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アジア映画れびゅう(41) 「レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 電光飛龍 方世玉2」  

(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
 
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。


「レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 電光飛龍  方世玉2」

(ストーリー)
 前作「格闘飛龍」のラストで、紅花会会長の陳家洛と同道した方世玉と婷婷。
 紅花会内部では、次期会長の座を狙って、于鎮海という男が暗躍していた。
 会長の名づけ子となった世玉も、于の嫌がらせに遭い、鬱屈した日々を送る。

 日本人武士が持つ「箱」を奪還せよとの使命を受けた世玉は、于の挑発により、失敗したら武術を捨てるとの誓約をした。

 同志とともに旅立った世玉は、武士軍団を発見した。しかし、その場には謎の美女が・・・・・。
電光飛龍



(あれこれ)

 以前に観たことはあったと思うのだが、『漂泊のヒーロー』という本で方世玉のことを読んだので観直すことにした。
  こちらも、内容はほとんど覚えていなかった。


1.マザコンから出世の亡者へ

 前作ラストで両親と別れ、紅花会の本拠へ陳会長とともに赴いた世玉と婷婷。
 本作のトップシーンは、「息子は、あれきり帰らない」と寂しがるお母ちゃん(苗翠花)。そして、婷婷から「また、お母さんのこと考えてる」とすねられている世玉。みごとなマザコン母子関係。

 会の内部で、陳会長と世玉は、名付け親と名付け子(名付けられ子?)。いわば、養子関係みたいになっているようで、陳会長の座を狙っている于鎮海という男から、世玉は「会長の名付け子だからと言って、いい気になるな」とにらまれ、何かと嫌がらせを受ける。

 この于鎮海という男、有力者の血筋であるらしいが、眉毛がなくて、一点非の打ち所のないような「悪党面」をしている。
 ある日、陳会長を、赤ん坊連れの婦人を装った刺客が襲う。その後、于の子供が、その婦人を見たことがある(つまり、その刺客と于は関係がある)と口走る。
 あせった于は「親を裏切るのか」と逆上し、自分の息子を蹴り飛ばす。子供をかばう世玉。

 夜中、世玉を于が襲う。于の得意技は、石の床板を足で弾き飛ばし相手にぶつける足技。
 二人の戦いを分け、世玉を叱る陳会長。
「子供を見殺しにしてもいいのですか?」「・・・・・それが必要なら」

 納得できぬ世玉に、会長は冷たく「母親の元に帰れ」と言い放つ。
 婷婷も「お義母さんの元へ帰ろう」とすすめるのだが、意地になった世玉は、「うるさい!俺は会長になる!」と宣言する。

 


2.ギャグだらけ

 日本の武士が持つ「箱」を奪えという陳会長の命令がくだった。実行部隊の一人に任命された世玉を于が挑発し、世玉は「成功しなかったら、武術を捨てる」と約束する。

 日本人武士なので、ちゃんと(?)日本語をしゃべる。「あぶない!」、「気を付けろ!」とか。「邪魔しないで」とか、時々おかまっぽくなるのもご愛嬌。

 世玉ら、紅花会の精鋭部隊が、川で船上の武士たちと激しい戦いを繰り広げている時、草笛を吹く美女の舟が通りかかる。
 世玉は、彼女をかばい、大きな傘を手に持ち、彼女を背負って「飛行」する。「スウォーズマン 女神伝説の章」で、やはり李連杰扮するリンが当方不敗を横抱きにして空を飛ぶシーンがあったが、そんな感じ。

 武士たちは強く、紅花会の面々は次々に倒される。そこに突然一人の助っ人が!思わず目を疑った。縞のかっぱに三度笠、長い爪楊枝をくわえたその姿は、まさに木枯らし紋次郎。演じているのは、もちろんお母ちゃん。

 たしかに、世玉が出発した直後に、紅花会の本拠には来ていた。家で作った特製スープを差し入れに来て、婷婷が、会長の命で出かけたばかりと説明していたから、そこへ駆けつけることができたのはまだしも理解するが、どこで用意したんや、あんな服装。

 武士の中の首領格の男は点穴の使い手らしく、ツボを突いて世玉を動けなくする。とどめをさそうとするが、謎の美女が目くばせすると、「彼女の言うとおり帰らなきゃ」と、またもかまっぽい台詞を残し去っていく。
 蜂の針でツボを刺し、術を解こうとしたお母ちゃんが、刺されまくって顔がボコボコになるというお約束のギャグも入る。

