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アジア映画れびゅう(39)「シルミド」
(ご注意)思い切りネタばれです。まだ観てなくてストーリーを知りたくない人は、お気をつけください。
また、記憶違いなども多いでしょうが、ご容赦ください。
「シルミド」
(ストーリー)
1968年4月、31名の死刑囚など重犯罪人が密かに実尾島(シルミド)に集められた。
その年の1月、31名の朝鮮人民軍特殊部隊が大統領暗殺を図って青瓦台を襲撃した。684部隊(68年4月結成)は、その報復のために結成されたのだ。
目的はただ一つ。金日成主席暗殺である。
成功すれば、罪が許されるばかりか祖国の英雄だ。
その言葉を信じて、過酷な訓練を重ねること3年。
ところが、時代は南北融和へと流れを変え、決行予定のまさに当日、上層部から作戦中止の命令がくだった。
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目的を失い、荒れる訓練兵たち。
今や、彼らは絶対に漏らしてはいけない国家機密そのものである。上層部は、機密保持のため、さらに、ある命令をくだした・・・・・
(あれこれ)
訓練兵たちは、砂浜に上半身裸で正座させられ、背中に焼いた刻印を押し付けられる。悲鳴をあげて、海に飛び込む訓練兵たち。ひょうきん者のウォニなどは、押し当てられる前に逃げ出す始末。
そんな中で、歯を食いしばったまま耐えた3人の男がいた。彼らは班長に指名された。
「なぜ耐えた?」というチェ隊長の質問に、カン・インチャンは「金日成の首を奪るためです」
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カン・インチャン第3班長 |
大杉漣 |
彼は、父が北朝鮮に亡命したため、就職もできずぐれてしまって、愛する母を残して死刑判決を受けた、いわば北に人生を潰された男だった。
常に寡黙な翳をたたえたその雰囲気は大杉漣とか、意外と、マジメな表情の時の明石家さんまを思わせる。
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ハン・サンピル第1班長 |
千原兄弟ジュニア |
クンジェ第2班長 |
品川庄司の品川 |
2番目の男は、耐えた理由を訊かれ、「奴(カン・インチャン)が耐えたからな」と答えた。やたらキレやすい危険な男、ハン・サンピル。
漫才千原兄弟の弟、ジュニアとかドラゴンゲートのプロレスラーCIMA(シーマ)に似ている。
3番目の男は無骨な感じの中年男だったが、「自分は長年ヤクザの頭目を張っていたので、大抵のことは耐えられます」。
おとなしめの温和な雰囲気だが、インチャンとサンピルが喧嘩をしようとした時、ドスを転がして「負けた奴は死ね。そこまでの覚悟があるのか」と割って入り、殴りかかったサンピルを一撃でKOしてしまう。
綱渡り訓練で負傷し、送還されそうになったパク・チャンソクを「雑用係がいれば、我々も訓練に集中できます」とかばうなど、なかなかおいしい役どころ。
雰囲気としては、漫才品川庄司の品川とか、NOAH(ノア)のプロレスラー杉浦貴ってとこか。
訓練兵には一人ずつ指導兵がつき、教育隊全体のリーダーがチェ教育隊長。
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←
チェ教育隊長 |
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→
南州太郎 |
実に渋い。渋いと誉めといてなんなんだが、似た人物というと、コメディアン(「お邪魔しまっす」という一発ギャグを持つ)南州太郎とか、思い切ってバカボンのパパとか。
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←
チョ2曹 |
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→
渕正信 |
サブリーダーが、鬼軍曹のチョ2曹と、過酷過ぎる訓練に異議を唱える良識派のパク2曹。
チョ2曹は、全日本プロレスの渕正信に似ている。
パク2曹は、甘いマスクで、そうだな、サッカー日本代表の中田浩二とかにも少し似ている。
