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(No43) 文珍・南光のわがまま演芸会 TV鑑賞記  

 平成19年6月29日(金)、NHKでの放映分。

 この番組は毎回、文珍・南光のどちらかが一席演って、その後、その者が「一押し!」の芸人(噺家が多いが漫才の場合もある。噺家は上方落語に限らない)が演じる。



(1) 桂文珍 「マニュアル全盛時代」

 年をとってまいりますと、新しい楽しみが増えることもございます。
 若い頃は、せんべいゆうたらバリバリィっと食べるもんや思てましたけど、最近では、「お茶につけた方がおいしい」てわかるようになってきました。

 ああ、生きててよかった。年齢を重ねることに逆らわんようにしていきたいて思てます。

 
 この年なりますと、昔の同級生が訪ねてきたりします。

「おい、西田」
 いくつなっても、タメ口なんですな。

「おい、西田」
「なんや?」
「おい、弟子にしてくれ」
「弟子ぃ?お前、公務員やんけ」
「天下り先がないねん」

・・・・・冗談でゆうてまんねけど。

 最近なってわかったんでっけど、若い頃よお聴いた吉田拓郎さんの歌て、中身おまへんな。

「♪人間なんて〜♪」
 いきなり、「人間とは?」て、大上段ですからな。誰でも続きが聴きたくなります。
 身を乗り出して、「さあ!人間とは?」て思てると、
「♪ ららららららら〜ら ♪」

 さだまさしさんでも、そうです。北海道の大自然で、何歌うんかなあ思てると
「♪ あああああああ〜あ ♪」

 これ由紀さおりさんから始まったんです。「夜明けのスキャット」。

「♪ ル〜ルルルル ♪」

 ま、これはラララとかルルルのとこに各自が、自分の思てることをあてはめたらええんですな。
 ほな、これで落語やったらええわけです。
「ららららら」
「るるるるる」
「ららららら」・・・・・てねえ。

 これに気ぃ付いてたら、円楽さんは引退せんでよかったんです。

 最近夫婦のどっちかが50歳以上やったら映画が割引になったりするんですが、先日も女房と久しぶりに映画観に行ったら、前でおじいさんとおばあさんのお二人連れが、まあ、ご夫婦や思うんですけどね。
 おばあさんの方が窓口で、
「夫婦50歳割引で・・・・」てゆうたら、窓口のおねえちゃんが
(機械的な口調で)「何か証明できるものはお持ちですかあ?」

・・・・・そら、おかしいやろう?どない観ても50歳以下なわけがない。マニュアル通りなんですなあ。
 気の毒に、そのおばあさん、袋ひっくり返して、最後、年金手帳出してはりました。

 で、次、うちの嫁はんです。おんなじ
(同じ)ように「夫婦50歳割引で」てゆうたら、やっぱ、おんなじように、
「何か証明できるものはお持ちですかあ?」

 わたい、ムカ〜って来たんでっけど、いや、ここで怒ったらあかん思て、精一杯皮肉でこうゆうたったんです。
「お前も若う見られて良かったなあ」て。

 マニュアルっちゅやあ
(と言えば)、こないだファミリーレストラン行って、えらい目にあいました。

(機械的な口調で)「お一人様ですかあ?」
「・・・・・・お二人に見えますか?もし見えたら乱視です。もしくは背後霊が見えてますよ。一人です」
(まったく無視して)「お煙草、お吸いになられますかあ?」
「どっちゃでもええんやけどな。じゃあ、喫煙席でお願いします」
「喫煙席はこちらになります」
「あ、すいません」
「は?お煙草、お吸いになられないんですかあ?」
「いや、吸いますよ」
「じゃあ、こちらです」
「あ、すいません」
「お吸いになるのか、ならないのかはっきりしてくださぁい!」


「ご注文、何になさいますかあ?」
「う〜ん、今日はあまり時間もないしなあ。ほな、カレーで」
「カレーのほうで、よろしかったですかあ?」
「カレーのフォウ?ベトナム料理の?」
「何ですかあ?」
「ナンはインド料理ですよ」
「以上ですね?」
「異常なんは、あんたや」
「ご注文、繰り返しまあす」
「覚えてくださ〜い」


 しばらくしたら、持ってきて、
「こちら、カレーになります」
・・・・・カレーになる前は何やってん?

