『原人論』 宗密(780〜841) |
『十住心体系』 空海(774〜835) |
序文
1 儒・道・仏の説く人間論の要点
2 三教の特色とその調和
3 この論の目的と構成
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【第一住心 倫理以前の世界】
第一住心 異生羝羊心(いしょうていようしん)・・・倫理以前の世界
無知な者は迷って、わが迷いをさとっていない。雄羊のように、ただ性と食とのことを思いつづけるだけである。 |
第一編 儒教・道教に従う学徒の迷執を斥ける(斥迷執第一)
1 儒・道二教の人間論
2 二教批判の理由
3 大道・自然・元気・鬼神・天命などの各説の矛盾点
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【第二住心 倫理的世界(世間一般の思想:例 儒教・仏教の倫理道徳)】
第二住心 愚童持斎心(ぐどうじさいしん)・・・倫理的世界
他の縁によって、たちまちに節食を思う。他の者に与える心がめばえるのは、穀物が播かれて発芽するようなものである。 |
第二編 仏法の真意がまだ充分に示し尽くされていない前階梯の教えに従う立場を偏狭で浅薄であると斥ける(斥偏浅第二)
1 仏教内の教理と修行の深浅・・・・五種の宗旨に分類
2 人天教の要旨とその人間論への批判
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【第三住心 救済的宗教(例 道教・バラモン教、インド諸哲学】
第三住心 嬰童無畏心(ようどうむいしん)・・・宗教心の目ざめ
天上の世界に生まれて、しばらく復活することができる。それは幼児や子牛が母にしたがうようなもので、一事の安らぎにすぎない。
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3 小乗教の要旨とその人間論への批判 |
【第四住心 声聞の教え(小乗仏教)】
第四住心 唯蘊無我心(ゆいうんむがしん)・・・無我を知る
ただ物のみが実在することを知って、個体存在の実在を否定する。教えを聞いてさとる者の説は、すべてこのようなものである。
【第五住心 縁覚の教え(小乗仏教)】
第五住心 抜業因種心(ばつごういんじゅしん)・・・おのれの無知を除く
いっさいは因縁よりなることを体得して、無知のものを取り除く。このようにして迷いの世界を除いて、ただひとり、さとりの世界を得る。
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4 大乗法相教の要旨とその人間論
5 大乗破相教の要旨とその人間論・・・・法相教への批判を含む
6 大乗破相教への批判
7 四教に対する結論 |
【第六住心 法相宗(大乗仏教に準ずるもの)】
第六住心 他縁大乗心(たえんだいじょうしん)・・・人びとの苦悩を救う
一切衆生に対して計り知れない愛の心をおこすことによって、大なる慈愛がはじめて生ずる。すべての物を幻影と観じて、ただ心のはたらきのみが実在とする。
【第七住心 三論宗(大乗仏教に準ずるもの)】
第七住心 覚心不生心(かくしんふしょうしん)・・・いっさいは空である
あらゆる現象の実在を否定することによって、実在に対する迷妄を断ち切り、ひたすら空を観ずれば、心は静まってなんらの相(すがた)なく安楽である。 |
第三編 直ちに仏法の真源を顕す教え(直顕真源第三)
1 一乗顕性教の要旨
2 一乗顕性教への批評 |
【第八住心 天台宗(真実の大乗仏教)】
第八住心 一道無為心(いちどうむいしん)・・・すべてが真実である
現象はわけへだてなく清浄であって、認識における主観も客観もともに合一している。そのような心の本性を知るものを称して仏(大日如来)というのである。
【第九住心 華厳宗(真実の大乗仏教)】
第九住心 極無自性心(ごくむじしょうしん)・・・対立を越える
水にはそれ自体の定まった性(しょう)はない。風があって波が立つだけである。さとりの世界はこの段階が究極ではないという戒めによって、さらに進む。
【第十住心 真言宗(秘密仏教・・・密教)】
第十住心 秘密荘厳心(ひみつしょうごんしん)・・・無限の展開
密教以外の一般仏教は塵を払うだけで、真言密教は庫(くら)の扉を開く。そこで庫の中の宝はたちまちに現れて、あらゆる価値が実現されるのである。 |
第四編 仏法の真源による諸教の再評価と人間論の総括(会通本末第四)
1 真実の心性・法性から身心の諸様相へ
2 真性の原点としての顕性の意義と如来蔵
3 諸教の評価とその会通
4 人間論の総括 |
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