移動メニューにジャンプ


陶磁器ゼミ(2) 美術史ゼミナール「中国の陶磁器」その2(基礎編:「やきもの」とは何か)

1 はじめに

 前回の先生の説明では、1回目の講義は「新石器〜春秋時代の陶磁器」をテーマにするとのことであった。
 しかし、今回の受講生の「好きな陶磁器」(受講申し込みをする際に提出した作文)や、演習課題として取り上げた陶磁器をみると、比較的新しい時代にかたよっている。
 そこで、当初「新石器〜春秋」、「戦国〜六朝」、「隋唐・五代」の3回くらいで考えていたところを「新石器〜漢」、「漢〜五代」の2回にして、その分「宋・元」、「明・清」をボリュームアップしたいとのことであった。

 私にとっては、願ったりかなったり(すべったり、ころんだり・・・・・ふ、古いギャグ)である。

 先生の講義と、私の自習の成果とを適当におりまぜて書いていくこととする。
 誤りがあれば、ご指摘いただければ幸いです。
 では、第1回講義「中国原始・古代の陶磁器」のはじまり、はじまり。




2 第1回講義「中国原始・古代の陶磁器」

1.はじめに 〜 やきものとは何か 〜


 そもそも「やきもの」とは何なのか。また、今後も頻出するであろう基礎用語などについても解説があった。

やきもの (総論)
粘土や陶石を素材として用いて、成形し焼成したものの総称。陶磁器(ceramic)ともいう。
(1)
焼き上げ方による分類
野焼き 平地などで薪や藁を燃やし、「おき」の上に器物をのせ回りや上に薪等を積んで焼成する。
(かまkilin) (総論)
やきものを焼くための焼成炉
目的別分類 素焼窯
本焼窯
絵付窯
熱源別分類 薪窯
石炭窯(※注1)
ガス窯
重油窯
電気窯
その他
立地別分類 地下式
半地下式
地上式
形状別分類 ロストル窯(※注2)
窖窯(あながま。※注3)
大窯
登窯(のぼりがま。※注4)
円窯
角窯
その他(笹かま、かにかま、四六のがま・・・・・うそです)
炎の流れ別分類 昇炎式窯
倒炎式窯
横炎式窯
(2)
焼成方法による分類

 

酸化炎(焔)焼成 完全燃焼より酸素の多い火炎で焼成すること。
素地や釉薬中の鉄分等の鉱物が酸素と結びついて(酸化して)発色する。
中性炎焼成 酸化炎と還元炎の中間的な、一酸化炭素や酸素を含んでいない状態の火炎で焼成すること。
還元炎焼成 燃焼に必要な酸素の供給が不足し、炭素の多い火炎で焼成すること。
素地や釉薬中の鉄分等の鉱物の酸素が奪われて(還元して)発色する。
(3)性質等による分類 土器(eathenware terracotta) ・素地は黄褐色、赤褐色、黒褐色。
・素地に吸水性あり、透光性なし。釉薬なし。
・粘土を主原料に、砂粒竇を配合して素地とし、やや軟質に焼き上げる。
・焼成温度1000度以下で野焼き、又は窯で焼く。
・中国では紅陶、灰陶、彩陶、黒陶、白陶など。
陶器(poterry) ・素地に吸水性あり、透光性なし。釉薬をかける。
・粘土を材料とする。
・焼成温度の低い軟質陶器・鉛釉陶器をいう。
・褐釉陶器、緑釉陶器、三彩陶器など。
b器(せっき stoneware) ・陶器と磁器の中間的存在で、こうした分類をとらないことも多い。
・粘土や熔けやすい陶石などを材料とする。
・1200度以上の高温による焼締陶や施釉陶をいう。
・灰釉陶器、印文硬陶、青磁など。
磁器(porcelain) ・素地は白色
・素地に吸水性なし、透光性あり。
・陶石を主原料に長石、カオリン、珪石等を配合して素地として、硬質に焼き上げる。
・白磁、青花、釉裏紅、五彩など。