 まあ、食べましてね。勘定払う時、
「ごめんな、細かいのないねん。1万円札で」
「1万円から、お預かりしまあす」
・・・・わしからやろう!?すべてが間違ってるんです。

「領収書ちょうだい」
「上様ですね」
(居ずまいを正し)「私は殿様じゃない!株式会社田中と書いてもらいたい。
ん?何してんねん?」
「携帯で漢字探してるんです」
「もう!株式会社って書かんでも、”前株”でええわ・・・・って、何カタカナで”マエカブ”って書いてんねん。
株や、株。わからんか?
木ぃ書いて、朱ゆう字。
え?株だけではあかんがな。( )=”かっこ”をつけんかいな、”かっこ”を」
(店員が髪の毛をいじりながら、すまし顔)
「格好つけてどないすんねん!
貴様、それでも日本人か!」
「ワタシ、中国カラノ 留学生」
「・・・・・・・そら、失礼しました。名前は?」
「ケン・シューセイ イイマス」
「ええ?横のあんたは?」
「ジッ・シューセイ デス」
「ほんで、あんたは?」
「ハーケン デス」
「何ぃ?研修生に実習生に派遣?そんなんしか、おれへんのか?
 ちっとはまともにしゃべれる奴は?おお!そこにおるやないかい。ちょっと頭白なってるけど、怒った顔した50過ぎのおっさんが!」
「オ客サン アレ 鏡ダヨ」



 ファミレス店員のマニュアルしゃべりというありがちなネタだが、軽い調子でテンポよくしゃべっていた。

 

 

 



(2) 笑福亭三喬 「花色木綿」

 三喬は、別名「落語界のくまのプーさん」。眠たそうな目をしている。盗人噺を得意にしており、南光から「三喬さんの出番の日ぃは、よく楽屋で物がなくなる」と言われてた。

 当日の女性ゲストからも、口のまわりを黒く塗ったりすると似合いそうなどと言われていた。


 噺はおなじみのもので、貧乏人のやもめの家に空き巣が入ったが、盗るものがない。あきれ果てているところに、当のやもめが帰ってきたので、慌てて奥に隠れた。

 やもめは泥棒に入られたと気づき、これ幸いと騒ぎ出した。

 家主が盗難届を出さんといかんので、盗まれたものを書き出していくから言えとやもめに命じる。

「まず着類(きるい)からいこか」
「へ?」
「着るもんやがな」
「ほたら出刃包丁が二本」
「その切るもんやない。身につけるもんや」
「袷
(あわせ)が一枚」
「縞は?」
「淡路島」
「ちゃうがな、荒い縞か、細かい縞か、て聞いてんねん」
「そいたら、こまかい縞」
「そうゆうの、まん筋ゆうねん。覚えとき。裏は?」
「源さん」
「誰が家の裏たんね
(尋ね)てんねん。袷の裏についたぁるキレの名ぁやがな」
「ええと、確かうちのおばん、裏は強い方がええゆうてたんでっけど」
「ほたら花色木綿ちゃうか?」
「そうそう、花色木綿、花色木綿」
「ただし、裏は花色木綿、と。後は?」

「黒羽二重の羽織が一枚」
「えらいええもん持っててんなあ。紋は?」
「へ?」
「いや、三つ紋か、五つ紋かて聞いてんねんがな」
「おまへん」
「無紋か?」
「いえ、十文三分」
「足の大きさ、たんねてんやない。ただし、無紋なり、と」
「裏は花色木綿」
「ええ?羽二重みたいな柔らかもんに花色木綿みたいな裏ぁ付けんで」
「いや、裏は強い方がええゆうおばんの遺言で」
「いや、つけてたゆうなら書くけどな。裏は花色木綿、と。他は?」

