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アジア映画れびゅう(40) 「レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍 方世玉」  

(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。


「レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍 方世玉」

(ストーリー)
 清朝、乾隆帝の世。反清復明を謳う紅花会は、乾隆帝を襲う。
 紅花会に賛同する連判状を奪取すべく、九門提督が乗り出した。

 一方、広州の若大将こと方世玉は、チンピラにからまれていた婷婷(ティエンティエン)という娘を助け、恋に落ちる。

 よそ者の成金、雷虎が、婿取り合戦で、自分の妻小環に勝ち、くす玉を取った者に娘をやると宣言した。
 方世玉も、悪友に誘われ挑戦するのだが・・・・・

格闘飛龍



(あれこれ)

 以前に観たことはあったと思うのだが、『漂泊のヒーロー』という本で方世玉のことを読んだので観直すことにした。
 こんなにおもしろかったっけ?

 やっぱ、繰り返して観るってのもいいな、と思った。


1.乾隆帝は漢人?

 乾隆帝が、ちょうど水戸黄門のように江南をお忍びで巡り、悪人を退治したとか、乾隆帝は実は漢人だったとかいう伝説があったという話は聞いたことがある。 本作では、「貴様は漢人でありながら満族皇帝になるとは」と秘密結社紅花会首領の陳家洛(チン・カーロ)に襲われる悪夢で、乾隆帝は不眠症になる。

 帝の命をうけ、紅花会の連判状を奪いに来たのが九門提督
 とにかく、やたら握力、膂力が強いみたいだ。ちょっと一捻りで顔の皮膚を剥ぎ取ってしまうし、ぽん!と一突き、骨が肘から飛び出てしまう。


2.ギャグだらけ

 成金の雷虎は、自分の勢威を誇示するため武術大会(いや、町内の運動会というようなレベルかな)を開催する。
 娘の婷婷が地元のチンピラにナンパされているのを助けに入ったのが、方世玉。
 ところが役人が「ケンカは許さんぞ」と介入したので、スポーツで決着を図ることになる。
 チンピラの大将は、上海の大学で陸上部のキャプテンであったらしい。
 先ずは走り幅跳び。チンピラが好記録を出した後に、助走を始めた世玉。ところが踏み切り板の前で立ち止まってしまった。「おっと、アリを踏んじゃうとこだった」

 そして、世玉はその場跳び。しかし、空中歩行で砂場を軽くオーバーしてしまった。

 面子を潰されたチンピラ大将は、取り巻きともども400mリレーを挑む。
 メンバーが足りないので、世玉は婷婷に参加してもらう。大差をつけられアンカーのバトンを渡された世玉。
 競技場の観衆がざわめく。「見ろ!弁髪が一直線だ!!」

 しかも、バックで流れるのが♪ 青春に不可能なし 若き夢よ 永遠なれ!!♪というテーマソング「青春歌」。・・・・・すごいなあ。

 やけになったチンピラ組と大乱闘。役人に連行された世玉は、親に知られたくないので偽名を使った。
「姓は黄・・・・・」突如流れるワンチャイ、黄飛鴻のテーマ。「・・・・・晶。」 

 ボケるなあ、すごい、すごい。

 一方、布地屋をやっている世玉の母、苗翠花
 外人カップルを見て「巻き毛ってすてき。黒メガネも」とつぶやいたかと思うと、自分のメガネを墨で塗りつぶしてしまう。まあ、すごい実行力。

 お母ちゃんの暴走は止まらない。
 厳格親父の方徳が、息子と母を折檻する。
「あんな連中のでたらめを鵜呑みにして、人前で殴るなんて」と、後ですねるお母ちゃん。
 すると、やおら親父は、「美人 簾(すだれ)を上げて・・・」と詩を朗じ始める。
 お母ちゃんのリアクションが凄い。親父の詩を聞いたとたん、全身がくがく。思わずよろめいて、かろうじて体を支え、「この人ったらロマンチックなんだから。詩を詠まれると弱いのよ」
 そして、しずしずと旦那のもとへ寄っていき、少女のように、旦那の肩に顔をうずめたかと思うと、灯が消えて・・・・・って、思いっきりな演出。

 まだ、ある。やっぱ、巻き毛にこだわるお母ちゃん。息子の世玉が、「やっとこ」みたいなものを炭火で暖め、お母ちゃんの髪をはさんで、器用にくるくる・・・。で、「お約束」の髪の毛が火事になるシーンが。 

 


