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陶磁器ゼミ(17) 美術史ゼミナール「中国の陶磁器」総集編 「中国陶磁セレクション 〜美術史ゼミナールの成果〜」報告その1

はじめに

 楽しかった美術史ゼミナールもとうとう終わってしまった。
 最後に、ゼミ生の皆さんと企画し、陳列した展示会、いわば卒業発表の内容を、ごく簡単に振り返ってみたい。

 展示会の企画段階で、いくつかの意見が出た。今まで他の展示会で感じた不満をあげて、それが解消されるようなものにしようというのである。

 第一の意見としては、たいてい時代順に陳列されるが、私たちはテーマ別にしようというものであった。
 隋・唐の時代として代表的なもの数点、宋代で数点、明で数点・・・というより、青花(染付)なら青花だけで時代順に並べる。そして、時代による「青」の違いや文様の特徴などがわかるようにできないか、というのだ。

 それと、解説文が細かくて読みにくいし、専門用語は読み方がわからない・・・・・ということで、解説文の文字も大きめに、そして、少なくとも作品名にはすべて振り仮名をふっていただいた。

 写真も十分残ってないし、内容もうろ覚えだが、雰囲気だけでもつかんでいただけたら・・・・・と思う。


 まずは、少し時代が古いところから。

(左奥)
 灰陶 縄蓆文鬲(かいとう なわむしろもん れき。商後期〜西周時代前期。紀元前11世紀。高さ11.6、口径16.1)
 足が袋状になっている煮炊器を鬲(れき)と呼ぶ。

(中央手前)
 灰釉 有蓋リ(かいゆう ゆうがいき。前漢。紀元前1世紀。高さ21)
 リとは三脚のつく釜を指す。本器は長い取っ手がついている。
 下に鏡が置いてあるのは、底に釉薬が残っているのを見せるためである。
鼎など

(右奥)
 灰陶 印花幾何学文有蓋鼎(かいとう いんかきかがくもんゆうがいてい。前漢。紀元前1世紀。高さ22.3、最大幅37.8)
 鼎とは、2個の取っ手がついた三足の煮炊器。蓋の上面、肩部、胴部上半に菱形、二重円圏の印花、凹線が施される。




 続く展示ケースは、「竃(かまど)」関係を三つ集めている。

かまど (左手前)
 灰陶 竃(かいとう かまど。後漢。1世紀。高さ10.5、長さ29、幅22)

(中央奥)
 加彩 竃(かさい かまど。唐(盛唐)。8世紀。高さ19.7、長さ23.5、奥行き15.3)
 素焼きの紅胎に青と青の顔料で彩られた竃を模した副葬品(明器)。

 大鍋がかけられ、屋根付きの煙突には太陽と月の形が彫り抜かれている。また、焚き口の周囲には宝相華など植物文様が施されている。

(右中)
 褐釉 竃(かつゆう かまど。前漢末〜後漢初頭。1世紀。高さ10.7、長さ19.6、奥行き15.7)
 馬蹄形の竃の明器。中央の釜の周囲にはスッポン、魚、包丁などが、焚き口には男性と女性の像が表わされている。

 なお、柱の向こうにちらりと見えているのが白磁黒釉 三足盤(河南省鞏県窯?唐(初唐)。7世紀。高さ4.8、口径27.9)。



 続くケースは、「枕」を六つ集めている。

(左手前) 
 白釉掻落 束蓮文八角形枕(はくゆうかきおとし そくれんもんはっかくけいまくら。河北省磁州窯。北宋。11世紀。高さ11.5、幅27.2、奥行き23.1)

(左中)
 白釉刻花 牡丹文如意頭形枕(はくゆうこっか ぼたんもんにょいとうがたまくら。河北省磁州窯。伝河北省鉅鹿出土。北宋。11〜12世紀。高さ17.5、幅29.5、奥行き31.1)
枕

(左奥)
 三彩劃花 庭園図長方形枕(磁州窯系。金。12〜13世紀。高さ14.8、幅46.9、奥行き19.6)