注1 『中国史』(宮崎市定)によると、中国では石炭は比較的古くから発見されていたが、煙が多く、臭気も強いためあまり好まれていなかった。
 しかし、人口が増加し、土地の開発が進んたため、森林が伐採され木材が払底し、やむなく唐末頃から石炭が燃料として使用されるようになったとのことである。

 また、『故宮 3』(陳舜臣ほか)によると、石炭は強い火力を持つが、燃えるとき多くの酸素を必要とする。高い温度と十分な酸素のため、釉薬の中の鉄分が完全に酸化して、酸化第二鉄となり、黄色の色合いを呈する。
 河北省定窯(ていよう)の白磁は、西暦1000年頃を境に、色が青みを帯びた白から、牙白(がはく)とよばれる黄色みがかった白に変わるが、これは燃料が薪から石炭に変わったことを意味しているとのことである。

注2 平窯。火の通りを良くするため、床に溝を掘ったり、格子状にしている。
 『広辞苑』では、ロストル(rooster オランダ語)は「火格子」とある。よくガスレンジの真ん中の魚焼き網みたいなとこに「ロースター」とあるが、これのことかな。

注3 元々山の斜面に穴を掘って窯とした。現在では、耐火煉瓦などを用いた単室の窯をさすことが多い。

注4 山麓の傾斜などを利用して、3室ほどの焼成室を設け、下方の焚き口の火力で上部まで焼き上げる。
 傾斜がきついほど火力が上まで伝わりやすい。日本では京都で三寸勾配(約17度)、信楽で三寸五分勾配(約20度)などと違いがあるそうだ。
 焚き口に近い第1室は、窖窯に近い状態なので灰被りなどの窯変が起こりやすいそうである。

 





3 土器、陶器、b器、磁器の分類(再論)

 上記の区別について、『ブリタニカ国際大百科事典』に載っていたので、重複部分もあるが紹介する。

分類 素地の吸水性 素地の色 釉薬 焼成温度 その他
土器 あり 有色 なし 約500〜1000度  
陶器 あり 不透明(有色又は白色) あり 約1000〜1300度 軟質陶器 低火度(800度戦後)で素焼きしてから釉をかけ再度焼き上げる 楽焼、ヨーロッパのファイアンス、マジョリカなど
硬質陶器 高火度(1200〜1300度)で素焼きして釉をかけ再度焼く 萩焼、薩摩焼、ヨーロッパ現代陶器
b器 なし 不透明 あり 約1100〜1300度 最良の原料を用い、高度の技術を駆使して作られる上質のやきもの。外観上は陶器に近く、金属性の清音を発するなど性質は磁器に近い
磁器 なし   あり 約1200〜1450度 軟質磁器(1200度前後で焼成する) 原料中に水晶の粉末とアルカリ分を加え、水晶がガラス化した性質を利用して磁器に特質を似せている(疑似磁器) メディチ磁器
(1575年にフィレンツェで創始)
長石分の多い軟質磁器の原料に骨灰を加えたもので、低温(1150度前後)で焼成でき、不良品が少ない ボーンチャイナ
(18世紀にイギリスで創始)
装飾品、美術品
硬質磁器(1300〜1450度で焼成) 低火度磁器(1300度前後で焼成) 食器その他一般磁器製品
高火度磁器(1450度前後で焼成) 理化学用器具、高級食器、工芸品など



 


4 次回予定

 あと、今回の講義は、新石器時代以降漢代くらいまでの陶磁器について特徴等の説明があり、その後、館蔵品の前漢時代の「灰陶有蓋リ」と、同じく後漢時代の「緑釉狩猟文博山炉」を鑑賞した。
 少し分量が多くなってきたので、続きは次回といたしたい。
 



 それでは、次回のゼミ受講録まで、ごきげんよう♪

 

inserted by FC2 system