3.戦いと恋

 成金雷虎は、婿取り合戦を思いつく。
 街の中に火の見櫓(やぐら)のようなものを組み、頂上にくす玉をぶら下げる。あのくす玉を取ったら、娘をやる。ただし、我が妻、小環と戦ってからだ。櫓から落ちたら負け、どうだ?
 次々に挑戦するが、小環は武術の達人。ことごとく、手もなく蹴落とされてしまう。

 婷婷は、自分をピンチから救ってくれ、弁髪を真一文字になびかせてトラックを駆け、優勝メダルをプレゼントしてくれ、爽やかな笑顔を残して去って行った(と言うか、連行されたのだが)世玉が忘れられないので、婿取り合戦の「賞品」のように座っているのに耐えられず、姿を消す。
 慌てた執事が、横に立っていた下女の肩をつかまえる。(で、彼女が「あっ、まだ昼前なのに」って、どこでもギャグをかますなあ)婷婷の椅子に座らせ、顔にハンカチをかぶせる。

 悪友の杉(シン)、六(ポー)に誘われ、おっとり刀でやって来た世玉。
 地面に打ち込んだ杭の上で戦うのを「梅花椿」というと『漂泊のヒーロー』にあったが、何せ落ちてはいけないので、梅花椿のようなシーンや、細い柱の上で戦うシーンなども続出。
 群集の頭を八艘跳びしながら戦うシーンもある。小環さんは、なかなか手荒くて、世玉を地面に落とすためには、先ず足場をなくすこと!とばかりに、世玉の近くの群集(つまり素人さん)をばかばか倒しまくる。
 結局、最後は騎馬戦みたいになる。相手の馬は手勢が多いが、世玉の馬は杉と六の二人きり。
 雷虎(彼はよそ者である)が、「広州人は騒ぐばかりで、誰も支えようとせんな!」と毒づく。(これが、後で意味を持ってくる)
 杉はやや頼りないが、六は孤軍奮闘。世玉と小環を両肩に乗せたり、自ら相手の馬に頭突きをかましたり。(これも、後で意味を持ってくる)

 対決は、世玉が優勢。さて、いよいよフィニッシュ!というところで、花嫁(役の下女)のハンカチがふわり!と取れる。これがまた、大したご面相。
 婿にされては大変、と世玉は小環の足をあごに当て、引っくり返って「負けた、負けた」と退散する。

 さて、「息子が武術合戦で負けた」と聞いて、収まらないのがお母さん。方家の名誉が汚されてなるものか、と男装し、櫓のところに駆けつけたかと思うと「我こそは、方世玉の兄、大玉!」と名乗りを上げ、小環を武術で圧倒。
 最後は、カンフー映画にけっこう出てくる「ベルばら」的シーンというか(ワンチャイでも、あったな。)小環を横抱きにして、長い帛を片手につかんで、高い櫓の上からすべり降りてきて、優しく地上におろす。
 男勝りの小環だが、武術で負かされたうえに、レディのように扱われ、ときめいてしまう。

 世玉の家に婿取りのお迎えがやって来た。世玉は、女装して(李連杰は女装が昔から好きだな、と思う)、母と共に「大玉は死んでしまったあぁ〜」と慟哭してごまかそうとするが、すぐにばれ、「兄がいないなら、弟をいただいていく」と拉致されてしまう。

 新婚の部屋で向かい合う二人。花嫁は角隠し(?)で顔が見えない。
 世玉は「あんなブスと初体験だなんて、冗談じゃない」と思っているし、婷婷は「どこの誰か知らないけど、手を出してきたら刺してやる」と思ってる。(何とも古典的な「すれ違い」シーン)
 ぷい!と部屋を出た世玉のところへ小環が。説得されるのか?と身構えていると、「あなたの気持ちはよくわかるわ。似たような立場だもの。私は、これまで一度も恋をしたことがなかった。夫は金持ちだし、娘はいるし、今までは幸せだと思っていたのだけれど・・・・・」とマジな告白。そして、世玉は、「兄、大玉」あてのラブレターを預かってしまう。

 世玉はあきれられて家を追い出されようと、翌朝、早くからカネをカンカン打ち鳴らし、おかしな歌をがなり立てる。
 しかし、妻から「無理強いはダメ。優しく諭すのよ」と言われていた雷虎は、世玉に合わせて屋根の上にのぼり、ドラをガンガン叩きながら、歌で対抗する。・・・・・おかしなおっさんや。

 世玉を救いにお母ちゃんが侵入してくる。曲者を追ってきた小環は「・・・・・大玉?」
 お母ちゃんも罪作り。「美人 簾を上げて・・・」と詩を詠う。小環は、「武術だけじゃないのね・・・・・」と放心状態。二人は易々と屋敷を脱出した。
 



