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アジア映画れびゅう(5) 「君さえいれば  金枝玉葉」
 

(ご注意)かなりネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。


「君さえいれば  金枝玉葉」


(ストーリー)
 ここ何年も香港芸能界の若き女王として君臨してきたローズ。今年もグランプリを受賞し、手慣れた調子で「これもプロデューサーであり、恋人のサムのおかげです」と謝辞を述べる。
 それをアパートのテレビで感動しながらみつめるウィン。

 傍目からは理想のカップルに見えるサムとローズだったが、純粋に音楽を追求したいサムは、派手好きなローズに心のすきまを感じていた。
 ローズのプロデュースに行き詰まりを感じたサムは、「普通の男をスターにする」と広くオーディションを募った。
 ローズやサムに近づきたい一心のウィンは、髪の毛を切り、男装してオーディションを受ける。サムは半分やけくそで、最後の受験者ウィンと契約し、同じマンションで生活するようになる。

 純粋にローズにあこがれるウィンの熱いまっすぐな気持ちは、ローズがサムに求めても得られないものだった。ローズはウィンをベッドに誘うが、ゲイだから・・・と拒まれた。
 後に、ウィンはローズに、自分が女であることを打ち明ける。ショックを受けるローズ。サムの心がウィンに傾きつつあることをうすうす気付いていたのだ。ローズは、ウィンに、自分が女であることをサムに言わないこと、サムが望んでも会わないように命じる。
 一方、サムは、日に日に自分の中で大きくなるウィンへの想いに、「俺はゲイじゃない!」と必死に戦っていた・・・

(ひとこと)
 アニタ・ユンかわゆい!アニタ・ユン萌え!・・・・・ま、これだけでもいいのだが、もう少し。

 小道具やせりふ、挿入歌の歌詞など、どれも気が利いている。
 サムは、ローズの受賞祝いに大きなバラの花束を用意し、車に積んでいる。しかし、サムはバラ・アレルギーなのか、クシャミが止まらないのだ。冒頭のシーンから、二人の関係をさりげなく暗示してる。

 ローズは悲しくて、そして強い。
 ウィンに、私はサムにこう言われたと告げる。「君は、開いた本のようにすぐ読める」、と。
 鏡台のところにいつも置いているメッセージカード。バラの造花がついていて、開くとレトロなメロディ(トップシーンでも流れる)が。つきあい始めた頃にサムからもらったカードだ。
 それを見たウィンが「”I LOVE YOU”って書いてあるじゃない!」と言うが、さみしげに「言葉で言ってくれたことはないのよ・・・」と答えるローズ。
 「彼とけんかしたら開くの。でもね、すぐ閉じるのよ。歌が終わるとさみしいから」そう言っていたローズが、最後の方で、カードをずっと開きっぱなしで持っている。 内蔵の電池が切れたのか、だんだんメロディが遅くなり、そしてとうとう途切れてしまう。それを確認してからぱたりとカードを閉じるローズ。それは、彼女が、あの告白をするために必要なけじめであったのだろう。

 サムとウィンが惹かれあっていくプロセスが積み重ねられていく。
 ウィンが長い間あたためていたメロディの一節をピアノで弾く。それを聞いて触発されたサムは、横に並んで弾き始め、一気に「君さえいれば」という曲をつくりあげる。
 サムは暗闇恐怖症なのだが、マンションのエレベーターがよく停電で故障する。ウィンと一緒の時、またも暗闇になってパニックになるサムを、ウィンが発光スティック(何で、そんなもんを持っているかは、後で述べる)と早口言葉で励ます。
君さえいれば 金枝玉葉

 ウィンは、セサミストリートの人形(手にはめて動かすやつ。余談だが、ローズのベッドにはドラえもんのクッションが置いてある)を両手にはめて、ひとり芝居で自分の悩みをまぎらしていた。そこへ来たサムが、片方の人形をはめて、ウィンの人形に「4人でアフリカに歌の旅にでも出かけないか」。4人とは、もちろん人形2体と、サムとウィンだ。
 気がつくと、言葉より気持ちが先に出てしまって、人形同士がキスをしていてあわてる二人。

