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(No85) 2008年 新春!とっておき米朝一座 TV鑑賞記  

 先に平成18年のをアップしてしまったのだが、録画だけしてちゃんと観てなかった平成20年度版の感想を。

 番組は、ざこば一門による勇壮な正月太鼓でオープニング。口をとんがらせてメインの大太鼓を叩くのは都丸だ。司会は南光。
 


(1) 桂小米朝 「子ほめ」

 
この頃、だんだん年が経っていくのが早いようにおもいますなぁ。まあ、そんだけ自分が歳取ったぁゆうことでしょうが・・・・・・・・。

「こんちは!なんやタダの酒があるて聞いてきたんやけど」
「ええ?いや、うちゃぁ灘の酒屋に親戚があって、毎年、樽で一丁送ってくるんやが、おまはん、タダの酒と灘の酒を聞き間違えたんと違うかい?」
「どっちでもかめへん。いっぱい呑ませ。気の汚い」

  「何ちゅう言いようや。
 まあ、呑まさんこたぁないが、何もアテ
(酒の肴)がないねん。
 スルメが10枚ばかりあるよって、でや?スルメでも焼こうか?」
「スルメ・・・・?わい、歯ぁが悪いよってなぁ・・・・・。10枚も食べれるかしらん?」
「どこまで厚かましいねん。
 おまはんも、よそで酒でもおごってもらおう思たらベンチャラの一つもゆえな、あかんで。
 おまはん、例えば、道端で知り合いに久しぶりに会
(お)うたらどないゆう?」
「え?・・・・・・しばらくやなぁ。まだ、生きてたん?しぶといなぁ・・・」
「喧嘩になるで。
 そうゆう時は、歳をたんねる
(尋ねる)ねん。
 で、もし先方が45(
しじゅうごぉ)てなことおっしゃったら、『45とは、お若(わこ)ぉ見える。どう見ても厄そこそこ』・・・・とな」

「けったいなこと言いまんねんなぁ。相手、45やゆうてんのに100そこそこて?」
「100やないがな、厄。45のとこ、42、3。まあ、二つ、三つ、若ぉ見られんのは嬉しいもんや。そしたら、でや?天麩羅で一杯呑まそか?ってなことになんねんがな」

「せやけど、うまいこと45の奴に会うたらよろしけど、ひょっと50のもんに会うたら・・・」
「そこは、47、8」
(同じ調子で90まで繰り返し)

「100は?」
「100てな人、あんまり表、歩いてへんけど。まあ、97、8か」
「万は?しかし、何でんなぁ。万てな人、おったらオモロイでっしゃろなぁ。
(老人っぽい、震え声で)『わたし・・・・万ですぅ』
『万!とは、お若ぉ見える。どう見ても9990・・・・』」
「あほなこと言いな」
「10の子どもには、どう言います?七つ、八つ?」
「大きい子ぉでんなあ。あんまりしっかりしたはるさかい、12、3か思いましたと、子どもは逆に歳を上にゆうねや」
「ややこしいなぁ。ほな、一つですて言われたら、五つ、六つ?」
「一つの赤ん坊、五つ、六つゆうて誰が信用するか?
 赤ん坊は別口や。
 鼻筋の通ったとこは、お父さんそっくり。口元からあごにかけては、お母さんに瓜二つ。額の広いとこは亡くなったお爺さんに似て長命の相がおあんなさる。
 栴檀は双葉より芳しい。蛇は寸にして、その気を顕
(あらわ)す。ああ、私もこぉゆうお子さんにあやかりたい、あやかりたい・・・と。こないなことゆうたら、親が一杯呑ますがな」
「はあぁ、こらええこと聞いた。ほな、さいならご免!」
「おっ?どないしたんや?もうじき、酒の燗がつくよって、一杯呑んでいきぃや」





「どこぞに45くらいの奴は・・・・っと。おっ、おった、おった。お〜い、伊勢屋のご番頭ぉ〜!」
「よぉ〜、こら、町内の色男!」
「・・・・・・あっちの方がうまいがな。こら、フンドシ締めてかからんといかん」
 お久しぶりでんなぁ」
「今朝、床屋で会
(お)うたで」
「・・・・・・・・今朝、床屋で会うまでは・・・・・」
「ゆんべ、風呂屋で会
(お)うたがな」
「えらい、よぉ会うなぁ。
 ゆんべ風呂屋で会うまでは、お久しぶり」
「えらいもって回って、久しぶりやねんなぁ」
「つかぬことをお聞きしますが、ご番頭、お歳はおいくつで?」
「歳のこと聞かれるんのが一番辛いねん」
「そら、辛いやろ。天麩羅で一杯呑まさんとあかんねんからな。白状せえよ」
「恥ずかしながら、いっぱいや」
「いっぱい?・・・・・・・一杯とは、お若ぅ見える。どう見ても八分目・・・・てなことゆうても、わからんしなぁ。
 もし、ご番頭、いっぱいて、いくつだんねん?」
「いっぱいゆうたら、40やがな」
「40?・・・・・・・・えらいことした。45から万までは聞いたんやがなぁ。40は、上にゆうたらええのか、下にゆうたらええのか、わからんがな。
 40・・・・・・・・悪い歳やなぁ」
「悪い歳か?」
「でやろ。今だけ45ぉになってもらえんやろか」
「何ぞのマジナイか?ほな45ぉでええわ」
「45・・・・・っとは、お若ぉ見える。どう見ても、厄そこそこ・・・・って、でや一杯呑ますか?って、あっ、怒って行ってまいよった。

