移動メニューにジャンプ 北京旅遊記(6)長富宮飯店1泊目編 お宿の長富宮飯店は、要は北京のホテルニューオータニである。 ほとんどの人はご存知だろうが、飯店とは、ホテルのことであって、日本で言う「〜飯店」のようなレストランの意味ではない。(レストランは餐庁) 長は万里の長城、富は富士山で日中合弁を象徴していますとのことだった。そういえば、マークも長城と富士山の組み合わせであった。 いわゆる「5つ星ホテル」のひとつで、はっきり言ってぜいたくなホテルではあるが、(親父と違い、中国におりさえすれば幸せ・・・とはならない)家族のことを考え、日本料理レストランやプールのあるここを選んだというのは、旅行前記「いざ行かん、中国へ」で書いたとおり。 5人なので、長男と私。そして、嫁さん、長女、次男の2部屋に分かれた。私の部屋は普通のツインだが、嫁さんの方は、エクストラベッド入れても余裕があるよう、少し広い部屋になってる、とかで同じ10階だが、少し離れている。 長富宮飯店は建国門の交差点の東南角に建っている。私の部屋は、ホテルの南側部分なので、中庭がよく見える。 一方、嫁さんの部屋は西側部分なので、建国門付近の立体交差や大通りが見える。 大きな道路に虹をかたどったアーチ状の飾りがあり、「虹の色」の照明が輝く。 また、道路脇には、高いポールが何本も並んでいる。そしてその上には長い針金のようなものが放射状についている。 昼間見た時は、何かな?と思ったのだが、その針金には細かいネオンライトがいっぱいついていたらしい。本当に「線香花火」さながらに光がまたたく。たいへん細かい細工で、とてもきれいだった。 しばし夜景を楽しんだ後、さっそくプールに行くことになった。部屋番号がわかるものを持参すれば無料、と聞いていたので、食事券のホルダーを持って行く。 プールは2階。末っ子は、下は既に水泳パンツ。ゴーグルをはめて、やる気まんまんである。エレベーターの中で彼の格好は浮いていて恥ずかしいのだが、やむをえまい。 何せ、彼は、今日景山でも天安門広場でも「はよホテル行って、プールで泳ご!」と言っていたのだから。 2階で降りると、日本料理の櫻というレストランがある。入り口の前に和服を着た案内のお姉さんが立っているのだが、たけしの姿を見ると、笑いながらプールのある方向を指差してくれた。ゴーグルはめて、日本料理食べる人はあまりいないだろうからね。 途中の廊下はギャラリーになっていて、大きな油絵や水墨画、硯や筆などが展示されており、即売もするようになっている。そこを抜け、さらに美容室なども通り、プールやアスレチックジムのある窓口へ。 おばちゃんがひとりいる。部屋番号の書いた封筒を見せたが、ロッカーの鍵をくれない。頭の辺を触って何か言っている。どうも、泳ぐには水泳帽が必要で、持参しているか見せろと言っているようだ。 「持ってな〜い!」と(日本語で)言いながら、手をパタパタしたら、どうやら伝わったらしく、「なけりゃ、買え」とばかりに帽子がいっぱい入ったビニール袋をカウンタの上に持ち出す。 「いくら?」と聞いたが、すぐには返事がない。帽子を指差し、お金のマークを指でつくって、もう一度「いくら?」と聞くと「じゅうげん」と日本語で答えが。しかし、無料と聞いていたので、現金はまったく持ってきていない。 困った。頭の中で英作文する。I have no money.おおっと、これじゃ、こちらが物乞いでもしてるみたいだ。 で、「お金は部屋に置いてきた。今はない。チェックアウトの時に払う」と一応英語で言ってみたが、まったく通じない。ゆっくり言っても同じ。「こいつ、何ゆうとんねん」と言わんばかりの無表情で見つめられるので、参ってしまう。 嫁さんが、「部屋戻って、お金取りに行こか」と言ったが、もうひとねばり。 ペンでしゃかしゃか書く手まねがよかったようで、おばちゃんの目に一点の光が宿り、同じように右手でペンを動かす手まねをして「サイン?」と聞く。 「イエ〜ス、イエ〜ス!」ようやく商談成立である。差し出された書類にサインしつつ、家族に帽子を選ぶよう勧める。150円の帽子なら、いい記念になる。 たけしが、いつものように嫁さんにくっついて、女性用の更衣室で着替えようとすると、おばちゃんが、あわててカウンターから出てきて、「あんたはこっち」とばかりに、私と長男の列に加える。 「男女7歳にして席を同じゅうせず」というが、男女の別は日本よりきびしいようだ。(嫁さんは、「プールの帰りにたけしを女性用の更衣室に連れていこうとしたら、別のおばちゃんからも、怒られた。中国語やから、何言ってるんかさっぱりわからないんやけど、どうもたけしのことを言ってるみたいやった」とこぼしていた) 疲れていたのだが、たけしがはりきってしまって、「はよ、部屋戻ろう〜」と言っても「もうちょっと」、「もうちょっと」でなかなかやめない。 10時前になって、ようやく戻ることになった(プールは7時から23時まで) 嫁さんが「さっきの帽子は、持って帰ってもええの?」と聞く。手振り会話をするのも疲れるので「持って帰ろう。もし、レンタルやったら、フロントの前通る時、何かゆうやろ」 どきどきしながら通ったが、幸い何も言われなかった。 かくして、中国1日目の夜は更けていった。 ベッドサイドに「晩安」(おやすみなさい)というカードとともに置いてあったチョコレートを息子に食べさせ、シャワーを浴び、歯を磨く。 息子はすぐに寝息をたてはじめた。私は、興奮しているのかなかなか寝つけない。ノートに今日の支出などをメモする。 明日は、8時30分の開門と同時に故宮の見学をするということで、8時に迎えに来てもらうことになっている。 明日のモーニングコールは6時30分ということで、李さんがフロントに頼んでくれている。朝食は7時からだ。もう寝なくっちゃ・・・ (追記) 翌朝も早く目がさめた。電話はベッドの間のテーブルに置いてある。 私は、長男に電話を取らせようと、電話を思い切り息子側に寄せた。(寝ぼけまなこで、どんな対応するか見たかったのだ) 6時30分。ベルが2回、3回、4回。鳴っているのに、息子は平気で寝ている。よほど眠たいのか。仕方なく、受話器をとる。 「おはようございます。モーニングコールの時間です。どうぞ、よい一日を」と英語のアナウンスがあり、次に中国語。おそらく同じ内容をしゃべっているのだろうが、早いし、さっぱりわからない。と、先ほどの英語メッセージ。ああ、やっぱりテープか、と思って受話器を置く。 後で、嫁さんと話しをして笑った。嫁さんは、テープだとわからなかったらしい。英語と中国語で何か言っている。モーニングコールの話はしていたので、起こすための電話だということはわかる。 で、電話に向かって、「はい、起きました。ありがとう」と言ったのだが、また、英語と中国語が繰り返される。で、嫁さんも「はい!はい!もう、起きました!ありがとう!ありがとう!」と言ってるのに、少しもやめてくれない。(←そりゃ、そうだ) なぜ、伝わらないんだろう、どうしようかと思いつつ、「ありがとう!起きました!起きたってば!ありがとう!」 それでも、相手は機械的に(←再度、「そりゃ、そうだ」)繰り返す。 「ありがとう!もう、切るよ!切るから!いい?切るよ!」 泣きそうになって、受話器を置いたらしい。
|