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(No283) 第5回東西最喬二人会 鑑賞記その3  
          

 平成23年12月16日(金)、大阪市立こども文化センターで開催された二人会の鑑賞メモ。



笑福亭 松喬 「借金取り撃退法」

 
 
聴いたことのない噺のタイトルなので、新作落語かと思った。何てこたぁない、「掛取万歳」なんだが、地名を織り込んだ「三河万歳」風の所を飛ばしたので、こういうタイトルとなったのだろう。

 大晦日の借金を返せるあてのない夫婦。昨年の大晦日は旦那が急死したということでしのごうとしたのだが、気のいい家主(いえぬし)さんが店賃(たなちん)を棒引きにしたうえ、香典まで置いていこうとする。恐縮して受け取らない奥さんと家主さんが押し問答。じれた旦那が棺桶から「いいから、もらっとけ!」と手を出したので、びっくりした家主さんは腰を抜かして3日寝込んだ。

 去年の手でいくか?と言う旦那に奥さんが「毎年毎年大晦日に死ぬ人はおまへん」。そりゃ、そうだ。第一二度死ぬ人間はいない。

 旦那は、好きなもんで断りを入れる。家主の好きなもんは何や?と奥さんに訊ねる。家主さんは狂歌に凝ってはるけど・・・と半信半疑の奥さん。

 そこへ、たまった店賃を催促に来た家主がやって来た。
「居てるか?」
「ああ、こら家主っさん。こっちから行かなあかん思てたとこで」
「ほぉ。えらい風向きが違
(ちゃ)うなぁ。去年はえらい目ぇに遭(お)うたさかいなぁ。ほな、払(はろ)てくれるんやな?」
「それが、最近しょうもないもんに凝りまして」
「ふん。どうせ女
(おなご)か、賭け事やろ?」
「それが狂歌に凝りまして」
「おっ?
(嬉しそうに)知らなんだな。で、どんなん作ってんねん?」
「貧乏の ぼう
(棒)がだんだん太くなり 振り回される年の暮れかな」
「ほぉ〜
(感心して)こら、下に置けんなぁ」
「二階ぃ上がりまひょか?」
「他には?」
「借金に追い詰められし 年の暮れ たまりし家賃 とても払えん」
「払えん言われても困るが、何か題を出してもええか?『たぬき』で詠めるか?」「ぽんぽんが痛いと うそをつきの夜 鼓
(つづみ)の稽古 休む小だぬき」 

「なるほど。白さぎでいけるか?」

「白さぎが 氷に足を閉ざされて これもおのれが 泥鰌(どじょ)食らうゆえ」

「うまいなぁ。ほな灰ふきでは?」
「灰ふきが・・・・」
「ちょっとは考えぇや」
「灰ふきが氷に足を閉ざされて これもおのれが泥鰌食らうゆえ」

「・・・・・・・・・・・何や、今まで上手かったけど、これはひどいな」
「ははは。今のが、わいのオリジナル。前のんは本で読んだ」
「まあ、狂歌で断り入れられたら、しゃあない。春まで待ったるよってに」

 

 

「あんた、すごいやないか。これからも、この調子で頼むし」
「おう、任せとけ。あ、炭屋が来よったな。炭屋は何が好きやねん?」
「炭屋の大将は・・・・・・・・・・喧嘩。町内でも一番強いし」
「そうか。かか、割木、1本持ってこい」

 

「おう!たまってる勘定、もろて帰ろか」
「それが・・・・ちょっとおまへんので。無い袖は振れんちゅうやつで。石川五右衛門かて、ないもんは盗れんゆいまっさかいな」
「・・・・・・・何じゃい!笑いながら人を盗人扱いしやがって。今日という今日はな。持つもん持たんかったら去
(い)なんさかいな。
 ひと月待ってくれ、10日待ってくれは耳にタコが出来てる。3日待ってくれも聞きあきた。

 第一、お前、こないだ道頓堀のグリコの前でわいとすれ違ったやろ。わしは、こんな町なかで借金の催促するのも恥をかかすし、言わんでもお前の方から借金の侘びを入れてくるか思たら、お前、何も言わんとぷい!と通り過ぎたな。あないな態度取るからには、今日はお前の方から払いに来るもんやと思てたわ」

「・・・・・・・・・・・・・そこまでゆうんやったら、今日は持たすもん持たせなんだら去なさんわ」

(相好を崩して)ほな、もらおか」
「ないわい!」
(がっかりして)何じゃ、ないんかい。しょうもない(・・・と、あきらめて去ろうとする)
「われ、どこ行くねん!持たすもん持たせなんだら去なさんゆうたやろ!われ、一歩でも動いたら・・・・・
(と、割木を振りかぶる)
(うろたえて)ちょお待て、待て。なるような話、しよ。せや。三日だけ待ったろ」
「そんな台詞は聞き飽きてる!」
(ますます、調子が狂い)ほ、ほな10日。いやひと月待ったる」
「耳にタコじゃ!」
「いや、わいもな、忙しいねん。お前とこだけにかまってるわけには・・・・」
「第一、お前、こないだ道頓堀のグリコの前で俺とすれ違ったやろ。俺は、お前が催促の一つもするやろ思てたら、何も言わんとぷい!と通り過ぎよった。せやさかい、俺は、取りに来んもんと思てたのに。動くな!怪我すんぞ!」
(狼狽して)ええぇ〜?とりあえず去なして」
「帰りたいんかい!持つもん持たな去なんゆうたんやから、持つもん持ったんやな!ほな、持つもん持ったて、ゆえ!」
(何でこうなるのか納得できないながらも、渋々)・・・・持った」
「確かに持ったな?」
「持った」
「ほな、受取り、書け!それとも・・・・
(プ〜ッ!っと手に唾して割木を振りかぶろうとする)
「・・・・・・・・
(渋々領収書の綴りの1枚に金額などを書く)
「『金、4700円也』。せや。判こ押せ!」
「わかってるわい!これでええのんか!
(と、不貞腐れながら領収書を突き出す)
「俺は客やぞ。ありがとうは!」
「この上、礼まで言えてか?・・・・・・・・・・・ありがとうございます」

   最後は、
「つり(釣り銭)出せ。さっき出したん1万円や」がサゲ。

 次がさん喬の大ネタなので、軽めに仕上げたネタだったが、やはり上手い。

 


 

 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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