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上海旅遊記(11) 蘇州編Part1

 
長いドライブの後、蘇州に着く。
 地元に帰ったせいか、蘇州の町の水路の美しさを称える呉さんの口調に熱気があふれている。

 お昼をまわっていたので、まず食事。姑蘇飯店というところに案内された。
 大きな円卓が5つ、6つほど並ぶレストランに通されたが、部屋は薄暗く客は私たちだけであった。

 何品目かに、卵チャーハンが出た。
 うちの次男はアトピーで、卵は食べられない。白ご飯をもらおうと思って、食堂のおねえさんに声をかけた。

 食事の時は、じゃあ何時に(もっとアバウトな場合は「後で」)迎えに来ますと言ってガイドは早々にいなくなるのが通例だ。
 だから、最初にビール何本、ジュース何本という形で注文するならともかく、食事の途中の質問や追加注文は自力でしなくてはならない。

 ウェイトレスのおねえさんは、どなたも、いかにも現地採用!って感じの純朴そうな人だった。
 料理を持ってくる時も、別に笑いかけるでもなく、説明するでもなく、恥ずかしそうにこそっと置いていき、そそくさと去っていく。

 声をかけると、おずおずとこちらを向いてくれた。毎度おなじみブロークンチャイニーズで「我要米飯」と言ったのだが、どうも困ったような表情をしている。こちらも困ってしまった。

 もう一度繰り返したが「ミーファン?」みたいな感じで問い返される。
 伝わってないなあ。上海語は知らないので、北京の時ほど通じない。

 仕方ないので、あいまいに笑ってると、おねえさんもまた、あいまいに笑いながら、引っ込もうとした。
 よくわからないながらも、調理場に私の注文を伝えるのだろうか?
 これがあなたの注文したものだ、といって、思いもよらぬどえらいものが出てきても困る。

 取りあえず、この場から立ち去りたい。そう思っているようなおねえさんを無理によびとめ、ガイドブックの余白のところに「白米飯」と書いて見せた
 結果として、大ぶりの茶碗にど〜んとご飯が山盛りに盛られてきて、次男は大満足したのであった。

 蘇州の名物料理に松鼠桂魚というのがある。
 ツアーでもこの料理が出るコースは、旅行パンフレットに特筆大書してあることが多い。

 私たちのツアーでは、「(3日目の)昼食は蘇州名物料理をご賞味下さい」としか書いていなかった。それで、別に期待してなかったのだが、多分これがそうかな、という感じの料理が出た。

 イカなんかで「松笠揚げ」という料理がある。表面に包丁目を入れて、松ぼっくりみたいな形にした料理。
 出た料理では、魚が松ぼっくりみたいな形で揚げてあって、オレンジ色のチリソースというか甘酢あんかけがかけてある
 ソースには豆なども含まれていた。
 いや、それは松鼠桂魚じゃない、そりゃ「ばったもん」や、とおっしゃる方がいたら教えてください。本人は名物料理が出たと思って満足してるので、それでいいんですけど。



 おなかもくちくなったので観光地めぐりを。
 まず蘇州絲綢(シルク)博物館へ。

 ただ私は、展示品にはほとんど興味がなかったので、売店に行った。

 シルク製品の売店は別にあって(というか、この建物のほとんど全部がそれと言ってもいいのだが)、私が行ったのは、ほんの片隅の、文字通り「埃をかぶった」図書コーナーみたいなとこ。

袁世凱 張作霖 黎元洪
袁世凱 張作霖 黎元洪


 そこで買ったのが、いつものごとく写真集や絵葉書、美術品関係の本など。

 少しだけ具体的な書名をあげると、『民国社会風情図録』の服飾巻と建築巻。
 特に前者は服装の参考になるとともに、軍服などを着て写真に収まってるのが孫文蒋介石張学良袁世凱など歴史上の人物が多いので、その点もおもしろかった。
(上の3枚の写真は、その一例)

いつもより余計に倒立しております  特筆すべきは、そのうちの『少林功夫』

 何で蘇州のシルク博物館で少林拳の写真集を買わねばならないのか、と問い詰められると一言もないが、あるページを見た瞬間迷いは吹き飛んだ。

 ややこしいが、「少林寺拳法」というと、日本の宗道臣という人が、少林寺の壁画に描かれた拳法の型などを参考に1947年に編み出した武術だそうだ。

 よって、以後は少林寺拳法ではなく、少林拳と呼ぶ。

眼がいっちゃってます・・・なお、これは鶴拳

 実際の少林拳をやっている僧侶たちの写真がたくさん載っている。 樽の縁に足を乗せて踏ん張り、こぶしを突き出している僧侶。
 頭一つで完全に倒立している僧侶。(左上写真)

 さて問題です。右上写真の僧侶は何の動物を模した拳法を演武しているのでしょう?

 僧侶が少年の頭に胡桃(くるみ)の殻を乗せ、金槌でぶっ叩いて割っている写真(右下写真参照。むろん、児童虐待の写真ではない・・・と思う)もあった。

 そして、問題のページ。

 ある僧侶がお尻丸出しで膝をやや落とし、ふんばるようにして立っているのだが、両足の間から綱に巻かれた岩がぶら下がっている。

 あの重そうな岩はどこにつながっているのか?

 また、ある僧侶が、グラウンドを均(なら)す時に使う鉄のローラーの岩石バージョン、とにかくやたら重そうなローラーに綱を付け、引いている。

 手で引くなら何の変哲もないし、歯で引くなんてのもよくある話。
 
別に、こんなとこで胡桃割らんでも

 しかし、その僧侶、上衣は着ているのだが、やっぱお尻が丸出しなのである。
 あの綱は、どこに結びついているのか。

 皆さん方の脳裏にある単語が浮かんだかもしれない。また、私も、現にその写真を見ているので、「○○○○で引っ張っている?」と感じたのだ。

 しかし、同時に「いや、まさか。そんなことがあるはずがない」と強く否定したい気持ちが起こった。祈るような気持ちで、写真の解説文に目をやる。

 「〜
睾丸系縄吊起五十余斤重的大石塊。」

 私は中国語が読めないので誤解があるかもしれないが、でも、やっぱ、この人○○○○で巨岩をぶら下げ、重い荷車を牽引しているのだ。
 
何もそんなとこ、そないに鍛えんでもいいのではないか。

 相手が禁断の急所攻撃、渾身の力で○○○○をひきちぎりにかかったとしても、みごと耐えてみせようというのか、この僧侶は。
 何と奥が深いのか。私はあらためて、少林寺の歴史にひれ伏したい思いにかられた。

 これが単なるほら話でない証拠に、写真を公開させていただく。
 ご用とお急ぎのないお方は、ここをクリックせられよ。あくまでも自己責任のもとで

 さて、先日上海博物館の売店で本を買いあさった時には呉さんは目を丸くしていたが、今回は「呆れ」を通り越して「あきらめ」の境地に達しているようだった。
 この人は、あれだけ私が蘇州はシルク製品で有名だ。ここは公営で品質も安心だ、と薦めたというのに本や写真集にしか興味がない。
 しょうがないんだ、この人はこういう人なんだ、と。

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