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2011年1月のひとこと書評(掲示板に書いた文章の転載。評価は★5つが最高)
久しぶり。
1月のひとこと書評の再録です。掲示板そのままでは芸がないので、評点をつけます。★5つが最高。評価基準の詳細は、2001年11月書評のページをご参照ください。
(658) 『龍馬 五』(著:津本陽。集英社文庫)
P37 「才助どんと気が合わんようになったがよ。〜あげに、てんくろう(詐欺師)みたいな阿漕なまねは、もうしとうないきに。〜」
P65 この頃、龍馬は妻のおりょうが神経をたかぶらせることが多いので、その扱いに気をつかっていた。 〜
二月十六日に下関から三吉慎蔵に送った書状には、
「此度は又々家内のおき所にこまりしより、勢やむをえず同行したり。〜」
P169 才谷の談判の場における駆けひきは、とても紀州側の及ぶところではない巧妙なものであった。
P181 「〜あとは、俺が紀州家の勘定奉行と会うて、話をつけるぜよ」
「ほいたら、イギリス提督に事を任せるがですか」
「そげな手間のかかることをするかよ。五代どんにも力を借りて、紀州の奉行を脅しつけ、償金を払わせるがよ。お前(ま)さんは長崎じゅうに明光丸が悪行をしたという、評判をひろめや〜」
〜いまは龍馬にとって、象二郎は救いの神であった。
P197 龍馬は、提督が〜明光丸の衝突痕跡を見れば、土佐側に操艦の誤りがあったと知るに違いないと危ぶんだ。
提督に会わせないままに、紀州側を脅し、屈服させるほか手段はない。
龍馬は〜日本最初のコマーシャルソングを流行させていた。
P298 パークスはインド、清国などで成果をあげた、威嚇態度をとった。〜
だが後藤はパークスの激昂するさまを平然と眺め〜
「〜こげな無礼なふるまいをするからには、決裂させるつもりかよ。〜会見は中止するというてくれ」
P300 アーネスト・サトウは記す。
「〜私の見るところでは、ただ西郷だけが人物の点で一枚後藤にまさっていたと思う。〜」
P411 このような一大事にのぞみ、慶喜の謀臣として薩藩の大久保一蔵らを相手に一歩も譲らず、幕府のために鋭利な刃物のような政治手腕を発揮してきた、原市之進が暗殺されたことが、幕府側の大きな痛手となっていた。
★★☆
これ読むと、龍馬が嫌いになってしまいそう。
(659)『ノルウェイの森(上)』(著:村上春樹。講談社文庫)
P20「私のことを覚えていてほしいの。私が存在し、こうしてあなたのとなりにいたことをずっと覚えていてくれる?」
P33 しかし「地図」という言葉を口にするたびにどもってしまう人間が国土地理院に入りたがっているというのは何かしら奇妙であった。
P54 死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。
P101 おいキズキ、ここはひどい世界だよ、と僕は思った。こういう奴らがきちんと大学の単位をとって社会に出て、せっせと下劣な社会を作るんだ。
P118「自分がやりたいことをやるのではなく、やるべきことをやるのが紳士だ」
P144「〜世の中で何が哀しいって生乾きのブラジャーつけるくらい哀しいことないわよ。もう涙がこぼれちゃうわよ。とくにそれがだしまき玉子焼き器のためだなんて思うとね」
★★★☆
(660)『ノルウェイの森(下)』(著:村上春樹。講談社文庫)
P53「〜そして言うの、『駄目よ、本当に駄目、そんなに大きくて固いのとてもはいらないわ』って」
「そんなに大きくないよ。普通だよ」
「いいのよ、べつに。幻想なんだから。するとね、あなたはすごく哀しそうな顔をするの。そして私、可哀想だから慰めてあげるの。よしよし、可哀想にって」
「それが君がやりたいことなの?」
「そうよ」
「やれやれ」と僕は言った。
P58「男の人って女の子のことを考えながらあれやるわけ?」
「まあそうだろうね」と僕は言った。「株式相場とかスエズ運河のことを考えながらマスターベーションする男はまあいないだろうね。〜」
P83「〜口でなんてなんとでも言えるのよ。大事なのはウンコをかたづけるかかたづけないかなのよ。〜」
P112「お前がいてくれた方が楽なんだ。その方が俺もハツミも」と永沢さんは言った。
やれやれ、と僕は思った。
P113「〜ときどき俺は世間を見まわして本当にうんざりするんだ。どうしてこいつらは努力というものをしないんだろう、努力もせずに不平ばかり言うんだろうってね」
P127「俺とワタナベの似ているところはね、自分のことを他人に理解してほしいと思っていないところなんだ」と永沢さんが言った。
P142「そんなに永沢さんのこと好きなんですか?」
「好きよ」と彼女は即座に答えた。
「やれやれ」と僕は言ってため息をつき、ビールの残りを飲み干した。
P165「じゃあまだ時間も早いことだし、ディスコでも行こう」
「君疲れてるんじゃなかったの?」
「こういうのなら全然大丈夫なの」
「やれやれ」と僕は言った。
P225「私のヘア・スタイル好き?」
「すごく良いよ」
「どれくらい良い?」と緑が訊いた。
「世界中の森の木が全部倒れるくらい素晴らしいよ」と僕は言った。
★★★☆
・・・・・「やれやれ」多過ぎ。
(661)『辺境・近境』(著:村上春樹。新潮文庫)
P34 どうだ、ざまあみろと思う。誰に向かってそう思っているのかは僕には正確にはわからないけれど、なんとなくざまあ見ろ的な不敵な気分になってしまうのだ。
P39 ライカは海に落とす、手足は切る、虫に襲われる、夜は眠れない、良いことはひとつもない。
P55 でもある日、女房は僕に宣言した。もう私もトシだし、もうこれ以上こういう旅行はできないし、したくない。〜なにしろ私の体重は四十二キロしかないのだから、と。
P84 旅行は疲れるものであり、疲れない旅行は旅行ではない。
P131 そしてここでようやく彼は認識したのだ。ここでは誰も言葉の響きというものを理解しないのだと。
P147 朝っぱらから石の上に腰掛けてうどんをずるずるすすっていたりすると、だんだん「世の中なんかもうどうなってもかまうもんか」という気持ちになってくるから不思議である。
P158 フィリップ・マーロウも香川県に生まれていたら、きっとこんな風にうどんを食べていたに違いない。
P176 でも僕の短い滞在経験から言っても、中国人の「大丈夫、心配ないよ」というのはけっこう心配なものなのである。
P250 特徴的意味を持たない特徴というのは、配列が明確でない辞書に似ている。どれだけかかわりあっても、時間をすりつぶすだけで、どこにも行かない。〜
〜アメリカにおけるモーテルについての貴重な教訓を学んだ。それは「温水プールのついているモーテルには泊まるな」ということである。
〜それ以外に、モーテルについて語るべきことはほとんどないように僕には思える。
P287 広々としているというよりは〜なんだかミイラの数が不足しているできたてのピラミッドみたいに見える。
★★★☆
「軽み」がいいです。
今月も、まだまだ書評が大量に積み残し。
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