移動メニューにジャンプ

(No179) 第1回上方落語まつりinミナミ 三枝一門・吉朝一門競演会 鑑賞記 その5          

 2010年4月29日(木・祝)、動楽亭で開催された落語会メモの続き(完結)。




桂 三風 「3年1組同窓会」


 いろんなとこで落語をさせてもらいましたが、先日、「ご葬儀無料相談会」のアトラクションでやらせてもらいまして。
 高座は、本来、ご遺体が安置される場所にございまして。
 赤い毛氈を敷いてもろたらええんですが、白いキレで。

「見台ありませんか?」て訊いたら、「焼香台やったら、ございます」って。

 座布団は、当然金ピカでね。

 司会の方も、サービス業ですから笑顔はあるんですが・・・・・・・程よく暗い。

(葬儀社の方独特の抑揚で)「本日の落語が、皆様のより良き思い出となりますようお祈り申し上げます。
 それでは、桂三風さんの・・・・・ご入場!

 学校でも、よく落語をやらせてもらいますが、小学生は結構笑ってくれるんです。
 ところが、中高生ともなると、落語ごときで笑ってたまるか・・・てな感じでして。 
 
(左写真は、桂三風公式サイトより)


 東大阪の方で、ある高校に行かせてもろた時のことですが、ツッパリの男の子が後ろの方で、体育館の鉄の扉をガン!ガン!と足で蹴っている。

 女の子は短いスカートやのに、あぐらかいて座ってる。
 先生が「そんなんしたら、芸人にパンツが見えるでしょ!」と怒ってるんですが、女の子は、
「へん!パンツぐらい何や!」ゆうて、舞台に向って、スカートをぶわぁ〜っとめくる。

・・・・・・・サービスのええ学校やなぁと思いました。

 別の学校では、ツッパリの男の子が、「入りたない〜!!」ゆうて体育館から出ていこうとするのを、生活指導の先生が無理やり引きずりこもうとしている。

「見たない〜!!」
「何でや!」
「おもんないもん!!」
「そんなもん、見てみなわからんやろ!!」

・・・・・・・・そんなハードルの上げ方って、ある?普通に「おもろいから、見ろ」でええやん

 滋賀県の方の工業高校に行った時のことですが、リーゼントのお兄ちゃんとかが迎えに来てくれてる。

(いわゆる”ヤンキー”の兄ちゃんの格好で、ズボンのポケットに手を突っ込み、足を左右に広げて震わせ、頭も傾け、しゃくり上げるようにメンチを切る)
「オゥ!オゥ!お、お、お前ら!よぅ!よぅ!吉本け!」

 私、最初しゃべられへんのか、と思いました。

 こうゆう時「はい。どうぞよろしくお願いします」とゆうたら負けなんです。
 とゆうて「君たち、その態度は何だ!」なんてゆうても、あかん。

 下から行っても、上から行ってもあかんので、同じ目線でいかな、あかんのです。

「おぅ!おぅ!お前ら、吉本から来たんけ!」
「おう!せ、せやで!」
「おもろいんけ?」
「おぅ!おもろいで!」

・・・・・・・・・アホの会話や。

 つっぱった子ぉゆうのは、今、どうしてるんでしょう?
 私のクラスでも、弁当も入らんようなぺっちゃんこのかばん持って、そない廊下を掃除せんでも・・・と思うくらい長いスカートをはいていた子ぉが、今やPTAの会長やってて、「いっぺん、うちの学校で落語やって」て、ゆうてきました。