4.提督との抗争

 堅物親父が、妙齢の女性の肩に手を置き、何やら語っている。
「君の面倒はみる」、「お腹の赤ん坊は、大切にしろ」

 嫉妬に狂うお母ちゃん。
 ところが、この女性は紅花会のメンバーで、方徳も、同志の連判状を預かるほどの幹部であった。
 会員が集まっていた染物工場へ、提督と配下の軍隊がやって来る。

 お父ちゃんのピンチだ!提督の前に躍り出たお母ちゃんと世玉。ぴったり息の合った親子拳で提督に立ち向かう。
「無影拳だ!」
 「北斗の拳」でいうと、「あたたたたたたたたたたた」ってとこか。拳の影も見えぬほどの素早いパンチの連射。提督は、その速射砲をダブルで受け、防戦一方。めまぐるしく応酬する提督も無影拳か。
 世玉とお母ちゃんは、攻撃を止めたのに、そのまま手を動かし続けている提督に「何してんの?」。まったく、すきさえあればボケようとするなあ。

 世玉は、提督との棒術合戦も何とか振り切り、父親と合流するが、もはや家には帰れない。
 そこで、父親が「いっそのこと、雷虎にかくまってもらおう」と提案し、「有徳の士とお伺いしたので、家族全員で見学させていただこうと思いました」と巧みにおだてる。簡単に、その気になる単純親父。
 世玉も、娘が婷婷だとわかり、すっかりハッピーに。椅子でくつろぎ、お茶を飲む。すっかり乗ってきた雷虎が「じゃあ、明日、縁者を招いて披露宴しましょう!」とぶち上げ、驚いた方徳がぶぶぶうぅ〜!!!とお茶を雷虎の顔面に噴射!
 しかし、有徳の士と持ち上げられているので、鷹揚に「無問題、無問題」(・・・・・と言っていたのでは?モーマンタイと聞こえた)と、怒らない。
 小環が、お母ちゃんに「大玉は来ますね」と言ったもんだから、お母ちゃんも小環の顔にぶぶぶぶぅぅ〜〜!と大噴射するが、有徳の士雷虎は、「無問題、無問題」。

 仕方なく披露宴の宴席に。
 しかし、何と雷虎は、提督を来賓に招いていた。
 父親とお母ちゃんは、何とか顔をごまかそうと両手でゆがめる。いわゆる「アッチョンブリゲ!」ってやつ。
 世玉は卓の下に潜ったままだったんで、提督が「変な婿殿だな」と不審がる。万事休す!
 「お前の好きな肉よ」と箸で大きな肉をつまみ上げるお母ちゃん。(どうしても手を顔から離さないといけないので、お母ちゃんは、眉をひそめ、下唇を突き出し、つまり、思いっ切り「アイ〜ン!」の顔をしてごまかし続けている)
 その肉を世玉の顔の前にかざすが、ぽろっと落とし、提督と目が合ってしまう。はっ!とした提督が、雷虎に「知り合いなのか?」。得意げに「身内です!」
 激昂した提督が、雷虎に銃を向ける。小環が飛び込み、胸を撃たれる。
 弾丸の雨の中、円卓を盾にして逃げる世玉たち。足を撃たれて動けなくなった方徳を残して、彼らは姿を消した。

 瀕死の小環を抱えての悲惨な逃避行。
 小環は、翠花と二人にしてくれと頼む。
「大玉はどこ・・・・・?」
 お母ちゃんは覚悟を決めて、「・・・・・ここに」。
 二人は「美人 簾を上げ 眉を寄せて座す 涙の跡を残し 誰をか恨むや」と詩を詠う。
 小環は「来世では、きっと夫婦になりましょうね」と語りかけて、幸せそうな笑顔で息をひきとる。

 世玉は、単身でこっそり街に戻り、杉の家を訪ねる。
 泣きながら詫びる杉。
 提督に世玉の行方を訊かれ、俺は、世玉なんか知らないと答えた。怖かったんだ。六は、俺を「腰抜け!」となじった。六は、いくら役人に殴られても、俺は世玉の親友だと言い続けたんだ。
 で、六はどうなったんだ!と問い質す世玉。

 六は殺されて、東門に吊るされている。
 世玉は、長縄を持って東門へ。六を降ろして、背中に担ぎ、共に闘う。
 六を埋葬し、復讐を誓う世玉。

 翌朝処刑場へ連行され、ギロチン台に据えられた方徳。そこへ、一頭の暴れ馬が。「今日から俺も紅花会だあ〜!!!」
 馬上の世玉は、刀ぶん回して沿道の兵士たちをなぎ倒し、10本くらいの矢を一度に撃ちかける連弓でばんばん射ながら、処刑台へ。
 提督は、ギロチンの刃をつなぐロープに火をかけ、「これが燃え尽きるまでにお前は俺を倒せるか」と挑発。
 低い床下での闘い。いわば、ずっとコサックダンスしてるような状態。
 提督、足先に何やら凶悪な金具のようなものを付けて蹴りまくる。メリケンサックならぬ、メリケンキック。

