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(No97) あべの寄席 鑑賞記  その2    

 平成20年2月17日にあべのアポロホールにて開催された「あべの寄席」。木戸銭は当日1000円だが、私は前売り券を買ったのでわずか800円なり・・・・・・・・の続き。
 


(1) 桂雀三郎 「ちしゃ医者」

 
雀三郎の「ちしゃ医者」は以前にも聴いた。

 
以前聴いた時のメモはこちら

 今回のメモと比べてもほとんど異同がない。前回詳しくメモしたんで、今回は省略させていただく。

 

 

 まあ、安定した噺っぷりと言えるだろう。

 


(2) 桂雀々 「不動坊」

 
トリをつとめるは雀々。
 4年前も出してもろたんですが・・・・。何せここは入場料が安い、安い

 前売りやったら800円でっせぇ。4人出て800円。
 一人200円ですわ。アポロさんもがんばってください。

 さっき見たらお客さんどうしで固い握手して熱い抱擁してる人がおった。同窓会みたいなもんなんですな。

 何せ落語は、このアポロの会しか来んゆう人がいたはるんでしょう。・・・ほんまに安いから。そない、何べんも安い、安いゆわんでもええけど


「利吉さん、いたはるかいな?

「あ、こら家主
(いえぬし)っさん。よぉお越し。今日は何の御用で?え?嫁はんの世話?
 さあ、わいもぼちぼち嫁はんもろたらどないや?てゆわれんこともないんでっけど、うちの死んだおばんによぉ言われましてん。嫁はんとお仏壇
(ぶったん)だけは持ち急ぎすな、て。
 へえ、おなごてなもんはシャベリやさかい、夫婦なかのこと、あっちへベラベラ、こっちへベラベラ。それですっくりいってた友達仲間の仲、むちゃくちゃにしられてまうてなこと、よぉあるこって」

「いや、わいが世話しよぉゆうのは、至って物ゆわずのおなごや」
「ええ〜?この界隈の長屋のおなごで、物言わずゆうたら・・・・・・堪忍しとくんなはれ。奥の端の糊屋のおばん、あら今年で83でっせ」
「誰がおばん世話すんねん。わいが世話しよゆうのは、奥から三軒目。講釈師不動坊火焔の女房のお滝さんや」
「何ゆうたはりまんねん。あんたもゆうたとおり、お滝さんには不動坊火焔ゆう亭主が居てまっしゃないか」

さぁ、人の命といぅのは分からんもんやなあ。不動坊の先生こないだから巡業に行て、馬関(ばかん。下関)から中国筋、細こぉ興業を打っていったんやが、散々の不入り。とうとう広島の宿で動きがとれんようになったとこ、弱り目に祟り目っちゅうやっちゃなぁ、チビス(腸チフス)患ろぉてコロッと死んでまいはった。

 死骸は宿屋で始末して、宿代や何やかんやで、ここに35円とゆう借金と、お滝さんとゆう未亡人が残ったわけや。
 で、お滝さんのゆわはるのも無理ないねん。『腐っても芸人でおます。残った衣裳売ったら35円やそこらの借金、返せんことはおまへんけど、あと裸で暮らさんならん。わたいもまんざら老い朽ちた身ぃでもなし。この35円の借金を結納代わりに払
(はろ)ぉてくれはる方がおったら、それ相応のところに縁付きたい』と。

 どや?相手はお滝さんやで」
「・・・・おざぶ
(座布団)、あてとくなれ。嬉しいわぁ。お滝さんやったら、とぉから惚れてた」
「人んちの嫁さん、とぉから惚れてたて、ややこしいで」
「そやかて、この界隈であれだけのおなごいてまっかぁ?はきだめに鶴っちゅうやっちゃがな。
 わい、相手がお滝さんやったら、35円が40円でも」
「そうかぁ?ほたら、相手も困ってるこっちゃさかい、40円出したってくれるか?」
「・・・そら、35円で」
「・・・・・・最初から、35円でええねんがな」
「ほな、その35円は、明日の朝一番で耳揃えてお届けします」
「そない、せかんでも
(慌てなくても)・・」
「いや、その35円は明日の朝一番でお届けしまっさかい、どうでっしゃろ、お滝さん、今晩から来てもらうわけにはいきまへんやろかぁ〜ウフンウフンウフン」
「気色悪い笑いよう、すな。ええ?今晩?猫の子もらうんやないでぇ。
 いや、わいもこんな話もってくんねさかい、来しなに暦はのぞいてきたんや。今日はまんざら悪い日ぃやないねん。
 ほたら、こうしよか。これからお滝さんに話、して得心がいったら今晩連れてくるてな段取りで。

