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青銅器(17)平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」第5回その4

1 はじめに

 平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」という講座の、備忘録程度の受
講録。で、第5回ゼミの受講録その4。


2 本日のテーマ

 今日のテーマは「鏡について」。

 内容は、
1.部分名称と形体
2.鏡の使用形態
3.戦国時代の鏡
4.漢時代の鏡
5.唐時代の鏡
6.鏡に表れた精神
7.製作技法
8.日本への影響・・・・・の8項目。

 ただし、実際の講義は、このレジュメの順番ではなく、アトランダムにあっち飛び、こっち飛びした。

 講義の順番にこだわらず、レジュメの順番に再構成しようと思うのだが、今回は、続いて「4.漢時代の鏡」から。


3 講座内容の概要

4.漢時代の鏡

  O先生からいただいたレジュメには、こうあった。

4.漢時代の鏡

(1) 技法:鋳造  陶范  

(2) 見当線

(3) 鍍金、鍍銀、彩画など

(4) 文様:蟠龍、連弧(内行花)、星雲、草葉、重圏(内清、精白、昭明)、四神、方格規矩(TLV鏡)、獣首、獣帯、画像(神人車馬、神人龍虎)、龍虎、神獣(画文帯、環状乳、対置式、同向式、重列)など

(5) 紹興鏡(浙江省紹興)/紀年鏡

(1) 技法
 技法としては、前回に述べたのと同じく、陶范。

 ここで、O先生から興味深い話を聞いた。
 鏡に似たものに「陽燧」(ようすい)というものがある。凹面鏡であって、顔を映すというより、太陽の光を集めて、火をおこす道具である。
 それで、陽燧については、表面、裏面(装飾面)両方の陶范が出土している。
 しかし、鏡については、陶范は裏面(装飾面)側のそれしか出土してないそうである。
 出土していないのではなく、「なかった」のだろうか?
 つまり、表面には何らの装飾は必要ない。
 いわば、文様が施された型に「湯」(融けた青銅)を流し込んで、その水面は当然真っ平らになるから、そちら側を磨いて鏡面に使ったのだろうか?

 それとも、あったのだが、「残っていない」のだろうか?
 両范で挟むようにして鋳造するにせよ、表面は、ただの水平面(鏡面は、やや凸面のことも多いようだが、それは磨き出しの段階で角度をつけると思われる)だから、表面側の范は、ただの平面の板。
 だから、複雑な裏面の范と違い、作り直す手間もないので、型から鏡を取り出す時も、必ず表面側の范を壊して取り出したので、出土例がないのだろうか?

(2) 見当線
 「けんとうせん」と読む。
 O先生から「『漢有名銅』方格規矩文鏡における見当線(和泉市久保惣記念美術館紀要)」という資料をいただいた。

 後に詳述するが、いわゆる「TLV」鏡といわれる様式の鏡がある。鏡の装飾面に「T」とか「L」、「V」といった形の文様が施されているのだが、その文様の位置を正確に施すために、鈕、鈕座、銘文帯などを基準とする同心円、方格の四隅からの延長線などを参考にして引かれた補助線の痕跡がわずかに残っている鏡があるそうだ。

 もちろん、鋳造後にそのような線を刻する必要性は何もないから、基本となる陶范に「T」などの文様を施す際に、うっすらと引いた線が出来上がりの鏡に残っているということなのだろう。


(4) 文様
 O先生に、時代別に代表的な鏡の文様を143パターンほどぬき出した資料をいただいた。それをさらに簡略化して紹介する。(唐代以降は、また後ほど)

年代 時代 時期 文様の具体例
BC221 秦・前漢 前期 (36)連弧龍文、(37)方格規矩蟠螭文、(38)銘帯蟠螭文、(39)龍形渦文、(40)連弧龍鳳文、(41)雷文
  前漢 中期 (42)半肉刻龍文、(43)星雲文、(44)草葉文、(45)家常貴富鳥文、(46)重圏銘帯文、(47)細線四神帯文
  前漢 後期 (48)銘帯連弧文、(49)単圏銘帯文、(50)虺龍文
AD8 新・後漢 前期 (51)方格規矩四神文、(52)方格規矩渦文、(53)内行花文、(54)細線獣帯文、(55)半肉刻獣帯文、(56)内行花文
  後漢 中期 (57)元興元年獣首文、(58)元興元年虁鳳文、(59)盤龍文、(60)双頭龍文、(61)方銘四獣文、(62)獣文
  後漢 後期 (63)画像帯文、(64)四獣画像文、(65)四龍文、(66)神人龍虎画像文、(67)神人車馬画像文、(68)神人歌舞画像文、(69)環状乳神獣文、(70)対置式神獣文、(71)重列神獣文、(72)二神二獣文、(73)三段式神仙文、(74)飛禽文、(75)同向式神獣文、(76)同、(77)双頭龍文
220 魏・晋   (78)甘露五年獣首文、(79)虁鳳文、(80)重列神獣文、(81)太平元年対置式神獣文、(82)泰始九年同向式神獣文、(83)神獣文
420 南北朝   (84)方格規矩文、(85)S字文、(86)鉄鏡

