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(No265) 平成紅梅亭 TV鑑賞記  その3
          

 平成23年3月31日(木)の放送。

 



三遊亭 小遊三 「蛙茶番」

 軽快な出囃子(洋楽「ボタンとリボン」)で高座に登場。
 噺家の小さい頃ってゆうと、AタイプとBタイプってものがあるようですね。

 小さい頃からひょうきんってぇ〜か、わざと転んだりね、笑いをとったりしていたタイプ。

 で、あと、真面目でね、おとなしくて、まさか、あの子が噺家になるなんてって驚かれるようなタイプ。


 あっしなんざぁ、典型的な後者でしてね。小さい頃の私を知っている人からは「外交官になると思ってた」なんて言われました。

 そんな私ですから、小さい頃、学芸会なんてのもあまり好きじゃなかった。主役やりたい!って手を上げるタイプじゃなかった。ですけどね、自分はやりたくないんですが、その主役を、自分とあまり仲の良くない子がするのは、あまり面白くなかったもんです。

 昔は、と言うと、楽しみが少なかったのでね、よく素人芝居なんてものをやって、楽しんだもので。

 忠臣蔵なんかをやりますと、みんなやりたがるのが勘平。

「そうゆう訳ですからね、みんな勘平ばかりやりたがってもらっちゃ困るからね。松っつぁん、あぁた、何を演る?」
「分かりました。そうゆうことでしたら、勘平なんてこたぁ言いません。じゃあ、お軽の亭主を」
「それじゃ、私は、与市兵衛の婿養子を・・・」

 みんな勝手なことばかり言うんで、世話役はいやになっちまって、勝手にしろ、と。

 で、当日幕が上がるってぇと、舞台の上には勘平ばかりが36人並びました。

「何です?この芝居は」
「ええ、おそらく観兵式でしょう」

 

 


「え?どうした?伊勢屋の若旦那が来ない?また、いつもみたいに役に文句つけてんの?今度はそんなことがないように、役の割り振りはみんなでくじでひいたんだろ?

 で、伊勢屋の若旦那は何の役なの?え?ガマ?・・・・・・・・・お前、そんな役までくじに入れちゃったの?ガマなんて、うちの小僧でも誰でもやらせりゃいいじゃないか。そりゃ、だめだよ。伊勢屋の若旦那、来る訳ないよ。

 おい、定吉。お前、芝居、好きだろ?ちょいとガマの役で出ておくれ。何、ぬいぐるみを着て、きっかけで舞台に出るだけでいいんだ。

 え?何?建具屋の半次も来ない?半次は何の役?舞台番?ああ、あいつも役に不足言ってんだな。しかし、困ったね。舞台番がいないと、幕が上げられない。

 ああ、定吉。ぬいぐるみ着るのは少し待って、建具屋の半次を呼んできておくれ。

 ただ呼んでも来ないからね。どうしようかな。ああ、そうだ。あいつ、小間物屋のみい坊に惚れてるからね。途中でみい坊に会って、舞台番になることを言ったって言っておやり。
 そうしたら、奴ぁ怒るよ。そこでね、いえ、「素人がおしろい塗って、舞台の上でぎくりばったりやるのは、あまりいい形じゃない。そこを舞台番に逃げたとこが半次さんの利口なとこ。いなせな半次さんの舞台番を観たいわぁ〜」って誉めてましたって言ったら、絶対に来るから」

 その通り言うと、案の定、半次は乗ってくる。

 それどころか、舞台番というと、尻をまくって客席に座り、客席がざわつくと静める役目。ふんどしを見せるようなものだから・・・・・と質屋に入れていた緋縮緬のふんどしをどう工面したか、何とかうけだしてきた。

