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(No56) シンポジウム みんなで考える「商店街を100倍楽しくする方法」聴講記 その1

 


 平成22年11月27日(土)、旭区民センターで上記シンポジウムが開催されました。

 その中のパネルディスカッションの聴講録を掲載します。
 




区長
 皆さん、こんにちは。本日、コーディネーターとして進行役を務めさせていただきます旭区長の山本です。よろしくお願いします。

 それでは、私からパネリストの皆さんをご紹介します。

 まず最初に、先ほど基調講演をいただきました大阪工業大学工学部空間デザイン学科教授の宮岸幸正様です。

 続いて、地域に愛される商店街をめざし、積極的に商店会の諸活動に取り組んでいる、旭区の商店街を引っ張る頼れる会長、旭区商店会連盟会長の安田恵三様です。

 続いて、「地域に何が貢献できるんや?」、「情報発信とネットワークづくり」の2つをキーワードにまちづくり運動を展開中。商店街や地域の活性化を語らせれば日本で一番熱い男、神戸市東灘区甲南本通商店街サカエ屋精肉店代表、海崎孝一様です。

 最後に、現在京阪グループ流通業統括責任者として京阪百貨店をはじめグループ流通業6社を統括している流通業のオーソリティ、京阪電気鉄道株式会社取締役常務執行役員、加藤好文様です。

区長  では、さっそくパネルディスカッションを始めます。

 よく商店街は「まちの元気のバロメーター」と言われます。旭区の商店街の現状などについて安田会長に伺います。


安田会長
 旭区には商店会連盟に所属している商店街が14。会員数は753となっています。

 私は、今市商店街振興組合に所属しているんですが、今市のオーナーの平均年齢、どのくらいやと思われますか?
(会場から「75歳!」という声あり)

 75歳・・・・・・までは行かんのですが、実は70歳に達しているんです。そないなると、なかなか「よぉし!もう一旗あげたろ!」という気ぃにはならんのが現実です。

 私が商売を継いだ昭和36年から平成3、4年頃までは今市商店街のメンバーも154名ほどやったんですが、平成6年頃から減り始め、今では108名。
 つまり154−108で46軒くらいが店を閉めたとゆうことです。

 「空き店舗」と貼り紙して次の借り手が見つかればいいが、そうでなければシャッターおりたままとゆうことになります。

 旭区は高齢化が進んでおりますので、買物の時怪我をされないよう気をつけんといかん。また、防災や防犯にも心がけています。今市商店街だけで32台の防犯カメラを設置しています。先日、教会に消火器を投げ込んでた人間が捕まりましたが、あれも今市商店街の防犯カメラの映像が逮捕の決め手となりました。

区長  高齢化が商店街にとっても大きな問題となっているということでした。

 さて、最近の不景気も商店街の活気に悪影響を及ぼしているのは間違いないと思いますが、海崎様は平成7年の阪神・淡路大震災で店が全壊するという打撃を乗り越えられました。そうした貴重な経験、逆境から活気を取り戻す秘訣をお話ください。

 また、私は先日甲南本通商店街に行きましたが最寄駅(JR摂津本山)から遠いなど、交通は決して便利ではないなと感じました。
 旭区の商店街も立地条件は様々です。そうした立地条件が有利でない商店街の取り組みについてもあわせてお願いします。  


海崎氏
 先ほど「日本一熱い男」とご紹介いただきましたが、ご覧のとおり、熱いというより「暑苦しい」男です。(笑)

 震災では、商店街の8割が全壊しました。いわばリセットで、一からやり直しということです。
 東灘区は、灘中、灘高がすぐそば、甲南大学もあり、いわば「あこがれの文教地区」というイメージもあって、たくさんのマンションが建ち、ニューファミリーが流入してきました。
 それで、珍しい「多子高齢化」という地域になったんです。