 武士が日本語をしゃべるのはいいのだが、世玉、お母ちゃん、謎の美女が三人の絡みのシーンでやたら「バカヤロ」と連発するのは、聞いていていい気持ちがしない。

 さて、犠牲ばかりで成果を挙げられなかった世玉は悄然と帰る。意気軒昂なのは、お母ちゃんばかり。陳会長に「私の立場は?」「友人」「え?それだけ?肩書きはないの?」と食ってかかったり、昔の恋人と再会したり。

 李国邦という先輩が、世玉と親しくしていた。事なかれ主義で「安全第一」というのをモットーにしている。
 実は、この李が、修行時代の苗(お母ちゃん)のあこがれの兄弟子だった。

 酒に酔ったお母ちゃんは、兄弟子の部屋に押し掛け、修行時代には遂げられなかった思いを果そうと彼に迫る。ともに泥酔した二人は、そのまま酔いつぶれて、同じベットへ。
 翌朝、我に返ったお母ちゃんは叫び声をあげて、部屋を飛び出る。

 動揺したお母ちゃんは、婷婷に「例えばよ、例えば、主人のいる女性が、男の人と・・・・その・・・・ナニをしちゃったとしたら、どう思う?」と聞く。
 婷婷は、お母ちゃん自身のこととは知らないので「そんな不貞女は八つ裂きよ」と、家事の手も止めずに言う。で、ふと、お母ちゃんの顔を見ると滝のように、汗が流れ落ちている。すごいよ、この汗。ナイヤガラ並み。

 先ほどの美女は、総督の娘安児(モンジ)であった。
 「箱」は今、総督のもとにある。安児は世玉を好いているという情報を得た陳会長は、世玉に、安児を誘惑して箱を奪えという命令を与える。ラブレターまで偽作するなど、手段を選ばぬ陳会長。

 お母ちゃんは、単刀直入にキスしちまえと世玉をけしかける。(この辺から、お母ちゃんが、やたら遊郭のやり手ばばあのように見えてくる)

 後姿で安児と判断した娘にキスした世玉。それが大したご面相の尼僧だと気付き、世玉の顔からは滝が流れる。
「何、その汗?」「遺伝だよ」

 尼僧の集団が「ナムアミダブツ〜」と唱えながら唇を突き出して世玉に迫るシーンはおぞましい。

 


3.戦いと恋

 総督は、婿取り合戦を思いつく。
 屋敷の前に火の見櫓(やぐら)のようなものを組み、頂上にくす玉をぶら下げる。あのくす玉を取ったら、娘をやる・・・・・って、第1作とそっくり。

 「何」、「黄」、「張」、「平」、「陳」という5人の花婿候補(名家のボンボンたちか)が、旗を押したて、部下を引き連れ、くす玉を奪い合う。

 くす玉の下に陣取る安児は、世玉が来ていないのでおかんむり。迫りくるボンボンたちを、腹立ちまぎれに蹴落とす。

 と、門外へ来たのは黒い丸メガネをかけた世玉。「方」の旗を押し立てているのは、お母ちゃん。紅花会あげてのプロジェクトなのか、白づくめの軍団が続いている。
 しかし、門番は、遅刻の者は屋敷に入れぬと拒む。
 すると、世玉はパラグライダーで直接櫓の上へ。

 喜ぶ安児。さあ、くす玉に手が届く・・・という時に一人の謎の男が邪魔に入る。誰だ?顔を見ると、何と婷婷。
 邪魔をするな!とつかみかかる安児。時ならぬキャットファイト、女の戦いが繰り広げられ、割って入ろうとする世玉は両方から叩かれる。
「これだけは言っとくわ、世玉。恥ずかしくないの」
 婷婷の言葉がイタイ。

 お母ちゃんが拱手叩頭して婷婷に「寛大な心を持っておくれ」と頭を下げる。
 やむなく、婷婷は「結婚おめでとう。お幸せに・・・・・」と言って立ち去ろうとする。
 勝ち誇った安児は、世玉に「愛してる、と言って」と迫る。「え?聞こえないわ。もっと、大きな声で」
 世玉の声が響く。「愛してるよ〜!」
 唇をかみしめる婷婷。イタイ。イタすぎる。

 さて、婚礼の晩。さっさとビジネスを済まそうとばかりに「約束だろ。箱はどこだ?」と聞く世玉。
 「愛は取引じゃないわ」と言う安児に「立派な売買だよ」とうそぶく世玉。やな野郎だな、しかし