 ほたら、お前今晩花婿やで。ちったぁ掃除して、酸
(す)い酒の一合も買(こ)うて、尾頭付きでも用意しときやぁ」

(利吉は家主が帰った後、思わずガッツポーズ。)
ある〜〜??こんな話?よぉし!風呂行って、男前なろ!・・・・・・って、風呂行くのに鉄瓶
(てつびん)(さ)げてどないすんねん。
 よぉし、用心が悪いさかい、しっかり戸締りを・・・って内らからカンヌキ掛けて、どっから出るねん?
 あんまり嬉しゅうて、ウロ来てしもてるねんなぁ。

 ええ〜、お隣のぉ
(お人)、ちょっと風呂行ってきますんで。え?へえへえ。じき帰ってきますんで。

 あ〜あ、かなん、かなん。やもめ
(独身男)は、風呂ひとつ行くんでも隣近所に気兼ねせんならん。」

(外へ出て)
「よぉ〜〜寒ぅ!寒!・・・・・・寒いけど心は燃えてるねえ。今朝起きるまで、こんなことなるて思てなかったもんなあ。めでたいなあ。めでたいな、めでたいな。
(風呂屋に着き、番台に)
 風呂屋のぉ
(お人)、めでたいな」
(面食らって)何がめでとおまんねん?」
「わい、こんばん嬶もらうねん」
「そら、あんたとこがめでたいねん。うちは別にめでとない」
「そない薄情なことゆうな。わいやもめやけど、明日から嬶と二人で来んねんで。お前とこかて、風呂賃、一人前めでたいがな。
(着物を脱いで)
 こら、今晩の祝言衣裳やでぇ。盗られんよぉ、見といてやぁ。
(浴室をのぞいて)
 いっぱいやなぁ。今晩はあちこちで嫁はんもらうんやろか?
 めでたいな、めでたいな。すんません、すんません。
(と、人をかきわけ湯船に入る)
・・・・・・うう、湯ぅが食いつきよるなぁ。かき回しなはんな!

(湯につかっていても自然とほほがゆるみ)
ウフ、ウフ、ウフフフ」

(利吉の近くで湯に入っていた人が、それを見て) 
「気色悪ぅ・・・」
「けっこうなお湯でんなぁ」
(気味悪がっていたが、話しかけられたのでやむなく)けっこうでんなぁ」
「めでとおまんなぁ」
「・・・・・
(急なことで、思わず絶句)
「つかぬこと、お尋
(たん)ねしますが、あんさん嫁さんいてますかぁ?」
「ほんま、いきなり何訊きはりまんねん。そら、この年でっさかい、嬶も子供もいてますが」
「ほんで、今晩嫁さんがくるゆう日ぃの昼間、どんな気持がしたぁ?」
「・・・・・・何、思い出さすねんな。もう25年も前の話やで。・・・・・そうでんなぁ。何や嬉しいよぉな、恥ずかしいような。何とのぉそわそわと気ぃの落ち着かんもんでんなぁ」
「そぉそぉ!そんで風呂行くのに鉄瓶提げたか?内らからカンヌキかけてどっから出る?」
「知らんがな」

「さあ、今晩お滝さん来たら、どぉ呼ぼかなぁ。『お滝さん』・・・『まあ、お滝さんやて、我が女房呼ぶのにさん付けやなんて、こないナマだれた
(軟弱な)人やとは知らなんだ』なんてことになったら、かなんなぁ。
 とゆうて『おい、お滝!』・・『ついこないだまでお滝さん、お滝さんゆうてたのに我が女房になったとたんにお滝!やなんて、こない薄情な人やとは・・・・』てなことになってもあかんしなぁ。どないゆおかなぁ?

