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2011年4月のひとこと書評(掲示板に書いた文章の転載。評価は★5つが最高)
久しぶり。
4月のひとこと書評の再録です。掲示板そのままでは芸がないので、評点をつけます。★5つが最高。評価基準の詳細は、2001年11月書評のページをご参照ください。
(669) 『幕末純情伝 〜龍馬を斬った女〜』(著:つかこうへい。角川文庫)
P9 「お琴のあの動きは、身も心もその男の前にさしだす時と同じ格好なんだ。ふとんの中の女を知ってる男なら皆知ってる動きかただ。〜」
P31 「〜どこで覚えたのか、もう、女のあしらいがうまくってマメで、あのドスケベが」
ドスケベが、ドスケベが、と言うたび、総司は猫背になって首をちぢめ、ガマガエルみたいになった。
P43 「〜ガニ股なんですよ。どうしてあんな人、好きになっちゃったんだろうな、僕は」
P53 「うるさい!!土方さん、実はですね、あのとき僕、初めてだったんですよ、土方さん!」
〜「ですからその、一見、いやがっていたように見えたと思うんですけど、そうじゃなかったんです。そこんとこに僕らの誤解があるんじゃないかと思うんですよ。もう一度、あんなことがあったらですね、こんどはちゃんとできると思うんですよ。聞いてます?」
P92 「何がよせだっ、クッソー!!このドスケベが!!口を吸うだけならまだしも、舌をつっこんできて、なめまわして、腰を抱いて、手をつっこんで耳たぶかんで、それから何をしたんだ。ええ?ええ?何をしたんだっていうんだよ!!」
P161 「人間、男じゃ、女じゃと言うとるうちは大成せんて。ワシは土佐にいた時、ヤギとやったことがあるき」
P198 「土方さん、あの芹沢さんのときは本当にうれしかったです」
〜「ハハ、おまえのためじゃないさ。〜」
「あっ、そうですか。僕がかんちがいしてたのかな」
最後の言葉はかすれて、声にならなかった。
★★☆
哀しい「をんな」の総司。
(670) 『日本はじっこ自滅旅』(著:鴨志田穣。講談社文庫)
P63 くれなずむ、日本最南端の終着駅前の高校生諸君は、たとえタバコをふかそうとも、大人に対して礼儀正しいのだった。
P76 男には誰でも大なり小なり、”鉄”が入っているものなのだ。
P84 「では、お先に失礼します」
と、後手に引き戸を閉めると、
「あーっ、あっちっち」
という大声〜が中から響いて来た。
内心、
「よーし、この勝負、引き分けだな」
と〜ほくそえんだ。
P115 前日〜ひさしぶりに家内から電話がかかって来た。
受話器の向こうから、
「しばらく帰って来ないで」
と、か細く、しかし思いつめた声が聞こえた。
P152 逃げたくはない。ただ思うがままに生きたい。
少しだけ、理解した。
彼らは勝負をしていない。そんなものしてもしなくてもどうでも良いといえば、それはそれで良いのかもしれないけれど。
P236 「手術してないんだぞ、まだ。また吐血するぞ。それでも飲みたいか」
「思い始めたらとまらない。飲みたい」
〜ガラスの扉の向こうには汗をかいたよく冷えた瓶ビールが並んでいる。
扉に手をかけ引こうとする。
びくともしない。鍵がかかっていた。
内心、良かったと、ホッと胸をなで下ろす。
何と意志の弱い男だろうか。誰に見られた訳でもないのに、自分で自分に意志が弱いと烙印を押したような気分になる。
P250 「強いね」
「普通でしょう。私達、自由になりたくてチャウシェスク殺した。自由になったら貧乏になった。貧乏、自分で変えなくちゃしょうがないでしょう。金持ちになる。まず勉強でしょう」
東南アジアの民と決定的に違う所、自由は自分自身で勝ち取るものだという考え。
タイやフィリピンから出稼ぎにやって来た女性達も同じように赤貧生活だったはずなのに、毎日が、一瞬が楽しいとそこで止まってしまう。
この目の前にいるルーマニア娘二人は、ずっと先の自分達の未来を想いえがいて生きている。
P307 コアラがすみ、人口よりも羊の方が多い国に、野球で何故負けなければならないというのか。
