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(No263) 扇町寄席 TV鑑賞記
平成23年8月7日(日)の放送。寝坊したんで録画してません。
林家 染弥 「癪の合い薬」
冒頭にも書きましたが、寝坊していて起きたら、もう始まってました。
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酔っ払いてなもんは、聞いてたら無茶苦茶なことゆうてますな。
こないだも道歩いてたら、通りすがりの酔っ払いが
「任しとけ!俺からオバマにゆうたる!」
・・・・・あら、何なんでしょうなぁ。
私、こないだたまたまタクシーに乗りましたら、運転手さんの横、助手席にもう一人座ってました。
あら、新任運転手さんの研修で、横に指導役の上司が座ってたんですな。
で、その運転手さんゆうのが、きっと前に勤めてた会社は定年か何かになって再就職されたんでしょう、かなりの年配の方でした。
で、上司が、どないみても、その運転手さんよりだいぶんと年下なんですな。
しやけど、こいつがやたら偉そうに言いよる。
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「ごあいさつしたんかい!」
「あ、はい。どうも、こんにちは」
「そんな小さい声ではお客様に聞こえんわい」
「はい!こんにちは!」
「・・・・・すんません。ナンバまでお願いします」
「行き先を復唱せんかい!」
「はい。ナンバですね」
「声が小さい!」
それから、何ぞするたんびに偉そうに指導する。
運転始めても、ブレーキがどうとか、安全確認がどうやとか。
運転手さん、可哀想にぺこぺこして、小そうになってはる。
私も、何かゆうのが気の毒になってねぇ。
運転手さんも、ずっとはいはい、はいはいゆうて聞いてたんやけど、とうとう、辛抱たまらんようになったんやろねぇ。
赤信号で止まったか思たら、「ほんならお前が運転せえや!」
そう捨て台詞吐いて、車降りてしもた。
後に残ったん、我々二人。
その若い奴、何を思たんか、私を振り返って「へへへへ・・・・・ねぇ?」
何が「ねえ?」やねん。私もとりあえず「はい」てゆうたけど。ほんま、気まずい空間でした。
昔は今ほど医学が発達しておりませんで、病気の名前も今とは違っておりました。
癪(しゃく)・・・・・今でゆうたらストレス性の胃痙攣とでもいうのでしょうか?特にお女中、女性に多い病でございまして、時代劇なんかでも、よぉ持病の癪が・・・なんてゆうてますな。
何かの拍子にお腹が痛んで、立ってられへんほど苦しむ。
今のように薬・・・がなかったもんやから、それぞれが合い薬(あいぐすり)ゆうもんで治してました。治してたゆうか、おまじないみたいなもんですが。
何の医学的根拠もないんですが、不思議と何々すると癪が治る・・・・。これは、その人やさかいそうなんであって、別の人がやってもあかん。
多かったんが男の人の親指でぐ〜っと押してもらうと治った。これを「マムシの指」とゆうたりしたそうですが。
あるご大家の御寮人(ごりょん)さん、ある日、家の中で目の前にクモが降りてきた。びっくりした拍子に癪が出た。苦しゅうてたまらん。せめて水でも飲もうと近くのやかんを取ったが、中に水が入ってなかった。
苦しいもんやさかい、ただ、もう訳も分からんまま、水の入ってへんやかんをぺろぺろなめてるうちに・・・・・どうゆうもんか痛みがウソのように引いていった。
それから、この御寮人(ごりょん)さんの癪の合い薬は、やかんやぁ、てなことになったんですが。
ある日、春先の天気のええ日、野駆け、今で言うハイキング、ピクニックてゆうたとこでしょうか?
御寮人さんが、丁稚の定吉と女中衆(おなごし)のおきよを連れてお出かけになった。
「おきよや、ほんまにええ天気やないか」
「へえ、これもみんな御寮人さんの日頃の行いがええからだす」
「親旦さんにも感謝せなあかんなぁ」
「ほんまだす」
「定吉、あんた荷物は重とないか?」
「荷物は重たいことおまへんけど、はよ、このお弁当食べまひょ」
「あんたは何かゆうたらお弁当やな。さっき、お店で朝のご膳いただいたとこやないか」
わあわあ言いながら歩いております。
春のこってして、天気がええさかい、蛇がちょっと背中の柄、自慢したろ思て出てきよったんですな。
御寮人さんがひょっとしゃがみこんだ所に蛇が出てきたもんやさかい、クモでびっくりしたどころやない、
イタタタタ・・・・・御寮人さんは癪で苦しみ、しゃがみ込んでウンウン唸るばかり。
「わっ!えらいこっちゃ!定吉っとぉん、はよ、やかん出しなはれ!」
「そんなん、野駆けでやかんなんか持ってきてまへん」
「せやかて、御寮人さん、こんなに苦しんではるやないか」
と、向かいからやってきたのがお侍の主従。よっぽど仲がええのか、楽しそうにしゃべりながら歩いております。
このお侍のおつむというのが・・・・つるつるのやかん頭。
「定吉っとぉん!あんた、あのお侍に、ちょっとその頭、なめさせておくなはれって頼んできなはれ!」
「何ゆうてまんねん。相手はお侍でっせぇ。そんなご無礼なこと言おうものなら、すぐに、そこに直れ!
