移動メニューにジャンプ

(No163) 笑福亭鶴瓶 JAPAN TOUR WHITE 鑑賞記 その3         

 2009年11月5日(木)の鶴瓶の落語会のメモの続き(完結)。




柳家花緑 「目黒のさんま」

 中入りをはさみ、8時50分からの登場。

 一席目と違い、袴姿での登場だった。冒頭にそのことに触れた。



 
 着物を2枚持ってるとこを見ていただこうと思いまして・・・・。

 季節の演目ということで、「目黒のさんま」という噺を聴いていただこうと思います。

・・・・・・・・・・微妙な拍手、ありがとうございます。

 殿様の出てくる噺はいくつかあるんですが、たいてい庶民目線とゆうか、敵のようにあつかってるものが多いんですが、これは珍しく、殿様側の目線に立ってるとゆうか。

 分析すると、殿様といっても、若旦那とか坊ちゃんてことで。

 何かいとおしい。セレブとゆうか、上には上の苦労があるもんでして。

「退屈だなぁ〜。ああ、退屈。

 畳の目、数えるのも飽きちゃったし、女中の噂話も尽きたしなぁ。床の間の掛け軸にいたずら書きすんのも終っちゃったし・・・・。

 金弥!金弥!紅葉でも観に行かんか?」

 お付の金弥が、武士なんだから紅葉狩りなんかより馬の遠乗りを・・・・というようなことを言うのだが、ちょっと噛んで(言い間違えて)しまった。

 すかさず、殿様がたしなめるていで、

いささか噛んだのぉ。もう一度ゆうてみぃ

 今度はちゃんと言えて会場から拍手が来たが「拍手をもらうほどでは・・・・・」と照れる。

「どこまで遠乗りをする?」
「恵比寿・・・・・」

「それではタイトルが変わってしまうだろぉ。もっと、こっち!」
「渋谷・・・・・・」
「こら!反対だ」
「では目黒まで参りましょう」

 お殿様、暴れん坊将軍みたいに馬を駆けさせましてね。お家来衆は、徒歩
(かち)でございます。

 小高い丘のふもとまで参りますと、お殿様、馬を乗り捨てまして、「者ども!あの丘のてっぺんまで駆け比べじゃ!参れよ!」

 ここで本当に比べちゃダメ・・・・・・・なんですが、どの業界にも恐れを知らない新人てのがいる。

「お、おい!その方!余に遠慮はいらぬぞ!全力で走ってよいのじゃぞ!」
「はは!わかっております!」
「バカ!さがれぇ〜〜!さがらないと、その方の今後の今後の人生が後退するぞ!

 ふふ、それでよいのじゃ。
(丘のてっぺんに着き)いっちゃ〜く!!(一着)っと。

 さ〜て!腹が減ったぞ!弁当じゃ!」

 と、殿様、ただならぬ雰囲気に気が付きました。急な遠乗りでしたので、弁当が用意されておりません。もちろん、その時代のことですから近くにマクドナルドもタリーズもございません。

 ところが、トップが「弁当がないではないか!」と叱ると責任問題が生じます。
 誰かが
(扇子で切腹の真似をして)こうゆうことになる。・・・・・・・・マジックでお腹に線、引いてるんじゃありませんよ
 昔から「じいや」や「ばあや」や・・・・・・・「あやや」にそう教え込まれているので、「ああ、そうか」と言葉をのむ。そして体育の姿勢で我慢して座っておりました。

「殿、ご休憩でしたら、脇息でございます」
「なぜ、こんなものは持ってきて、べ・・・・・・・・ん?異なる匂いがするのぉ?」

 おりしも、近くである老夫婦が昼餉のおかずにさんまを七輪で焼いておりました。

「はは、あれはさんまと申すゲス魚。殿の召し上がるような魚にはございません」

「あれもダメ、これもダメ・・・・・・・ダメぇ〜〜!目通り許す!」

 金弥が夫婦の所にやって来まして、

「許せよ。殿が所望じゃ。さんまを分けてくれぬか?
 それと、飯は炊けておるか?」
「申しわけございません。年寄夫婦、二人だけでございますんで、あまり量は・・・・」
「あるだけでよいのじゃ」
「ほんの一升ほどしか・・・」
「どんな夫婦じゃ!さあ、これは礼じゃ」
「あ、これは小判!釣りがございませんが・・・・」
「それはよい。・・・・・・いや、剥こうとしても剥けんぞ。チョコレートじゃないんだから


 お殿様は、これまで鯛を食べるにしても、検査に通ったものしか食べることができませんでした。
 MRIとCTスキャンにパスして「OK!」といわれたものしか食べられない。

鯛です。俺・・・・・天然ものなんスけど・・・・・・。

 おかしぃっしょよぉ〜?引っくり返されたり、何か光線みたいなの通されたり・・・・・・すっげぇウゼ〜んスけど

・・・・・・・・・・ってな、冷め切った鯛しか食べたことがなかったとこに、七輪で焼き立てのさんまが運ばれてきました。

「何じゃ?これは。ジュージュー、プチプチ プチプチとゆうておるぞ!爆弾か?これは」

 旬のさんま、空腹という調味料・・・・・・・(さっ!と両手を広げ)まして野外!