P322 翌日、新幹線に飛び乗り東京へ帰った。
スタートへもどれだ。
「一からやり直しだ」
何でもいい。とどまる事なく前に進んでゆけばいい。
早く歩けなくなった分だけ、同じ場所でも違うものが見えて来るというものだ。
P323 あとがきに代えて
都内西郊の病院に入って二週間になります。〜今度こそ医者と元家族の言い付けを守って身体と心を治したい。そんなわけでまともにあとがきも書けなくて本当にすみません。
2005年2月 鴨志田穣
★★★ 晩年のカモは、本当に「沁みる」文章を書く。特に、あとがき。
(671) 『いつかガンダーラへ』(著:宮川雄二郎。三修社)
P26 〜カレーが喉を通らない。羊の肉の独特の匂い。パサパサの油いためご飯が鼻につく。〜生水は絶対に飲むな、と繰り返し言われている。〜横目でほかのメンバーの様子を見る。平然とした顔でカレーに舌鼓をうっている。樋口氏にいたってはコップの水もおいしそうに飲んでいる。大変な猛者と一緒に来たものである。
P43 つまり、チキンカレーの注文を受けてから町のバザールへ出向いて鶏を仕入れて来たというわけだ。
P48 ふと前方を見ると、極彩色の毛をした珍しい羊が小川のせせらぎを渡っている。これは大発見だ。揺れるジープの上でカメラを構えた。すると、松本氏が「あれは目印にペンキで色を塗った羊なんだよ」と笑いながら教えてくれた。
P67 〜運転手の”投銭”は、日本でいう賽銭とは意味が違っていた。〜運転手は、お祈りの時間でも運転を休めない。そこで、お金を払ってお祈りの代役を頼むのだという。
P107 ジープに揺られながら、私は軽い気持ちでガイドに話しかけた。
「ナガールは、フンザよりも畑が多いそうじゃないか。水も豊富なようだし・・・」
その途端、ガイドの顔色が変わった。
「とんでもない。フンザ人は、優秀なんだ。体力も技術も、ナガール人の比じゃない!」
P160 町を歩いているうちに、「日本は大好きな国だ」という声を再三、耳にした。
パキスタン人は、実に陽気で気さくだ。
P175 若い女性はチャドリをかむっていない。〜はっと息をのむような美人が多い。
しかし、このイスラムの国で女性をからかえば、まず生命の保障はない。男性たちによってたかって袋叩きにされるのがオチだ。
P185 仮の話であるが、バーミヤンの石窟が戦闘で破壊されてしまったら、復元は二度とできないだろう。
P199 歩くたびに靴で踏みつけているのが、2000年ほど昔の食器とか水瓶とかの破片なのだ。
〜ガンダーラの遺跡とは、空恐ろしいところである。
P260 「コーヒーを一緒に飲みませんか」
と、注文しようとするとサーイ君は笑顔を浮かべて丁寧にことわった。
なぜ?と尋ねると、
「私はパターン人です。パターン人にそういうプレゼントは一切不要です」
★★☆
ずいぶん昔の本だが、「仮の話・・・・」が現実となるとはねぇ。
(672) 『さくさくサークル』(著:山崎一夫、画:西原理恵子。角川文庫)
銀玉親方が牌譜なども載せてる麻雀本。巻末の解説では「真面目にサイバラと師匠を語る」と題して「木村千歌(友人代表)」が、ほんと真面目に語っている。
「今更あたしが語ることでもないが、西原理恵子氏は出版界の常識を覆した漫画家だ。〜ページを開いたとき、読者が〜先に絵(オマケ)を見てしまうようになったのだ。〜ひどいときは、本文読まずにりえちゃんのイラストだけ見て満足しちゃったりまでもする。
これは、アレだ。三十年ほど前、仮面ライダースナックが大ヒットしたときの社会現象ととてもよく似ている。
〜それと同じコトを、りえちゃんは出版界でやってのけた。それが、同じ漫画家としてどんなに誇らしかっただろう。
〜さて、ここで、その魅力的ライダーカードに対するスナック、師匠こと山崎一夫氏に話は移る。
〜その辺の師匠の文章が群を抜いて美味しいのだ」
ちむら、うまいぞ!
★★☆ 結論は、やはり「ちむら、うまいぞ!」。名解説。
今月も、まだまだ書評が大量に積み残し。
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