 しかし、ゆうだけのことは、ゆうとかんとあかんで。

 なあ、お滝さん。あんたもこうして縁あってうちへ来てもらいましたけど、わずか35円といぅ金のために、嫌な男に身を任さんならんとは、金が敵
(かたき)の世の中やなぁ、と思たはりまっしゃろなぁ。けど、それではちょっと水臭いで。それではあまりに自分がみじめな。おい!お滝!何とかゆうたらどないやねん!」

(洗い場で、利吉の近くでひげを剃っていた男が)
「どなたか、ここ替わってもらえまへんか?この人、こっち向いてえらい怒鳴ったはんねけど、心当たりおまへんねん。危のぉてひげ剃ってられへん」

「そないポォ〜ン!とかましてやるとゆうと、何とゆうても相手はおなご。先立つものはただ涙。
 ペェ〜〜ン!エッ!エッ!エッエッエ〜〜  そりゃ!わたしじゃとてぇ〜」

「おい、危ないやつ入ってきたで。今度は女形
(おんながた)やってるがな」

「不動坊火焔てな遊芸稼ぎ人を亭主に持っておりますとゆうと、上ベは派手なよぉでも、夏は夏枯れ、冬は冬枯れ。芸人の息するときゃ、わずかよりありゃいたしまへん。
(芸人がほっと息がつけるのは、わずかな時期しかない)

 同じ所帯の苦労をするのなら、いっそ堅気のお方と苦労がしてみたいと思ぉとりましたが、利吉っつぁん。

 この長屋にはあんたを入れてやもめがよったり
(四人)居たはりますが、あんたを除けたほかの三人はろくな人が居たはりゃしまへん。
 漉き直し屋
(すきなおしや)の徳さんは、ワニ皮の瓢箪みたいな顔したはります。
 かもじ鹿の子
(かのこ)活け洗いの裕(ゆう)さんは鹿の子の裏みたいな顔。
 東西屋の新さんは、商売柄とはいぃながら、大きな太鼓を腹へ掛け、町中をドンガンドンガン歩いたはりますけど、家ん中はヒ〜フルヒ〜フル節季
(せっき)の払いもさっぱり泥貝(どろかい)、ちゃんぽんでおますわいな。

 そこいくと、利吉っつぁん、あんたは、お金があって男前で、程
(ほど)がよぉて親切で。

 ほんにおなごと生まれたからは・・・・こんな殿御と添いぶしのぉ〜♪身は姫御前
(ひめごぜ)ぇ〜 

「浄瑠璃語り出したで」


「今宵こぉして来たからは、あんたに任した体じゃもの、どぉなと信濃の善光寺さんは、こないだも阿弥陀池でご開帳があったやないかいなぁ〜、ダボ〜ン!」

「はまってしもたがな。うわ!湯ぅの中でもニタニタ笑ってまっせ。引き上げたんなはれ」

「・・・すんません。助かりました。ちょっと自分の世界に入ってしもて」
「おもしろかったでぇ、利吉っつぁん」
「あ!徳さん。実は今晩嫁さんをもらうことになって」
「どうやら、そんな按配やなぁ。それにしたら、えらい悶え苦しんで」
「いや、ちょっと口げんかの下稽古」
「何や、うちの長屋にはやもめがよったり居てるけど、ろくな奴がおらんそうやなぁ?
 漉き直し屋の徳の顔はワニ皮の瓢箪やてぇ?誰の顔がワニ皮の瓢箪やねん!?」
「・・・あんた徳さん?」
「何をゆうてんねん」
「い、いや、徳さん、あんたのことゆうたんちゃうねん。
 長屋にな、直し屋の徳さんゆう人が来んねんけど、お滝さんが、この徳さんのこと、ほん好きやねん。好きな、直し屋の徳さん、好き直し屋の徳さん、好き直し屋の徳さん、バンザ〜イ!バンザ〜イ!ゆうて。あんたのことやないねん。お先ぃ、ごめん!」

