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(No66) 「日本の話芸」 TV鑑賞記  

 NHKで放映されている「日本の話芸」というのは、東京の噺家さんも放映されるのでなかなか貴重。

 


(1) 五街道雲助 「文違い」

 
2007年9月8日放映。
   「文違い」とは、いわゆる廓噺のひとつ。

 騙し騙されのややこしい関係。

 主な登場人物は、
(1) 新宿の女郎お杉
(2) 日向屋半七
(3) 田舎のお大尽角蔵
(4) 芳次郎・・・・・・・の4人。

 お杉が半七に、因業な養父と縁を切りたいので、20両の手切れ金を無心していたが、都合できたか?という会話から始まる。10両ほど都合したが、それでは足りない。

 そこへ近郷の百姓のお大尽角蔵がやって来る。お杉は、角蔵を夫婦約束でたぶらかしていた。お杉は、母親が重病なので高麗人参代がいると無心する。
 角蔵は15両持っているが、これは馬を買うため預かっている金なので渡せないと断る。すると、お杉はおっかさんより馬を大事にするようなら夫婦約束はなしにするとすねてみせ、角蔵は謝るから受け取ってくれと頼む。
 お前さんを謝らせたりするようなはたらきのある女じゃないけど・・・・・・・と言いつつ受け取って、少しでも早く渡したいからと角蔵の座敷をあとにする。

 お杉は再び、半七の座敷へ。こっそり覗き見していた半七は、田舎者のくせに色男ぶっていると角蔵を馬鹿にする。
 お杉はあと5両足してくれと頼むが、半七は15両あるなら、もういいじゃないか。その金で話をつけろと出し渋る。
 お杉は、一生あの親父につきまとわれて苦労すりゃいいんだ、もうお金はいらないよとすねてみせ、半七はあわてて、謝るから受け取ってくれと言う。お杉は、お前さんを謝らせたりするようなはたらきのある女じゃないけど・・・・と言いつつ受け取って、さっそく半七の座敷をあとにする。

 別の座敷で待っていたのは、芳次郎という苦みばしったいい男。眼を病んでいて、高い薬がいるとお杉に無心していたのだ。
 お杉は、久しぶりなので今晩は泊まっていってくれと言い、断った芳次郎に、それならこの金は渡せないと言う。
 と、芳次郎は、一刻を争うと言っているのだから、もし俺が泊まっていくと言っても、早く医者に・・・と言うのがまことじゃねえか、そんな金なら要らねえと突っ返す。
 慌てたお杉は謝るから受け取ってと頼み込み、芳次郎は、おめえに謝らせるようなはたらきのある男じゃねえが・・と言いつつ受け取る。お杉は、店の若い者に「これはうちの人から・・・」と言って小遣いを渡し、芳次郎を送って行かせる。

 二階から芳次郎の様子を伺っていたお杉は、店を出てしばらくは杖をついておぼつかない様子で歩いていた芳次郎が、待たせておいた駕籠に乗ってさっさと立ち去っていったことに若干の不審を覚える。
 と、芳次郎がうっかり部屋に落としていった手紙を発見する。それは小筆という女郎が芳次郎にあてた手紙で、妾に行け。それがいやなら金を・・・と言われて困っていたが、新宿の女郎お杉をだまして20両都合してくださるそうで・・・・という内容だった。

 その頃、座敷で待っていた半七は、退屈まぎれにお杉の物入れをのぞいている内に、芳次郎からお杉にあてた手紙を発見する。「芳じるしより」という署名に「色男ぶりやがって、お杉にゃあ半七って情人(まぶ)がいるってことを知らねえんだ。まあ、こういうまぬけなうぬぼれ野郎がいるから、こういう里はもつんだよなあ」などと馬鹿にしながら読み進めるが、「眼病治療で20両要るが、日向屋の半七なる客をだまして、おこしらえいただける由・・・」という内容に逆上する。

 そこへ帰ってきたお杉。これまた逆上しており、「ぶつならぶて。年季が明けぬうちは親方の身体だ。あ、ぶったね。殺さば殺せ!」と大騒ぎ。

 その様子を耳にした角蔵、店の若い者を呼び、俺が渡した金でもめているのではないか、おれは色恋沙汰じゃない、病気のおっかさんを救うために恵んだ金だと説明して喧嘩を止めてこいと命じる。
 が、行きかけた若い者を再度呼び止め、「そうすると、おらが情人(まぶ)だとばれてしまわないかな?」というのがオチ。


 なかなか、ストーリーとしてもよくできた噺だと思う。それにしても、角蔵さんって幸せな人。

 五街道雲助ってすごい名前だなあと思った。どんな熊五郎みたいな人かと思ったら、モノマネの栗田寛一に似た感じで、いかにも江戸前っぽい雰囲気の噺家さんだった。

 


(2) 桂南光 「はてなの茶碗」

 
2007年9月15日放映。
   骨董屋で見かけた噺家の色紙で一番高かったのは古今亭志ん生師匠だった・・・・・・・・・・というあっさりしたマクラで、本編へ。

 「はてなの茶碗」といえば、まさに南光でこないだ聴いた。それはここから。 

 安定した噺っぷり。

 

 


(3) 入船亭扇橋 「御神酒徳利」

 
2007年9月22日放映。
   出てきて、座っておじぎをする。それはいいんだが、ずっと小刻みに頭を左右に振り続けている。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫だろうか。

 名前は「東京やなぎ句会」の宗匠として知っていたのだが、高座を聴くのは初めて。  

 播磨屋という宿屋に伝わる宝物の御神酒徳利。大掃除の日、女中が仕舞い忘れたのを見つけた二番番頭の善六さん、とりあえず水甕の中に入れておいたのをすっかり忘れてしまうが、店では先祖が拝領した大切な御神酒徳利が消え失せたと大騒ぎ。