 あと、どうしても言っておきたいのは、ウィンのルームメートのユーローである。
 はっきり言って、わたしゃサムはどっちゃでもいい。いいんだ、彼が。
(私は、それこそサムではないが、ゲイじゃないんで、人間的にいいという話ですぜ)
 ローズのグランプリ受賞にも、どうせ出来レースなんだろ、と冷ややかだったが、ウィンが涙を流すほど真剣なんでオーディションでの男装にも手を貸す。
 男らしい歩き方を教えてやると言って、「1、2、かきかき。1、2、かきかき」「こんなの変だよ」「男は股をかくもんなんだ」というレッスンはおかしい。
 ぺちゃぱいだけど少しはある、ということで胸をテープでぐるぐる巻きにし、股間のふくらみがさみしいというので発光スティック(パキン!と折ると蛍光色に光る棒。コンサートで、ペンライトみたいに使うのかな)をセットしてやる。
 「いつも助けてくれて・・やさしすぎるよ」とキスするウィンに「小学校の頃からファンなんだよ」とぽつり。

 そう、「幼なじみ」ってやつは、ともすれば「ともだち同士」で固まっちゃいがちなんだよなあ。ほとんどお兄ちゃんというか、保護者のようになっている。

 自分のせいでローズとサムがうまくいかなくなったので、ウィンは、ローズに「絶対サムと別れないでね」と約束してもらって、サムのマンションを引き払い、元のアパートに戻った。
 でも、サムへの想いは断ち切れない。サムに抱かれたい。でも、(ローズがいるから)所詮サムとは結ばれることができない。初めての男性が、別れる運命の人じゃ悲しすぎる。でも、でも、でも・・・の屈折した感情で、とうとうウィンは、誰でもいいから処女を捨てたい、と彼を指名する。
 「俺はゴミ箱か!」と怒る彼。つらいだろうなあ。何も、好き好んで「いいひと」になってるわけじゃないんだけど、自分のことよりウィンのことばかり考えるあまりに、「とってもいいひと」になってしまう。
 聖人君子じゃないんだし、ウィンのことが欲しくないはずはないんだけど、ウィンのことが大切すぎて「抱いて」と言われても、すぐ「ごっつあんです!」とはいけない。
 サムに抱かれたいんだ、なんて話を聞かされる彼は、顔は笑ってるんだけど、こころはボトボト血を流してるんじゃないかなあ。たまらんやろうなあ。

 ローズは、5年連続でグランプリを受賞した席上で、「サムとは別れて、別の道を歩みます」と宣言する。
 それをアパートのTVで見て、「私のせいで、サムとローズが別れてしまった」と、ぼろぼろ涙を流すウィン。「悲しいのか」「ううん、嬉しいの」
 それを聞いて、彼はウィンを立たせる。そして、その場で走るかっこをしてみろ、と言う。訳がわからぬまま、それに従うウィン。

「見ろ。ほら、サムがいる」「え?」「ほら、だんだん大きくなってきた」「どうして?」「近づけば大きくなるんだよ。そら、もっと速く走れ」「うん!」
 懸命に走るかっこをするウィンに彼がささやく。「走っていけ、早く。サムのもとへ」
 そのまま走り出そうとするウィンを呼び止め「行くんなら、女らしいかっこをしなくちゃ」ちょっととまどったウィンだったが、さっ!さっ!と手で髪をなでつけた。「どう?」少し不安げに見上げるウィンに「完璧だ。行け!」
・・・・・・・・あああ、漢やなあ、おっとこ前やなあ

 マンションに走っていったウィンは、サムとエレベーターの中で一緒になって、また停電になって・・・とラストもしゃれていたのだが、激しく彼に感情移入したまま見終えた一作でした。

(資料)
監督:ピーター・チャン(陳可辛)
主演:サム・クー(顧家明)→レスリー・チャン(張國栄)、ローズ(玖瑰)→カリーナ・ラウ(劉嘉玲)、ラムジー・ウィン(林子頴)→アニタ・ユン(袁詠儀)、Apntie(ゲイのマネージャー)→エリック・ツァン(曾志偉)、ユーロー(漁佬)→チャン・シウチョン(陳小春)
原題:金枝玉葉  He's  a  Woman, She's  a  Man. 
1994年香港作品
★★★☆


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