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青銅器(11)平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」第4回その1

1 はじめに

 平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」という講座の、備忘録程度の受
講録。で、第4回ゼミの受講録その1。


2 本日のテーマ

 今日のテーマは「戦国〜漢時代の金工について」。
 内容は、
1.礼器と明器
2.日常の器具
3.文様
4.技法
5.製作工房
6.地域産業
7.地方文化・・・・・の7項目。うち、「7.地方文化」については、時間の関係もあってほとんど説明はなかった。

 順次、概要を紹介していきたい。



3 講座内容の概要

1.礼器と明器

  O先生からいただいた資料には、こうあった。

1.礼器と明器 ○自然神→祖神へ。
祖廟への彝器
 鼎・鍾(ショウ)・鈁(ホウ)・敦(タイ)・盒(ゴウ)などの礼器
○葬礼→祖先神としての最初の儀礼→厚葬
 鼎などの礼器
 ”明器”による代用
○死後の世界→日常生活の継続

1.礼器と明器

 祭祀の対象が、自然神から祖先に変わっていった。
 礼器の形状、文様なども例えば殷代のそれに比べると簡単なものになっていった。
 
 青銅器は非常に高価なものであったため、墓陵に埋葬してしまうのは経済的損失が大きすぎた。
 よって、埋葬用の器物”明器”がつくられるようになった。
 明器は、小型化されたり、青銅器を陶器で代用されたりした。

 当時は、死後も生前と同じ生活を継続していくものと考えられていたため、日常生活用具なども副葬された。
 


2.日常の器具

 ここでも、まず、配付されたレジュメの内容を記しておく。

2.日常の器具 ○社会の安定と経済の発展→富裕階層の増加
○科学の発達→実用の合理性と利便性
(1)鼎・鍾・盒などの日常器化
(2)盤、洗、温酒尊、耳杯、香炉、灯火器、熨斗(うっと)、文房具など→器種の多様化

 灯火器について、大きな持ち手の内部が空洞になっており、獣脂に灯心をつけて燃やしたスス、においなどが、いわば焼肉屋のフードのようにその持ち手内部に入って、灯火器下部(おそらく水を張っていたものと考えられる)に導かれ防臭が図られた器物の紹介があった。

 熨斗(うっと)とは、いわゆる火熨斗(ひのし)。アイロンである。

 また、文房具の例としては、水滴など。見せていただいた実物では、熊の形をした本体に円柱状の蓋がついている。細長い蓋の上下には小さな穴があいていた。
 本体に水を満たし、その細長い蓋を本体に差し込む。上部の穴を指で押さえて抜き出し、硯の上で指を離せば、下部の穴から、蓋内部にたまった水が出てくという仕掛けだそうだ。


(参考) 秦・漢代の器形について

 今回も泉屋博古館学芸員廣川守氏作成の資料が配布された。
 先史・殷・周代の器形については一章を設けたが、今回は、簡単な一覧表に整理するにとどめる。
 しかし、やはりマンガであっても、絵がある方がわかりやすいと思われるので、資料編は作成したい。
 また、いわゆる神にささげる酒器などからウェイトが実用器に移っていることがわかりやすいように、器形の分類は、前回の殷周の頃の分類に合わせた。

大分類 小分類 器形名称 備考等 参考画像
食器 調理器 鼎(てい)   画像(1)
甗(げん) 甑(そう)とも呼ぶ。
釜(ふ) 庇(ひさし)がないものを鍪(ぼう)と呼ぶ。
盛食器 案(あん) 盆が円形のものを「木+還-辶」(せん)と呼ぶ。 画像(2)
豆(とう)  
盒(ごう) 盛(せい)と呼ぶ場合もある。
酒器 盛酒器 尊(=樽。そん) 温酒樽と自銘し、温酒器と用いられることもあった。
盛食器(スープ等)にも用いられた。
画像(3)
壷(こ) 酒や水を入れる器。
鍾(しょう) 壷と同じ用途。
鈁(ほう) 壷と同じ用途。
罐(かん) 壷の一種。
扁壷(へんこ) 壷の一種。
温酒器 ミ(けん) 大型のものは盛酒器にも用いられた。 画像(4)
鐎斗(しょうと)  
飲酒器 耳杯(じはい) 盛食器にも用いられた。 画像(5)
水器 洗(せん) 自銘器はない。「銅汗(盂)」という銘のものはある。 画像(6)
楽器 ロ于(じゅんう) 虎ロ(こじゅん)とも呼ばれる。 画像(7)
その他 奩(れん) 鏡、刷毛、櫛などの化粧道具をしまっておくいれもの。
盛食器に使われる例もある。
画像(8)
灯(=鐙。とう) 灯明皿。
博山炉(はくざんろ) 香炉。
熨斗(うっと) アイロン。
参考 倉(そう) 青銅器にはない。明器。
横長の穀物倉庫を「倉」、縦長のものを「廩」(りん)、平面が円形のものを「囷」(きん)と呼ぶ。





 「3.文様」以降は、また次回で。

 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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