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(No239) 笑ろう亭あさひ寄席 鑑賞記 その2  
          

 平成23年2月19日(土)、旭区民センター小ホールにて・・・・の続き。

 



桂 春若 「おごろもち盗っ人」


 珍しくお茶が高座へ。 
 
 これまで二人がとちってるんです。こうゆうのは連鎖反応が起こるもんでして。

 最近は、まずジョークを二、三披露してネタに入ることにしてます。
 今日は実験として、今年活躍しそうな奴を選びたい。


「1年前に靴の修理で預けてたんですが、まだありますか?」
「ちょっと待ってください。調べてみます。・・・・・・・・・・・・・・・ああ、お預かりしてますよ。出来上がりは来週の水曜です」

・・・・・・・・・大丈夫ですね。

 小学生が「貧乏」という作文を書きました。

「『貧乏』。うちの家は貧乏です。うちのお父さんも、お母さんも貧乏です。うちの秘書も、執事も、運転手も、お手伝いさんもみんな貧乏です」

 

 今日の話は富くじ、つまり宝くじの噺なんですが。

(両手を握り合わせ、必死で振って祈っている男)「神様!一生に一度のお願いです。どうか宝くじの1等を当ててください!」
 でも当たらない。10年経って「神様!一生に一度のお願いです。どうか宝くじの1等を当ててください!」
 それでもやっぱり当たらない。また10年、そして、また10年。やっぱり当たらない。

 とうとう神様が手ぇ合わせて、こうゆうた。
お願いですから、くじを買うてください

 ・・・・・・・・・・・うけましたやろ?せやから3番目に言いましてん。最初の二つがすべってもええように。今年一年これでいこ。

 ジョークが終わり、本編へ。

 茶をすすって「昼間のうちに見当をつけた所にクギかなんかで(クギの先で地面に×を描くような格好)印をつける」と語る。

 奥さんの浪費で節季の金のやり繰りに苦労するあたりで、時代状況を入れたギャグを。

「こちらをここへ・・・・足りんか。惜しいな。もうちょっとやねんけどな。

 鳩山さんとこ、待ってもらお。金持ちやから、あっこは。まとまったもん、小遣いでもろてるとかゆうてた。ちょっと方便で・・・とかゆうたら大丈夫やろ。

 菅さんとこは・・・・・向こう厳しそうやな。来月まで持つかどうか。ここは払ろとこか」

 

 「いややわ。土間から手ぇ生えてる」というとぼけたかみさんに「そんな種、どこに売ってんねん」というツッコミは定番だが、「細引き持ってこい!」と命じた旦那に「そんなんええから、早いとこ寝ましょ」とおかみさんは相変わらずとぼけている。

 さらに旦那は「寝れる状況か?」とツッコむ。ごもっとも。

 次いで、唐突に「べらんめえ」調で「状況判断ができねぇ奴をバカというんだ」と言った。まるで談志みたい。あのくだりは何だったんだろう?

 「何でうちに泥棒が入るねん。どっちかゆうと、こっちが行きたいくらいやは面白い。

 捕まった盗っ人が脅しをかけるが、すぐへこたれちゃうやり取りが見せ場の一つ。

「われは黙ってぃ!つけこまれてるやないか。だいたい病気のおかん一人、よぉ養わん奴が何で子分35人おんねん」
ごもっともでおますぅ〜!!


「子分はおらんけど仲間はぎょうさんおまっせ。仲間があんたの家に油かけて火ぃつける」
「勝手にせえ。うちゃ借家じゃ」
「ああ、さよか。ほんまは仲間なんかいてまへん。一人ぼっち。さみしい人間でんねん。よかったら友だちになってもらえまへんやろか


「ええわい!堪忍して要らんわい!その代わり監獄からでたら必ずお礼参りに・・」
「そんな頃、ここになんかおるかい」
「えらいすんまへん!生意気なこと言いました。あんさん出世しはる。もっと大きな店に移りはる。できたら、そこで使てほしい。

 許して。・・・・許してぇ〜〜ちょうだい!!」 
「財津一郎か」

 

 哀願する盗っ人をほったらかしにして夫婦は寝てしまう。
 寄ってきた野良犬に小便をひっかけられる気の毒な盗っ人。

 悲劇は続く。
 3円の借金があるのに、明日までに5円用意せえと兄貴分に命じられた男が盗っ人にけつまづく。

 その男に小刀を取ってくれと頼むが、その男はがま口の中の5円を盗んで、立ち去ってしまう。盗っ人は、その男に「盗っ人〜〜!!」がサゲ。

 ちょっと「一杯呑ます。あらためて礼は」というやり取りや、最後の「盗っ人〜〜!!」という台詞がややもたついたが、なかなか良かった。

 


 

桂 春蝶 「紙入れ」


 春若の後で中入となり、まずは春蝶。いきなりトチリの話題から入る。

 最初の二人がとちってね。春若師匠も後半失敗したそうです。とゆうことは・・・・・これまで3人、誰も完成された噺をしてないということです。
 何ちゅう会や。こんなプレッシャーないですよ。おまけに、私が出る時、三味線の糸が切れたんですから。

 まあ、以前上岡龍太郎さんが、ほんまに面白いのはメチャメチャおもろい素人か、プロが間違うた時やと言わはりました。(会場から拍手)・・・・・・その拍手の意味は何ですか?

