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(No211) 立川談志 MD 鑑賞記 その1 
          

 ずっと昔に撮ったMD。

 



立川 談志 「芝浜」(1)


 あたしゃ酒好きで・・・・強いわけじゃない・・・・ただ呑みたい。毎日呑んでる。朝から職人や商人はそうだったんだろうねぇ。

 

「起きとくれよ。いい加減にしとくれよ。たまんないよぉ。あんた、だめんなっちゃうよ。勝っつぁん待ってるよって人もいるんだよ。
 釜の蓋が開かないよ」 

「釜の蓋が開かねぇなら、鍋の蓋でも開けとけよ。水瓶の蓋でも・・・」
「ふざけてんじゃないよ。後生、お願いだから」
「るせぇなあ。行きたくなりゃあ、行くんだよ」
「いつ?いつ行きたくなるの?」
「明日、行きゃあいいんだろ」
「明日行ってくれるのかい」
「おお!じゃあ、今べぇ
(今晩)呑みてぇだけ呑ませろ。そしたら、明日、行ってやらぁ」
「いつも、それだ。その手は食わないよ」
「へっ、できんのか?できねぇだろ!そうすりゃ行くんだよ。悔しけりゃ持ってきてみろ!」
「持ってくりゃいいんだろ!何とかするよ!」

 亭主が十日も二十日も稼ぎに出てないんだから、うちに銭があるわきゃねぇんだけど、どうやりくり算段したんだか、言われただけのものを並べて、亭主は太平楽を並べて呑むだけ呑んで寝てしまいました。 

「起きとくれ!ちょっと!」
「んんん。じゃけんな起こし方しやがって」
「商い行っとくれよ」
「何だよ、その商いって」
「夕べ、今日呑ませたら明日商売に出るって言ったじゃないか。呑んだよ、ずいぶん」
「・・・・・・そんなこと言ったか?めんどくせぇなぁ。
 これだけ休んでんだし、どうだ、休みついでに、もう五、六日・・・」
「釜の蓋が開かないよ!」
「うるせぇなぁ」
「言わなきゃ行かないだろ!約束したろ!行っとくれよ、男だろ!」
「もう二十日も休んでるから、得意さんもよぉ、他によぉ・・・」
「何かい。取られたお得意、取り返す自信ないのかい!」
「な、何!おめ、腕でひけなんざ!いや、違うんだ。飯台もよぉ、乾いてタガぁ、はじけちまってる」
「昨日、今日魚屋の女房してんじゃないよ。ひとったらしも漏るもんかね」
「包丁は?錆びてんだろ」
「大丈夫だよ」
「わらじは?」
「出てます」
「たばこは?飯台の上?・・・・・銭は?どんぶりん中か。しょうがねぇなあ」
「ぽんぽん言わないでおくれよ。わらじ、新しいから気持ちいいだろ?」
「よかねぇよ!ば〜か。わらじ新しくて気持ちいいなら、荒物屋の親父はのべつ笑ってるよ。
 気持ちいいってのは、好きな肴三つ、四つ並べてぐぅ〜〜っとニ、三杯。どうだ、気持ちよくなっちゃおか?

 あ〜〜寒い!おぉ〜〜しょお!!あ〜あ〜あ〜あ(やたらうなったり、あくびをしたり)

 寝てて一番気持ちのいい頃だぜ。おきてみて分かる。

 あ、むく犬だ。あ、しゃい!しゃい!忘れやがった。

 河岸だ。河岸、好きだな。魚屋、好きなんだ。この魚、味噌あんで、とかな。銭はどうでもいいって押し付けるように置いてきてさぁ。次の日、どうでした?って訊いてさぁ、勝っつぁん、美味かったよ!なんて言われると、勝った!と思うよな。
 魚、生ぐせえから嫌いだなんぞぬかしゃあがる奴がいるが、いい魚食ったことがねえから、そんなこと言うんだ。安いもん食ってるからそんなこと言うんだ。
 せめて磯くせえくらいのこと言ってもらいてぇなあ。

 暗れぇなぁ。おてんとさま、今日休みか。ん?問屋一軒も開いてねぇ。
 切り通しの鐘だ。か〜〜んって金が入ってるから音がいい。・・・・あっ!かかあ、時を一つ違えて起こしやがった。どうしてくれよぉ、もう、めちゃくちゃに、蹴倒して、ひっぱたいて、顔がひん曲がるほど・・・・帰ってもまた帰ってこなきゃなんねえし。
(浜に降りて)いい匂いだなぁ。はははははは。・・・・・・波ってのは、いつ来てもあるね。たまにねえ時があるかなって思うけどね。でけえのも。あら、波(並)じゃなく、上だな。
 沖の方でおっきなしゃくでひっかき回してる奴がいるのかね?

 あ、せえふ
(財布)だ。 

 重てえね。銭が入ってるなんて本寸法だが・・・・・・・おっ!
(と中を見て驚く)

(かなり間を空けて、どん!どん!どんと戸を叩く)おい!開けろ!」

「開く、開く、開くよ。どうしたの?」
「誰か追いかけてこねえか?」
「どうしたの?誰も追いかけてこないよ。喧嘩?」
「おめえ、時を違えたろ!」
「ごめんなさい。悪気があったんじゃないの。気づいたんだけど、追いかけてもしょうがないから、帰ったら詫びようと思って」

「犬が、たばこ、ひっぱり出して、銭・・・」(混乱している。財布を出す)
「見るの?見ていいのかい?え?こりゃ銭じゃないよ、金だ、二分金だよ!
 いくらだ?知らないよ。たくさん。かまわないの?数える?
 ひ〜ふ〜みぃ〜よぉ〜」
「いくら?」
「わかんないよぉ〜、数えてるだけなんだから」
(勝公が数え)「おっかぁ、42両あるよ!」
「どうすんの?」
「俺のもんじゃねえか。拾ったんだから」
「落とした人のもんでしょ。落とした人がいるから拾ったんだろ」
「道で拾ったんじゃねえぞ。あ、そうだ、海の神様の贈り物ってのはどうだ。果報は寝て待てって。呑めるぞ」
「呑むの?」
「呑むよ!お前も好きなもの買え。とら公もきん公も呼んでこい!」
「みんなは商いに行かなきゃ」
「そうか。じゃあ酒屋行ってこい!四斗樽か何か・・・」
「まだ夜が明けたばかりだよ。昨日の呑み残りでよければ」
「え?よし、よし、よし。うめえ〜な、おっかぁ。ゆうべは、明日から商ねぇってのがちらついて。
 どうでぇ、遊んで呑める酒はうめえなぁ。何?ハゼ?佃煮?はははははは。42両。はははははは。え?まだある?弱くなったのかな?
 お、これでいいよ。おつもり、おつもり。う〜ん。お迎えに、夕べの酒がぐ〜〜っと出てきやがる。

 ん、ん〜。寝るからな。昼頃になったら起こせよ。湯ぅ行くから。みんな、呼んでよぉ・・・・」

(すごいいびき)


 続きます。

 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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