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青銅器(9)平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」第3回その4

1 はじめに

 平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」という講座の、備忘録程度の受
講録。で、第3回ゼミの受講録その4。


2 本日のテーマ

 今日のテーマは「殷周時代の青銅器について」。
 内容は、
1.製作法
2.青銅器の誕生
3.器形・名称・用途
4.文様
5.銘文
6.地方性・・・・・の6項目。うち、「6.地方性」について、資料では「四川省三星堆、江西省新干県」とあったが、説明はなかった。

 順次、概要を紹介していく・・・ということでスタートしたのだが、今回は「4.文様」から。



3 講座内容の概要

3−(4) 文様

  O先生からいただいた資料には、文様の様式が整理されていたので、転載させていただく。
  なお、特徴や備考は適宜付け加え、また、項目も追加した。

文様大別 文様細分 特徴 備考
怪獣 饕餮(とうてつ)文 饕餮の出典は、BC3世紀の『呂氏春秋』で「首はあるが胴体はない。人間を食らう」怪物。
『中国の妖怪』(著:中野美代子。岩波新書)によると、4世紀初の郭璞(かくはく)は、『山海経』にある「羊身人面」の「犭+包」鴞(ほうきょう)が饕餮としている。
※ 『中国の神獣・悪鬼たち』(著:伊藤清司東方書店)P21→「犭+包」鴞

『中国古代文様史』(著:渡辺素舟。雄山閣)では、二匹の虎を左右から向かい合わせ、一つの面貌を抽出したのが饕餮で、大きく開き下顎のない口が特長だとする。
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虁龍(きりゅう)文 虁(き)は、『説文解字』では「龍のようだが一本足。角のある頭に人面」。
周代の『国語』では、一本足で「人面猴身」。
『山海経』では「牛のようで蒼身。角はなく一本足」とある。
(以上は『中国の妖怪』から)
虁(一本足)の龍。
※ 「虁の字形は頭上に両角があり、一本足で舞う形」『中国古代の文化』(著:白川静。講談社学術文庫)
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虁鳳(きほう)文 鳳凰とは、朱雀とも朱鳥ともいう。また、『山海経』の鸞鳥(らんちょう)も鳳凰の仲間。
(以上は『中国の妖怪』から)
虁(一本足)の鳳。
※ 『中国美術史』P65図27「虁鳳文簋」
虺(き)文 虺(き)とは蝮(まむし)又は小型の蛇。
唐末の任ム(じんぼう)の『述異記』に「水にすむ虺は五百年で蛟となり、蛟は千年で龍となり、龍は五百年で角龍、千年で応龍となる」とある。
明の『本草綱目』には「鱗のあるものを蛟龍といい、翼のあるものを応龍といい、角のあるものを虬(きゅう)龍といい、角のないものを螭龍という」とある。
(以上は『中国の妖怪』から)
※ 『中国美術史』P99図46「虺龍文鏡」
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螭(ち)文 小さい龍が絡み合った文様。
なお、『中国の妖怪』では、蟠螭文を「蛇がからまりあう文様」としている。
蟠龍(ばんりゅう)文 蟠龍。
竊曲(せっきょく)文 虁龍文をより抽象的にデザイン化したもの。
動物 虎文 虎のマークの獣面文。『神と獣の紋様学』(著:林巳奈夫。吉川弘文館)では、虎は帝の象徴としている。同P18図1−6
※ 『中国美術史』新潮選書P55図25
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羊文 羊のマークの獣面文。角は横へ伸びて下内側へ向かって曲がる。『神と獣』P11図1−10
羚牛(れいぎゅう)文 羚牛のマークの獣面文。角は上に伸び、内側に曲がって再度湾曲する。
※ 『神と獣』P23図1−13
イヌワシ文 イヌワシのマークの獣面文。頭上に「几」形の羽冠が付く。
※ 『神と獣』P27図1−21
※ 『中国の妖怪』P53図17
T字角文 特に具体的な動物は想定していない。
※ 『神と獣』P28図1−24
※ 『中国の妖怪』P53図18
牛文 牛。下記水牛とほぼ同様。
※ 牛鼎→『神と獣』P11図1−2 
水牛文 水牛のマークの獣面文。角はほぼ真っ直ぐ横に伸びる。
※『神と獣』P32図1−29
鹿文 鹿。角は横に伸びて枝分かれする。
※ 鹿鼎→『神と獣』P12図1−3
象文 象は、器自体が象の形をしていることが多い。
※ ゾウ尊→『神と獣』P38図1−34
※ 『中国文明の歴史 1』P253
犀(さい)文 犀は、頭の部分が器の飾りとして使われることが多い。
※ 中山王墓出土「金銀象嵌屏風台座」(『中国の妖怪』P4)
※ サイ尊『神と獣』P36図1−32、『中国美術史』新潮選書P83図35
兎文 兎。
亀文 亀。なお、玄武は亀と蛇の合体。
蛇文 鼻先が尖り、身体に大きな菱形が並んでいれば毒蛇「百歩蛇」(ひゃっぽだ)。
鳥文 鳥。 画像(5)へ
鴟鴞(しきょう)文 フクロウやミミズク。
蝉(せみ。せん)文 蝉。
魚文 魚。 画像(6)へ
貝文 貝。
鱗文 魚から一部が抽象化されて、さらに幾何文に転化。
幾何文 鱗文 魚の鱗。 画像(7)へ
雷(らい)文 渦巻を四角形に組み合わせた文様。
縄文 縄目。
渦文 渦巻文。丸渦文など。さらに抽象化されると二重丸なども含まれる。
円文 円。
百乳文 小さな模様が連続する。
眼文 「眼」を抽象化。
重環文 環が重なり合った文様。
蕉葉(しょうよう)文 植物の葉が抽象化して「三角形」に転化。
人物画像 狩猟文 狩猟風景。
※ 『中国美術史』新潮選書P97図45、『中国文明の歴史 1』中公文庫P347
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戦闘文 戦闘風景。



★ 文様の変遷概説(『中国の歴史 1』講談社)

 殷の後期から西周時代の前期におよぶ期間が、種類も形も最も多様であり、青銅器の最高段階であった。その文様も、細かい雷文を地文にして、神秘な美しさをもつ饕餮文を鋳出したものが多い。
 饕餮文は殷の中期にできあがっているが、どちらかといえば、平面的であり、幾何学的である。これに対して後期になると、器形にあわせて変化し、動物の形に近づくものもあるし、逆に各部分に分解されてしまったもの、また三足器の脚のつけ根や、四角の器形の角部には、立体的に表現されたものもある。

 西周前期になると、文様に虁鳳文とよぶ、瑞鳥がよく用いられるようになり〜中期から波状文とよばれるものが出はじめ、後期にはこれと鱗文など図案文が主流となり、饕餮文や虁鳳文は、原型をとどめないほどに分解され図案化されたものになってしまう。

 春秋時代を通じて〜文様などは波状文などに代わって、虺龍文や蟠螭文などが多くなる。そして戦国時代になると、こうした文様のほかに、狩猟や戦争・宴楽の有様をえがいたもの、あるいは金・銀・ガラスなどを象嵌したもの、さらには全面に鍍金をしたものが作られるようになる。 




3−(5) 銘文

・・・・・という金文に関する章に入るべきところであるが、現在でも非常に膨大になった。
 毎回ぶつ切れになっているが、ここでいったん切ることにいたしたい。



 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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