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(No77) 平成紅梅亭 TV鑑賞記 その1  

 平成19年10月23日放送分。
 


(1) 桂春菜 「任侠伝」

 
桂春蝶の息子。
   これは親父の得意ネタである。

 座り間際に、見台を両手の拍子木で叩く。

 私、昔ニュージーランドの方へ、1ヶ月ほどホームスティしてたことがありました。
 外国暮らしが長くなると、日本語が聞きたくなりまして。
 レンタルビデオ屋で古いヤクザ映画を借りましてね。もちろん、英語の字幕が入るんです。

 お控えなすって!という台詞のとこで字幕見ると、How do you do? ・・・・・ってなってるんです。「初めましてぇ?そら違うやろ?」て思いました。

 何で私がヤクザ映画が好きなんか自己分析してみますと、私・・・・・非力を絵に描いたような男でっしゃろ?着物なんかもレディスですしね。

 弱い男ほど、強いもんにあこがれるんでしょうなあ。


「いやあ、今日も我らが健さんはかっこよかったなあ。着流しに白い晒しを痛いくらいに巻いて・・・・。同じ着流しでも健さんのは麻やさかい、ぴ〜んと立ったぁるわ。そこいくと、わいのんポリ100%やもんなあ。ゴワゴワしとる。

 健さんの雪駄は革や、底に金打ったぁるから、歩くとシャラシャラ音がする。わいのは、100均のビーチサンダルやもんなあ。


 あ、着いた。
 おっかぁ、今けぇ〜ったよ」
「・・・・何ちゅう言葉づかいや。親蹴ってどないすんねん。どこ行ってたんや?」
「ちょっと健兄いのところへ」
「健兄ぃでも、鶴田叔父貴でもええけど。映画、観に行きなとは言わん。しやけど、せめて、映画が変わってから行き。
 ちょっとは店の手伝い、したらどないやねん。妹ばっかりに働かせやんと」
「・・・・さくらは、もう寝やしたか?」
「和子や!松竹も東映も一緒にしな!ああ、あんたとしゃべってるとストレスたまるわ」
「おっかさん。しばらく見ねぇうちに、やせちまった・・・」
「皮肉か、それ。こないだ、はくだけで痩せるゆうパンツ買(こ)うたけど、はけんかったんや。
 もう寝なはれ!」
「・・・・・じゃあ、先に休ませていただきやす」
「目ぇむきな!」
「・・・・・寝え言われても、映画の余韻で寝れんなぁ。せや、風呂に行こ。

 おっかさん、湯ぅへぇ〜ってくるよ」
「どこへでも行け!」


「・・・・・・・・もし・・・・お兄さん・・・」
「流れ者には女はいらねえ。おっと、お姐さん。寄っちゃいけねえ」
「石鹸落としてますよ」
「・・・・・・おおきに。

 あ、風呂着いた。おっ、あの人、立派な刺青やなあ。せや、わいも彫ろ!


 すんまへん。ちょっと刺青彫ってもらえまっか。背中一面に唐獅子牡丹」
「ん?そら、唐獅子牡丹でもパンダでも彫らんこたないが・・・。ちょっと肌見せてくれるか。近頃は気に入った肌やないと仕事せんのや。

 ・・・・・おお、なかなかキメの細かい肌やな」
「・・・・く、くく・・・・・・・む、む、むぅ〜・・・・。これが男の道の痛みってやつですかい?」
「まだ、さすってるだけやけどなぁ」



「あない痛いと思てなかった。せや、懲役に行こう。
 あこのポリボックスの前でバナナ売ってるさかい、それを盗んで・・・・」
「こら!何するんじゃい!」
「逃げも隠れもいたしやせん。突き出しておくんなさい」
「・・・・お前、角の八百屋の子ぉやないか。うち帰ったら、いやほどバナナあるやろぉ?
 堪忍したるから帰り」
「それでは、あっしの気が済みやせん」
「ええ?わいは別にええねんけどなぁ。