 それでは、皆さんと一緒に、同窓会をやりたいと思います。
 私の落語は、客席参加型ですからね。

 卒業してから20年後・・・ということでやらしてもらいます。
 そんな経ってへん!て方も、何年も経ってる方もおられるでしょうが、よろしくお願いします。

 それでは、乾杯!
(と、いきなり乾杯の格好をするが、もちろん客席は誰もしない)
・・・・・・・・・全然ダメ。


 ビールやウィスキーの水割りは、いっぱいに入ってますから、あまり勢い良く上げるとこぼれますので、おとなしめに。そして、口の方から迎えに行ってください。

 オレンジジュースやウーロン茶の方は、そんなにいっぱいではないので、勢い良く乾杯してもらって大丈夫です。

 あんまりおらんと思いますが、牛乳で乾杯される方は、手を腰に当ててください。

 それでは、やりますよ。

「乾杯!」(客席の我々もコップを上げる真似)
「今日は島先生、来るんか?」
「体悪くして、来はらへんから無礼講や」

「西村。お前、幹事みたいなもんやねんから、乾杯せえや」
「そ、そうか?乾杯〜!」
(客席も、また乾杯をしなければならないのか要領が分からないので、誰も唱和しなかった)

「俺、信用ないんかなぁ・・・・?」
「おい!西村が自信なくしてるやないか!
(と、客席を叱り、乾杯の仕切り直し)
 さっ!何もないけど、食べて!食べて!」

「そやけど、せっかくやから、クラス全員、来てほしかったなぁ」
「え?全員以上、来てる思うで。子どもや親も来てるし」

「あっ!あれ、三谷やん、ちゃうか?」
「何や、宮田。何、びびってんねん?」
「せやかて、三谷やん、1年だぶってて、どんだけいじめられたか」
「何ゆうてんねん。久しぶりやないか。

 おう!三谷やん!スーツ姿が決まってるなぁ。やっぱり、組関係にお勤め?」
「あほ!今は大阪市役所に勤めてるんや」
「へえ・・・・。ほな、そのスーツは、市民の税金で?」

「お〜し、ほな、乾杯しょうか?乾杯〜!(やはり、反応が悪く)

 お前ら、ノリ悪いやないかい!
(もう一度、仕切り直して)

 乾杯〜!・・・・・・・やれば、できるやないか。ほな、拍手〜!!」

「久しぶりやなぁ、三谷やん。

 どや、三谷やん。何か、学生時代のことで後悔してることはないか?」

「せやなぁ。卒業写真の時、一番前の真ん中でヤンキー座りして写ったやろ?
 ほんなら、見開きのページのちょうど真ん中の折れ目の所に写ってしもて、それが後悔・・・・」
「何や、しょうもないこと後悔してんねんなぁ。

 でやろ、せっかく20年ぶりに集まったんやさかい、20年前の隠し事を順番に懺悔していくゆうのは?
 その代わり、正直に告白したら、みんな、許してやる・・・・ゆうのは?」
「さすが、幹事やな。西村、ええことゆうやないか。

 ほな、最初、誰がゆう?おっ、宮田か?」

「修学旅行の時、女風呂をのぞいた事件があったやろ。あれ・・・・・・犯人、俺やねん」
「・・・・・・・・いや、みんな、犯人はお前や思てるで。

 何でて、せやろ?犯人が名乗り出んから、クラスの男子全員が廊下に正座させられて、みんな『誰や!犯人は!』、『一人ずつ、自分が犯人か、どうか、ゆうていこうやないか!』て、ゆうてんのに、お前だけ『もう、ええやないか!無理に犯人、捜さんでもええやないか!』て、犯人かぼてたやないか」
「せやけど、正直にゆうたから、許してもらえるんやろ?」

「許されへんわ!」
「おお!タカコ!何や?」
「何でて、宮田!あんた、うちの裸、見たんやろ!」
「ええ?見てへん。知らんで、お前の乳首の上にサソリの刺青があるやなんて
「ちょっと、腕出し!ヤキ入れたる!」
「タカコ、何、甦ってんねん!