 せや、竹とこ、子どもでけて、今朝、嫁はんが長屋のつなぎで、えらい祝い取られたゆうてた。竹とこ、行こ。


 よぉ、竹やん。お前とこ、えらい災難やてなぁ」
「いきなり何ゆうねん。うちゃ、子ども生まれて祝
(いぉ)うてんねん」
「お前とこは祝
(いぉ)うてるか知らんけど、長屋は祝い取られて、えらい災難や、ゆうてる。
 ちょっと見せてくれるか。
 えらい大きい子ぉやなあ」
「せやろ。産婆さんも驚いてた」
「大きいだけやのぉて、顔じゅう皺だらけやし、白髪頭で、入れ歯ガタガタいわして・・・」
「そら、お爺さんが昼寝してんねんがな。
 産婦のお咲の横で寝てるやろ?」
「どれどれ・・・・・・、ええ〜?えらい赤いなあ。茹でたんか?」

「赤いよって、赤子とか赤ん坊ってゆうねんがな」
「『おっちゃん、おこしやす』って、ゆうてみぃ。『おっちゃん、おこしやす』て」
「何してんねん?」
「いや、挨拶もしよらんから、しつけを」
「生まれたての赤ん坊がしゃべるかいな」
「竹やん、この子、もみじみたいな手ぇやな」
「初めて嬉しいこと、ゆうてくれたなぁ。可愛らしい手ぇやろ?」
「こんな可愛らしい手ぇして、おっちゃんとこから、祝いの金、取ったか」
「返すわ!」

「冗談やがな。あ、この子、手首に輪ぁ、はめてるなぁ」
「ああ、よぉ肥えてるさかい、手首んとこがくびれて、輪ぁはめてるみたいになってるやろ」
「今は手首に輪ぁはめて、大きぃなったらほんまもんの手錠はめや。

 せや、顔、ほめんならん。
 鼻筋・・・・・・鼻・・・・鼻、低いなぁ〜。口元・・・・・・でかいなぁ。う〜〜ん。・・・・・誉めにくい」
「おいおい!」
「額の広いとこは、亡くなったお爺さんに似て・・・・」
「お爺さん、横で昼寝してるがな!お爺さん、怒りな!教えた奴が悪いねん。
 お前、ちったぁ、ちゃんと誉めてくれや」

「竹やん。この子。お人形さんみたいやなぁ」
「もう何にも言いな。もう何にも言いな。今の一言で、それまでの験
(げん。縁起かつぎ)がいっぺんに直った。
 そうか、お人形さんみたいに可愛らしいか?」
「お腹押さえたら、きゅう!きゅう!ってゆうで」
「殺してまうがな」
(急にあらたまって)「時に、竹さん。このお子さんは、おいくつでございますか?」
「いくつも何も、今朝生まれたとこやがな」
「今朝・・・・・・とは、お若ぉ見える」
「今朝で若けりゃ、いつやねん」
「どう見ても、あさってくらいや」
 久しぶりに会った男には「顔が黒くなったな」と言うくだりがあるのだが、その辺は時間の都合かも知れないが、省略されていた。
 今年の秋には「米團治」の名跡を継ぐ小米朝が、こんな前座ばなしを軽く演っていていいのか?って気もするが、もともと、この正月番組は別に大ネタをかける番組ではない。

 枝雀師匠のサゲは「どう見ても、まだ生まれてないみたいや」というもの。
 「あさって」というサゲは、あまり出来が良くないと思う。


 

 


(2) 桂雀々 「動物園」

 
小米朝さんがね、米團治という上方落語の大名跡を継ぎはるんですが。
 小米朝から米團治へは、普通つながりまへんねん。私、小米朝、中米朝、大米朝になるんか思てました。
   私もね、今度、雀團治って名乗ろうか、思て。
 いや、そんな名前、ないんですよ。

