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(No178) 第1回上方落語まつりinミナミ 三枝一門・吉朝一門競演会 鑑賞記 その4
2010年4月29日(木・祝)、動楽亭で開催された落語会メモの続き。
桂 吉弥 「蛇含草」
先日は、NGKという吉本の劇場に初めて出まして。
口上で、私が司会をさせていただいたんですが。
米朝師匠が途中から崩れていったという伝説の口上で。 翌日のスポーツ紙の一面に出るやろうから、それを家宝にしようと思ってたんですが、写真は出てたけど、全部、私の横で切れてるんです。
わしもおったのに・・・・・・・。
私も上方落語ボーイズに入ってまして。違和感あるでしょ?銀瓶が一番年上かな?ボーイズゆうけど半分が40超えてる。
少年隊みたいなもんや。どこが少年やねん。
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吉弥が言っているのは、4月28日(水)のなんばグランド花月における「開幕!上方落語まつり in ミナミ」で、桂米朝、桂春團治、桂福團治、笑福亭仁鶴、桂ざこば、林家染丸。
上方落語まつりのキャンペーン部隊が「上方落語ボーイズ」で、桂文三(41)、月亭八光(32)、笑福亭銀瓶(42)、桂春蝶(35)、桂こごろう(42)、桂吉弥(39)の6人。
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(大阪)府庁にも行かせてもらいました。
橋下知事って、思ってたより背の低い、丸顔の人でした。
私らより忙しいみたいで「15分だけ」て言われて。
行く前に「きん枝師匠のことはナイショな」と打ち合わせていたのに、いきなり大きな声で「あの話は、きんし!(禁止ときん枝)」って大きな声でゆうから何にもならへん。
「ワッハ(上方)、残してくださいよ!」とか、好きなことゆうた。
銀瓶は空気を読まんから、いきなり「橋下知事と掛けまして・・・・・・・・・・・将棋と解きます。
その心は・・・・・・・・・『ふ』(将棋の「歩」と大阪「府」)を、『と』(と金と大阪「都」)に変えます」・・・・・・・・・。
(客席の白けた反応に)その日も、大体こんな反応でしたわ。
で、私が「橋下知事と掛けまして、将棋と解きます。
その心は・・・・・『ふ』を『と』に変えて、金を生みます」
(今度は拍手)これが桂と笑福亭の違いですな。まあ、銀瓶は「銀」どまりです。
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きん枝云々は、選挙に出馬と言われているからであろう。上方落語まつりのパンフにも、30日のきん枝の出演は都合により、八方に変更というチラシがはさまれていた。
ワッハ上方とは、橋下知事がつぶすと言っている、NGKの前にある「笑い」に関する文化施設。
橋下知事は最近、大阪市と大阪府を解体して、大阪都にすると言っている。
そうするとパイが大きくなって財政問題が解決するとも言っているらしい。
でも、エリアとしては今の大阪府より広げるとは特に言ってないようだが、それで何でパイが大きくなるのだろう?
財政的にパイを大きくしようと思えば、他府県の金持ちの自治体と合併するか、税収の自治体への還元率を上げるしかないのではないだろうか?
でも、吉弥が謎掛けで言ったみたいに、世間では一般に、橋下知事の主張通り、大阪都にさえすれば金が生み出されると思い込んでいるのだろうか? |
夏のお噂でして・・・・。
「暑いでんなぁ。焦げるようでんなぁ」
「焦げるとはどないや」
「あんたとこは涼しおまんなぁ。
風が通る。
それに掃除が行き届いてる。夏は掃除、でんなぁ。
玄関の戸ぉも、手ぇかけるか、かけんかで、カラカラカラ・・・と開く。これが気持ちよろしい。
庭にはチリひとつない。
夏座布団が出たぁって、植木は手入れされてて、庭には打ち水、池には金魚が泳いでる。
そこ行くと、うちら、路ぉ地入ると、風がぴたっ!と止まるさかい、何やムゥ〜っとしたぁる。
ごみ箱には、スイカの皮がほりこんだぁって、ハエがたかってる。
玄関の戸ぉときたら、ガタピシ、ガタピシ、汗の小一升もかかんと開けられへん。
そこら中、紙くずだらけ。玄関先にはゲタが脱ぎ散らかしたぁる。
タライん中には、オムツが突っ込んだぁる。
床はホコリだらけで、歩くと足の裏にご飯粒がひっつく。
西日はガンガン射すわ、ガキは吠えるわ・・・・・。
おっ、かけじ(床の間の掛け軸)が変わりましたな。墨絵・・・・・かぁ。いえ、わたいら、絵ぇのことは皆目分かりまへんけど、やっぱり夏は、ゴテゴテ色がついてる絵ぇよりも、墨絵がよろしいなぁ。
・・・・・・誉めたら、誉め損ないや。何でんねん、あの、かけじのとこにぶら下がってる汚い草は?ほってまいなはれ!」
「ああ、えらいもんが目に入ったな。
あら、蛇含草(じゃがんそう)ゆうてな。
蛇も山の主、うわばみなんぞと言われるようになると、もう一種の化け物になるんやな。
普段はネズミやウサギを餌にしとるんやが、たまに、道に迷うた狩人、山がつてなもんを食らうことがあるそうな。
いくらうわばみでも、人ひとり呑んだら腹が張ってどもならん。そんな時は谷に下りて、この蛇含草を食べると、たちまち、腹の中の人間が溶けて、うわばみが助かる。
何でも魔除けになるとゆうので、こうして飾っておるのじゃ」
「へぇ〜〜?腹ん中の人間が溶ける草?うち、何の愛想もない家やさかい、話の種に、ちょっともろていってよろしぃか?
