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(No277) 第33回堺市民寄席 桂米朝一門会 鑑賞記その3  
          

 平成23年10月7日(金)、堺市民会館大ホールで開催された。



桂 雀松 「星野屋」

 あと2席で解放されますので。
 皆さん、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。・・・・・・・まあ、大変お忙しい方は来られてないでしょうが。
 いずれにせよ、楽屋一同、気の違わんばかりに喜んでおります。

 
 株安とか、円高とか申します。
 私らにしたら、円が1円や2円高こなっても安なっても、どっちゃでもええよなもんですが、物を輸出する企業にとったら、1円円高になるだけで何十億、何百億という損になるそうですな。

 ただ一方で、円高になると外国に旅行すると安ぅ行けたり、物が安ぅ買えたりするそうです。

 まあ、こうなると、円高もええんだか、悪いんだか・・・・・・・・。これが言いたさに長ぉに引っ張ったんですが

 

 マクラも、
(1) 「一席、お付き合いください」と言った後、「結婚を前提としたお付き合いではないので、ご安心ください」

 本編の導入部分でも、
(1) 関東は「めかけ」、関西は「てかけ」。かけるとこが違う。関西は直接的。(手で触る格好をして)・・・・形はどうでもええですが。
(2) てかけは狆を飼うことに決まってる。女性に有利だから。中には「この狆、生んだんかいな?」
(3) てかけが旦那に「こないだ、道で親子って言われたのよ!白髪抜いたげる!う〜ん!膝まくら!」と誘っておいて、ふと素に戻り「我ながら恥ずかしいんでっせ」
(4) 今度は本妻が白髪がないことをいぶかり、床屋が抜いたと誤魔化すが、商売人として貫禄がついたのに・・・と今度は黒い髪を抜き、てかけと本妻で旦那一人、坊主にしてしもた

・・・・・・と、どれもこれも定番。


 で、「星野屋」の本編に。商家星野屋の旦那は女房を亡くして久しい。藤助という男の紹介でお花をてかけにしたのだが、旦那がお花の家を訪れ・・・・・・

「お花。急な話やが、手切れ金・・・ちゅうわけやないが、ここに20両ある。これで別れてくれへんか?」
「え?急に何で?あ、分った。奥さんお亡くなりになって今年で七回忌。正式に後添えお迎えあそばすのに、わたいみたいなもんがおったら邪魔になるゆうねんね?」
「ちゃうねや。実は相場でえらい穴を開けてしもてな。三代続いた星野屋をたたまなあかんことになってな。まあ、今やったら多少は何とかできるさかいに」
「え?ほんで20両?たったの?いやいや、わたい、旦さんと別れるくらいやったら、いっそのこと死んでしまいます」
「・・・・・・そら、嬉しいことゆうてくれた。わしもこんな不細工なことして生きておられん思てたんや。一緒に死の」
「え?誰が?何で?え?私?どの口がゆうたん?うっそ〜!」
「ほな、お前、その気もないのに?」
「いや、いっぺんくらいやったら、おつきあいで・・・」
「そうか。そしたら、善は急げ・・・・やないけど、まだ人通りも多いさかい、九つ過ぎにまた迎えに来るさかいな」

「あ!旦さん、行ってまいはった。気の早い・・・。ほんのお愛想やがな・・・・」

「どうしたんや?」
「あ、お母はん。実は星野屋の旦さんが・・・」
「え?何?ふ〜ん。もう少し持つか思たけど、意外ともろいもんやな」
「お母はん。私、まだまだ美味しいもんも食べたいし、いろんなとこも行ってみたい。そんな、もう死ぬなんていや、いや、いや、いや!お母はん、代わりに行って!」
「・・・死ないでもええ心中の仕方教せたげる。