首をはねてくれる!ってなりまっさ」
「そやかて、御寮人さん、苦しんだはるやないか!やかん!」
「あかん!」
「やかん!」
「あかん、て。そや、おきよどん、あんたが言いなはれ。
お侍さんも、まさか、おなごをいきなり斬りつけたりはしまへんやろ。あぁた、やんなはれ!」
「・・・・しゃあないなぁ。御寮人さんの命には代えられん。
あの、もし、お侍さん。ちょっと、お願いがござります・・・」
「何じゃ?身共に願いか?
拙者、お女中の願いは断れん性質(たち)じゃ。何でも遠慮せずに申してみよ!」
「実はわたくしの主人の御寮人さんが山の中で・・・」
「ん?山の中で?山賊にでもさらわれたか?よし!行ってすぐに助け出しに・・・」
「いえ、そうではございません」
「うむ、分かった!仇に出会ったのであろう。よし、もう心配せずともよい。拙者、こう見えても北辰一刀流の免許皆伝・・・」
「敵討ちでもございません。実は持病の癪に苦しんでおりまして・・・」
「左様か!よし、では拙者の印籠に癪によく効く薬が入っておるによって、特別に分け与えて進ぜよう」
「・・・・うちの御寮人さんの癪は、そのような薬では治らないのでございます」
「何?拙者の薬がニセモノだとでも申すのか!」
「そうは申しておりません。実は・・・・・実は・・・・・」
「何じゃ?モジモジしとらんと、さっさと申せ!」
「あの・・・・・その・・・・実は、うちの御寮人さんはやかんをペロペロなめないと癪が治まらないのでございます。
どうぞ、失礼ではございましょうが、そのおつむりをなめさせていただきたいとのお願いにござりまする!」
「・・・・・・・な、何ぃ〜〜?言うに事欠き、神聖な武士の頭を貴様ら下郎になめさせろだと・・・・・。
ええい!そこに直れ!手討ちにしてくれる!」
「もとより、こんなご無礼を働いたからには、覚悟はできております。
私の命はどうなってもかまいませんが、せめて、私の首をはねる前に、御寮人さんを楽にしたげておくれやす」
「・・・・・・自分の命と引き換えに主人を助けてくれと申すか。忠義じゃのぉ。
可内、いつまで笑っておる!
よし!あい分かった。とても堪忍ならぬところではあるが、その方の忠義の心に免じて聞き入れてつかわす。
しかし、かような所を他の者に見られるわけにはまいらぬ。どこじゃ、早くすましてしまおう」
気のええお侍で、言われるままに頭を御寮人さんの前に突き出す。
御寮人さん、痛みで意識も飛びかけているところに天の恵み、むさぼるようになめまくる。
「おお!何をする!ガジガジと!こら!耳までなめるでない!ああぁ〜」
夢中でなめておりましたが、痛みが和らぎ、ふと我に返った。御寮人さん、大慌てで、
「これは大変失礼をいたしました!」
「いやあ、よいのじゃ。しかし、これからは忘れず、他出の折にはやかんを持参せえよ。でないと、頭の薄い者が迷惑をする」
「あの、せめてお名前とお屋敷をお教えください。後ほどあらためてお礼に伺います」
「馬鹿を申せ!拙者にも妻子がある。往来で頭をなめられたと言って礼に来られてたまるか!」
ほうほうのていで逃げ出しました。
「いやあ、これはたまらぬ。頭が濡れておるわい」
手拭を取り出し、べとべとの頭を拭っておりましたが、ふと、その手拭を見て驚いた。手拭に血がにじんでおります。
「おい!可内!ちょっと見てくれ!」
「ああ、これは、これは。歯型が2枚ついております」
「かじりおったな。どうじゃ、大丈夫か?」
「はい。もれるほどではございません」
どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。
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