 もう、めんどくさいてんで、手づかみで次々に召し上がった。すっかり満足して、残りは皆に下げつかわすぞ、とおっしゃって、お屋敷に戻られました。

 お屋敷に戻るといつもの生活。

「おい、金弥!今晩の食事は、さん・・・・」

「殿!先日のことは手前どもの落ち度。どうかご内聞に・・・・」と言われ、また、前のように

鯛っスマジで天然もののプライド、ずたずたっスよ。・・・・・・・・超ブルーだよ」ってな魚しか食べられない。思い出すのは、この前食べたさんま。

「いとしきさんまさんへ。ゾウさんも好きです。でもさんまさんは、もっと好きです」・・・・なんて手紙まで出す始末。

「金弥!また遠乗りに出ようよ」
「では、五反田へでも・・・・・」
「どこ、それ?
 大阪の人、山手線に詳しくないんだよ!殺すよ!」

 

 ある日、殿様が献立で「さんま」を注文した。

 台所方のほうじゃ、普段さんまなんて料理したことがない。

「さんまのご注文であるぞ」
サンバの間違いではないか?」

 というギャグのところで、会場の小さな子どもが大笑いし、かん高い声が会場中に響いた。

 すかさず「子供も笑う勢い」と、このハプニングを取り入れて、笑いを取る。

 さんまをば、開きまして、脂がお腹に障っちゃいけないてんで、蒸しにかけまして、小骨がお殿様ののどに引っ掛かっては・・・・ということで毛抜きで一本、一本すき取る。
 グズグズになったやつを仕方ないから、お団子にして、つみれの吸い物として出した。

「何これ?これ、さんま?

 さんまって長いんじゃないの?どうして丸いお碗に入ってるの?

 中でこんなん
(身体をよじらせ、丸くなっているさまを示す)なってるの?

(碗の蓋を取ろうとして)音がないのぉ〜。ジュージュープチプチというやつが。

(蓋を開け、匂いを嗅ぎ)匂いはちょっとするけど・・・・・(と、口にするが、やはりがっかりした表情で)

 手紙まで書いたのに・・・・・・・・・。

 これ!誰か?

 おう、ちと尋ねるが、このさんまはどこで求めてまいった?」

「はい、日本橋の魚河岸にて」
「う〜む、それでいかん。さんまは・・・・・・・・・目黒に限る」

 



笑福亭鶴瓶 「宮戸川」

 
 トリは、「宮戸川」。

 マクラなしでいきなり噺へ。二人がどんどん、どんどん、どんどん、どんどんと戸を叩く。

 こうして、お花、半七という若い男女がそれぞれ家を締め出されてしまった。

 半七は自分の親戚のところへ泊めてもらいに行こうとするが、近所に知り合いのないお花がついて行こうとする。

 半七がまこうとするが、お花の足が速く「速いなぁ」とびっくりするシーンがおもしろかった。

 あとは、親戚のおじさんが、すぐ早呑み込みするんで「呑み込みの○○」といわれてるところの描写が、いかにも「早呑み込みのおっさん」ぽくてよかった。

 二階席から観ているので、両手を大きく広げ、頭があまり下がらないお辞儀の仕方が、何かカエルみたいだなと感じた。

 また、噺の途中で顔がぶん!と触れた拍子でめがねが飛び、横山やすしの物真似で「めがね、めがね・・・・」と探したとこも覚えている。

 ただ・・・・・・・肝心の噺の中身に対しては、それほど強い印象は残らなかった。別の日でやってたらしい「らくだ」などでは、もっと「噺」にインパクトというか、強い力を感じるのだろうか? 

 

 

 非常にきつい言い方かもしれないが、花緑については「笠碁」と「目黒のさんま」が聴けてよかった。

 しかし、鶴瓶の「落語」については(マクラについては、何も言うことはないのだが)特に良い点は見出せなかった。おそらく、他の日はもっと良かったのだろう。

 

 

 

 


 

 

 


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

inserted by FC2 system