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(No155) 上方演芸ホール TV鑑賞記 その2        

 2009年3月16日(月)?(きっちりしたメモなし)に放映された鑑賞メモ。



笑福亭三喬  「子盗人」

 ビデオの内蔵時計が狂い気味で、タイマー録画時によく前後が切れる。

 今回も最初が少し切れており、マクラなどは抜きで、いきなり泥棒夫婦の会話から始まっていた。
「五円、五円てうるさいな。節季の払いくらい、ちょっと待ってもろたらええがな」
「そんな節季の払いを待たすなんて、人の道に外れる」
「・・・・・お前なぁ。うちは三代続いての泥棒やぞ。元々人の道に外れてるやないか。
まあ、ええ。ほな商売に出るわ。支度せえ」
「支度って何?」
「お前、何年泥棒の女房やってんねん?泥棒の商売道具ゆうたら、唐草模様の風呂敷に決まってるやないか」
「あんた、いっぺん言おう思てたんやけど、そんなもんうちから持っていかぃでも、向こぅさんのん使
(つこ)たらええん違うん?」
「お前なぁ。わいら泥棒は風呂敷の中身を盗むのが商売や。それを、風呂敷まで盗むやなんて、そんな、人の道に外れる」


「うちで大風呂敷広げてんと、そとで大風呂敷広げなはれ」と女房に言われ、うまいこと言いよるなと感心しながら、表に出る。

 きれいなお月さんが出ており「今日も、ええ仕事がでけますよぉに」と手を合わせる。なかなか信心深い泥棒。

 商家の裏木戸でひそひそ声が聞こえる。
 夜遊びに出かける者が、丁稚の常吉に、「帰りはいつになるか分からんので、この裏木戸は開けておけ。土産はみたらし団子でええな?」と申しつけているのだ。

「ええ?夜通し裏木戸開けてたら、用心が悪いでぇ。こら、こっちに風向きが回ってきたなぁ。お月さん、ありがとうございます。
(と、手を合わせる。どこまでも信心深い)
 結城の着物に、印伝の小物入れ。あの服装
(なり)では手代やないなぁ。番頭かぁ。
(印伝とは、鹿などのなめし革でつくった財布などを指すらしい。印伝とは印度伝来の略だとか、ポルトガル人やオランダ人などが「インディアン」(インド製の)と言ったのが訛ったとも言われる)と、その商家へ。

 木戸口に手をかけると「くぅ〜〜〜う」ときしむ音を立てるが、無事に開いた。



「あの常吉ゆうのは優秀な丁稚やなぁ。あない言われていても、木戸には桟をかけてまうもんやけど。

 おっ、座敷にえらいお膳が並んでるやないか?このごっつぉう
(御馳走)は、祝儀か不祝儀か?
 なになに・・・尾頭付きの鯛に、鰻巻き
(うまき。真ん中に鰻の蒲焼を入れた卵焼き)、高野豆腐。こら祝儀やな。

 ええ?この鯛はえらいきれいに食べたぁる。ここに座ってたんは猫か?
 犬は鯛の目ん玉好きやで。そう言や、犬が人の目ん玉食てしもて、代わりに犬の目ん玉人に入れたら、電柱見たら片足上げる、てなこと寄席でゆうてたなぁ。
 何で、寄席は、あないしょうもない話ばっかするねんやろ。もし、メスの犬やったら・・・・まあ、どうでもええか。

 鰻巻き食うたろ。こら、素人料理やないな。

 今度は高野豆腐。
(汁をすすって)甘い」


 鰻巻きでは、いわゆる舌鼓を打つというのだろうか、少し間を置いて味わうように、とん!とん!と舌の音を立てる。

 一方、高野豆腐では、ややハイテンポでもしゃもしゃもしゃと食べていき、最後、じゅるるっるるっと汁を吸う。

 今度はとっくりをつまみ上げ、少し振って残量を確かめ、とっくりごと口に運ぶ。



「ええ酒や。腹ん中走り回りよる。おっ、これなんか丸っぽ(丸丸、全部残っている)や。
 うまぁ〜〜い。

 おや、何かおるで。猫か?
 え?やや子
(赤ん坊)やがな。

 はは〜ん。宴会で酒呑んで、みんなやや子おんの忘れて寝てまいよってんな。

(赤ん坊に)おじゃまちてまちゅ。おいちいでちゅね?