(右手前)
 三彩劃花 蓮池魚藻文長方形枕(さんさいかっか れんちぎょそうもんちょうほうけいまくら。磁州窯系。金。13世紀。高さ10.8、幅37.2、奥行き16.8)
  上面を二重線で木瓜形に区切り、内側に蓮池魚藻文、外側に花卉文を表わす。側面は三角形と丸の組み合わせ。
 緑釉・黄釉・透明釉のほか、魚や花びらの部分に赤い顔料が施されている。

(右中)
 白釉劃花珍珠地 牡丹文豆形枕(はくゆうかっかちんしゅじ ぼたんもんまめがたまくら。河北省磁州窯。北宋。11〜12世紀。高さ11.9、幅25.4、奥行き18.9)
 上面に牡丹を一枝大きく描き、余白を小円文で埋める。この小円の地文を珍珠地とか魚子地(ななこじ)と呼ぶ。

(右奥)
 白釉黒花褐彩 芦雁図豆形枕(はくゆうこっかかっさい あしかりずまめがたまくら。磁州窯系。元。14世紀。高さ12.5、幅24.4、奥行き20.3)




 ここで、少し今回の展示会の構成について説明しておきたい。
 今回は、1階の第2展示室と第3展示室を使わせてもらった。
 それぞれの展示室には、正方形で大きめの展示ケースが中央に1つ、そして、その周囲に長方形で小さめの展示ケースが4つ、 ちょうどサイコロの「5」の目のように並んでいる。

 最初の第2展示室の第1小ケースで、古い時代のもの、鬲やリ、また緑釉狩猟文博山炉(りょくゆうしゅりょうもんはくざんろ。後漢。1〜2世紀。高さ21.6)などを、続く第2小ケースで、竃あれこれと白磁黒釉三足盤などを展示した。

 第1大ケースで枕、第3小ケースで炉灼釉双耳瓶(ろきんゆうそうじへい。江西省景徳鎮窯。「大清乾隆年製」刻銘。清。乾隆期(1736〜95)。高さ23.1、口径7.4)などを展示し、最後の第4小ケースが私が担当した青磁の展示ケース。


 それでは、青磁の数々を。

青磁雲気文碗  青磁劃花 雲気文碗(せいじかっか うんきもんわん。浙江省龍泉窯。元。13世紀。高さ5.4、口径12.2、底径3.4)

 この写真なら、なんとか見込みの文様をご確認いただけるであろう。

 口縁部をS字形に屈曲させたこの器形を、先生は解説文で束頸碗とされ、福建省建窯の黒釉天目茶碗の影響について言及されていた。


 続いては、青磁 袴腰香炉(せいじはかまごしこうろ。龍泉窯。南宋。12〜13世紀。高さ15.4、口径21.2)

青磁香炉  写真手前側の胴部の釉色なんざ、ほれぼれするほど味わい深い色をしており、まさに南宋の龍泉窯の名品!って感じがした。

 しかし、口縁部の継ぎなんかは、まあ愛嬌として、写真では口縁部の向こう側及び見込みんとこの色のくすみが、実に何とも惜しい。
 まあ、これだけ広範囲だと「惜しい」という範疇からははずれるのかもしれないが。

 上記写真が、蓆の上に置かれているのは、展示会が終わって箱にしまう時に撮った写真だから。

 青磁印花牡丹文盤(龍泉窯。元〜明。14世紀。兵庫県太山寺収蔵)

 非常に大ぶりの一品。
青磁牡丹文盤


 あと、展示したのは、青磁刻花蓮弁文碗(龍泉窯。元末〜明初。14世紀)、それから青磁水注(兵庫県三田焼、龍泉窯写し。江戸時代末期〜明治。19世紀)。

 私が青磁をテーマに行ったギャラリートークについては、陶磁ゼミ(15)をご参照ください。 


 それでは、隣の第3展示室へ移りましょう。色合いが派手になっていきます。

 

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