 思い出したが、今さら白状もできないと悩む善六に、おかみさんが、生涯三度だけ算盤占いで何でも当てることができるという触れ込みで、いかにも探し当てたように装ってはどうか、と智恵をつける。

 「戌亥の方角で水に縁にあるところで・・・」なんぞいい加減なことを言って、水甕の中から引っ張り出して、すっかり感心される。
 二階に泊まっていたのが、大坂の鴻池善右衛門のところの総支配人。主人の娘が原因不明の病気なんでどうすれば治るか占ってくれと頼み、播磨屋の主人が引き受けてしまう。仕方なく大坂まで旅立つことになった善六。

 神奈川の新田屋という旅籠では、泊まっていた島津藩の金子と密書が紛失したと大騒ぎになっていた。ここは鴻池総支配人の常宿だったため、支配人が善六を推薦する。

 進退窮まった善六は、落ち着いた場所がいると言って、離れた場所を用意してもらう。しかし二階だったので、梯子と背負えるように支度したお握りと、提灯、草鞋も揃えてもらう。
 どうやって逃げようかと算段しているところへ旅籠の女中が忍んでくる。故郷の父が病気で、薬代に困って巾着を盗んだ、占い名人が来られたというので、これはもう隠し切れないと白状しに来たのだ。
 女中から聞いた隠し場所を、台風で壊れたお稲荷の社を修復しないから、怒って隠されたと算盤を弾いて占い出したように告げる。

 ついに鴻池宅に着く。今度こそ進退窮まった善六であったが、突然神奈川のお稲荷さんが現われ、孝女の罪を稲荷になすりつけたが、そのお陰で社が修復されたので礼をすると言って、丑寅の方角33本目の柱の下に観音菩薩像が埋まっているのでこれを拝めばこの家の娘の病気は平癒すると告げる。

 大坂から帰ってきた善六さんを、心配しながら待っていたおかみさんが迎える。褒美にもらった200両を見せる善六さんに「これも神奈川の新田稲荷大明神のお陰だね」「なあに、カカア大明神のおかげだよ」。

 実にひょうひょうとした高座ぶりであった。

   

 


(4) 春風亭小柳枝 「子別れ」

 
2007年10月6日放映。
   「酒も飲まず、賭け事もせず、女も寄せ付けずに・・・・・・100歳まで生きた馬鹿がいるってなことを言いますが、適当な「道楽」なうちはいいが、度が過ぎて、二つ、三つと重なるようじゃ、道に落ちる「道落」になりがちでございます」てな軽いマクラから、本題へ。 

 「子別れ」とは、上方落語の「子はかすがい」である。

 「子はかすがい」と言えば桂ざこばである。

 それでは、ざこば演出と小柳枝演出はどう違うか。

  小柳枝 ざこば
夫婦別れ  追い出すのは、地の台詞で説明  噺は、妻子を追い出す夫婦喧嘩のシーンで始まる。
名前  奥さんは、おみつ。息子は亀ちゃん。
 なお、主人公は「熊」なのは共通。
 奥さんは、おはな。息子は、寅ちゃん。
仕事の催促  施主のところの番頭は、いつ仕事にかかるか日程を聞きに来ただけ。木場に見に行こうと誘うのは、熊さんの方。   施主が材木が入荷したことを聞いて、見に行ってくれと頼むため、番頭を使いによこした。
湿っぽさ (1) 店先で饅頭が湯気を立てているのを見て、亀は饅頭が好きだったな、買って帰ってやったら喜ぶだろうなと涙を流す。
(2) 出会うシーンで、「おとっつぁんが分かるか?」と聞かれ、「わかるよ」と泣く。
(3) 額の傷の事情(得意先の子供に怪我を負わされたが、仕事がもらえなくなるから我慢しろと母に言われる)で、父子とも泣く。
(4) 盗んだか?と疑う母も涙。白状する亀も涙。
(5) 再婚を申し出られたおみっつぁんは涙。
 陽性。ほとんど泣かない。
 左記(3)は、有名な演出だが、入れない。
再婚ミエミエ度 (1) 番頭さんが「おみっつぁんが再婚してなければ仲に入るよ」と宣言。
(2) 熊さんは、おみつさんが再婚していないだけでなく、息子が「動物園の熊が・・・」と言ったらおとっつぁんの名前を呼び捨てにするなと叱ったり、夫婦の馴れ初めや、おとっつぁんが悪いんじゃなく、酒がそうさせたと語っていると聞き、「そうか。恨んじゃいねえか」とつぶやくなど、事前にかなりの情報を入手。
 息子は、母が、父と同じように相手が再婚してないか気にしていたなどとからかうが、それは父に事前には伝えていない。
うなぎ好き  「お前、うなぎが好きだったな」と以前から食べていたと匂わせる。  頭は豆腐とたく(煮る)とうまいが、胴は食べたことがないと言う。 
かなづち  家を出る時、たまたま亀が風呂敷包みに入れていた。  冒頭の喧嘩の際、おはなさんが、息子に父が大工だったことを教えるために金づちをいただきたいと頼んで持ち帰る。
うなぎや (1) おみつさんは、直接うなぎ屋へ行って、うちの子供は?と尋ねている。
(2) 熊は「元気だったか?」とは尋ねない。やたら煙草をふかす。
(1) おはなさんは、息子を送り出した後、何か落ち着かず、ついついうなぎ屋の前をうろうろしていて見つかってしまう。
(2) 「元気やったか?いや、寅こと会(お)うて・・・・」とまず妻の安否を尋ねる。

 私は、総合的にみて、ざこば演出の方が好きですね。

 


 



 

 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが、録画はしてますが、何度も確認はしてませんので、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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