 ここできっちり区別しておいてほしいことが三つあります。
 一つ目は、「活性化と販促は違う」ということです。まちづくりや地域の活性化と、自分のところだけの販売促進は全く違います。
 二つ目は、三宮や元町の商店街のように交通の便が良くてよそから客がどんどん来る都心商業と、うちの商店街のように地元の人しか来ない地域商業とがあるということです。
 三つ目は市場と商店街は違うということです。市場というのは肉や魚など生鮮食料品を売っているところ。商店街は洋服など物販の総合的な場所です。

 商売人というのは勉強をしません。つまり情報を取ろうとしないんです。朝になったら店のシャッター開けて、昼になったら昼寝して夕方になったらシャッター閉めて、酒呑んで寝る。 孫の成長だけが楽しみ・・・・そんな人間ばっかりです。
 景気のええ頃は、ほっておいても物が売れました。地域から協力を求められても商売に忙しくて時間がないから、どうしたか・・・と言うと、金だけを出していた。それが今でも続いていて、町会の方も商店街に何を求めるかと言えば、寄付だけを求める。

 我々はもう金がないから、身体を動かすんです。地域で盆踊りとかあると聞けば、自分でビールを担いで持っていく。
 商売人が話をすると地域の人はこうするんです。(眉につばを塗る仕草)何か、儲けようと思って話をしてるんじゃないかと。それが分かってもらえるようになるまで10年かかりました。地域に飛び込んでいかないとだめです。

 昔は行政からけっこう補助金とか出てました。今は行政も金がないのに、いまだに補助金くれとか言ってる。口開けて文句ばっかり言ってたら、誰にも相手にされません。 

 よく商店街の活性化とか言われますが、そんな特効薬を発明したらノーベル賞もらえます。特効薬はないというのが現状です。

区長  地域に飛び込んでいかないとだめ、というのは我々行政も全く同じです。

 ここまで実際に商売に携わっている両名に話を聴きました。
 この辺で視点を変え、商店街の活性化に向け、加藤様から流通の専門家の立場から提言できることがありますか。


加藤取締役
 旭区に商店街が14あるとのことでしたが、おそらく商店街の密度は日本一ではないでしょうか。それだけ地元に支持されているということだと思います。

 しかし「お客様目線」で気付いたことをいくつかお話します。

 一つ目は、最近は働く主婦が多くなっているのに、商店街は閉店時間が早すぎると思います。勤め帰りに買物に寄ろうと思っても利用できない。
 二つ目は、買いたいものが揃っている。1箇所ですべてが揃うというのが「ワンストップ」といって商売の大原則です。しかし商店街の店が歯抜け状態となるとワンストップにならない。ですから、閉店になった店を補充するよう誘致することも必要です。
 三つ目は、後継者の観点で言うと、若い方が出店しやすい状況をつくること。つまり若い人が店を出そうとする時にはテナント料を安くしたりしてはどうでしょうか。

 ショッピングモールというものをつくっていくにはタウンマネジメントの感覚が必要です。そのためには商店街どうしがバラバラではなく、お互いに団結することが大事です。

 地域の方に自分の台所のように思ってもらうこと。買ったものの「宅配」や、「買物帰りには送りますよ」ということでタクシー券を配るとかいろいろ考えられると思います。

区長  開店時間の延長など具体的で貴重な提言でした。

 宮岸教授は先ほど学生の新鮮な視点による活性化策を紹介されましたが、そのほかにもあるでしょうか。 

宮岸教授
 学生といろいろ話をしていると彼らが求めるものの共通点が見えてきました。

 一つ目は、ビルの中の買物は嫌いということ。ビルの中より路上がいいということで、中崎町などが好きです。
 二つ目は、手作り感覚が好きです。古着や中古品に抵抗感がなく、フリマ(フリーマーケット)が好きです。
 三つ目は、おじいちゃんやおばあちゃんが好き。なぜ好きなのか聞いたら、癒されるって言うんですね。
 四つ目は居酒屋。気取った店より、立ち飲み屋なんかに連れて行くと喜びます。