 笑ってるがな。人見知りせん子や。
 まあ、こんだけのご大家や。手代や丁稚も多いやろから、人見知りしてたら生きてられんか。

 かわいいなぁ。何や子供ほしなってきたなぁ。

 わい、いつも嬶
(かか。女房)に、わいらもし捕まったら子供、縄付きの子供って言われるから子供なんか要らんてゆうてたけど・・・
 今晩あたり頑張ってみるかな。
 待てよ。節季の5円稼がんと家に入れんゆうてたから、布団入れてもらお思たら10円くらい稼がなあかん。

 あら!坊ん、お膳につかまって、たっちすんの?危ないで。あら、あら、あら・・・。

 一人で立っちできましたねえ。・・・・おっちゃん、いまだに一人立ちでけんけど。


 子供好きな泥棒らしく、心底嬉しそうな顔で「一、二。一、ニ。よい、よい、よい!」と声をかける。

「まっちゅぐ歩けまちたねぇ。・・・・おっちゃんは、世間、斜めに歩いてるけど」とか、

 自分の方に歩いてきた坊やを抱き上げて「ちゅかまえたぁ〜〜。おっちゃん、ちゅかまえるのん、大好きぃ。ちゅかまんのん、大嫌いぃ」と、坊やをあやすたびにいちいち反省するのがおもしろい。

 座敷ではお膳がいっぱいあって危ないので、土間におろそう。そうしたら、上がり框(かまち)に手をかけて伝い歩きができるから、と優しい泥棒。

 手を叩いて、後ずさりしながら坊やをあやしていると穴蔵に落ちた。

 穴蔵といいますと、今で言えば防火用地下倉庫といったところでしょうか。

 普段は皿とか重いもんとかを仕舞っておいて、火事やっ!ちゅう時には、そこに千両箱とか、大事なもんを入れて蓋をして、火事が通り過ぎたら、それを取り出して、これからの商売の元手にしようとするもんでして。

 これが、お祝いで膳とか出すのんで蓋が開けられてたんですが、閉まってなかったんですな。

 

「おいおい。今、台所の方で、えらい音したで。何ぞ、あったんちゃうか?

 あっ!坊んがいてるやないか。
 もう、あの乳母
(おんば)、いっつもこれや。坊ん寝かせるゆうて、ほったらかしで自分が先、寝とんねん。

 しやけど、見てみい。坊んが土間で立っちしてるやないかい!

 祝いの日ぃに、重ねてめでたい!」
「痛いぃ〜」

「めでたい!」「痛いぃ〜」 

「え?誰や、誰や?誰ぞ、穴蔵ん中におんで」

「決して、怪しいもんやございません」

「ははぁ〜ん。杢兵衛やな。また、あいつ酔っ払って、台所に盗み酒に来て落ちよったんやろ」

「ええ?そんな失礼なこと、言いなはんな。私はちゃんとここに。酔っ払ってるなんて、めっそうもないれすよ」
「ベロベロやないかい。

 杢兵衛やないとすると・・・・。おや、番頭の顔が見えんな」

「番頭さんのことやったら、丁稚の常吉っとんが詳しい」
「あぁた、えらいうちの事情にお詳しいようやが、どなたですねん?」
「いえ、ただの通りすがりの者です。

 何や、夜中じゅう裏木戸開けとけ。これは、アホの旦那には言うなよとかゆうてはったんで」

「通りすがりのもんが、こない奥まで来るかいな。
 さては、泥棒、盗人やな!」
「そんな、泥棒やなんて。もっと、可愛く、泥ちゃん、と」

「誰ぞ、大工の、手伝い(てったい)の熊五郎を呼んできなはれ!」

「ああ、これは旦さん。しかし、惜しいことをしましたな。
 泥棒を取り逃がしたやなんて。もし、おったら、わいがボコボコにしてもたんのに」
「おぉ、熊か。お前は喧嘩が強いて、いっつも自慢してるもんな。
 逃げてへんねん。そこの穴の中におるさかい、ちょっと捕まえてくれ」
「わたい、家にちょっと用事あったん思い出した・・・」

 旦那に急かされ、こわごわ穴の中をのぞく。

「おい、こら、泥棒」
「何や、こらぁ!」
「・・・・・・・もうちょっと弱ってるかと」
「来るなら来い!勝負したらぁ!

 降りてきたら、向こうズネかぶりついたるさかいな!」

「旦さん、あんなことゆうてます」
「あんなことやないがな。せや、おまはん、2円やろ。
 2円やるさかい、降りてくれ」
「旦さん、そんなことゆうたら、何や、わい、金で動くような人間に聞こえまんがな」
「お前、そんな人間やないか」
「命の限り、やらしてもらいます。

 おい、こら、泥棒。
 わい、スネにブリキ巻いて降りたるさかいな。
 かぶりついたりでけへんぞ」

「何でもせえ!今度は、お前のまたぐらつかんで、金の玉、引きちぎったる!」
「痛いぃ〜〜!