 すんまへん。こいつ、うちのバナナ1本盗んだんでっけど」
「えええ?そんなん連れてこんでええのに。

 お前、どこの子ぉや?」
「寝ぐら持たねえ一匹狼でござんす」
「うそつけ。お前、角の八百屋の子ぉやないか」
(懲役)勤めさせていただきやす」
「勤めたいの?ほな、ハローワークで・・・。え?違う?懲役?バナナ1本盗んだくらいで懲役になるかいな。何ぼ、きつても罰金50万円てとこや。でや、50万円払えるか?」
「いえ。どっかで貸してもらえるようなとこ、おまへんやろか?」

 こいつが健さんに憧れてるように、この警官にも憧れてる人物がおって、今の言葉で成りきってしもたんですな。

「えらい、お困りのようでんなあ」

 そう、ミナミの帝王、萬田銀次郎、竹内力ですな。

「今日の50万が、利子を利子を生んで、30日後ぉには870万や。利子の奴隷になってもらいまひょか!」
「あんた、ほんまに警察官でっか?ちょっと、日曜午後の読売TV観過ぎやで。たかじんの委員会の後の」
「でや、目ぇさめたか?
 とっとと顔洗
(あろ)ぉて出直しといで」
「へい。ついでに足も洗わせていただきやす」

 ちょっと母親のセリフが金きり声すぎたり、ちょっと全体に線が細すぎるというか、いかにも「お坊ちゃん」的な感じ。



(2) 桂小春團治 「教科書戦士 スーパーカリキュラム」

 
噺は新作だが、姿格好は落ち着いた感じ。
 
 卒業すると校舎に立ち入ることがなくなりますが、子供ができますとまた学校に行く機会ができます。
 すると自分の子供の時と違い、客観的に学校やら授業をみれるからおもしろいですな。

 こないだ、うちの子が小学2年の時、日曜参観とゆうのがありましたが。

 2年生くらいやと、参観て何の授業すんねん?て訊いても、よぉわからんゆうんですな。何か体の授業をやる、ゆうて。

 行ったら、いわゆる性教育の授業やったんです。まあ、2年生ですから、そない微に入り細に入り・・・ゆうような授業やのうて、男の子と女の子の体の違いて授業でした。

 ほんで、女の子はおしっこした後、どうしますか?て先生が訊いて、誰かが「紙で拭きます」て答えました。
 で、次に男の子は?と訊いた。女の子は、わかりまへんからな。男の子が、ここぞとばかり手を上げる。

 はい、○○君て、指名したら「スリッパを揃えます」・・・・・・。うまいな、うまいことすかしよるな、て感心しました。次に、別の子を指名しました。はい、△△君。そしたら、その子が「よぉ手を洗います」。
 ・・・・・一番、聞きたいことをうまくすかす。大喜利の神髄ゆうか。若手に聞かしてやりたい。

 運動会もおもしろいですなあ。まあ、男は写真班、ビデオ班ですなぁ。
 こないだも運動会があったんですが、そない自分の子ぉがずっと出てるわけやないですからな、向こうの方にいてるお母さんをズームで見てたんです。2年生くらいのお母さんですとね、若くてスタイルのええお母さんがいてるんです。ところが・・・・・・何かの加減で録画してしもてたみたいなんです。逆、逆ゆうか。子供が出てる時に撮影せんと、向こうの奥さんだけ録画してたんです。
 あと、家で上映会やった時、えらい不評で・・・・・・ただの変態親父でした。

 聖平凡学園にミダライドという宇宙人が襲ってきて征服しようとするが、教科書戦士スーパーカリキュラムたちが反撃する。

 ミダライドは、不良化させようとして「火遊びファイヤー」で攻撃する。スーパー理科が「石綿付き金網」で防ごうとするが、これは今、話題のアスベストじゃないかと言われる・・・・・・てな内容。

 会場のお客さんは、この噺についていけてたんだろうか。

 結局、「日本国憲法」攻撃でやっつける。学園を掃除して帰ろうということになったが、スーパー技術社会がブリキでちり取りを作ったが、掃くものがない。

 もう一度、日本国憲法を出してくれ。え?憲法で掃けますか?9条は戦争放棄(箒)です・・・・・というオチ。


 ・・・・・・・・ほんま、お客さん、ついていけてたかなぁ?