 これで、すぐにお店(たな)に行けば何てこたぁなかったんですが、もういっちょう男前を上げようってんで、風呂屋に行きました。

「おう!半ちゃんじゃねえか。芝居に出るのかい?」
「ええ。舞台番でさぁ」
「そりゃ、いい了見だ。しかし、舞台番にしても、ちっとばかり服装
(なり)が地味じゃないかい?」
「中に凝ってんでさぁ。
(尻をまくってふんどしを見せ)どうです?」
「おお、真っ赤だね」
「緋縮緬、本物でさ。嘘だと思うんなら、くわえて引っ張ってみろぃ、ちりちりって縮みますぜ。

 町内広しと言えど、これだけのもの持ってる奴ぁいない」

 これを聞いていた番台が、気を利かせて
「お客さん、それだけ大事なもんなら番台で預かっときましょうか?」
「おお、頼まぁ」

 一方、定吉は半次がなかなか来ないので、呼んでくるよう言い付けられる。長屋に行っても留守で、近所に聞くと風呂屋だというので、風呂屋へ。

 せかされた半次は、慌てて、番台に預けていたふんどしを忘れて、着物を着て駈け出す。

 芝居をやる商家に向かう途中で、また知り合いに出くわし・・・・


「おう!半公!どこに急いでんだい?」
「芝居だよ。舞台番に逃げたんだ」
「そうかい。でも、ちっとばかし服装が地味だな」
「そこだよ!これを見てくれ!」
(と、尻をまくる)

「おっ!・・・・・・・・・・・・・」
「町内広しと言えど、これだけのものを持ってる奴ぁいない」
「確かにね。・・・・・・膝小僧が三つあるようだね」
「ほんもんだよ」
「・・・・・・だろうね」
「ウソだと思うんなら、くわえて引っ張ってみなってんだ」
「やだよ!」

 急ぐってんで、尻っぱしょりしたままお店へ。

「え?何?半次が来た?じゃあ、幕を上げなさい」
「おう!おう!舞台番
(ぶてぇばん)の場所はどこだ?
(尻をまくったまま、客席を眺め回し)
 みい坊はどこだ?みい坊は?・・・・・・いねぇじゃねぇか。あの小僧の野郎!」


「何だかやかましい舞台番だね。舞台番てぇもんは、客席がやかましい時に『お静かに』って静めるのが仕事だよ。
 なのに、俺たちが静かにしてんのに、舞台番がやかましく、ぱぁぱぁ言ってる。
 誰がやってるの?半次?バカ半?あいつぁ物が分かんないからねぇ。

(と、半次を”二度見”して)
 え?・・・えっえぇ〜〜?
(目をこすって)ええ?(隣の者の肩をゆすって)ねえ、ちょっとバカ半をご覧よ」
「やだよ」
「いや、私の見間違いかも知れないからさ」
「何なんだよ、全く・・・・・・・ええええ!」
「バカ半、あれを見せたいから舞台番やってんのか」

 

 芝居が進んで、定吉のガマが出る場面だが、なかなか出ようとしない。

「おい!定!お前の出番だよ。何してんだよ」
「いや、蛙は出らんない」
「どうして?」
「だって、あそこで青大将が狙ってる」

 初めて聴いた噺で、ややバレ噺っぽいが、面白かった。

 

 



桂 三枝 「ピッカピカの一年生」

 深々と頭を下げ、上げきらずに少し止めて・・・・。
 頭下げんのがつろぉなってきて・・・・。

 育毛剤とかよぉもらうんですが、ああゆうもんは髪の毛あるうちにつけなあきませんね。

 流れるんです。せやから、今はこうやって(額に手を当てて)育毛剤つけてます。
 でも、手ぇ放してまうと、全部流れて、で、眉毛で止まる。せやから眉毛ばっか太なって。

 こないだ、小学校ん時の同級生と会いまして。最近、外国に行って恥かいたってゆうてました。ホテルの近くに、日本にも店のあるチェーン店のコーヒーショップがあって、そこに入ったそうなんです。
 日本でも毎日その店に行って、チーズ入りクロワッサンを食べてたらしいんですね。で、日本では、それ注文すると「温めますか?」て訊いてくれるらしいんですが、外国では訊いてくれへんかった。

 こら自分で言わなあかん思て店員さんを呼び止めたもんの、結局何てゆうたかとゆうと、
「This!レンジ!チ〜ン!」・・・・・・・・。大体、
(電子)レンジゆうのが外国では通じませんから。マイクロウェーブって言わなあかんらしいです。
 向こうは、はぁ〜??てな顔してる。で、彼、頭真っ白になって、でも、温めることを言わなと思て、いきなり、
ファイヤー!!