 旦さん、あんなことゆうてますぅ!」
「わい、通訳ちゃうねんから、直接、話、してくれ」
「せやけど、反則・・・」
「こうしよ。3円やる。3円やるさかい、降りてくれ」
「分かりました。

 おい、こら泥棒。のそのそ降りるよって、スネかぶるとか、金玉引きちぎるとかゆうてるけどな。
 こっちゃあ上におんねん。今度は、お前とこ、ばっと飛び降りたるさかいな!」

「来るなら来んかい!
 ちょうど、手頃な竹があるんじゃ。

 お前飛び降りてきたら、これでずぼぉ〜っとケツ
(尻)から口まで串刺しにしたるさかい!」

「旦さん!あいつ、わいのこと、五平餅か、キリタンポみたいにぃ!」
「味噌でも、しょう油でも塗ってもろたらええがな」

「大体やな!お前、さっきからわいのこと、泥棒、泥棒ゆうけどな!

 わいが、何、盗んだゆうねん?
 お前らの食べ残した冷
(ちべ)たい高野豆腐と、燗冷(ざ)まし片付けただけやないか!

 第一、お前らがほったらかしにしてた坊んの面倒、誰が見てた思てんねん!
 ぼぉ〜っと寝とった乳母の給金、わいに回してもおかしないやないか!」

「旦さん、あいつのゆうのも一理ある・・」
「泥棒に言いくるめられてどないすんねん。

 熊、もう、これで決着しよ。5円やろ。5円やるさかい・・・」


 これを聞いた泥棒が、「ちょっと待ってくれ。5円くれるんやったら、自分から出て行く」というのがサゲ。

 東京では「穴泥」という題名。

 三喬は、やはり泥棒噺がうまい。これだけはっきりした得意分野を持っている噺家も珍しいのではないか。
 あとは、吉弥、よね吉らの芝居噺系か。 



 

 


露の都 「天麩羅」

 
 全編マクラというか、漫談というか、一種の新作落語になるのだろうか?
  社団法人上方落語協会の女性部長をさせていただいております。

 わたくしが桂三枝会長から部長やってくれと言われました時、女性の落語家は5名、それとお囃子さんが11名でございました。
 現在、おかげさまで女性の落語家は倍の10名になっております!
(会場拍手)

 会長のわたくし・・・・・30過ぎました。

・・・・・・・・・うそつきました!

 40過ぎました。

・・・・・・・・・うそつきました!

 若い子が、女性部の愛称、考えてくれまして。「かみがたしょうじょたい」ゆうんです。

 「少女」ちゃいますよ。笑う女で「上方笑女隊」。

 「彦八まつり」(協会が大阪落語の始祖米沢彦八顕彰碑建立を記念して行っている祭り)でお色気ショーすることになりましてね。
 みんなで水着着て踊ることになって。一番若いのが35歳、上は65歳なんですけどね。

 でも、私、用意してもろた水着、入りませんねん。
 やっと入ったやつ。着る前、白地に赤の水玉ですねんよ。それが何でか、私、着たら、ピンクの無地になりますねん。

 踊りでお肉が揺れてるてなギャグから、炊飯釜を買ったというギャグへ。

 タイマーをセットしたんですけどね。

「玄米、予約承りました。明日、朝7時に炊き上がります。おやすみなさい」

・・・・・・って、お釜がゆうんですよ。
 うち、子供6人いてるけど、皆、大きなったから、あんまり会話がありませんの。嬉しくてね。

「まあ!おやすみなさい」ってゆいましてん。

 次の日、はよ目ぇ覚めたんですけど、7時ちょっと前から釜の前、行ったり来たりしてね。

 で、7時になったら、
「おはようございます!」
「はい、おはようございます」
「玄米、炊き上がりました。保温に切り替わります」

 ご存知かどうかわかりませんが、玄米て、食べ終わったらすぐ水に漬けんと、釜にこびりつきますねん。それで、内釜、外したらね。

(目をパチクリして、慌てた様子で左右を見回し)
「内釜がありません!内釜がありません!」

 後は、あと三つくらいボタンつけてほしい。一つ目は「コーヒーでも飲みませんか」、二つ目は「この頃、きれいになりましたね」・・・。

 さらに、電車の中での厚かましいおばはんの話(1人座ると「奥さんもどう?座れる、座れる」とか言い立て、座ってられなくなった客が席を譲る。結局全員座って「よかったな。すいてて」。)から電話セールスを断るのに一番いいのが「天麩羅、揚げてんねん」という言葉という話へ。

 保険のセールスで電話してきた若い田中くんという子に「今度、お茶でも飲まへん?」とゆうたら、逆に「天麩羅揚げてますぅ!」と言われたという話へ。

 これで終ってもいいと思うが、さらに旦那との話で、犬のことや、化粧品に関する世間話を延々として、旦那が「頼むわ。もう寝かせてくれ。晩の2時やぞ」とか繰り返し、最後、布団かぶって「天麩羅、揚げてますぅ!」がオチ。

 まあ、ミエミエの蛇足としか言いようのないオチだった。



 

 

 


 


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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