 まあ、日本男児でもええかな、思て。

 
 ぶらぶら遊んでる男が、「移動動物園」(「動物園」のない田舎で、動物を連れて行って見世物にする)で、死んだ虎の皮を着て代役をやる仕事が世話された。どうせ本物を見たことのない人ばかりだから、ばれないだろうというのである。
 男は移動動物園の前田一郎さんを訪ねる。 

「いや、今も話、してたとこでんねん。虎の皮着ようなんて人間、今日びおらんで、ってゆう人も多かってんけど、私は世間も広いから、物好きも一人くらいは・・・・ってゆうてまして。・・・・・・・・お宅でっかぁ。

 ちょっとぉ、虎の皮、持ってきて〜!
 ・・・・・・・・虎の方のご経験は?」
「へ?要りまんのん?」
「いや、聞いただけです。あっ、これが虎の皮です」

 雀々の演出で変わっていたのは、虎の毛皮を着込むところをやたら丁寧に表現するところ。
「あっ、これが虎の皮でっかぁ。
 うわぁ、虎の毛ぇって硬いもんでんなあ。
 これ、全部、中、抜いて?へえ〜」と感心しながら皮を受け取り、ズボンを履くように足を突っ込んでいく。

 お尻をプリップリッと振りつつ、足を先の方まで届かせていく。次は、腕。後ろにぐっと曲げた状態で窮屈そうに腕を差し入れていく。
 そして、お腹のところのチャックを苦労しながら、あごの下までググッと引き上げていく。
 ここで客席から拍手が。

 

「うわぁ、チクチクする〜。え?あと、頭、かぶりまんの?合うやろか?・・・・・・・・・・ピッタシです。

 虎だぁ、俺は虎になるのだ。・・・・・・オ〜!
(と拳を突き上げる)
「何したはりますねん。ここ仕事場、ちゃいまっせ。
 こっちが仕事場です。
(と、檻に入らせて)お尻、押しまっせぇ。ガチャッ!」
「え〜?何でカギ締めんのん?どこも行けへんし!淋しいやん。開けとぃてえ」

「そんなわけ、行きまっかいな。
 それと、あんた仮にも虎でっせぇ。もう少し虎らしい格好してもらわんと。腕組んで、あぐらかいて。

 ちょっと、虎の歩き方、稽古しまひょか。こう、両方の前足を揃える。これが基本のポーズです。ほんで、左手ぇを右手の右側に、そう×
(バツ)になるように。ほんで、次、右手を左手の右へ。で、今度、頭を左側へ向ける。
 はい、今度、右手を左っかわへ。左手を右手の左側へ。ほんで、頭を右側へ向ける」
「あんさん、上手でんなぁ。あんた、やったら?

え?行ってまうの?前田はん。わからんことあったら、呼ぶよ」
「呼んだらあきまへんで!
 ほな、4時までがんばっとくんなはれ」

「あ、前田はん、行ってもた。

 移動動物園かぁ。こんな仕事、人に言われへんなあ。
 あこはネズミかぁ。ええ?あら、普通のネズミやで。その横がウシ。ほんで、わいとこか。横が・・・・ウサギか?え?子ぇ、丑、寅、卯ぅかいな。何ちゅう順番で並べてんねん。 

 あっ、客が来たな。わっ、おもしろい顔。こうゆう子ぉが檻、入ったらええねん。え?わぁ、親もおんなじ顔や。

 しかし、腹すいたなあ。朝から何も食べてへんからなぁ。あっ、あの子、うまそうなパン、持っとるなあ。メロンパンや。・・・・・・・・・・パンくれ。・・・・・・・・・パンくれぇ〜」
「お母ちゃん、今、この虎、パンくれゆうた」
「あほなこと言いな。虎がパン食べたりするかいな。虎は肉食よ」
「・・・・・・そやかて・・・」
(と、檻の中にパンを投げる。虎は「OK」サインを出す)

(場内放送)「ピンポンパンポ〜ン ご来場の皆様 虎の檻の前にお集まり下さい。
 特別ショーを開催します。百獣の王ライオンと密林の王者虎の一騎打ちでございます」


「ええ〜〜!?そんなん聞いてへんで!えええええ?ライオンの檻、こっちに来た。あかん、あかん。
 ライオン、入ってくるがな。ダメ、ダメ!ダメ!ダメ〜!!!
(と、慌てて手で×印をつくる)
「前田さ〜〜ん!もう、あかん!ナマンダブ、ナマンダブ、ナマンダブ・・・・」 
(ライオンは堂々と落ち着いて虎に近寄り、耳元で)
「心配せんでええ。私は園長の前田です」



(3) 小米朝を語る

 