 


(3) 桂雀三郎 「風邪うどん」

 
マクラは、伝統的な「売り声」シリーズ。
 
「一声と三声は呼ばぬ たまご売り」
 要するにたまご売りは「た〜まご たまご」と2回呼ぶ。一声、「たまごう!」では「ど〜れ」と門番が出てきそうだし、三声「たまご、たまご、たまご」では後ろから追いかけられているようだ・・・・・というもの。

 大根は「ん」の字は呼ばず「だ〜いこ だいこ」と呼ぶ。その「ん」は「ごぼう」に付いて「ご〜んぼ ごんぼ」と呼ぶ。

 竿竹は、形のとおり「さ〜〜おぉ〜だぁ〜け〜〜」と長く伸ばすように呼ぶ・・・・・・・・・というので、座布団から外れて膝立ち状態で、どとんどとんと平行移動していく。実に派手なアクション。

 夏の売り声は眠気を誘う・・・・ということで「よぉ〜〜しや すだれは いりまへんかぁ〜〜 ござや ねござ・・・・・」とやって、「最後、半音下がるんです。さすがミュージシャンでっしゃろ?」とギャグを飛ばす。
(雀三郎は「ヨーデル食べ放題」というヒット曲を持つ、「日本一落語のうまい歌手」である)

 「金魚〜〜ぇ〜金魚ぉ〜〜おぉ〜〜おぉ〜〜ぉ〜〜」で、天秤棒の荷ぃの中の金魚を落ち着かせる。眠気を誘うということで、これを聞いている人の頭がだんだん前に傾いていって、最後、ごとっ!と大きな音を立てて舞台にでぼちんを打ちつける。客席からは拍手。「これ、うちの伝統芸になってまんねん」と雀三郎。

 確かに枝雀師匠の「た〜まごぉ〜 ぉたまご」という声や、ごとっ!という音が懐かしく思い出される。

 残念ながら今日の雀三郎はそもそも声がしゃがれているし、熱演が完全に空回りしている感じだった。

 「風邪うどん」は吉朝で究極の「風邪うどん」を聴いてしまったので比較するのも気の毒なのだが、
(1) 風邪ひき男がうどんを食べる時の食べっぷりが派手すぎる。めちゃめちゃ元気やん、て感じ。

(2) 風邪ひき男が何度かうどん屋に声をかけるたびに、うどん屋は大量注文をしてくれるのかと期待して「はい!」と返事する。その時、毎回毎回膝立ちになるのだが、ここも派手すぎる。
 基本的に、風邪ひき男から「お前も風邪ひいてんのか?」と言われるくらいだから、あまり元気満々では芸としてのすわりが悪い。

(3) 最後、風邪ひき男が「お前も風邪ひいてんのか?」とうどん屋に言うところで、「お前・・・・」と言いかけてぶへへへ!と派手に咳き込む。これが決定的に要らない。
 小さな声で注文した男のことを、先ほどの博打をしていた連中のように周りをはばかって小さな声でしゃべっているのだろうとうどん屋が勝手に思い込む。で、その男に合わせて小声でしゃべるうどん屋。
 ところが、その男は風邪ひきで小さな声しか出ないのであった。それも、直接、自分が風邪だとは言わずに、うどん屋に「お前も」風邪ひいてんのか?と表現する。
 私は、この「風邪うどん」のサゲは、非常にドラマチックでしゃれたサゲだと思っているので、わざわざ咳き込んで風邪ということを表現する必要は全くないと思う。さらりと「お前も風邪ひいてんのか」と言い切って終ってほしい。 

 






 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録画はしたのですが、きっちり聴き直してないので、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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