 何でも、英語でファイヤーってのは「クビだ!」って意味らしいんですね。

 つるっぱげの日本人が、何か訳の分からないことを言ったあげく、いきなり「お前はクビだ!」って叫んだんで店ん中は大騒ぎになったそうで。

 

 

「秀樹、よろしゅう頼むで」
「・・・・・・親父。その歳で高校入ろうってのは偉いで。でも、学校なんていくらでもあるやろ。何で俺と同じ高校に入るねん。俺が高校3年生で、親父が同じ高校の1年生って変やろ?」
「でも、この学校が一番近いんや。工場の裏だからロスがないねん。

 頭と同じで、ピッカピカの1年生や。ヤカン高校生だけにな。滑らんぞ!秀樹」

 

「親父、ちょっと話があるんやけど」
「ちょうど良かった。わしもお前にちょっと話があんねん。で、何や?お前の話て?」
「同じ高校ゆうのはしゃあないわ。でも、何で同じ教室やねん?」
「そら、しゃあないがな。学校でそう決められてんねんから。夜間高校の1年が昼間の1年の教室を使うとは決まってへんらしい」
「ほな、それはええわ。しやけど何でおんなじ机やねん?」
「ああ、あれか?席は別に決められてへんねんけどな。座ったら、お前の机やったんや。別の机に変わったこともあんねんで。せやけど、あかんねん。お前の机が一番落ち着くんや」
「やめてくれよ。親父の存在は、もうみんなに知られてんねんで。写メまで撮られてんねんで。『夜間高校に日の出が』て、ゆうてな。

 これだけは頼むわ。連絡帳は書かんといてくれ。『秀樹へ 弁当のおかずを残すな』って、あれ何やねん?」
「ああ、あれか?こないだ、俺の弁当にコロッケが入っててんけどな。えらいちっさいねん。あら、どうも、お前の残したコロッケを修正して、作り直したみたいやねん。こないだの海老フライもえらい短い。あれも、お前の残した海老フライを修正してるみたいや。

 うちは弁当のおかずを使い回ししとんねん。せやさかい、残すんやったら残す。食べるんやったら食べる。どっちかにしてくれ。

 ま、そんなことはどうでもええねん。実はお前に紹介したい女の子がおってな」
「親父、そんなんやめとけや、ええ年して。おふくろ怒るで」
「そんなんちゃうがな。友達、ほんまのクラスメートや。さきほちゃんゆうてな。この子が、わしを秀夫、秀夫ゆうてほんまのクラスメートみたいにゆうてくれて」
「秀夫?呼び捨てか?」
「それが新鮮でな。嬉しいねん。昼間働いて、夜、勉強に来てる真面目な子ぉやねん。元ヤンキーの暴走族でな、髪の毛、茶髪・・・」
「どこが真面目やねん」
「こないだ相談があるねん、ゆうて会社の話聞いてあげたら、えらい喜んでな、一緒にカラオケボックス行こうゆうて。
 また、さきほちゃんが歌上手いねん。水前寺清子なんか歌わへんで。何ちゅうたかな。案内係・・・?受付係?」
「いきものがかりか?」
「ああ、そうそう。それと・・・・南・・・のかな?東のんかな?」
「西野カナか?」
「それから、どっかの村で、帰るとか帰らんとか・・・」
「木村カエラやな」
「そうそう。せやからわしも対抗して村田英雄うとたった。