南光「師匠。今年の正月はどうでしたか?」
米朝「・・・・・・・・・無事に終ったようです」

南光「雀々さんは歳男ですね。いくつにならはりました?」
雀々「24です」
ざこば「うそつけ!36か?」
雀々「48でんがな。もうちょっと、しっかりしてもらわんと・・・・」

南光「後ろの段は、若手の都んぼ、ちょうば、吉の丞、二乗の皆さんです。

 で、メインに座っていただくのが・・・・・・・・小米朝さんです。
 ご存知でしょうが、小米朝さんは今年の10月に米團治を継がれます。先代の米團治師匠は、米朝師匠のお師匠さんやったわけですが、どうですか、どんな落語家さんやったんですか?」
米朝「うまい噺家やったけど・・・・・・陰気やったな」
南光「小米朝くんは・・・・・・うまくないけど、陽気ですな。

 噺家も心・技・体が大事です。

 これが欠けるとモンゴルに帰らんならん。

 どうです。都んぼ君、小米朝さんという人は?」
都んぼ「まあ、こんなええ加減な人もいてまへんな。

 天満天神繁昌亭のオープニング公演で口上があったんでっけど、小米朝兄さんはシュッっとしてはるから司会とか、しはるんですな。
 東京からゲストで来てくれはったんが「笑天」で有名な桂歌丸師匠ですわ。そしたら、兄さん、桂歌丸師匠のこと、『三遊亭歌丸師匠です』って」

小米朝「ああ、あん時、落語芸術協会会長って、この肩書きを間違(まちご)ぉたらあかんて、そればっかり頭にあって、つい、うっかり三遊亭・・・・ってゆうてしもてん。そしたら、歌丸師匠、びっくりしたような顔して、『え?三遊亭じゃないよ。おいら、桂だよ』って」
南光「え?歌丸師匠、あれカツラなんでっか?
雀々「誰がわざわざ、あんな頭のカツラすんねん

小米朝「誠意見せなあかん思て、ていねいなお詫びのお手紙書いてんけど、いまだにお返事がないんです」
ざこば「手紙も三遊亭って書いたんちゃうか?」

 
南光「ちょうば君は?」 
ちょうば「私は、小米朝兄さんは華があって、大好きです。これからも、よろしくお願いします」
一同「おい!おい!」
ちょうば「ただね、これだけは気になるんが、何やおかしなもんを、水晶玉をね、楽屋の鏡の前で見ちゃあ、は〜っとかゆうてはるから、あれだけは何とか・・・」

小米朝「これですねんけどね。(と、懐から小さな水晶玉を取り出す)
 江原啓之さんにもろたんです。ピンク色のオーラが2mくらい出てるそうなんです。私には見えないんですけど」
雀々「危ないんちゃうか、それ」

ざこば「わいは、そうゆうのん信じるのんがムチャクチャいやや。師匠も好きやないでしょう?ねえ?」
米朝「ま、まあ・・・そやな」

小米朝「私、気ぃゆうのは存在する思うんですよ。
 物質は分子、原子でできてるでしょ?原子の中がクォーク。その中が波動。波動ゆうのは、すなわち気ぃでっからな。
 私らの商売は、お客さんと気ぃを合わさな、いかんしね。

 まあ、21世紀は、気ぃの存在ゆうのが明らかになっていくんやないかと」
南光「まあ、気ぃがどうこうゆう前に、もっとネタ増やしぃな」
雀々「その通り!!」

南光「吉の丞君は何か?」
吉の丞「前、兄さんがリップクリーム塗ってはって、何や口がベトベトする・・・ゆうて、結局1本全部塗りはってんけど、よぉ見たら、それスティックのりでしてん」
小米朝「あれねえ・・・・サイズがおんなじですねん」

雀々「この男、ゆうたらねえ。前、出番がもうすぐやゆうのに、鏡の前でヘヤムースつけて、髪型が決まらんゆうて。
 見たら、固まらんと、しずく垂れてまんねん。おかしいなぁ思たら、シェービングクリーム塗ってましたんや。
 そこに上岡竜太郎さんがおったから『剃ってまえ!』ゆうて・・・」

南光「まあ、こら遺伝かもしれまへんなぁ。
 師匠も、前に水虫の薬と目薬を間違ぉたことがある。
 目薬を水虫の薬や思て、足に塗ったんちゃいませぇ。水虫の薬を、目薬のようにさしたんでっせぇ。
 それも、ああ、これは水虫の薬やなって確認したのに、さしはったんでんなあ?」
米朝「そんなこともあったな」

 


 もう少し先があると思うのだが、録画設定時間を間違えたのか、ここで切れていた。まことに申し訳ない。

 どうも、お退屈さまでした。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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