 箱を受け取り、逃亡する途中で総督に見つかり「大砲に勝つというなら試してみよ」と砲門を向けられる。火縄に火が付けられ、万事窮す!という時に、自分の首に剣を当て、「逃がしてあげて!」と砲門の前に立ちふさがったのは安児だった。
 ききいれてくれないなら、自分の首を掻っ切るという脅しだ。やむなく、総督は火縄を叩き切って世玉を逃がした。これまで謎の美女と書いたものの、森口博子みたいな顔で、私の好みでは・・・と思っていたのだが、ここのシーンはきれいに見えた。いじらしいぜ、安児。 



4.于鎮海との抗争

 任務に失敗したら武術を捨てる。その誓いを果せと迫る于鎮海。

 陳会長は、私がカタをつけると言って、無抵抗の世玉の両手両足の腱を断ち切った。

 于は、陳会長の秘密(奪い合いになっていた「箱」の中の密書には、乾隆帝と陳会長が兄弟であることを記されていた)を知り、一挙にクーデターを起こす。陳会長を捕らえて幽閉し、代わって権力の座についた。

 腱を切られ動けない世玉を逃がすために、兄弟子李国邦は命を落とし、お母ちゃんは捕まった。

 広場に吊るされたお母ちゃんに于一派は卵をぶつけ、ツバを吐きかける。さらし者にして、世玉をおびき出そうという狙いだ。衰弱していくお母ちゃん。

 一方、兄弟子の妻によって洞窟に匿われていた世玉はようやく目をさます。陳会長の刃は、于の目をあざむくため、ごく浅く振るわれたもので、回復も早かったのだ。

 両腰に4本ずつ刀をたばさみ(「ワンピース」のゾロみたい)、「お前たちは于についたといいいながら仲間だ。斬りたくない。道を空けてくれ」と目隠しをする世玉。結局、全部斬っちゃうのだが。

 大学紛争のバリケード(←知らねえか、今時、誰も)みたいに椅子や机がごちゃごちゃと積み重ねられ、そこに足を乗せて、何とか命をつないでいるお母ちゃん。
  憎々しげに世玉を見つめながら、于は椅子の山を蹴倒す。足場を失い、宙吊りになりかけるお母ちゃん。あわてて世玉は、落ちた机を蹴上げて、お母ちゃんの真下に積み直し、足場を確保する。
 世玉と于の間で下に落ちたり、上に戻ったり。井戸の釣瓶のように上下するお母ちゃんがモノ扱いみたいで哀れ。
 息子の奮闘ぶりにお母ちゃんも意識を回復。出た!前作に続く、親子無影拳!
 目まぐるしい応酬で、二人が拳を打ち終わった後も于があたふたと防ぎ続けるギャグも前作通り。

 ついに于は倒された。しかし、とうとうお母ちゃんを吊るしていた縄が切れてしまった。上空から地面に叩き付けられる!「・・・・・あれ?何ともないわ?」「私たちのおかげよ!」
 駆けつけた婷婷と安児が身を挺してクッションになっていたのだ。
 
 


5.エンディング

 馬に乗って紅花会本拠から故郷に帰る世玉たち。

 婷婷と安児は、それぞれ世玉は自分の方が・・・と思っている。なぜなら私に家宝のブレスレット、玉製の腕輪をくれたのだからと自慢しようとして、見せ合って驚く。
「あれ?家宝が二つ?」「ん?たくさんあるよ。会長さんも一つどう?」
 お母ちゃんは、十も二十も「家宝」を連ねて持っており、「贈り物が大事な時代だからね」と配ってまわる。

 最後まで「誠意」の感じられないお母ちゃんであった。

 どうですかね、この作品を「前作と同じくおもしろかった」と評しておられる方も多いようだが、世玉は女性に対して誠意が感じられないし、お母ちゃんは不倫するは、婷婷を踏みつけにするは、で何かすっきりしなかった。

 それと、敵役が憎らしさは十分なのだが、前作に比べると魅力に欠ける。やっぱ、この手の作品は、敵役にもファンがつくくらいでないとね。



(資料)
1993年 香港作品
監督:コーリー・ユン(元奎)
主演 方世玉(フォン・サイヨ) ジェット・リー(李連杰)
苗翠花(ミャオ・チーファー) 世玉の母 ジョゼフィーン・シャオ(蕭芳芳)
婷婷(ティエンティエン)  雷虎の娘 ミッシェル・リー(李嘉欣)
陳家洛(チェン・カーロ)  紅花会首領 アダム・チェン(鄭少秋)
李国邦 コーリー・ユン(元奎)
安児 エイミー・クォック(郭藹明)

原題:方世玉続集
  

★★★



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