 私は、今政治の世界でも批判されてる二世でして。歌舞伎界では傷害事件まで起こしてます。

 確かに皆さんとは違った経験をしております。家庭がおかしかった。将来のネタにはなるんですが、当時は毎日が命がけでした。 

 鶴瓶師匠とうちの親父(先代の春蝶)とが麻雀をしてたんですが、鶴瓶師匠が二巡目くらいでリーチかけはったんです。
 その後、親父が牌が揃ってきて、国士無双ゆう役満のテンパイになった。あと、白が来たら当たりなんです。で、鶴瓶師匠はリーチやから自分の当たり牌でない限り何を引いても捨てなあかん。
 で、最後の白を鶴瓶師匠が引いてしもた。
 鶴瓶師匠が何したかゆうと、その白を呑み込んでしまいはったんです。でもノドにつかえますよね。 

 トイレに走っていって、のどの奥に手ぇ突っ込んで、ゲーゲーやって、やっと出てきた。白の牌がトイレに床に転がってコロン!コロン!コロン!て音を立てた。
 そしたら、隣のトイレの壁によじ登って、そこを見てた親父が、転がった白を指差して、「ロン!」


 上岡龍太郎さんとざこば師匠とうちの親父の3人が、女性をくどく台詞を考えてたそうです。
 大阪の女性をくどくためには簡潔で短いフレーズやないとあかん。というのは大阪は商売の街ですからね。
「大根あるかな?」言われて「ございます」。これは東京ですな。「ご・ざ・い・ま・す」て5文字も使こてたら、大阪やったら野菜が腐ってしまう。

「大根あるか?」(扇子で膝をぽん!と叩き)「おま!」・・・・・・・・・これです。

 まずはざこば師匠が、女の目をじっと見て、一言。「・・・・・ええか?」

 そしたら上岡さんが、ざこば師匠の台詞は長い、と。同じく、女の目をじ〜っと見て、ただ一言。「・・・・・・・・どや?」

 今度は親父が、上岡さんのも、まだ長い、てゆうたらしいです。親父は、やっぱり女の目をじ〜っと見て、一言。
・・・・・・・・・・・・「?」

 結局、3人の間では女くどくのは「な?」で決まったそうです。

 

 まあ、私も今年は当たり年でして。48になります。(会場で「ほぉ〜〜」と意外やなぁって感じの嘆声がわき)ウソに決まってるやないですか。そんなんじゃ、オレオレ詐欺にだまされますよ

 私は年上の女性に弱くて。今日なんか会場全員がタイプなんです。もうメロメロ。

 ちょっとウォーミングアップしましょか。

「お母さん。お父さんな、僕とひろちゃんの結婚の話、反対やって言いだしてん」
「ええ?何でやの。あんたとひろちゃんは半年も前から結婚の約束してるやないの」
「うん。聞いたら、『実はひろこは、別の女に産ませた子ぉなんや。せやから、お前とは腹違いの兄妹やから結婚させられへん』て」
「・・・・・・・・・そんなんかめへんから、あんた、ひろちゃんと結婚しい!」
「そんな無茶な・・・」
「ほんまゆうたら、あんたはお父さんの子ぉやないねん

 

 あるとこで赤ちゃんが生まれて1年目の誕生日、その子が、ただ一言。「おじいちゃん・・・」とゆうた。そしたら翌日、おじいさんが亡くなった。
 その後、その子が誕生日で、一言「おばあちゃん・・・・」とゆうと、翌日おばあさんが亡くなる。

 月日がたって、また誕生日に「おかあちゃん・・・・」とゆうたら、今度は翌日にお母さんが。

 もう、こうなったら、次「お父ちゃん・・・・」てゆうたらどないしようってお父さんは毎日戦々恐々としてますな。
 しかし、ある年の誕生日、ついにその子が「お父ちゃん・・・・」てゆうた。
 もうあかん!そう覚悟してたら、翌日、町内の八百屋のおっさんが死んだとゆう。

 これは結構よくあるネタのような気がする。

 私が以前ジョークの本で読んだのは、明日父親が死ぬという予言があった翌朝、玄関先で牛乳売りの男が倒れていたというものだった。

 「今日の『紙入れ』ゆう噺、聴いたら家でほてった身体冷ますのにシャワー浴びなあかんよ」と宣言。

 そのせいか、やたら色っぽく演じる。

 貸し本屋の手代の新吉は本をかついでお屋敷に出入りし、本を届けたり回収したり。この新吉、やたら男前で、ある奥様から「旦那は今晩仕事で家を空けるから泊まりに来て」という手紙をもらう。
 旦那に可愛がられているので申し訳ない・・・と踏み切れない新吉に「わかった。あんた、他に若いええ子ができたから愛想尽かしすんねんな」とすねてみたり、「旦那に全部ゆうで!」と脅したり、酒を呑ましたり。