 で、帰る時、『秀夫!バイクで送ったる』ゆうねん。『わし、ヘルメットないで』ゆうたら、『大丈夫。秀夫やったら遠目ならメットかぶってるように見える』せやけど、彼女、元暴走族やろ。バイク乗ったら人、変わるねん。『秀夫!しっかりつかまっときや』ゆうてつかまってたら、えらい飛ばして・・・・・・警察につかまりそうになって」
「ええ年して何してんねん」
「せやけど、彼女頭ええで。警察に向かって、『おじいちゃん病気で、一刻も早く病院に連れて行かなあかんのです!』ゆうて。
 そしたら、白バイ、『分かりました。我々が先導します』。わし、初めてや。どっこも悪ないのに病院で診てもろたん。『どうしました?』て言われたから、『ええ、心臓がバクバクして、息苦しくて』てゆうたら、聴診器当てて『驚異の回復力ですなぁ』ゆうてくれた」

 さきほちゃんとは、その後USJにも行き、ジョーズでびっくりした「秀夫」は、「カワイイゆうて頭なぜて、パンくれた」とのこと。
 USJで秀樹の同級生がデートしているのに出会ったが、その彼女よりさきほちゃんの方がずっと可愛いから紹介したいという親父に「いくつだよ」「若いで。21や」「年上やないか」

 その後、父は息子にGパン代を渡す代わりに現代社会の宿題を見てもらう。学級委員長をやっているので下手な解答をできないという。

「ITとは(1)のことで(2)の発達を背景に、(3)や(4)特に(5)が発達した」という穴埋め問題で、秀樹の模範解答は「(1)インフォメーションテクノロジー」、「(2)コンピュータ」、「(3)携帯電話」、「(4)CATV」、「(5)パソコン」だった。

 秀夫の解答は、(1)伊藤高志、(2)ラジオ、(3)荒木、(4)山口。で、自分で「惜しい!」と言った(5)は「合コン」。・・・・・・・・・・・それほど面白くなかった。

 そして、何年か後・・・・・・・・・・。

 
「親父は偉いな。とうとう大学まで通って・・・」
「いやあ、一浪したしな。私立やし。

 それよりお前の方がもっと偉いがな。国立大学ストレートで通って。一流商社からも誘いあったのに、断って、俺の会社継いでくれて、それでコンピュータ取り入れて、もの凄く大きくしてくれて・・・・」
「あれは嫁さんが鶏口となるも牛後になるなかれって言ってくれてな。俺も親父の会社がなくなるのいややったし」
「それに、お前が大学4年の時に結婚するとはなあ。それもさきほちゃんと」
「親父が紹介したんやないか」
「年上やけど秀樹さん、秀樹さんてお前を立ててくれてなぁ。そう言やぁ、あの子、お前のことは秀樹さんゆうけど、わしのことは未だに秀夫やなぁ
「そや。あれは俺もちょっと気になっててん。注意しよか」
「かまへん。その方が新鮮でええねん。

 でもなぁ、夜間高校の時は、さきほちゃんが友達になってくれたけど大学ではまだ友達ができんでなぁ。時間ができた時は一人で学校ウロウロしてんねんけど、みんなわしに向かって頭下げよんねん。多分、わしのこと教授や思てるんやろなぁ。こないだなんか、廊下で教授までわしに頭下げとった。

 クラブ入ろう思て囲碁部に行ったんや。熱心に勧誘しとったからな。でも断られた。顧問の先生より年上やからゆうて。

 せやから、わし、自分でクラブ作ったんや。でも、まだ誰も入ってきてくれへんけどな」
「親父は、そうやって何でも自分で切り開いていくから偉いなぁ。
 で、何のクラブ作ったんや?」
老人クラブ、つくってん」

 高齢化社会の時代に相応しい、前向きないい噺だが、やや笑いどころが少ないか。

 


 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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