移動メニューにジャンプ

(No275) 第33回堺市民寄席 桂米朝一門会 鑑賞記その1  
          

 平成23年10月7日(金)、堺市民会館大ホールで開催された。



桂 鯛蔵 「つる」

 マクラの「客が客を止める」というのは、京博寄席と同じ。
 

 よくある噺なんで、特徴的なとこだけ。
(1) 甚兵衛はん自作の貼り交ぜ屏風の千羽鶴の話をしたところ、
「さすが、船場の鶴は品があるねぇ。阿波座の鶴は品がない」

(2) 鯉の滝登りを「ボラが尾ぉで立って、そうめん食てる」という所は同じだが、立つ身振りをして、両手で(両ヒレか?)でかきこむ手振りをする。

(3) 「つ〜〜っと飛んできて・・・・」という説明の後、「な、何です?」とか「ど、どぉ〜〜?」とかなりしつこく訊き返す。

(4) 「よそ行って、ゆうてくる」というアホに対し、甚兵衛さんは「やめとき。あら、ウソや!」と声をかけるのだが、歩きながら振り返って「わかってるわ!」と言い返す。

 しかも「よぉ真面目な顔して、あんなこと言いよったな」と呆れている。要はアホにしては理性的判断力がありすぎる。
 甚兵衛さんは真面目な顔して俺をかつごうとしている。あれは真っ赤なウソなのだが、よく出来た冗談なので、普段から俺のことを馬鹿にしている奴に言ってやって鼻をあかしてやろうと、全部分っていることになる。
 しかしながら、アホの自分が見抜けたウソに、他の者がだまされる(信じ込む)筈はないから、何か流れが変。

(5) いったん戻って、再確認し、竹やんのところで人差し指を突き出して「つ〜〜〜っと飛んできて」とやり「最前と違うやろ?」と悦に入り、何度も繰り返す。(さっきは「つる〜〜〜っと飛んできて・・・・」とやってしまった)

 ただ、「つ〜〜〜〜」という指の動きを何度も繰り返し「ええなぁ〜」と陶酔する演出は最近では多い。

 

 上写真でも分るように、非常に神経質そうな顔立ち。これでよく「目をむく」ような表情を見せる。

 声もかん高い。

 しかし、場の空気に馴染んでいたというか、よく笑いが起こっていた。


桂 こごろう 「強情灸」


 メクリや座布団の世話をしていたお茶子さんは、一門の新弟子さんなんだろう。スキンヘッドの巨漢なのだが、高座から袖に引っ込む時の歩き方が、まだ板についていないというか、足が先に出て腰が引けているような「おねえ」っぽい感じの立ち居振る舞い。何だかTVで見た「おねえ住職」の人みたい。
 違和感感じたのは私だけじゃないみたいで、私の後ろのおばちゃん連中も笑っていた。


 マクラの「大胆な名前」「いわば二代目。先代同様に・・・」「”てでろう”ではない」などは定番。

 「強情灸」につなげるため「負けず嫌い」のマクラで、関東の女性同士では高い買い物をした方が勝ちだが、関西では安い方が勝ちだ、に続けて
「私、この指輪3割引きで買(こ)うたんよ」
「ふん、私ら5割引きやで」
 そしたら真ん中の女性が
「私、万引き・・・・」

 これも定番かな。

 この噺もよく聴く噺なので、特徴的なところを挙げる。けっこうユニークな「強情灸」だった。

(1) 「この焼餅連中の台詞がわいの耳に入ったからたまらんがな。ブチブチブチブチブチ・・・・・・・・頭の血管が5本切れた」

(2) 「32個、いっぺんにすえてくれ!」と大見得を切った男に、「そんな無茶しなはんな」と止めてくれるか思たら、素直なやっちゃ、「そうでっか」てゆうなりシュシュシュシュっと・・・・・・というところは定番だが、その後「普通、止めるやろ?」とつぶやくように繰り返すところが面白かった。

(3) 「32個もすえたさかいにえらい勢いで煙が出て。煙の勢いで前に進むか思た」
 

(4) 強情男が、情けない男の艾(もぐさ)を奪ってぶちまけるが、手ですくい上げるような仕草をして「これをいっぺんほぐすんや」と言ってから、おにぎりのように丸める描写がていねいで説得力あり。

(5) 情けない男が強情男に「ええ?それひと所にすえるて?やめときいな。それ、わいの10日分やで・・・・・・・・・・て、わしがゆうもんやと思てるやろ?

(6) 強情男が「こんなもん、1箇所では火ぃがおりんでな。こう、周りに火をつけていくんや。吹け、吹けぃ!でや、煙がモクモク出てきたやろ?

 吾が胸の 熱き思いに 比ぶれば 煙は薄し 桜島山・・・・・・ゆうてな。 

 これを我々の方では『桜島ずえ』ってゆうんや」
という大見得は定番だが、
情けない男が「・・・・・我々の方て?」とつっこむところが面白い。

 強情男は仕方なく「・・・・・・関西やいとすえよう協会や」と、また強情。

(7) 途中まで「吹けぃ!吹かんかい!」と促していた強情男だが、熱くなってきたとたん「吹くな〜!」と転換するのは定番だが、「ギャー!吹くなぁ〜!ボケ!あほ〜〜!!」と尋常じゃないくらい大きな声で必死に叫ぶのにはちょっとびっくり。

(8) 必死に耐える強情男。人差し指と中指を2本揃えデコをぴしゃっ!と叩き、腕を伸ばして「ぴぃ〜〜!!」と叫ぶことを2回繰り返す。情けない男は「やかんみたいやな」と冷静なつっこみ。

(9) サゲは初めて聴くものだった。

 もがき苦しみながら耐えていた強情男だが、ついに辛抱たまらず慌てて腕の艾を払い落とす。
 しかし、強情で「・・・・・ああ、冷た」というのは定番。

 しかし、情けない男が
「ウソつけ。涙出てるがな。ほんまは熱いんやろ!」
「熱い・・・・」
「ハハ、白状しよった。もうそんな強情ゆうんやないで!」
「もう二度と言わん」
「・・・やいとが効いたな」
というサゲ。

 つまり強情男がとっても素直。情けない男との力関係が完全に逆転。


 

 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

inserted by FC2 system