 春蝶は、扇子を両手で水平に持ち、要の部分をつまんだまま、もう片方をぶらんと落としてみせ「心の掛け金が外れたとこ・・・・」

 紅をひいて真っ赤な長襦袢で・・・・・というとこで、突然旦那が予定を変更して帰ってきた。

「ええ?旦さん?どないしましょ!」
「どないしましょって、二人して『やあ、お帰り』ゆう訳にもいきまへんやろ?床柱、よじ登って何してますねん?そぉ〜っと裏から出なはれ」

 こうゆう時は女性の方が落ち着いているもんで、新吉は慌てて脱け出したんですが・・・・

「しもた!いつもの癖で紙入れ、枕元に置いたまま忘れてきてしもた。あれ、旦さんに買うてもろたもんや。おまけに、中にはおかみさんからもろた手紙が入ったぁる。

 どないしょ?逃げよか。・・・・・エジプト逃げよ。あっこは、今、間男どころやない
(注 現在、政情不安定)

 ・・・・・・・待てよ。これで逃げたら、ただ、ただ逃げただけや。
 いっぺん謝りに行って『新吉!お前!』言われてから逃げても逃げれる。まずはいっぺん謝ってから逃げよう。これが僕の誠意です

 あの・・・・皆さん。これ、私の体験談ちゃいますからね。こんな話があるのは小米朝・・・・米團治さんですから。あの人は米朝師匠の金で遊び倒して、祇園では米團治さんそっくりの子どもがぞろぞろ歩いてるて話です。

 

「何で、こんなことになったんやろ?前、本を届けに行った時、急に雨が降ってきた。遣らずの雨ゆうやつや。そしたら、雷が鳴り出して・・・・。おかみさん、怖いから蚊帳吊ってって言わはった。よぉ考えたらおかしな話やけど、そん時、おかみさんのえり足にほつれ毛が二、三本・・・・・。う!寝られへ〜ん!」


 翌朝、ろくに寝てへんからフラフラになってお店へ。どうか旦那がおらんで、おかみさんだけが店に出てはるように・・・と祈るような気持ちで店先をのぞくと・・・

「どなたさんですか、そこでのぞいたはるのは?用事があんのなら、どうぞお入り。なけりゃ・・・・何や、新吉やないか。いつもやったら勝手に入ってくるやないか。自分の家みたいに・・・」
「応えるなぁ」
「ところで新吉!お前、俺の顔見たら、何か謝らなあかんことがあんのと違うんか!」
「あ、あの・・・」
「前々から言わなあかんと思てたんや」
「す、すんまへん!」
「どないなっとんねん!・・・・・・・続きの本は?」
「え?」
「お前、何か悩みでもあるんちゃうか?顔色が悪いで」
「いえ、別に」
「『いえ、別に。 何事かある証拠なり』ゆうてな。店の金でも持ち出したんか?・・・・・お前、そんなことする奴ちゃうしな。バクチはせんし、酒も・・・・・
(と、指を折っていき、小指を示して)これか?どこのおなごやねん?中に入ったろか?」
「もう入ったはります」
「ええ?いっぺん、うち連れてこい」
「連れてこんでも、うちに・・・」
「何をゆうてんねん、さっきから。で、何かい。玄人か?違う?素人?せやったら、お前も独り身。別に・・・・・はは〜ん。主ある花ちゅうやっちゃな。あかんで、それは。『人の女房と 枯木の枝は 登りつめたら命がけ』ゆうさかいな。

 何?その、人の女房から「今日、旦那が留守やから泊まりに来い」ゆう手紙をもろた?ええ?そんなこと、ほんまにあんねんなぁ。
 え?いよいよ、その女房が緋縮緬の長襦袢になったとこで、亭主が帰ってきた?間の悪いやっちゃなぁ
 で、お前、そこへ紙入れを忘れてきた?どん臭いやっちゃなぁ。で、その紙入れは見つかったんかい?」
「・・・・・・見つかりましたか?

 「お前に訊いてるんやないか」と旦那。

 奥から出てきたおかみさんに旦那は、新吉がこんなアホなことゆうとると報告。

 おかみさんはにこやかに微笑みながら、口の横に手を立て、旦那には表情を見せないようにして「あほ!」と新吉をどやしつける。

 おかみさんは
「ゆうたら、亭主の留守に間男引っ張りこもか?ゆうぐらいの女房やから、そこらへんにぬかりはない思いますで。
 そんなもん、いくら表、どんどん叩いてたって、すぐに出て行くようなおなごやない。さっさと周り見渡して、枕元の紙入れはさっと拾って懐になおし
(しまいこみ)、その男が今度来た時にそっと渡そう・・・・・・・そう思ってる、思いまっせ。なあ、旦さん」 

「お前、なかなか鋭いなぁ。
(新吉の方へ向き直り)お互い、そんなアホにだけはならんとこな」がサゲ。

 高座が終ったら、何か会場がざわざわしていた。「色っぽかったなぁ」「ちょっと色気出しすぎちゃうか?」とか言い合ってたのかもしれない。

 

 

 

 


 

 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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