 逃げるように帰ってしまいました。後に残された徳さんが怒ったの、怒らんの・・・・・・って、怒ったんですよ


   ちょっと『桂枝雀爆笑コレクション1』(ちくま文庫)を参考に用語解説を。

 漉き直し屋とゆうのは、書き損じの和紙などを回収し、漉き直して徳用のちり紙などをこさえるいわば古紙再生業。徳用で徳さん。
 かもじ鹿の子活け洗いで、かもじとはヘアピース(鬘)。「か」つらで「かもじ」。鹿の子とは、まげにかける絞り染の布。髪油まみれのかつらや布を傷めないように(活かして)洗うので「活け洗い」。湯で洗うので裕さん。
 東西屋は「東西(とざい)!東西(とぉ〜ざぁ〜い)!」という掛け声をかける、いわゆるチンドン屋。昔は下級神職でお祓いなどをする「祓いたまえ屋」で演じられていたそうで、神職の新さん。

  チンドン屋だから腹の前で大太鼓を抱えドンガンドンガン叩きながら歩き回るのだろう。 ただ、「ヒーフルヒーフル」てのがよくわからない。勝手に想像するにチンドン屋だから太鼓だけでなくラッパも吹くのでは?で、ラッパの音が♪ピープー♪とかじゃなく「ヒーフル」と表現され、それがさらに「火の車」などに転化してるのだろうか?
 節季の払いとは、家賃とか酒屋等の掛売りなどの支払いだと思う。「泥貝、ちゃんぽん」というのはええ加減でうやむや・・てな意味だろう。
 要するに、家の外では景気良いふりをしてるが家の中は火の車で、掛売りの支払いもできていない・・・・てな意味と思う。


 腹の虫のおさまらない徳さんは、残りのやもめを呼びたて、腹いせをしようではないかと誘うが、「こら祝いをせんならん」と言うやら、徳さんが「ワニ皮の瓢箪」と描写されたことを「うまい!」と誉めたり、利吉からの借金を踏み倒してるので少々のことは言われても仕方ないとあきらめたり、せめて、3人並んで「イ〜ッ」としようではないか、などと意気上がらないこと、夥しい。

 しかし、徳さんの熱心なお誘いで、お滝さんに横恋慕していた軽田胴斎(かるたどうさい)という講釈師を不動坊の幽霊に仕立て、「わしが死んでじきに嫁入りとは胴欲な。それが恨めしゅうてよう浮かばん(成仏できぬ)。二人とも髪をおろして坊主になれ」と脅し、坊主頭になった二人を笑おうという相談がまとまった。

 徳さんは、裕さんに「幽霊火」のためにアルコールを買ってきてくれ、新さんには商売物で悪いが太鼓を頼むとテキパキと指示。

 日が暮れた頃にはぼつぼつとメンバーが集まり出し、一杯やりながら決行の時を待つ。

「あっ、熱燗で飲み始めてまんねん」
「あ、徳さん。いただきます。熱々でんなぁ」
「新さん、燗つけんのん上手やわ」
「ああ、こら、軽田胴斎先生。えらいすまんこってす。今日は四人の思い出話を作りましょ。おや、お肩やおつむに白いもんが。
 裕さん、どいて。先生にお酒すすめな」
「オットットットォ。・・・・もうちょっと入ります。
(呑み干した後)ン?ン?」(と、胴斎は指を曲げる)

「先生、どうされたんです?」
「手ぇがかじかんで、湯呑みから指が離れません。これを取るため、もう一杯」

「そんなこと言わはらんでも、何ぼでも呑んでもろたら。

 着ていただくもんですけど、お母
(か)んの長襦袢でんねんけど(と、後ろから着せかける)

 ぴったしや。なかなかお似合いです」

 寒気の厳しい折りでございます。綿をちぎって投げるような雪がチラチラ。

「よぉ冷えるなぁ。さっき呑んだ酒がどっか行ってしもたなぁ」
「あなた方はまだ着物を着ておられるからよろしいが、私は長襦袢一枚です」

 ぼやく胴斎先生。隠しておいた梯子で、次々に屋根の上に上がる。
 徳さんは先に上がって、上から紐を垂らし、その紐でくくって太鼓を上にあげよと命じる。

「太鼓くくれ〜!」
「・・・・・・・
(紐で太鼓の丸い胴の周りをくくろうとするが、うまくいかない)
「アホか、お前は。太鼓、丸ぅくくってどないすんねん?
 環
(かん)があるやろ、環が。そこに通さんかい」
(裕さんは、太鼓上部の環を右手に持って、左手で太鼓の胴をぐる〜っと探るが、つるっとして何もない)
「環、あんの〜?」
(環を左手に持ち替え、右手で胴の周りを探るがやはり何もなく)
「環、ないのよ〜」

