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青銅器(10)平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」第3回その5資料編その1

1 はじめに

 平成16年度美術史ゼミナール「中国の青銅器」という講座の、備忘録程度の受
講録。で、第3回ゼミの受講録その5「銘文」の資料編その1。



3−(5) 銘文:金文 実例1

  O先生からいただいた資料に載っていた金文の実例のうち、短い銘をいくつか例にあげる。



<銘 例1>

婦好

中央上部のすすきの穂みたいなものが箒。右下にある人の形(膝が左を向いている分)は「」。箒を持って掃除するから「」人というのが『説文』の説。
『漢字の世界 2』(著:白川静 平凡社ライブラリ)P147によると、この「箒」は掃除用でなく、酒をそそぎ祭壇を清める束茅の類としている。

左下の、膝が右に向かって曲がっている人も「女」。
その右の頭と簡単な体がついているのが「」。
女と子だから、「」というのは現在と同じ構成→『漢字の世界 2』P219。
婦好


 


<銘 例2>

旅父乙

右側全体を占めているのが「」一文字である。
中央の高いものは旗である。旗を人が持っているのが「」という字で、「人がその地を離れて行動すること」をさす。
「旅」は「斿」の複数形である。
右図では、旗を持っているのが複数なので「旅」とよむべきであろうが、『漢字の世界 1』P191にあげられた形とは少し違うようだ。

左上で、両手を広げ、長い頭の人間の形が「」(『漢字の世界 2』P206)。
どうもエイリアンのように頭が後ろに長いのではなく、指揮権を示す斧を持っているようである。
旅父乙

左下の逆S字が「」(『漢字の世界 2』P37)。


<銘 例3>

司母辛(しぼしん)

右側の膝まづいている人間のような形が「」。「女」の形に乳房を示す二つの点が付けられたものが「母」。
『漢字の世界 1』P22
ただ、右図では、点の所在が私にはよくわからない。

左上のお鍋の上にすすきが乗っかっているような形が「」。
『中国古代の民俗』(著:白川静。講談社学術文庫)P40

左下が「」。入墨の器として用いる大きな針の形(『漢字の世界 1』P249)。
司母辛

 


<銘 例4>

戈父乙

一番上の「」は武器の形そのものである。
『漢字の世界 1』P237

「父」と「乙」は既出だが、「乙」はずいぶん形が硬い。
資料には「乙」とあるが、『漢字の世界 2』P206にある「」ではないだろうか。
戈父乙



<銘 例5>

牆作父乙寶尊彝

の右の部分は、『漢字の世界 2』P153にある。

は、「」と同字。
『漢字の世界 2』P183

は左上の字。屋根のような形をした宗廟に神を迎えるため犠牲や貝・玉などを並べているところを表わす。
『漢字の世界 2』P133

は「阝+奠」と同様。聖所の前に酒を置く形(『漢字の世界 2』P131)。

『説文』には「宗廟の常器なり」とある。
『漢字の世界 2』P91、92では「その字形は一見して明らかなように、雞を羽交い絞めにして持ち、啄下に小点を以って血を示す。その血を以って新しい祭器を清める意である」とある。

あまり「一見して明らか」とも思えないのだが。

牆作父乙

 なお、宗廟に用いる祭器は、寶「阝+奠」彝と呼ぶのが通例。


 では、次回は図象標識を。



 それでは、皆さんごきげんよう♪ 


 

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