(5) 紹興鏡/紀年鏡

 紹興が鏡の名産地として著名となる。
 また、この頃から年代がしるされた鏡(紀年鏡)が出現するため、年代の特定が可能になる。
 


 では、googleでの検索結果をもとに、実例画像をいくつかご覧いただくとしよう。その方が、私の文章をだらだら読むより理解が早いと思う。

鏡名 備考 出典
蟠螭文鏡(前漢前期)   HP「中国古鏡展」(漢その1)
彩画狩猟・樹下遊楽図文鏡(前漢前期)
同上
羽状文地四葉文方鏡(前漢前期)
HP「中国古鏡展」(漢その2)
雷文鏡(前漢前期〜中期)
同上
半肉彫龍文鏡(前漢前期〜中期)
HP「中国古鏡展」(漢その3)
星雲文鏡(前漢中期)
同上
重圏銘帯鏡(前漢中期〜後期) 銘文が主文様になっている鏡は類例が少ない HP「中国古鏡展」(漢その4)
方格規矩四神鏡(前漢後期)
同上
方格四神鏡(後漢前期)
HP「中国古鏡展」(漢その5)
方格規矩雲気文鏡(後漢前期)
同上
細線獣帯鏡(後漢前期〜中期)
HP「中国古鏡展」(漢その6)
半肉彫神仙獣帯鏡(後漢中期)
同上
盤龍鏡(後漢中期) 龍虎鏡ともいう HP「中国古鏡展」(漢その7)
虁鳳鏡(後漢中期〜後期)   同上
神人歌舞画像鏡(後漢後期)   HP「中国古鏡展」(漢その8)
神人龍虎車馬画像鏡(後漢後期)   同上
四獣画像鏡(後漢後期)   HP「中国古鏡展」(漢その9)
神人騎馬画像鏡(後漢後期)   同上
狩猟文画像鏡(後漢後期)   HP「中国古鏡展」(漢その10)
孝子伝図画像鏡(後漢後期)   同上
伯牙弾琴龍虎鏡(後漢後期)   HP「中国古鏡展」(漢その11)
建安十年重列神獣鏡(後漢後期) 建安十年は、AD205年 同上
重列神獣文鏡(後漢後期)   HP「中国古鏡展」(漢その12)
環状乳神獣鏡(後漢後期〜三国) 乳の形状が環状になっている。 同上
三段式神仙鏡(後漢後期〜三国) 鈕の上下に2本の平行線があり、三区に分かれている HP「中国古鏡展」(漢その13)
画文帯同向式神獣鏡(後漢後期〜三国)   同上
連弧龍文鏡(前漢前期)
HP「銅鏡史料館(古代編)」
星雲鏡(前漢中期)   同上
日光連弧文鏡(前漢中期)   同上
四乳鏡(前漢晩期)   同上
方格規矩四神鏡(前漢晩期)   同上
方格規矩四神鏡(後漢前期)   同上
盤龍鏡(後漢晩期)   同上
神仙画像鏡(後漢晩期)   同上
星雲鏡(前漢中期)   HP「神鏡美術館(本館)」
同上   同上
四乳禽文鏡(前漢) いわゆる「家常富貴鏡」 同上
日光連弧文鏡(前漢)   同上
日光鏡(前漢)   同上
四乳鋸歯文鏡(前漢晩期)   同上
四乳鏡(前漢晩期)   同上
八乳鏡(前漢晩期)   同上
四乳鏡(後漢)   同上
内行花文鏡(後漢前期)   同上
方格規矩四神鏡(後漢前期)   同上
鍍金双歯文方格規矩四神鏡(後漢前期)   同上
方格規矩四神鏡(後漢)   同上
同上   同上
四乳四神鏡(後漢前期)   同上
重圏銘文鏡(後漢中期)   同上
五乳五神鏡(後漢中期)
同上
画文帯神獣鏡(後漢)
同上
神仙画像鏡(後漢)
同上
三角縁神人車馬鏡(後漢中期)
同上
龍虎鏡(後漢晩期)
同上

 

 



 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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