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(No69) 「互助寄席」 鑑賞記 その2  

 ある団体が大阪府下在住の人を対象に寄席に招待してくれた。幸い抽選に当たったので聴きに行った・・・・・の続き。。
 


(3) 桂宗助 「禍は下」

 
前も書いたが、出囃子は「芸者ワルツ」。今日は、高座に上がって見台を小拍子で叩こうとして見台の前に落としてしまった。しかし、何食わぬ顔で拾い、平然とマクラに入る。
   落語と落語の間に挟まりまして・・・・・・・・落語でございます。

 近頃の女性は強なったて、よぉ言いますが、あら近頃やない。昔からです。

 寒さに対する抵抗力も女性の方があって、冬山で遭難したりしても女性は、なかなかおくたばりあそばしません。

 ですから、よぉドラマで「寒くないかい?」てなことゆうて、男性が女性の肩に自分のコートを羽織らせるシーンがありますが、あら大きな間違い。
 女性はほっといても風邪ひかんのです。

 痛みに対する抵抗力もそうでございます。そら瞬間的な抵抗力については多少男性が勝るかもしれません。例えばほっぺたを張られたりしたら、女性は泣いてしまう。しかし、それで勝負あったと思ったら、えらい間違いなのでございます。

(顔をゆがめて、憎々しげな声で)何せ、女性は持続性がありますからな・・・・・・・・・まあ、そない憎たらしそうに言わんでもええんですが。

 昔の拷問の石抱きの刑なんかでも、そうです。
 女性はね、愛しいお方のため、この秘密洩らしてなるものかと耐えて、耐えて、そのまま悶絶してしまうてなことがありますが、男は違う。
 まあ、1枚くらいは我慢します。これぐらいでは、男も面子がありますからな。
 これが2枚、3枚となりますと「ごめん、ごめん。ゆう、ゆう。地図も書く」・・・・・・。

 特に女性も結婚して「嫁さん」と名ぁが付きますと、またパワーアップいたしまして・・・・。

 
 で、本題の「禍(わざわい)は下(しも)」に入る。内容は以前聴いた噺と特に変わったところは気が付かなかったので省略する。



(4) 桂小米朝 「七段目」

 
今回の落語会ではプログラムに予め演目が印刷されていた。小米朝の「七段目」は、これで4回目である。最初聴いた時はほんとに感心したし、いつもうまいと思うのだが、さすがに4回目となると・・・・。
    既にご存知かとは思いますが、わたくし、来年、5代目米團治を襲名させていただくことになりました。

 この方は、うちの米朝の師匠ですが、昭和26年に55歳で他界いたしました。


 米朝も50歳の頃、「どうですか?米團治継ぎはったら?」ゆう話があったんですが、米朝が「まだ早い」と申しまして。

 ほんで60の頃にも、またそんな話が出たんですが、やっぱり「まだ早い」。

 で、70くらいの頃は「もう遅い」・・・・・・・。ハナ
(最初)から継ぐ気がなかったようで。

 まあ、この襲名の話も3年越しでして。
 だいたい小米朝になったんも、枝雀兄さんやざこば兄さんのすすめでして。

 ざこば兄さんがフン、フン、フン、フン・・・・って、口より先、手ぇが出てねぇ。せっかく米朝の家の長男で生まれたんや。やり!やり!・・・・・ってねえ。

  枝雀兄さんも「やんなさ〜〜い!」ゆうて
(と、着物の袖を持って、鳥のはばたきみたいにパタパタさせる)

 小米朝ゆう名ぁをつけてくれたんも枝雀兄さんでして「わかりやすいでしょ〜。これでいこう!」。

 初めて独演会やったんが札幌やったんですが、高座上がって、メクリ(出演者の名前を表示する札)見たら「子米朝」・・・・・・・。ま、ある意味、正解です。

 初めて落語の世界で重要無形文化財、いわゆる人間国宝にならはったんが東京の柳家小さん師匠。翌年に米朝がなりまして。
 で、小さん師匠が亡くなりはったんで、今では米朝ただ一人!
(とん!と扇子で高座を叩く)。そこの長男!(とん!と再び叩く)皇太子殿下のご苦労がよぉわかる・・・・・・。 

