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(No214) 新春吉例 米朝一門会 鑑賞記 その2 
          

 平成23年1月2日(日)、サンケイホールブリーゼにおける米朝一門会の鑑賞メモ。

 



桂 米團治 「片棒」


 国宝は「もうじき・・・」ってゆうてはりますが、55からずっとこの調子ですからね。でも、あの年で虫歯一本もありません。・・・・・全部、入れ歯です。
 元旦から酒、呑んでねえ。今日は去(い)なんでって。ここが家やっちゅうねん。

 これは中川家の縮図の噺なんですが。

「うちゃ3人のせがれがいてるが、長男のあきら。わしにもしものことがあったら、どうする?」
「実は、もう会場押さえてましてね。家にも近い尼崎の総合文化センター、アルカイックホール。

 幸いなことにあのホール稼働率が悪ぅございますので、予約が取りやすい。
 米朝の写真展は予行演習みたいなもんで。

 香典はどうします?」

「これ(お金を示す指の格好)にせな、あかん。普通にちょうだいします」
「そうでんな。ほな、ここからスタートで全国巡業に出よう。
 春は道頓堀の松竹座。あこは回り舞台もあるし、OSKも頼める。

 夏は祇園まちの南座。猿之助さんがこさえた宙乗りで、3階からお棺がおりてくる。私、祇園祭りの菊水鉾に心やすいから、鉾で練り歩きます。
 お父さんに似せた人形、ぜんまい仕掛けでね。
(ガクガクした人形振り)チキチキチキチキ。電線に引っかかったとこ。

 フィナーレは大恩あるサンケイホールブリーゼ。米朝締めでね。おめでとうございます!」

「三男のわたるは?」
「情けない。長男は、思いつきしかしゃべられない。自然の姿に帰すことが大事なのです」
「お前は考古学者やからな。で、どないすんねん?」
「埋める。それだけでございます。自然に回帰することが大事です。祀りは必要ありません。後は苗でも植えておきましょう」

「次男のとおるは?」
「土葬は禁止されてるんですよ。

 私は陸上部の長距離の選手やから、陸上葬をいたします。
 漬物屋で桶の古いやつをもろてきます。そしたらお金がかかりません」
「そら、少し小さいのんと違うか?」
「ほな、ちょっと手足をぼきぼきっと」
「そない手荒なことしたら痛いがな」
「お父さん。お父さんはもはや痛みを感じません」
「漬けもん桶ではニオイが・・・」
「お父さんは臭気も感じません。

 あっ!駕籠やったら二人担ぎ手が要ります。お兄さんらは手伝どうてくれんやろし。こら、一人は担ぎ手を雇わな」
「雇うくらいやったら、わしが降りて担ぐがな」

 

 

 「片棒」を現実の米朝一家に置き換えたところは面白かったが、三人の描き分けは不十分。

 一般的な「片棒」だと、扇町公園で政治家も交えた俗っぽいバージョン、芸事中心の派手派手バージョン、そして簡素一本やりの節約バージョンの三人構成だが、今回は二人目、三人目が通常版の3人目を「簡素」と「節約」に分けてしまっている形なので、ちょっと中身が薄い感じがした。

 それと、痛みや臭気を感じません・・・・と申し渡すところは雀松の味に及ばない。

 


桂 ざこば 「らくだ」


 正月早々、米團治君がめでたい噺をしました。私も死ぶとの噺を。

「らくだぁ!お前、どぶさってると思たら、ごねとんかい。あ、そこら河豚のアラだらけや。
 そう言や、あいつ河豚さげて、一緒にどないや、ゆうとったな。季節外れの河豚、危ないぞてゆうてたけど。断ってよかった。

 夜伽の真似事でもしたりたいけど。誰ぞおらんかいな?」
「屑〜ぃ。あっ!ここ、らくだはんとこや。うっかり声出してしもた。あ?らくだはんは?どこぞ行きはりました?」
「どっか行ったちゃあ、行ったんやけどな」
「ええ?さよか!皆でゆうてましたんや。らくだはんは、ぶち殺しても死ぬような人やないて。案じるこたぁないもんでんなぁ」
「おら、脳天の熊五郎ゆうんや。何ぞ買うてくれ。畳はどうや」
「畳?そら、”たた”でんねん。身がおまへん」
「ほんまや。スカスカやなぁ。障子は?」
「それ、たこ障子ゆいまんねん。骨がない」
「月番おるやろ。つなぎの祝儀、不祝儀。行てこい!」

(月番に)
「え?つなぎ?まえ、奥に祝い事ありましてん。子ども生まれて。らくだはんとこ、割り前もらいに行ったら、ちょっと立て替えてといてくれって。祝儀出したらおため(お返し)ありますやろ?おため持って行ったら、気ぃよぉ受取りはったんです。