 浪速橋から身投げするゆうんやろ?心中の時はナムアミダブツや。うちは法華やけどな。あら、心中には向かんのや。だんだん元気になってまうさかいな。

 男の人はふんぎりがつかんさかい、途中で手ぇと手を結ぼぅかとかゆうさかい、そんなことしたら仏罰があたって、あの世で夫婦になれんゆうて断るんやで。

 ほんで、男の人と一緒に、ひの、ふの、みぃの!ゆうて飛ぶのん」
「前へ?」
「そんなんしたら死んでまうがな。後ろに飛ぶんや」
「そんなんでいけるの?」
「お前も心中の五、六っぺんもやったら分るわ」

 

 

「お花、行こか」
「あ、すんまへん。ちょっと上着を。今日は冷えるさかい、風邪ひいたらいややから」
「・・・・・そんなもん、どっちゃでもええがな」
「でも、達者で死にたい


「おい、お花。何してんねん、何でそない遅れて」
「どうぞ、もうかまわんといておくなはれ。
 あ、それと、わたし、旦さんが手ぇと手を結ぶとかゆうても断ります
「誰がそんなことゆうねん。

 さ、行くで。ひの、ふの、みぃ!」
「ああぁ〜〜。旦さん・・・・・。先、行ってまいはった。・・・・・・・ああ、きれいなお月さん。旦さんが身投げしはったんを見てたんは、わたいと、このお月さんだけ。

 どっかで聞える三味の音ぇ。これを枕経にしてもらお。旦さん、すんませんなぁ。私も後から行きますよって。ほんの・・・・50年ほどしたら。

 さいなら、ほな失礼!

 って、こんな失礼な話はない

「お母はん、ただいま」
「でやったん?ちゃんと後ろに飛んだんか?」
「それどころやのぉて、旦さん、先に飛びはって。旦さん、いっつも早いの。

 でも気ぃひけるわぁ」
「まあ、最初のうちはそやろけど、二、三人も殺したら何ともない

 

「お花はん!お花はん!」
「・・・・どうしはったん?藤助はんやないの?こんな夜分にどないしはったん?」
「星野屋の旦さん、来はらへんかったか?」
「え?星野屋の旦さん?いっぺん来はって、帰って、はまりはった・・・」
「ええ?何ゆうてんねん。

 いや、実は、さっき胸が押さえつけられるような気ぃして目ぇさましたらな、枕元に血だらけの星野屋の旦さんが『お前、えらい女を世話してくれたな。わしはお花にだまされた。あのおなごをとり殺す。簡単には殺さん、じわじわと。あのおかんも呪い殺す』とこない言わはるんや。頭、ぱっくり、こない割れてな。

 はっ!と気ぃついたら目ぇさめた。夢か?思たら、行灯のそばがぐっしょり濡れてるんや」

「ええ?おかあちゃん、どうしよ?旦さん、もう出はった・・」
「藤助はん、あんた、お花を旦さんに世話してくれたんやから、最後までお世話してえや。どないしたらええ?」
「どうゆうこっちゃねん?え?ふん、ふん。そら、何すんねん。そら、旦さんも化けて出るわ。

・・・・・せやな、おなごでないようになるしかないな。髪をおろして尼になっておわびするんや」
「ええ?藤助はんには、お花に次の旦那、世話してもらわなあかんのに・・・」
「・・・・あのな、おかん。旦さんは、『この件には、あのおかんが後ろで糸を引いてるに違いない。必ず、あのおかんも呪い殺す』てゆうたはったんを、ここであらためて、つけ加えます

 お、お花。奥、引っ込んだか思うと、姉さんかぶり。え?ああ、これ、お前、髪おろしてきたんか。これで旦さんも浮かばれまっせ。
 何やったら、本人に聞きまひょか?