機密保持のため684部隊全員の抹殺が指令された。
意外にも、この命令に反発したのはサディスティックなまでに訓練兵をいじめ抜いていたチョ2曹。
これまで常に訓練兵の人道的な扱いを訴えていたパク2曹は、冷徹に命令を遂行しようとする。
「貴様はこんな卑怯な命令に従うくせに、これまで善人面してたのか!」とパクの襟首をつかむチョ。
「命令に従わなければ俺たちも殺される。もうすぐ生まれてくる赤ん坊の顔も見てないのに死ねるか!」
訓練兵に同情的なチョがいては支障が出ると考えたパクはチェ隊長に進言して、「兵助命のため最後の嘆願に行け」という名目で出張させる。
チョは、厄介払いされているとは知らず、本気で訓練兵を助けようと出張に出かけようとする。
実は、チェ隊長は、外にインチャンがいると知りながら、チョとパクに上層部の命令を伝えた。いや、わざわざインチャンに水を汲んできてくれと命じていたのだから、あえて聞かせたのだ。
インチャンたちは命令の内容を既に知っており、島を出るチョを見かけた彼らは、今日が決行の日なのだと気が付いた。
動揺が隠せないサンピルをチェがいぶかしげに見たので、クンジェが「いや、こいつはチョ2曹に、甘いものでも買ってきてくださいと頼もうとしたんでしょう。忘れてください」とごまかす。
万感の思いを込めて、敬礼しながらチョを見送るインチャンたち。
指導兵たちに「奴らの寝込みを襲い、明け方までに全員片付けるぞ」と命令するパク。しかし、先に火を噴いたのは訓練兵たちの銃だった。
訓練兵に囲まれた時、パクは「お前らは、既に戸籍も抹消され、死んだものとして扱われているのだ」という衝撃的な事実を告げる。
チェ隊長室に飛び込んだインチャンに隊長は、「国家命令だったが、お前らを裏切ることはできなかった。しかし、こんな事態を招くことはわかっていたのに何もできなかった俺は無能、無責任な男だ。さあ、撃て。さもないと俺がお前を撃つぞ」と静かに告げる。
しかし、インチャンはどうしても引き金を引くことができず、部屋を出ようとする彼が目にしたのは、自分で頭を撃ち抜いて倒れる隊長の姿だった。
インチャンらは大統領に訴えようと民間バスを乗っ取るが、軍隊に囲まれる。
インチャンらは乗客らを解放し、手榴弾で自爆の途を選んだ。
北のゲリラが反乱というラジオニュースが流れ、「彼らは共産ゲリラなんかじゃない。愛国的な韓国軍だ」と救いに駆けつけるチョ2曹。
ジープから飛び降りた時に、持っていた紙袋が破れ、飴がこぼれるシーンには泣ける。チョは約束を守っていたのだ。
北に潜入するため彼らは3年間、戦闘訓練のほか、北に関する情報を叩き込まれてきた。
狙撃兵の射撃を受け、瀕死のパク・チャンソクは「へへ、北の歌しか思い出せねえ」と自嘲する。
♪民衆の旗 赤旗は 闘士の屍(かばね)を包む♪
訓練兵すべてが合唱する。それは、誰しも同じ想いなのだ。
戸籍を抹消され名前を失った彼らは、自決の前に、腕から滴る血潮で、バスの壁に自らの名を記す。
たとえ、数秒後には粉々に砕け散ろうと刻み付けずにはおれない。俺は名もない共産ゲリラではなく、国を愛するハン・サンピルなのだから。
いわく、実際には684部隊を殺す命令は出ておらず、待遇に不満だった訓練兵たちの暴動にすぎないのだ、とか
いわく、映画じゃ乗客を逃がしているが、本当は犠牲者も出ているとか、
いわく、訓練兵たちのこれまでが描かれてないからドラマに深みがないとか(←しかし、31人全部にそれをやってたら、いったい何時間の映画になるんだよ)
いわく、やたら荘重な音楽をつけて、無理矢理「感動」を強制しているとか、
いろいろツッコミどころはあるでしょうが、これだけ力業(ちからわざ)の映画が、日本にはなかなかないのも事実だと思います。
(資料)
2003年 韓国作品
監督:カン・ウソク(康祐碩)
主演 |
カン・インチャン第3班長 |
ソル・ギョング(薜景求) |
ハン・サンピル第1班長 |
チョン・ジェヨン |
クンジェ第2班長 |
カン・シニル |
チェ教育隊長 |
アン・ソンギ(安聖基) |
チョ2曹 |
ホ・ジュノ(許峻毫) |
パク2曹 |
イ・ジョンホン |
ウォニ |
イム・ウォニ |
パク・チャンソク |
カン・ソンジン |
原題:実尾島
SILMIDO
★★★★
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