「モーニングが一着」
「え?お前そんなもん着てんのん見たことないで」
「当たり前でんがな。何でそんなん着て、こない汚い裏長屋ウロウロせなあきまへんねん。こら、ここ!ゆう時に着まんねがな」
「・・・・・ほたら、こないだの徳さんの結婚式にドテラ着て行ったんは、どうゆうわけや?」
「・・・・・・・・・あら、日が暮れ
(夕方)でしたさかい、着れまへん」
「何で」
「モーニングゆうから、朝しか着れまへん」
「しょーもないことを・・・。モーニングが一着、と」
「これ三つ紋でんねん」
「あほゆうな、どこの世界にモーニングに紋てなこと」
「いや、おばんの遺言でんねん」
「どんな紋やねん?」
「丸ん中に四角があって」
「えらい、あっさりした紋やな」
「へえ、それで中に鳥居が立ってて、その周り、子ぇ丑、寅・・・・・十二支がぐる〜っと取り巻いて、手ぇつないでまんねん」
「・・・・・・・・・けったいな紋やなあ。・・・・・・・第一、蛇がどうやって手ぇつなぐねん」
「裏は花色木綿」
「お前なあ、何ぼ何でもモーニングの裏に花色木綿て」
「死んだおとっつぁんの遺言でんねん。裏は強い方がええゆうて」
「そんなことしか遺言してへんのか。ただし、裏は花色木綿、と。これ、わい書いたるけど、お前警察に持ってけよ。わい、恥ずかしいわ。他は?」

「蚊帳が一つ」
「そやから、お前は物を知らんゆわれんねん。蚊帳てなもん、一張りゆうんや。麻か?」
「晩吊りまんねん」
「わかったるわい、そんなこと。麻ででけた蚊帳か、て聞いてんねん」
「へえ。それで裏が花色木綿」
「そんなもん、裏付けたら暑うてしゃあないやろう?」
「おばんの遺言で」
「他は?」

「刀が一本」
「これも一本やのうて、一振りとゆわんとな。長剣か、短剣か」
「秋田犬」
「長さを聞いてんねん。え?それやったら立派な長剣や。銘は?」
「姪はおまへんけど、おばさんが」
「無銘やな」
「裏は花色木綿」
「刀に裏なんて付けたら切れへんやろ」
「いや、入れてる袋の裏が花色木綿」
「表は?」
「八百屋」
「ちゃうがな、袋の表」
「それやったら更紗。それから現金が365万円」
「・・・・・・・・・・・え?現金が365万円やて。それやったらちょっと言わせてもらうけど、お前、うちの家賃溜めてんねんで。そないな現金があるんやったら、何でうちの家賃とNHKの受信料払わへんねん?」
「いや、おとっつぁんの遺産相続で急に金が入りましたさかい、大家さんとこ持って行こう思てたとこでんねん。
 うちのおとっつぁん、医者でして。あの華岡青洲の孫にあたりまんねん」
「ええ?ほんまかいな。そうゆうこと書いてたら、警察の心証も、よおなるで」

 やもめがあんまり言いたい放題ゆうもんやさかい、隠れてた泥棒が思わず我の立場を忘れて飛び出してきた。
「何ぃ?黙って聞いてたら好きなこと抜かしやがって。お前んとこ盗るもんなんか、あらへんやないか。汚いパンツにババつけやがって。
 現金365万円?」

(と、突然赤いハンカチを取り出し、それを口に噛んで)
「すまんのぉ〜」
「親父が医者やて?」
「石屋じゃあ」
「遺産相続したてか?」
「胃薬の胃散じゃあ」
「華岡青洲の孫?」
「馬子じゃあ、馬引いとったんじゃあ。勘弁してくれい」


 泣き言を入れるやもめ。この裏長屋は弱い奴ばっかやのおと毒づく泥棒に「裏が弱けりゃあ花色木綿」というオチ。

 大金持ちというホラを吹き、それがばれると、赤いハンカチを噛みしめながら「すまんのぉ〜」と泣くのは横山たかしひろしという漫才コンビの持ちネタ。他にも「○○(有名人)の知り合いやて?」「わいは知ってるけど、向こうは知らんのじゃあ」とか「東大出たって?」「入れんから出たんじゃあ」などのギャグもある。

 しかし、こんな漫才さんのネタを堂々とぱくってええもんだろうか。これも盗人噺?

 本番後のトークの場面で、三喬が、「いっぺん花色木綿てどんなもんか知ってもらお思て、実際に高座に持っていったことあるんですけど、あら失敗でした」と告白し、文珍に「そら、そうや。花色木綿の花色て、どんな色やろ?てお客さんに想像してもらうから噺が広がるんやがな。
 でも、そら大事なことやで。よお、気ぃ付いたなあ。しゃあけど・・・・・・・あんた、いくつやったっけ?気付くん遅いわ」と突っ込まれていた。  


 
 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが、録画はしてるんですが、きっちりメモはしてませんので、聞き違い、記憶違いはご容赦ください。

  
 



 

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