 3年前、ざこば兄さんが「米朝になれ」って言わはって。「ええ?まだ・・・・・」ってゆうたんですが、「かまへん!俺がゆうたる」ゆうて、ゆうてくれはったんですが、「ほな、わしは何になんねん」。・・・・・・それで却下ですわ。

 月亭可朝になれへんか、ゆう話もあったんですが。
(昔、「ボインの唄」で有名だった月亭可朝の前の名前が小米朝)
 本編は、何度も聴いた・・・・・・・とばかり言っていても芸がない。

 『桂米朝コレクション 7』(ちくま文庫)を読んでいると、米朝師匠のオリジナルはけっこう簡素なものだった。

 それで、一度、小米朝や吉朝一門のバリエーションなどを整理してみたい。

 
『桂米朝コレクション 7』 小米朝 吉弥、よね吉
 旦那が番頭に息子のことを愚痴る。

「何であんな子供がうちにできたんじゃろなあ」
「ほんまに何でまたあんな若旦さんが」
「あら、いったいどうゆう了見じゃろ」
「さあ、どういうご了見でっしゃろなぁ」
「何になるつもりじゃろな」
「何になるおつもりで・・・・」

おうむ返しの会話の後、旦那が
「あんた、自分の考え、ないんか?」
 旦那が番頭に息子のことを愚痴る。(内容は異なる)

(1) 行くなとは言わんが行き過ぎだ。「月に二日は・・・・・休む、てゆうてた。役者より、出入りしとんねん」
(2) 珍しく店番をすると言った。拍子の悪いことに巡礼の親子が来て、息子が子供に里を訊いた。「大和の郡山」と答えたが、「そんな筈ない。阿波の鳴門やろ」と子供を殴った。

 あんたがそこに居ると小言の切っ先が鈍ると言って、番頭を遠ざける。

「わしかて芝居は嫌いやない」が、息子は度が過ぎていると嘆く。 「わしかて芝居は嫌いやないが、せがれは行き過ぎや。何ぼほど行ってんねんて訊いたら、月に三日は・・・・休みます、ゆうてた。役者より出入りしてんねがな」 (なし) 
 番頭が、若旦那の芝居狂いは「ご先祖さんが旅役者でも絞め殺したとか・・・」と崇り説を提唱。 (なし) (なし)
     息子が、向こうの辻から六方を踏んで店に帰ってくる。
 旦那が息子が遅いとなじると
「ははあ。遅なはりしは拙者、重々の誤り。御前に出(い)づるも間のあることと、お次に控えおりました」と息子が返す。
同左 同左
 あきれ果てて涙も出んと言うと、
「さ、そのお嘆きはごもっともなれど、常が常なら梶原も、贋首取っちゃぁ帰りますまい」
「情けのうて涙も出んわ」
「お痛わしや、親父どん。
 そのお嘆きはご無用、ご無用。常が常なら、この梶原が、贋首取って・・・・」
「情けのうて涙も出んわ」
「そりゃ、わらわとて同じこと(女形口調で)」
「お前か、今、変な声出したん?わしにもしものことがあったら、お前がこの家継がなあかんのやで」
「枝振り悪しき桜木は 切って継ぎ木をいたさねば 太宰の家が立ち難しぃ〜(女形口調)」
「太宰の家やのうて、この家が危ないわ。こんなことでは死んだ婆さんに会わす顔がない」
「お痛わしや〜」以下は小米朝と同じ。
  「そりゃ、私じゃとて」
「まだ、ゆうてんのか!」と、額を叩く。
 素で「何もどつかんかて・・・」とぼやくが、額の血を見て、ぷ〜っ!と息を吐き、
「しゃっ!こりゃ男の生き面を〜」
「どついたが、どうした」
「どこのどなたか、知らねぇが」
「目の色変わりよったで」
「その料簡が・・・・」
 殴り返そうとする息子を番頭が止める。
「誰かと思えば、この家(や)の番頭。
 せっかくおめえが止めるから、今宵のところは辛抱するが・・・
 やい、親父!晦日に月の出ぬ里も闇があるから、覚えてろぃ!」
 ここで殴る。
 素で「いったぁ〜」とぼやき、額の血に気付き、ぷ〜っと息を吐く。
 親父は「猫か」と突っ込む。

