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(No258) 平成紅梅亭 TV鑑賞記   
          

 平成23年3月31日(木)の放送。

 



林家 笑丸 「看板の一(ぴん)

 高座に上がり、お辞儀しながら扇子をぐるぐる回す。もちろん拍手の要請。こうゆうのは、私は嫌いです。
 
 「タイのニューハーフではございません」というツカミの台詞は面白かった。自分の顔の特徴をよくとらえていると思う。 

 マクラは、大阪では大変な子どもがいる・・・という話。電車で座っていると子どもがいきなり、前で「座りたい!!」
 そしたら、親もすごい。「そのうち、どいてくれはる」・・・・・・こんな親、確かにおるなぁ。
 昔からよく落語のマクラや漫才で使われていたネタは、デパートの大衆食堂で、後ろに立たれて「ここ、もうすぐ空くから」とか聞こえよがしに言われて、おちおち食べてられへん・・・というものだが、最近ではこうゆう光景もなくなった。

 本題は、「ちょぼいち」といってサイコロ一つの出目を当てる博打の賭場で、江戸っ子の年寄りが胴を張る。(いわゆる「親」として、サイコロを振り、目に張らせる)

 壷を伏せたが、サイコロが外にこぼれており、一(ピン)の目が丸見え。親っさんはそれに気づいてないらしく「さあ、張ってくれ」と促す。
 皆は競って一に張る。出揃ったところで、親っさんは「じゃあ、看板は引っ込めて・・・」とそのサイコロを仕舞いこんでしまう。
 払わねばならない家賃まで張った奴もいて、慌てる連中に「これに懲りて博打は、てぇげぇ(大概)にしな」と言って金を返してやる粋な親っさん。

「『てめぇら、何してんだい?』・・・ってかっこええなぁ。大阪弁やったら『あんたら、何してまんねん?』やもんなぁ。もっちゃりしてる。
 『よござんすか?』・・・・・・大阪弁やったら『よろしおまっか?』やもんなぁ」

 江戸っ子の親っさんの格好よさにあこがれたアホが、江戸っ子弁ごと真似しようとするところが聴かせ所なんだが、「この年寄りから〜〜」などと台詞が間延びしすぎて笑いに結びつかない。

「こちとら、江戸っ子だ。家売ってでも払ってやらぁ!」「お前、家ないやないか!何が江戸っ子やねん。瓢箪山より東、行ったことないくせに」
とか断片的にはそこそこ面白いんだが。


 
サゲは、アホが壷を開けたら中も一だった・・・というもので、みんな知ってるだろうし、知らなくても簡単に予測できる。古典落語なんだからサゲがばれているのも当然だ。
 しかし、演出のしようはあると思う。今回は、江戸っ子の親っさんが壷を開ける時わざわざ「いやぁ、中も一(ぴん)ってこともあるんだぜ。俺らのヨミじゃあ五だがな。・・・・・えい!ほら見ねぃ。やっぱり五だ」と言わせてるんで、よけいバレバレ。あの一言は、なくてもいいのでは?


桂 吉弥 「ふぐ鍋」

 自分が売れていることを誇示するようなマクラだった。

「最近では、おかげさまで、いろんな所で落語をやらせてもらっておるんですが、これはすべて、今日の平成紅梅亭のためのリハーサルでございました。

・・・・・昨日の泉南でも同じことゆうてたんですが」


 
 噺の冒頭では、おべっか使いの男が、盛んに旦那や奥さんにベンチャラを言う。

 「とんでもおまへ〜〜ん」と身体を左右に倒しながら手を横に振るさまは、誠意のかけらもない人間性をよく表していた。

 

 旦那がもらいものの河豚を食べようとするが気色悪い。そこで、このおべっか使いで試そうとしたのだが、男も嫌がる。

 そこで、おこもさん(いわゆる「乞食」)で試そうという話になる。

「どうせやったら、なるたけ毒の多そうなとこを。野菜も適当に入れといた方がばれへんな。フフ、フフフ、ヒヒヒヒ・・・」
「旦さん、悪魔みたいな笑い方、してまっせ」 

 こんな台詞を待つまでもなく、本当に邪悪なオーラが出まくっていた。吉弥は、ひょっとしたらとんでもないことになってるのではないだろうか。

 

 


 