勝手に取って、すんまへん。・・・・甚平ゆうと、これやからあかんなぁ。フトコロがない、タモトがない。
この頃、物忘れが確かやさかい。(甚平の紐にくくり付け)これで忘れて帰る気遣いがない、と。
あ、何してはりますねん、火鉢に炭、ついだりして。わたい、茶ぁやったら、もう結構でっせ」
「いや、こないだ、親戚で祝い事があって、餅をようけもろてな。
暑い盛りやさかいカビ生やしたらどもならんから、焼いて食べよかいな、思て」
「ええ?わたい、餅、大好きでんねん。そんなん見てたら、腹の虫が食いたい、食いたい言いますわ。聞こえまへんか?(赤ん坊のような口調で)食べタチテ!」
「そない餅が好きなんかいな。え?おまはん、こないだ、酒もだいぶん飲ってたんと違うんかいな?
得な性分やなぁ。雨風(あめかぜ)ゆうやっちゃな」
「何でんねん、その雨風て?」
「おまはんみたいに、酒も甘いもんもどっちもいける人間のことを雨風て、ゆうねんがな」
「ほたら、どっちが雨で、どっちが風や?」
「どっちが、ゆうこともないが、まあ、昔から『酒は米の水』・・・てなことをゆうから、酒を雨とせんなん(しなければならない)やろなぁ」
「ほたら、餅が風でんな?
あっ!もうふくれてきた。夏の餅は、ふくれんのん早いなぁ。
ちょっと火箸借りまっせ。ちょい!(と、突いて、中の空気が漏れる「シュ〜〜〜〜」という音を出し)ほんに風や。
あの、もし!いけまっせ。
入れ替えなはれ。いや、中は火ぃが強いさかい、外と中とを入れ替えなはれ、てゆうてまんねがな。
あ〜あ〜 餅てなもん、きつね色やから旨いんでっせ。焦がしたら苦ぉて食われへん。
あっ!、せやから、もういけるゆうてんのに。あっ、あっ!
・・・・・・・・片意地やなぁ。焦げる、ゆうてんのに。あっ!あっ!ああぁ〜〜!
(ついに我慢できず、餅を手に取り、口へ。あまりの熱さに、一度出してしまうが、再び、口へ)・・・・・焼けてまっさ」
「そら、何すんねや?」
「あれ?あんた、怒ってなはんの?」
「そやかて、主たるわしが、一つおあがりとも何とも言わんうちから勝手に食うやなんて、あんまり、主人を見下げたやり方・・・」
「(声を張り上げ)あんたとわたいは!」
「何や、大きな声だして。昔からの友達や」
「そうだっしゃろ?そのわたいが、こんだけ餅が好きや、ゆうてまんねんで。
こっちが何にもゆわんでも、おてしょう(手塩皿)に砂糖醤油でも入れて、餅を二つ、三つ入れて、さあ、どうぞゆうのが当たり前でんがな!
あんたが、付き合いを知らんねや。そんなもんには(また、次の餅を手に取り、熱さに苦労しながら)ワフワフワフ・・・・あっちゃ・・・・と、こう、食うてみせな、しゃあない!」
「あんまり行儀が悪いさかいゆうてんのや。
こんな餅みたいなもん、おまはんが餅箱ぐち(箱ごと)食うたかて、かめへん」
「え?餅箱ぐち食べてよろしぃのん?」
「念、押したな?」
「わたい、こう見えても、京都の方の大食会で8年間、会長やってまんねん。
何でんねん、これしきの餅。餅箱ぐち焼いて食うたるわ!