 後は小米朝と同じ。
 客が来るから二階に上がって下りて来るなと命じられ「すりゃ、私を座敷牢・・・・」と嘆く。 (ここでは座敷牢とは言わない) 「生涯降りてくな」と言われる。
 早く上がれと言われ「しからば、ごめん。後刻対面、致すでござろう」。
 その後、口で「ど〜ん、ど〜ん。チャンチャンチャンチャン」と芝居振り。
同左  番頭がとりあえずこの場はとりなす。
 番頭と若旦那が二人になる。
 番頭は若旦那をたしなめ、若旦那はわびるが、「おもろかったな」(よね吉演出は「盛り上がったな」とガッツポーズ)
 息子は二階への梯子段を見て「八百屋お七」を思い出し、真似をする。
 三味線の口真似をし、途中で滑り落ちるところも真似をする。
「こんな梯子段見たら、こないだ見た芝居、思い出すなあ。八百屋お七、火の見櫓の場ぁや。わい、人形振り、好っきゃあ」と言う。
 無実の罪で牢に入れられてる吉三の元へ証文を届けに行こうとして、天下の大罪火付けをして木戸の開いたとこ、髪振り乱して通ろうとするとこ・・・と場面の説明をする。
 「この鐘(太鼓?)の打たるる時は 町々の木戸も開き 吉祥寺へも行かるるとのこと 打てば答える櫓の太鼓 はあっ!トチチリ トチチリ トチチリ・・・」と何か葛籠(つづら)でも担いでいるような格好で首をガクンガクンと前後させる。
 そして梯子段を昇る格好をして「途中でずり落ちんねん」と言って「トチトチトチトチ・・・」と言いつつズルズル・・・っと滑り落ちる。

 旦那に二階にも満足に上がれんのか!と怒られる。
 八百屋お七を思い出すというのは、若旦那の独白でなく、番頭に言っている。

 人形振りについては、特に強調しない。
 外へ行きたいが屋根伝いにも行けぬ、飛んで行けたらなあと嘆き「翼が欲しい、羽根が欲しい」  二階に上がって「座敷牢やぁ」と嘆く。
 「翼が欲しい〜」の後、市川団十郎の「切られ与三」の真似(鼻声)。
 「一人でやってたらあほらしいなあ」とつぶやき、五段目の回想に。
 山崎街道で与市兵衛が定九郎に刺され「人殺し〜!」と大声をあげる。
  回想するのは三段目。「成駒屋!」などと掛け声をかける。
 旦那は、それを聞いて「化けもん屋敷やなあ」と嘆き、丁稚の定吉を呼び、注意してくるよう命じる。  旦那は二階を見上げ「そろそろ始めよったで」と嘆き、定吉を呼ぶ。
 定吉も「何、御用にござりまする?」と芝居がかりで尋ねるので旦那が「うちゃ、化けもん屋敷か。まともな奴はおらんのか」と嘆く。
 小米朝と同じ。 
 二階では若旦那が芝居をしているので、芝居がかりで声をかける。
「見れば御家内に取り込み事のおありの様子、しからば失礼つかまつる」
「おおう、いやしばらく。ず〜んと些細な内緒事。ささ、ずっとお通り召されぃ」
「しからば、御免」
 若旦那は猪の真似で走り回っている。(五段目の猪が疾走しているところを、身振り付きで演じる)

 定吉は「〜しからば、仙崎弥五郎、失礼つかまつる」と左記のセリフに名前を入れて、声をかける。
 若旦那が何の芝居をしているか、は明示されない(「一人で目ぇむいてる」というセリフのみ)。

 若旦那は芝居に夢中だから、と言うことで定吉も芝居がかりのセリフで声をかける。
「やぁ〜やぁ〜 若旦那〜 芝居の真似をやめれば良し いやじゃなんぞと抜かすが最後 とっ捕めぇて (だん!だん!) ひっ捕めぇて (だん!だん!) やりゃあしょめぇが 返答は?あ、さぁ さぁ さぁさぁさぁさぁ〜何と、なぁあ〜んとぉ〜?」
「定吉 うまいがな。負けてられへん。

