移動メニューにジャンプ

(No162) 笑福亭鶴瓶 JAPAN TOUR WHITE 鑑賞記 その2         

 2009年11月5日(木)の鶴瓶の落語会のメモの続き。




柳家花緑 「笠碁」

 
 冒頭の「皆さん、大阪の方は、東京の人間のことを気取ってるとおっしゃいますが・・・・・その通りなんです。

 大阪の方のコミュニケーション能力って凄いですからね。全国の人が全部大阪人になればいいのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、皆さん、賛同が得られないようですね」ってとこは、笑った。

 さすがに、こんなミエミエのヨイショされてもなぁ。

 祖父の小さんが大阪で襲名興業をした時のエピソードについては、前と同じだったんで省略する。

 最近、学校で落語をやらせてもらったりするんですが、なかなか難しいですね。

 だいたい、落語というものを知りませんからね。

 たまに知ってても、落語というのは7人で1チームを組むと思ってる。黄色がバカで、紫が腹黒いと。

 蛇足だが、「笑点」を指しており、「黄色」のバカが木久扇で、紫の腹黒が樂太郎。

 ツッパリの学生にしたら学校は敵ですし、学校行事で来ている私なんか敵に雇われているみたいなものですからね。

 先生も、「おい、お前ら!今日は学校行事としての落語会なんだからな!みんな、真剣に聞け!決して笑ったりしないように!!」なんて、要らない注意をすることもある。

 先日も大阪の学校に行かせてもらいまして。名前は言わない方がいいと思いますが・・・・・こんだ中学というとこです。

 案内してくれた人が、控室に・・・・ということで校長室に連れて行ってくれたのですが、その人がにこにこして、少しも出ていかない。困ったなと思ってたら、その人が校長先生だったんです。そりゃ出ていかない。

 

 一生懸命落語をやってたんです。「おい、もうカエルの時間だよ」「ゲコッ(下校)」とか「私は編み物を5分でできるのよ!」「しゅげぇ!(凄ぇ!手芸)」とか。

 だけど、クスリとも笑わない。日本語通じてるのかな?と思うくらい

「ああ、駄目だ。しくじった」と思ってると、校長先生が来て、

「花緑先生、ありがとうございました!大成功ですね!」って言う。

 慰められてんのか、からかわれてるのかと思ってると、

うちの学校の生徒が、黙って人の話を1時間も聞けたのは初めてです

 

 今日は、小さんが得意にしていた「笠碁」という噺を演らせてもらいます。

 昔から噺家というと「呑む、打つ、買う」の三拍子てなことが言われましたね。現代の私らでは、「コーヒーを飲む。ゴルフを打つ。ネコを飼う」・・・・・・。
(会場の白けた雰囲気に)ここまでウケなかったのは初めてだ。どうか聞かなかったことにしてください。 

 快楽亭ブラック(前の立川平成)は、「聖水を呑む。ムチを打つ。大人のおもちゃを買う」と言っていた。


 家にあった『小さん落語集』に「笠碁」も収録されていたので、メモは詳しくは載せない。

 要は、呉服屋の隠居の家に、醤油屋の隠居が来て、毎日碁をさしている。
 ある日、呉服屋が「今日は”待った”なしで一番指そう」と言ったのだが、途中で「一手だけ待ってくれ」と呉服屋の方が言い出す。
 しかも過去のことまで持ち出し恩を売って「待ってくれてもいいじゃないか」と言うものだから、醤油屋も「それを聞くまでは待ってやろうかと思わないでもなかったが、それを聞いちゃあ意地でも待てない」と返す。

 逆ギレした呉服屋は、ここは私のうちで、この碁盤も石も私のもんだぁと言って盤面をこわしてしまう。
「やってられない!わたしゃ帰る!」「ああ、けぇれ、けぇれ。二度と来るな!」と喧嘩別れしたものの、三、四日もするとお互い退屈で仕方ない。

 雨の日、特に所在無くて、醤油屋は、散歩を口実に呉服屋の店先を通ろう、そうすりゃ「帰りに寄りなよ」ぐらい言うだろうと、出かけようとするがあいにく傘が出払っている。仕方ないんで、たまたまあった「笠」をかぶって出かける。

 呉服屋の方も、ああ言った以上、小僧を迎えにやることも出来ないが、何とか醤油屋が来ないかなぁと心待ちにしていたところ、その姿を見かけ有頂天になる。
 しかし、醤油屋は素直に立ち寄ることが出来ず、店の方をチラ見しながら通り過ぎてしまった。

 呉服屋も何とか呼び込もうとパチリ!パチリ!と派手に石を打つ音を立てる。

「早く来ねぇか、このヘボ!」「何か言ったか?ザル!」「何ぃ?ザルか、ヘボか、ここに盤が出てる。一番来るか?」と勝負になだれこみ、「いやいや、私が悪かった」と仲直り・・・・・・・・という噺。(←「要は・・・」と言った割りに長かった)


 小さんのは、やはり経験のかもし出す味わいがあったのだろうが、少なくても、私が持ってる本の「笠碁」よりも、今日の花緑の「笠碁」の方が演出的には優れていたと思う。

 うちの本の小さん「笠碁」では、一昨年の暮れ、金を貸してやった。七草(翌1月7日)に返す約束だったが、正月の年賀にも顔を見せず、7日の夜遅くに来て「七草に、という約束だったが、十五日まで待ってくれ」と言われた時、俺は嫌な顔一つせず「友達なんだから15日でも30日でも」と待ってやったじゃないかと言う。

 これはイヤミだ。だいたい自分で言い出した約束を自分で破ろうとし、あげく逆ギレして碁を強制終了してしまう呉服屋がむちゃくちゃなのに、こんな「金」がらみのことを持ち出すようじゃ・・・・・・・。

 一方、花緑「笠碁」では、若い頃、今のおかみさんと初めて芝居を観に行くことになったが、醤油の臭いのしみついた着物では・・・・・と着物を新調しに来たあなたに、無理して間に合わせてやったじゃないか。それから恋の相談にも乗ってやった。
 あなたが先を急ぐからあせっちゃいけない、待つことも大事だよ・・・・・・と言ってやった。いわば、お前さんが所帯を持てたのも「待った」おかげじゃないかという設定の方がまだましだろう。

 ただ、オチは小さん「笠碁」もなかなか良い。

 盤に水が垂れてるな。雨漏りしてる訳はないんだが・・・・。あ、何だ、お前、まだ笠を取ってないじゃないか、というもの。
 笠を取ってないことに気付かないほどお互い夢中だったのかということを間接的にうまく表しているなと思う。

 ここは、花緑の「今日は『待った沢山で』「いや、やっぱり『待ったなし』でいきましょう」「え?」「待つのは、もうこりごり」よりはいいと思う。

 


 


 


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

inserted by FC2 system