 ロープが燃え尽きそう。世玉がロープに取り付こうとすると、提督が足を引っ張る。ハラハラドキドキ。

 いよいよ綱が切れちまう。するするする〜〜と父親の頸元にギロチンの刃が。
 世玉は、懐の連判状を遠くに投げる。それを追いかける提督。そのすきに、すんでのところで世玉が綱の端に取りすがり、必死で引き戻そうとするが、刃が重たくて止められぬ。
「世玉、よくぞ立派に育ってくれた。私のことは、もういいから逃げなさい」と諭す、父。いやだ、いやだとダダをこね、ロープを体に巻きつけ、必死にふんばるが、ずるっ、ずるっ!と刃は父へ近付いていく。
 もう、いよいよ、あかんのか・・・・・目をつぶりたくなってきた、その時、軍隊に押し返されながらも、怒声をあげていたおばちゃんが、ついに兵隊の手をかいくぐり、「私も手を貸すよ!」と綱をつかむ。おばちゃんの子ども2人も一緒に綱引きをする。それを見て、他の群集も綱のもとへ。広州人も変ったのだ。
(なお、提督が追いかけた連判状はニセモノでした)

 助勢に来た紅花会首領の陳会長、お母ちゃん、雷虎、婷婷らも入り乱れての大混戦。(なぜこんなに応援部隊が遅かったか、と言うと、世玉は街で「父処刑」を知らせるビラを見たのだが、母たちを巻き込むまいと、何も告げずに単身で乗り込んでいたのだ。紅花会は独自ルートでそれを知り、お母ちゃんらと合流したようである)

 紅花会の陳会長はクールな中年。提督相手にびしばし決めて、やけになった提督が、ダイナマイトに点火して投げつけ、陳会長をぶっ飛ばしにかかる。
 お母ちゃん、それを見つけて履を投げる。みごと命中して、マイトは逆に提督の方へ。さらに、世玉は、槍を投げつけ、マイトごと昆虫採集みたいに提督の体にピン留め。親子の連携プレーで提督は粉々になってしまった。  
 

 


5.エンディング

 意気揚々と馬を駆っている世玉たち。途中で、陳会長と世玉、婷婷は紅花会の本拠へ行くことになった。

「お父さん、最後にお願いがあるんだ。・・・・・笑顔を見せてよ」
 方徳は照れたように、「来年な」とごまかす。

 婷婷と雷虎もお別れだ。雷虎は世玉に娘を託す。
 去ってゆく3人。と、雷虎は、自分のふところに、ホンモノの連判状が残されていたことに気付く。
 そして、世玉に「忘れ物だ〜〜!」と声をかけて、連判状を放り投げる。
 空高く舞った連判状が、落ちていきながら、ひらひらと開いていく。
 そこには、紅花会の同志の名が。
「総院主 陳家洛   二番 無塵道人   三番 趙半山   四番 文泰来  (なぜか番号が飛んでいるのだが)第十一番 駱冰   (またまた飛んで)第十四番 余魚同   信差(シンパとか、外部顧問とかいう意味なんだろうか)方徳   駐診医生(お付きの医者って意味か?)黄飛鴻   外語翻訳(通訳ってことだろうな)十三姨」なあんてナイスな名前が続き、その連判状に書かれた同志の名前が、そのままスタッフを紹介するエンドロールになって、最後に「劇終」となるしゃれたラストでした。

 いやあ、実に実に、おもしろかった。


(資料)
1993年 香港作品
監督:コーリー・ユン(元奎)
主演 方世玉(フォン・サイヨ) ジェット・リー(李連杰)
苗翠花(ミャオ・チーファー) 世玉の母 ジョゼフィーン・シャオ(蕭芳芳)
方徳  世玉の父 チュウ・コン(朱徳)
雷虎(ルイ・フー) チェン・スンユン(陳松勇)
李小環(リー・シューワン)  雷虎の妻 シベール・フー(胡慧中)
婷婷(ティエンティエン)  雷虎の娘 ミッシェル・リー(李嘉欣)
九門提督 チウ・マンチェク(趙文卓)
陳家洛(チェン・カーロ)  紅花会首領 アダム・チェン(鄭少秋)
麻茹(マク)  方家の召使い チャン・ルン(陳龍)

原題:方世玉
  

★★★★



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