 よぉいところへ丁稚の定吉
 この作次郎 会うてみよえ〜
そ〜れぇ〜」

 旦那は二階を伺い「えらい奴上げてしもた。二人で芝居始めよった」と嘆く。 
「今の六段目の二人侍(ににんざむらい)のセリフやな。一緒に芝居しよ」と定吉を誘う。 「役者が足りぃで困ってたんや。一緒にやろ」と誘い、
「わたい、止めに来たんでっせ。そんなん・・・・・・何やりまんの?」
「やんのんかい!」
 若旦那が誘い、定吉が断るような素振りで「何やりまんの?」までは同じ。

 若旦那は、別に定吉を咎めない。
 今、六段目のセリフやったから七段目をやろうと若旦那が提案。 「五段目やってたとこをお前が六段目で止めに来たから、七段目やろか?」と提案。  「華やかなところで、七段目やろか」と提案。
※ 五段目も六段目も出てこないので、順番で・・・とは言えない。 
「女形(おやま)や」と定吉にお軽を配役。
「こんな格好で・・・」と渋る定吉に、妹の赤い長襦袢を着るよう勧める。
 お軽を勧める。
「店の常着でっせ?」と渋る定吉に長襦袢を着るように言い、自分も時々着て踊っていると言う。
 定吉がかなり積極的。「お軽、やらせてもらえまんの?」と喜ぶ。

「こないな木綿もん・・・」という定吉に「お前は芝居心があるから、そうゆうことゆうねん」と誉める。
「下見たらお軽みたいなけど、顔見たらお猿みたいななぁ」と手拭で姉さんかぶりするよう命じる。 同左 同左
 若旦那は夢中になったら抜くと心配する定吉を制し、本身(真剣)の葬礼差し(そうれんざし。儀礼用の刀)を腰に差す。 同左 同左
  手紙の場面から始めることを指示する。  格好が整ったところで「ちょうど、隣の稽古屋が三味線始めよった」とのセリフ。  
「妹、よう売られた」
「兄さん、わしゃ恥ずかしいわいな」
「何の恥ずかしいことがあるものか」 
同左 「お前は兄さん、恥ずかしいわいなぁ」
「おぉ、よぉ売られた、でかいた、でかいた」(両手を振り上げ、「でかした」と誉める)
「したら、兄さん、叱ってやないか?」
「何の叱ってよいものか。この兄は、誉めておるわい、誉めておるわい」
「あたしゃ、今日身請けされることになったわいな」
「そら重畳。して、どなた様に?」
「大星由良之助様じゃわいな」
「われを勘平の女房と知ってのことか」
「親、夫の恥になること、知らずじゃわいなぁ」
同左 「喜んでおくれ、わしは今宵この一力を請け出されるわいなぁ」
「それは重畳。して、どなた様に?」
「兄さんもよぉご存知のお頭、大星由良之助様」
「何ぃ?そりゃ、下地からの馴染みかえ?」
「い〜や、知らずじゃぞえ。間夫(まぶ。恋人)があるなら添わしてやろぉ、暇が欲しけりゃ、暇やろと、結構すぎる身請けの相談」
「知らずに身請け。・・・・すりゃ、いよいよ本心放埓。お主の仇討つ所存な無えにきわまったか」 同左 同左
「いや、あるぞえ、あるぞえ」
「あるとは何か」
「高うは言われぬ。これ、な」
「・・・・・うん、うん。して、その文、残らず読んだか」
「あい、残らず読んだその後で、互いに見交わす顔と顔。じゃら、じゃら、じゃらつきだして身請けの相談」
「なに?残らず読んだその後で、じゃら、じゃら、じゃらつきだして身請けの相談。・・・・・読めた!」
同左 同左
「びっくりしたわいな」
「先ほどの下郎の悪口雑言、お許しくださりませ」
同左

 横を向いて手を合わせ「お許しなされてくださりませ」のセリフ。
同左

 横を向いてのセリフはなし。
「妹、久しぶりに会(お)うた兄が頼み、なんと聞いてはくれぬか」
「兄さんの頼みとはえ?」
「頼みというはな・・・」
「お頼みとはえ?」
「・・・・妹、そちの命、兄がもろうた!」
 何度目かのやり取りで、若旦那は手にぺっ!とつばを吐き、刀の柄に手をかける。
 セリフを返しつつ、怯える定吉。
 小米朝と同じ。
 立ち回りの末、定吉は2階から落ちる。
 旦那は介抱のため、水を持ってくるように命じ、その水を口に含むが、うっかり飲み込んでしまう。
 もう一度持ってこさせ、霧吹きのように吹きかける。
 定吉は、下がって避けながら「あきまへん、危ない、危ない、ああ、落ちる〜」と言いつつ、階段を落ちる。