ははは、人も怒らしてみんならん(みなければならない)もんやなぁ。
え?砂糖?醤油?いりまへん。そんなもんがないと食えんゆう素人やない。何せ会長だっさかいな。
せや、あんたも、ただただ焼いてるだけやったら退屈な。
曲食いゆうのを見せますわ。まずは『ほり受け』。これは、ほんの小手調べ。(餅を上にほうり投げ、手を広げて口で受け止める)
ハホハホハホ・・・・・こら、誰でもできる。どんなアホでもできる。あんたでも・・・・・・。
次はお染久松比翼投げ。二ついっぺんにほうります。(こっちとこっちで投げて、こっちとこっちで受けて・・・とシミュレーション)
はい!はい!ワフワフ・・・どない・・・ワフワフ・・・なもん・・」
「しゃべるか、食べるか、どっちかにしなはれ」
「次は、淀の川瀬は水車(みずぐるま)。
こっちから投げて、体の回りをぐるぅ〜っと回して、こっちで受ける。(また、さかんにシミュレーションして)
はい!
次はいよいよ西日本で三人しかでけん。箕面の滝食い。
餅を一つ、でぼちんのとこで打たす。千遍に一遍の兼ね合い。
・・・・・ほれ!あっ!天井にくっついた!」
やれ焼け!それ食え!意地になって、食いよった、食いよった。
「どないしたんや?網の上に三つだけ残ってるで。さっさと食うてしまえ!」
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やむなく、一つ手に取り、二つに割って、少しずつ指でちぎって、口に押し込む。
なんとか口に入れ、どすん!どすん!と尻餅をつく格好で下へ揺すりこんでいく。大食女性の魔女菅原の必殺技『熊落とし』のようだ。
しかし、どうしても、あと二つは入らない。 |
「あか〜ん。餅、そっち、やって〜。餅が鬼に見える。謝るぅ〜。もう、去(い)んで寝る〜。
ちょっと、鏡、貸してぇ〜」
「いまさら、やつさんでも(お洒落しなくても)」
「うつむいて、下駄、よぉ探さん。うつむいたら、耳や鼻から餅が出る〜」
「頭の中にまで詰め込んだんかいな。
せやけど、去(い)んでも寝たりしたらあかんで。そんなことしたら、患いつくで。
人力(車)か何か乗って、道の悪いとこ走って、ゆすぶってもらい!」
(ほうほうのていで、帰路につく男。途中で「グルジィ〜〜!」とうめく)
「今、戻った。ちょっと手ぇ引いて」
「何、甘えてなはんねん?」
「甘えて、ゆうてんのんと違う・・・・」
「あら?どないしたん、えらい脂汗。
ほれ、あんた!ここ、つかまりなはれ!ここ持ち!持ち!」
「・・・・餅、餅言わんといて・・・・。寒気してきた。
すまんけど、奥に布団敷いて。
ほんで、襖、ぴしゃ〜っと閉めて、誰も通さんといて。
(寝床で苦しみながら)
悔しいなぁ・・・。餅、残してきた。網の上に二つ・・・・天井に一つ。
何か腹がぺこ〜っとなる工夫はないかなぁ?そしたら、『餅の残りを食いに来たぁ!』ゆうて、びっくりさしたんのに・・・。
(ふと、手が蛇含草に触れ)あっ、せや。腹の減ったうわばみが、これ食うたら助かる、ゆうてた。
(と、布団の上に座り込んで、草をかじる)・・・・・・もみない(まずい)もんやなぁ・・・・・(くちゃくちゃ噛みながら)・・・・牛やがな」
(と、餅を食べさせた男が訪ねてきて)
「帰ってるか?
いぃえな、あんまり行儀の悪いことゆうもんやさかい、こっちも意地になってしもて。餅を食い過ぎたんや。
いや、こっちも途中で止めたら、何や餅が惜しゅうて止めたように思われてはどもならんので。
何?奥で寝てる?あんだけ、寝たりしたら、患いつくゆうたのに!
邪魔するで。(と、家に上がって、奥まで進んで)
ええ?この暑いのに閉め切って・・・・・これ!徳さん!」
そうゆうて、戸ぉをがらっ!と開けますとゆうと、中で、餅が甚平着て、フェッ!フェッ!フェ〜〜」
蛇含草は、胃の中の食べ物を溶かす消化薬ではなくて、ピンポイントで「人間」を溶かす薬やったということで、この噺のオチは、言葉で「餅が甚平着て、座っておりました」と言うタイプと、枝雀師匠のように、座ってる格好で示すタイプとがある。
枝雀師匠は、上を向いている格好で、一声「プ〜〜」とだけ言うこともあった。
まあ、それぐらいならいいのだが、今日の吉弥のように、腹を抱えてる人間のような格好をして、何か食べ過ぎで苦しんでるうめき声のような声まで表現してしまっては、ええ?「餅」が、消化できんで苦しんでるのん?餅人間なん?と違和感を覚えてしまう。
どうも、お退屈さまでした。毎度のことですが、録音はしてません。殴り書きメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。
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