柳家 三三 「長屋の花見」


 今度は東京の方の落語でお楽しみいただきたいと思います。

 名前の方はあちらに出ておりますが、横棒が6本並んでまして、「さんざ」と申します。覚えていただけたら、可愛く「みみちゃん」と呼んでもらえれば・・・・・
 

 と、いつもの名前をネタにしたつかみ。
 たまに学校なんぞで落語をやらせてもらうんですが、落語というのは一人で何役もやるんだという基本的なことを分かってもらうのが大変でして。

 「おっ!八っつぁんじゃないか!」なんて言うと、全員が「え?誰が来たの?」って感じで後ろを振り返る。

 「ご隠居さん、こんちわ!」なんて言うと、しつけのいい子なんかだと「こんにちは〜!!」って返事をしてくれたりします。

 じゃあ、大人なら安心か、と言うと決してそんなことはありません。老人ホームの慰問なんかですと、「大きな声で、ゆっくりしゃべる」。これが鉄則です。

 以前、千葉の方の老人ホームで、150人ほどを相手に落語を50分くらいやってくれって頼まれました。噺を始めて47、8分。もう、後はサゲ・・・ってとこで、最前列の80過ぎのおばあちゃんが急に立ち上がりましてね。

「もう少し大きな声で・・・」 まあ、ここまでは私も想定内でした。びっくりしたのは、その次で。「・・・最初からお願いします」
 そうしたら、会場のお年寄り全員が拍手・・・・。一挙に労働時間が倍になりました。


 非常にポピュラーな噺だが、実に歯切れ良い高座だなと感じる。

 他の花は「おい、梅、見に行こうか」とか「今度、菊に・・・」とか言わなくちゃいけませんが、桜だけは「花、見に・・・」とだけで通じるとこが嬉しいですね。

「おい、どうしたい。長屋36人揃ったかい?」
「ええ、大家さんがお呼びだっつぅんで、雁首揃えやしたんですがね。ひとつ、店賃
(たなちん)の催促なら、勘弁してもらえねぇかと」
「何だい、そんな心配してたのか。いや、うちもあんな長屋だからね。そんな厳しく取り立てようなんてことは考えてないよ」
「そうですよね。うちも店賃入れようなんて了見の奴ぁいねぇんで安心してください」
「おいおい。こっちも雨露しのぐための店賃なんだから、できるだけきっちり入れてもらわないと困るよ」
「雨露しのぐって、露ならともかく、雨はざ〜っと漏りますから。あっしら、雨が降ると表で雨宿りしますからね」
「いや、うちの長屋は貧乏長屋だの何だのって言われてるからね。今日は、一つ花見にでも行こうかと思ってね。ここに一升瓶が3本あるんだ。銘柄は全部違うんだがね。これは『犬の盛』、これは『猫の盛』、これは・・・『馬の盛』。で、こっちは蒲鉾と卵焼きなんだが・・・・行くかい?」
「え?行きます!行きます!あっしは今月の月番なんで、幹事やらせてもらいます」
「そうかい。そりゃ、すまないな」

「おい。お前、何で幹事なんか買って出たんだい?」
「馬鹿だな。幹事ってのは、その時は少し忙しいが、後で骨折り、なんて余計に呑ませてもらえたりするんだよ」
「そうかい。じゃ、俺も。 大家さん!あっしは来月の月番ですけど、あっしも幹事やります」
「おう。幹事は二人くらいの方がいいから、じゃあお願いするよ。

 ん?どうしたい。そっちじゃ、ありがてぇって手合わせて、涙ぐんでるじゃねえか。
 後で、こんなことなら来るんじゃなかったなんて言われると、やだからさ。先に言っとくが、あら酒じゃなくて、番茶を煮出して水で薄めたらいい色になって」
「ええ?・・・・・・・あれ、お酒じゃなくてお茶け?酒盛りじゃなくて、お茶か盛り?
 で、大家さん、じゃあ、蒲鉾や卵焼きは本物なんだろ?」
「バカ言っちゃいけない。そんな物を本物にするくらいなら、わずかでも酒を本物にするさ」
「・・・・・なるほど。理詰めすぎてグーの音も出ないね」
「白いのが大根のこうこで半月に切ってるとこが蒲鉾だ。黄色いのは、そのまま沢庵で卵焼き」
「え、何?これ擬似蒲鉾?噛むとばりばり音がするんじゃないですか?」
「なるたけ歯に当てねえで、呑みこむんだ」
「危ないな」
「おい、幹事。そこの毛氈、担いでいけ」
「え?毛氈?こりゃ世間一般ではムシロって言うんですよ。
 何か田舎の引越しみたいだな。ええ、そろそろ出発してよろしいですか?ご親戚の方は、お集まりになってますか?それではご出棺・・・」
「何を言ってるんだ。陽気にいけよ。それ!♪花見だ〜花見だ〜♪」
「♪夜逃げだ〜夜逃げだ〜♪」

