千両、万両積んでも求めることができぬ名人の品。戻って求めてこれば良し。求められねば、家は断絶、その身は切腹・・・・」 

 予言通り、戻ってきた玄蕃に「八卦もみよるんか」と感心する主人。

「腐れ侍!さっきと事情が違うぞ。頭、痛かったんじゃ」と「慰謝料」上乗せで300両をふっかける。

「300両でも売れるゆうのは、こら、ええ品や。ええ品つくるゆうのは、あら、ええ客なんや。・・・・・知らんがな。ボロクソゆうてたでぇ。こら、わいの命も夏のボタ餅で、今日中もたんか分からんなぁ」 

 名前を訊いて左甚五郎と知り感心する。

「せやけど日に五升から酒を呑むて」
「それ言われると辛いな」
「先生やったら五升が一斗でも呑めまっせ」
「何で?」
「大工だけに、のみ口がしっかりしてる」

 

・・・・・・も一つしっくりしないサゲ。

 しかし、以前聴いた「竹の水仙」よりは良かった。

 でも、枝鶴は目の下のクマが気になる。酒の呑み過ぎで肝臓とか悪いんちゃうやろか?他人のこと言えんけど。

 



 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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