「え?あ!旦さん?これは・・・」
「いや、旦さんがおっしゃるには、女房の七回忌も終えたんでお花を本妻に直したいが、どうも、お花の心根が分らん。心底を確かめる手だてはないか、とおっしゃるんで、わいが仕組んだ芝居じゃ。旦さんは、そんな人を試すようなことは・・・とおっしゃったんやが。

 あの日、橋の下には腕利きの船頭が船で待ってたんや。もし、お前があん時、旦さんと一緒に川に飛び込んでたら、ドブンと落ちたが早いか、すぐ船に救い上げて、おきよ、おもよを下女にして、御寮人さんと呼ばれるようになったのになぁ」
「まあ・・・何でそれをもっと早よぉ・・・。ほな、もっぺん橋行きまひょか?」

 お花は、それは地毛やのぉて、かもじ(かつら、付け毛)。母が、旦さんは最近目がかすむとゆうてはったから、それでごまかせるやろうて言いはった。そんなんで良かったら毎日でも渡したると憎まれ口。

 悔しがった藤助は、さっき渡した20両は、芝居で使う作りもん。小判1枚でも使ったら手ぇが後ろに回るぞと言い、お花は「どこまでだましたら気ぃ済むねん」と懐の金を叩き返す。

 それも藤助のウソだった。すると、おかんが、落ち着き払ってふところを叩き「そうかも知れん思て、3枚置いといた」がサゲ。

 軽い感じで、ここのところ好演が続いていた雀松だが、今日はふざけるところが大げさすぎて、また。細かいトチリも多く、いつもほどの出来ではなかった。

 

 


桂 ざこば 「一文笛」

 高座に上がって、羽織を脱いで「こないはよ脱ぐんやったら・・・」は定番。
 

♪ 何でこんなに 可愛いのかよ 孫という名の 宝物 ♪

・・・・ゆうのはウソですな

 あんな、うっとぉしいもんは、ない。毎日来よるんだ。10分以内で来れるからね。

 孫と軍事基地は県外がええ

 また、母親がね、娘ですが、泣かしよるねん。イライラしてんねんやろねぇ。虐待する気持ち、分るぅ!叩いたろか!とか言いよる。

 何ちゅうことゆうねん、じーじが見たろ。ビエェ〜〜 ビエェ〜〜 ビエェ〜〜 ・・・・・・・・・・・バァ〜ン!・・・・ええ加減にしとかな、あかん

 おもちゃね、渡したっても、ほりよんねん。何してんねん。ほかしたら、あかんがな、ゆうて拾たってね。また、渡したんねんけど、捨てよる空気、分ります?また、ぽい!てほりよる。・・・・いや、いや。しやから、ほったらあかんがな、ゆうて拾て、渡したる。笑いごっちゃおまへんで。で、また、ほりよるから・・・・・バァ〜ン!!

 歩行器にね、入っとるんです。後ろ、横、前、自由自在や。うち、フローリングやからね。しゅ〜っと滑ってって、ど〜ん!とふすまに当たりよる。

 新聞読んでたらね、横からいきなりど〜ん!思わずバァ〜ン!!

 ざこばの娘は桂三若と結婚し、男の子が産まれたが、今年の3月に離婚している。

 娘の「イライラ」とか「虐待」とかいう言葉が生々しく響く。

 その後のマクラも、ざこばがその孫を殴るという話なんで笑えない。

 この後に続いたマクラも、次々に孫がタバコを千切って捨ててしまうという話。タバコ触らせたらあかんやろ、口に入れたらどうすんねん?と思うのだが、「こないだ値段上ったとこやのに。千切るんやったら、火ぃつけて吸えよ」というムチャクチャなもの。

 最後のマクラも、「財布の中身ばらまきよる。そら、ほりやすいやろ。いつも300万くらい入れてるからね」というもの。

 本編は「一文笛」。周知のとおり、米朝師匠のこさえた噺。これまで聴いた噺では、秀も兄貴分もかなりの理論派、知性派というイメージだった。
 それに比べると、今日の噺では、やや知性面では低いとゆうか、人情派、熱情が勝って言葉が追いつかない(これは、要は演じるざこば師匠のキャラなのだが)「一文笛」であった。

 こうゆう「一文笛」もいいと思う。



 


 

 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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