 しやけど、立替分もらいに行った二回目、”わずかな金で何じゃい!”て、えらい怒りはって。月番、血だらけ。

 しやから払わなあかん筋合いはないけど、まあ、赤飯炊いた思て、払ときますわ」

「あ、月番、後でつなぎ持っていくゆうてました。ほな、かごとはかり・・・」
「もう一軒だけ。大家に酒の上等を三升と、煮物、砂糖はりこんで丼で三杯ゆうてきてくれ」
「いや、ここの大家、因業で有名でっせ。そんなことゆうたかて・・」
「行てこい、ちゅうねん!!」


「え?らくだが河豚に当たって死んだ?立派な河豚やなぁ。酒?煮物?」
「持って行った方がええと思いまっせぇ。でないと、わたい、もういっぺん、こっちにこなあかん」
「何?死ぶとのカンカン踊り?見してもらいたい」

 そう言ったものの、実際にらくだを背たらわされた(=背負わされた)屑屋に乗り込まれて降参した大家。
 桶の提供を強いられた漬物屋も同じ目にあう。

 よくやってくれた。酒で身体を清めていけと勧める熊五郎。

 早く商売に出かけたい屑屋は、先に商売に出かけてから・・・・と言ったが聞いてもらえず、息も切らずに一杯目を飲み干す。
「ええ呑みっぷりやな」と言われた二杯目も飲み干す屑屋。
 熊五郎は「こないええ酒、味おうて呑まんかい」と怒り出す。

「おっしゃる通り。こら、ええ酒ですわ。大家、張りこみよった。

 腹ん中で酒が踊ってる。

 ああた、最初は怖い人やなぁって思てたけど、優しい人ちゃうかな。金があってもせんのに、兄貴分か知らんけど、ないのにしたるやなんて。あんた、偉いわ。

(酒が垂れたのか、肘のあたりまで、ねぶる) 
 わいは前は島之内で道具屋してましたんや。こないなったんも、皆、酒のせい・・・・。

 もう一杯入れてもらえまへんか」
「・・・・先、仕事行ってきたらどないや?」
「待ってられへんゆうたん、ちゃうんか!
 酒で商売の信用、失のうて。ええとこのかか、もろたんだ。読み書き、そろばん達者やのに、苦労や貧乏に慣れてへん。・・・・・私が殺したようなもんですわ!過労ゆうんですかなぁ。おい!ぼ〜っとしてたらあかんで!
(と、酒を要求)
「とにかく、仕事行ってこいや。子ども三人とかかが口あけて待ってんねやろ?」
「おい!俺ぁ出商売やぞ!多少の貯えはあるわい。子どもやかか、泣かすような男や思うな!お前と同じように思うな!
 今のかかは長屋の嫁はんやからな。米のうても平気や。かかは貧乏人に限るねぇ。

 お前も遠慮せんと呑めよ!どうせ、お前ら、こいつくらいしか友だちいてへんのやろ?寂しいの分かる。兄弟分なろ!」
「え?兄弟分になってくれるのんか?」
「何、水臭いことゆうてんねん。すまんなぁ、兄貴!こないゆうたらええのや。

・・・・・・ん?何してんねん?」
「いや、そろそろ湯灌したろ思て、かみそりないかな、と」
「そんなもんあったら、わいが買うてるわ。あ、長屋奥の左、女ばっかの所帯やから、かみそり無いはずがない。行って借りてこい。貸すの貸さんのゆうたら、カンカン踊りで・・・」
「せやけど、わい、その家、知らん」
「気のあかんガキやなぁ!まあ、ええわ。それ、油、かけぇ。燃やしてまえ!おぉ!あたれ!あたれ!

 もう焼きに行こ!ほりこめ!こわごわすな!足ぃ!こう!ぼきっ!と折って!
(花札を桶にほうりこみ)かす坊主!枕経代わりや。

 そうれん
(葬礼)じゃ!そうれんじゃ!らくだのそうれんじゃ!けっ!誰も出てきやがらへん。手ぇくらい合わせたらどないやねん」

 千日前の焼き場に持っていく途中で、日本橋の橋詰めでこけまして、らくだが外に転がり出た。

「おい!いっぺんに軽なったな。あ?らくだ、いてへん。他のもんに拾われたらややこしい」

 戻ったら、道に願人坊主、乞食坊主が酒に酔うて寝とったんにけつまづいた。これを桶にほうりこんで、焼き場へ。

「おい!陰亡!焼いてくれ」
「堪忍してくれ。もう仕事はしまいや」
「そない言うな。ほな、焼き賃、ここに置いとくぞ」
「ええ?しゃあないな。ほな、骨は明日取りに来てくれよ」
「そんなんいらん!どっか、ほっとけ」
「・・・・・・まあ、ええか。最後の仕事や。まだ火ぃ残ってるし」

 と、桶を火の中に。

「あつい、あつい」
「熱いのんは当たり前や。往生際の悪い死ぶとやなぁ」
「熱いゆうてんのや!いったい、ここはどこや?」
「千日前の火屋
(焼き場)や!」
「冷やでもええわ。もう一杯呑ませぇ」

 

 
 
きちんと最後のサゲまで聴いたのは珍しい。
 

 

 


 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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