 旦那は「やかましいうちやなぁ・・・あ、何や、赤いもんが落ちてきた思たら定吉やないか、これ、しっかりせい!」と頭を叩く。
 米朝演出と同じ(介抱用の水をうっかり飲んでしまう)
 定吉は「私には夫のある身」とうわごとを言い、「丁稚に夫があってたまるかい」と返す。 同左 同左
「こんな格好で、勘平とか何とかて・・・・茶屋場をやってよったんや。七段目で落ちたんか?」
「いいえ、てっぺんから落ちました」
同左 「てっぺんから落ちたか?」
「いいえ、七段目」

【 「七段目」比較論 】

 
こんなことを書こうと思ったのは、「七段目」のオチが二種類あったからである。
(1) 「七段目で落ちたんか?」「いいえ、てっぺんから落ちました」
(2) 「てっぺんから落ちたか?」「いいえ、七段目」

 流れから言うと自然なのは、(2)の方だろう。梯子段のてっぺんから落ちたのか?と心配する旦那に対し、「七段目」の芝居をしていて落ちたんですと「原因」を言う。落ちた定吉が「七段目」と言うのは実際にその芝居をやっていたのだから当たり前。
 ところが、(1)では、旦那が定吉の格好やうわごとで「七段目」と察する。だから、七段目「で」落ちたんか?と聞く。しかし、当の定吉は落ちた「場所」を言う。
 (2)では、てっぺん「から」と聞かれて、七段目「で」落ちましたと答えず、「いいえ、七段目」と言い切りの形で終っても別におかしくない。
 しかし、(1)では「いいえ、てっぺん」とは言い切れないので、七段目「で」落ちたんか?に対し、てっぺん「から」と答えるぎこちなさが耳に残る。

 あと、(1)では上でも述べたように旦那が一目で「七段目」と察する。昔は娯楽としての芝居のウェイトが高いから、赤い着物で「勘平さんという夫のある身」というセリフだけで「七段目」とわかるのなんか常識だったのかもしれない。しかし、現代的感覚では、旦那がよく「七段目」て、わかるよな?と感心するというか、やや疑問に感じる。
 そこで、冒頭の「わしかて芝居は嫌いやない」というセリフが効いてくる。ああ、旦那も息子ほどじゃないが、けっこう芝居好きで、それで「七段目」てわかったんだな、で、「七段目で落ちたんか」というセリフにつながるのだなと得心した。
 オチに至る伏線が冒頭に張られていたのだな・・・と感嘆しちゃったのであった。

 『桂米朝コレクション』には、米朝師匠自身の解説がついている。「七段目」のところには、「親父の意見に対して息子がいちいち芝居がかりで応答する件(くだ)りは〜あまりクダクダしくやらなかった」とある。
 そこをクダクダしく、というか、多めにやるのが小米朝や吉弥などの演出分なのであろう。

 同じく米朝師匠の解説で「この『七段目』は上方では、戦後は立花家花橘、桂玉団治の両師がやっていたぐらいです。玉団治さんのは、東京の先代円歌師のように、丁稚が『やあやあ、若だあ〜んな・・・・』と、伴内の要領で乗り地(のりじ)になる、派手なやり方でした」とある。吉弥らがやっているのが、その「派手なやり方」なのであろう。

 こうして考えると、小米朝の演出は、結構忠実に米朝師匠の噺をベースにしていることがわかる。そこへ、生来の芝居好きから声色(芝居の真似)の部分をプラスしている。それと、「人形振り」を特化している。

 米朝師匠の解説には「そのセリフが何の芝居のものか・・・・これはよほどの芝居通の人でないと、おわかりになりますまい」と書かれている。その解題をされているのが『上方落語メモ』というHPのここである。このHPは、メモ書きをもとに、自分で勝手に再構成している私のサイトと違い、ビデオテープなどから忠実にテープ起こしされている貴重なサイトである。
 
 

 

  



 

 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録音等はしてませんので、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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