 おい!次は?こんなんは、次々ゆう方が盛り上がるんやで。
 でや、三谷やん?」

「何や、悪いことゆうたら、俺や思て。

 俺はいつも正々堂々としてたんやぞ。35回の補導歴がそれを物語る。

・・・・・あっ、せや。卒業式の前の日、体育館の窓ガラスが全部割れてた事件があったやろ?」

「ああ!あんまり大掛かりやから、学校に警察が来るやら、大騒ぎになったなぁ」
「あの犯人は、実は俺や」
「そうか。ほな告白したから、許すわ」

「ええ?そんな重大事件、許してええのん?」
「もう時効やないかい」
「そやけど、時効は撤廃された・・・」
「あら、凶悪犯や。
 俺も、最後くらい親孝行しとぉてな」

「そんな事件、起こして、何が親孝行・・・」
うちはガラス屋や

「・・・・・・ん?次は瀬崎か?」
「うん。俺、体育祭の日ぃ1時間遅刻したけど、電車が遅れてんてゆうたやろ?
 せやけど、あれ、ほんまは寝過ごしてん」

「・・・・・・・三谷やんの大事件の後に、何や、その地味な告白は?
 そんなん聞いて、どないすんねん。
 おっ、タツオ。お前、確か、年上の女と付き合うてたなぁ。お前が初めてラブホテル行った時の話とか、いっつも盛り上がったよなぁ」
「おお。あれな。みんなウソやねん。兄貴が買うてた週刊誌のエロ小説、そのままゆうててん」

「ええ?ウソぉ〜?そしたら、何やってん、俺らのあのドキドキは?
「俺、ウソて知ってたで」
「え?宮田、お前、何でウソて知ってたんや?」

「いや、瀬崎が、今日、その年上の女とデートやゆうたから、どんな女なんやろう思て、こそっ〜とつけていってん。で、駅前の喫茶店入ったから、こっそりのぞいてたんやけど、瀬崎、誰とも会わんと、一人でプリンアラモード食べて帰りよった」

「・・・・・・・お前、いっつものぞいてんねんなぁ。

 おっ、次は西村か?」

「・・・・・・・・2学期の卒業旅行の前、会計係の高沢の机の中から、みんなの積立、12万円がなくなった事件があったやろ?あれ・・・・・・・・犯人、俺やねん。
 許してくれるか?・・・・・・あかんか?せやろなぁ。でも、訳だけでも聞いてくれ。
(三味線が入る)
 うち、親父がおらんかったやろ?で、お袋も病気になって・・・・。とうとう、11月分の授業料も払えんようになった。どないしょう、思てたら、会計の高沢の机の中に、みんなの積立があって・・・・・。

 それからしばらくして、とうとう、お袋が死んでしもた。みんな、手伝いに来てくれたなぁ。俺、つろぉて、つろぉて。

 これ・・・・・・あん時の12万円や。俺が20年ぶりの同窓会しようゆうて、幹事役かって出たんも、これ返すきっかけが欲しかってん・・・・・。

 悪かった!ごめん!どうか、許してくれ・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・西村。実は、みんな知ってたんや。
 せやから、あん時、誰も服装検査しようや!とか言わんかったやろ?
 あれから、みんな小遣い出し合うて12万円作り直した。

 実は、みんな出し合うたんやけど、どうしても3000円足りんで、そしたら、三谷やんが中学生から3000円恐喝してくれた・・・」
「そうか。三谷やん、ええ人やな!」
「ええ人ちゃうで」

「・・・・・・せやけど、何で、みんな、俺て知ってたん?」
「それ、宮田がのぞいててん」




 


 三風公式サイトには「客席参加型落語」は桂三風の登録商標です。
 三風があみ出し、三風によってのみ語られるのです。」
とある。

 正式な登録商標も取っているようだ。

・・・・・・・・・・・時代も変わってきたなぁと思う。

 そのうち、両手で同時に頭を前後からはたくのは、オール巨人師匠の専売特許とか、羽織の両袖をつかみ、両肩を同時にしゅっ!と脱ぎ落とすのは春團治師匠だけが・・・・・・とかになるんやろか?

 



 

 どうも、お退屈さまでした。毎度のことですが、録音はしてません。殴り書きメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

inserted by FC2 system