 あとは温泉なんかも好きですね。

 こうした我々にとっては当たり前なものが、彼らにとってはレトロで新鮮に映る。この辺にヒントがあると思います。

 個々の提案としては、通りの空間を求めたい。つまり路上で休憩したいんですね。彼らがコンビニが好きなのも滞留空間を求めているんです。

区長  学生たちの好みを聞いていると、商店街にも十分チャンスがあるように思えてきました。

 今は大阪工業大学の学生のアイデアでしたが、常翔学園高校でも従来からキャリア教育に力を入れておられ、市役所職員になったつもりで違法駐輪やごみ減量など行政課題、地域課題を研究する発表会が先日ありました。
 そこでは、商店街活性化という課題についても(1) 商店街のアーケードや壁、地面などをきれいな色で塗る「カラフルストリート」、(2) 商店街対抗大マラソン大会、(3) 商店街全体のオリジナルチラシなどが提案されていました。

 若い学生が商店街について考えてくれること自体が将来につながるものだと思います。頭から費用が・・・とか現実性が・・・とか言って否定せず、このようなフレッシュな感性を大切にしなければ、と思います。

 さて、商店街の若手層が既に取り組んでいることもあると思いますが、安田会長から紹介していただけますか。


安田会長
 若手とじっくり話し合う機会というのがなかなかないですね。これは損失や思います。

 うちの商店街の青年部長は40歳です。女性オーナーで一番若い人は、摂南大学の学生です。こないだ180軒にアンケートを配っているんで「何にするねん」て聞いたら、商店街の活性化というテーマで卒論(卒業論文)書くゆうてました。
 「できたらちゃんと見せてや。やってみるから」ってその子に言いました。(笑)

 よそでは、青年部長が60歳(笑)てとこもあるそうです。うちは違いますが。
 若手を育てるためには、任せる、やらせるだけの度胸が必要だと思います。
 うちの商店街でも、福引の景品を若手に任せました。私らが選ぶと同じようなものになってしまう。若手が考えたら面白い景品になりました。ホテルのお節、ウィンドーとか何とかいうゲーム(注 多分Wiiのことだろう)、空気清浄機とか。

 区商連としては今年60周年を迎えました。区内では母と子の共励会という団体も60周年を迎えたので、これまでほとんど関わりがなかったんですが記念行事をお互いに協力してやることにしました。こんなことは初めてのことです。 

区長  母と子の共励会はいわば福祉系の団体ですから、産業系の区商連がタイアップするというのは、いわば異業種コラボですね。

 さて海崎様は私と同年代ですが、これまで商店街の若手として商店街の活性化を引っ張ってこられたと思います。何か旭区商店街の若手層に対するアドバイスをお願いします。 


海崎氏
 40代だと若手ですが、50代になったので今は中堅になったかなと思っています。

 先ほども言いましたが勉強せえへん人間ばっかりなんです。就職難で、会社に就職できないから家業を継いだという人間が多い。
 「〜だから、できなかった」というできない理由を探す人間、評論家みたいな人間が多い。

 商店街の空き店舗対策でも、僕らガンガン商売やってもろた方がいいんですが、NPOとかコミュニティビジネスが多い。それより若い子らが集まれる場所にした方がいいんじゃないかなと思います。

 あと、僕は活性化の原点は飲み食いやないかな、と思っています。一緒に飲んだり食べたりしているうちに親しくもなるし、アイデアも出てくる。頭の固い役員は「飲み食いにお金を使うなんて」とか言うけどね。

 震災の時はお風呂がつぶれてしまって大変でした。それで、温泉掘ろか、なんて話で大いに盛り上がった。こうした夢を語れることが大事です。
 地域の人に、商店街の集会所を光熱費くらいで場所提供したら喜んでもらえた。これも「何で俺らの建物を・・・」なんて言う役員もおったけど。

 それと震災の時、つくづく思ったけどあれだけ大きな災害になってしまうと中途半端な準備や建前は役に立たないということ。結局は自分の身は自分で守らんといかんいうことが分かりました。

 


  後半に続きます。

 お疲れさまでした。 
 
  

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