 

「しかし、よくお前とこうして担ぐねえ。こないだは、あれだよ、裏の婆さんの早桶を担いだ時だな。
 次は誰かね?」
「そりゃ、まあ、年の順でいきゃ、大家か」
「何を言ってるんだ。ほら、上野に着いたぞ。すごい人出だな」
「大家さん、ここに居る人から1銭ずつもらっても、相当な銭になりますね」
「何、さもしいことを言ってる。どうせなら、使う方を言いなよ」
「そうですか。・・・・・・大家さん、何だね。ここしばらく、お札でハナかまないねぇ」
「くだらないよ。誰かの遺産が入ったとかさ」
「こないだ、おばさんからイサンをもらいまして」
「そうかい」
「胃の調子が悪くてね」
「胃酸違いだよ。さ、すりばち山のてっぺんだ。ここは見晴らしが・・・」
「だめですよ、上は。下なら、うで卵の一つでも転がってくるかもしれない」
「じゃあ、この辺は」
「ここは駄目です。こら、紅梅じゃないですか。
(注 「平成紅梅亭」の書割で舞台には大きな紅梅の樹が描かれている)
「まあ、番組だから仕方ない」
「一句出来ました。長屋中、歯を食いしばる花見かな」
(注 なぜ、このタイミングで、この川柳をはさむのか、よく分からない。入れるなら、こうこだのを食べる所だろう)

「まあ、長屋のみんなも私のおごりだと思うと気づまりだろう。今日は、無礼講でいこうじゃないか」
「何で番茶で遠慮しなきゃならないんです」
「さ、幹事!注いでまわんなさい」
「そうですか。じゃあ、おめえ!」
「いきなり横からいくなよ。少しでいいぞ。・・・・おっとっとっと!おめえ!俺がどかそうと思ったら上から押さえつけやがって!」
「さ、次はおめえだ」
「ん?じゃあ、俺も少しでいいよ。・・・・・・ごろごろごろ」
「うがいすんじゃないよ。ほれ!次!一献献じよう」
「いらないよ」
「だめだよ。ねえ?大家さん、みんな注がないとだめですよね?ほれ見ろ。予防注射と一緒だ。みんな同じでなきゃなんない」
「蒲鉾も食べなさい」
「へえ。まあ、あたしは蒲鉾の千六本が好きですからね。腹の調子が悪い時は蒲鉾おろしなんかもいいし。ほれ、九州の方じゃやたら太い蒲鉾があるでしょ。桜島蒲鉾とか言って。あっしゃ、どっちかと言うと蒲鉾の葉っぱの方が好きで・・・」
「何を言ってる。しかし何だな。これだけ揃って飲んでて酔っ払いがいないってのもさみしいな。おい、今月の月番!酔いなさい」
「まあ、来ると思いましたがね」
「今日の酒は吟味した灘の生一本なんだから」
「そうですか。あたしゃ宇治かと思った。・・・・・・う〜ん。甘口、辛口って酒はあるが渋口ってのは初めてだな」
「いい酒だから頭にピンピン来ないだろ?」
「来ないけど、小便が近くなっていけねえ。
 あ、大家さん、近々長屋にいいことがありますよ」
「ほんとかい?どうして?」
「だって、ほら、酒柱が立ってる」

「あの!大家さん!そこの卵焼き取ってもらいましょう!」
「うん!いいね!卵焼きがあるんだって、周りが見たよ。あんた、店賃はいくらためてるの?六つ?よし、二つまけてあげよう。どれだい?」
「ええ、しっぽの方を」

 「おなじみのお笑いで・・・」と頭を下げ、すました格好で高座を去ったが、確かな手ごたえを感じてるんじゃないだろうか。

 

 


 

 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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