 「環のない太鼓があるか!」と叱られ、ようやく、くくるべき環を手に持っていたことに気付く。

 また、胴斎先生を吊り下げるために晒し(実はふんどし)3本でくくりつける。「切れるてなことは・・・?」と心配する先生。

 さて、徳さんは人魂(幽霊火)の準備にかかるのだが・・・・。

「裕さん、アルコール買(こ)うてきたか?・・・・・詰め(栓)しとかんかい、気ぃ抜けてしまうやないかい。

(瓶をさかさまにして)ん?出てこぉへんで」
「うん、いっぱい詰まったるさかいに」
「詰まってるて・・・
(と、瓶の口をなめ)甘いやないかい」
「一番上等」
「え?どこで買うてきたん?」
「角の餅屋。一つ5厘」
「何が?」
「あんころ」
「え?」
「あんころ餅」
「・・・・・わいはアルコール買うてこいてゆうたんや!誰があんころ餅買うのに瓶持ってけゆうねん」
「さあ、餅屋のおっさんもゆうてたで。詰めにくい・・・って」

「ぼけ!かす!ひょっとこ!
 あほや、こいつ。帰れ!あほ!
 ええ日ぃあったら、目ぇ噛んで死ね!」

「そないコツコツゆうな!
 そらわいはあほや!あほなりゃこそ、こんなさぶい
(寒い)中、屋根の上でうろうろしてんねやないか。

 わいは、3人揃ってイ〜ッしようゆうてたんや。

 こないなったら、わいと徳さん、お前のどっちがあほか、下の利吉に聞いてもらお!」

(胴斎先生、心配そうに上を見上げ)・・・・・あのぉ、上で何やらもめてはるようですが上げるか下げるかどっちかにしてもらわんと、フンドシが腹に食い込んで・・・・」

 ギクシャク、ギクシャクと利吉の家の天窓の所へ降ろされていく胴斎先生。
 フンドシが食い込み、「恨めしい・・・」、「坊主になれ」という肝心の台詞も「痛い!痛い!」という弱音にかき消されてしまう。
 怖がるお滝さんをかばい、「お前誰や?えらいフラフラしてるけど」と問い質す利吉。

「あんた文句言える筋合いでっか?第一、あんたの残した借金、誰が始末した思てまんねん?」
「・・・・・え?借金?・・・・そんなことは聞いてない。とにかく恨めしい」
「けったいやな。まあ、あんさんも十万億土てな遠いとこから来てはるんやから、手ぶらでも帰れまへんやろ。どうです、15円で手ぇ打って帰ってもろたら」
「15円?わいと、上の3人で4人・・・・15円では分けにくいなぁ。もう少々恨めしい」
「え?しゃあない。ほな20円で、どうです?」
「20円?一人あたま5円・・・・。けっこうでしょ!
(OKサインを出し)手を打ちましょう!

 それでは、お幸せに ♪ 四海波 静かにぃ〜 ♪」

「ええ?下で幽霊、謡
(うたい。謡曲)うとてまっせぇ。引っ張り上げたりましょか?」

 しかし、ええ加減に引き上げたものでフンドシの結び目が引っ掛かり、紐がぶち切れ、胴斎先生は利吉の家に、上で紐を支えていた3人は屋根から表の道へと落ちてしまう。
 薄情なもので、やもめ3人は、胴斎先生をほったらかして、帰ってしまった。

「お滝さん、怖いことおまへん。どこの世界に幽霊が腰さすって『痛い〜』てなこと言いまんねん。

 おい!お前、誰じゃい!」
「へへ、こんばんわ。私、この隣裏に住んでおります軽田胴斎という講釈師でして・・・・婚礼の晩の余興にちょっと・・・・」
「ははぁ、どうせ、この長屋のやもめ連中の仕業でっしゃろ。しかし、先生、あんたも、あんまりしっかりしたお人やおまへんなぁ」
「へい、最前まで宙に浮いとりました」



 大熱演であった。


  どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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