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(No229) 新春蔵出し!丸ごと立川談志 TV鑑賞記 その5
一昨年、2009年の正月にやってた番組だが、長いこと観てなかった。
立川 談志 「粗忽長屋」
えらく腰を曲げて高座に向う。「野崎」の送りでの桂文楽師匠を物真似している貴重な映像とのこと。08年1月28日の収録。
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「こら何です?」
「さぁ〜」
「雨みたいだね」
「雨みたいって『さぁ〜何でしょうね』ってのを途中で切るから」
「何すか?」
「分かんないねぇ」
「分かんないのを何で見てんの?」
「分かんないから見てんだよ」
「ずっと分かんなかったら、どうすんの?」
「いつか分かるだろ」
「最後まで分かんなきゃどうする?」
「そりゃあ・・・・・しょうがねえよ」
「しょうがないのを前提で、何で見てるの?」
「・・・落語の中で消化できてないよ」
「行き倒れらしいね」
「見たいな。何とかならないかな?」
「じゃあ飛んでいったら?」
「羽がないよ」
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「冗談だよ。もぐんなよ」
「おけらみたいに?」
(股座をくぐっていって)「何だよ!」
「あたしゃね、他人のまたぐらをくぐってでも前の方に出て行きたい人なんですよ」
「泥棒!」
「わぁ〜だのキャア〜はいいけど、泥棒は許さねぇぞ」
「股座のおできの膏薬、持っていったじゃねえか!」
「汚ねぇな。よぉし、前に出てきたぞ。寝てるね。
起きろ!」
「ダメだよ。死んでるんだから」
「ちょいと見せてください。
おお!熊!脳天の熊五郎!」
「フルネームで言ったね。知ってるのかい」
「知ってるも何も、隣どうしだ。”生まれた時は別々でも、死ぬ時は別々だ”って仲でさぁ」
「・・・・それも言うなら”死ぬ時も一緒”じゃないのか?」
「何で一緒に死ななきゃなんねぇんだよ」 「・・・・じゃあ、かみさんにでも知らせてやってくれるかい」
「かみさんも、親も、親類もいねぇんだよ」
「へぇ、可哀想だね」
「そうだよ。世の中で一番可哀想なんだ。二番目がマッチ売りの少女。三番目が安寿と厨子王・・・」
「じゃあ、あんたが引き取ってくれるね」
「おぉいいよ。だけど当人の方がいいだろ。何せ、てめえなんだから」 「・・・・・当人を連れてくるって言ったけど」
「そうなんだ。当人に引き取らせるよ。今朝会って、お参りに行こうて言ったら『行かねぇ』なんて」
「じゃあ違うよ。この人は昨夜(ゆんべ)から倒れていたんだから」
「分かった!気づいてないんだよ。こいつ、今日はなまあったかいような気がするけど・・・とか言うんだ。てめえでてめえのことが分かってない奴だから、ここで死んでんのに気がついてねぇんだよ」 「・・・・・いや、ここで倒れてるのは誰なの?」
「熊だよ、脳天熊」
「じゃあ、ああたが今朝会ったのは?」
「熊公だよ」
「熊さんてのは二人いるの?」
「独りぼっちだって言ってるだろぉ」
「なら、どっちかが違う人なんだろ?」
「それを当人に確かめさせるんだよ。
ここでこうなっちゃったんだから、まず当人に知らせるってのが一番だろ?
自分で見りゃあ、いくらぼぉ〜っとしてる奴でも判るよ。そうなりゃ、もうおめえの負けだよ」
「あたしゃ、勝ち負けで物を言ってんじゃない・・・」
「すぐ連れてきやすから」
「行っちゃったよ。ニヤニヤ笑ってないで、お前さんも何か言っておくれよ」
「面白いじゃないか。ああゆう人は、連れてくると思うよ」
「(どん!どん!どん!)おい!熊公!熊!」
「あわてもんだね。そこは戸袋、我はこれに・・・」
「そんなこと言ってる身の上じゃねえぞ。
気を落ち着けろ。
俺は今朝、どこかへ言っただろ?こう、こんなとこ、こんなとこだよ。ここ、おい、何か言ってみろ!」
「大根おろしか?」
「何でだよ?」
「おめえが何か言えってゆうから、とりあえず大根おろしって」
「殴るぞ。
さぁ〜・・・で、飛べ・・・で、おできの膏薬で・・・もうだめだ」
「何か分かんねえな」
「遠回しに言ってんだよ。その・・・おめえは・・・だめだよ。(おかしな手振りで)わっ!となったとこで。 ・・・・ずばっと言うぞ。死んだよ、おめえ」
「・・・・俺は死なないだろう?」
「死にたくないってのは分かるが、人間は死ぬもんだよ」
「でも、おいら死んだような心持ちがしないよ」
「初めのうちはしないんだよ。昨夜(ゆんべ)はどうした?」
「吉原(なか)に素見(ひやかし)に行って、屋台で呑んでイカの足食って、吐いて・・・・・あと、どう帰ったか覚えてねえな」
「そうれ、見ろ。そん時、死んだのに気づかずに帰っちまったんだ。 第一、おめえ、気分悪いだろ?」
「良かないな」
「”良かない”じゃねえよ。気分悪いだろ?」
「・・・悪い」
「当たりめえだよ、死んでんだから。
これが他の奴が言ってんなら、違うって言ってもいいよ。
この俺が、この目で確かめてんだ。俺の目を見ろ」
「そんな星野哲郎みたいなこと言ったって・・・」
「おめえは死んだんだ。死んだんだろ?死んだんだよ!」
「・・・・・ああ、死んだぁ〜!死んだんだなぁ。もっと何か食っときゃ良かった」
「死骸を引き取りに行かなきゃなんねえ」
「ええ?きまりが悪いよ」
「馬鹿野郎、人間、最後が一番大事なんだ。
俺がちゃんと口をきいてやる。おめえはゆんべからすみませんと一言いえば全て終るようにしてやるから。
早く支度しろよ」
「ゲタが・・・」
「裸足でいいよ。死んでる奴がケガをするか!
お前は、お星様になっても、ぺかぺか光って、俺のこと見守ってくれなきゃダメだぞ。 どけ!どけ!どけ!(と、周りの奴をヒジ撃ちで払いのける)」
「痛い!痛い!痛い!」
「マンガチックな奴だな。 どうも!先ほどは!」
「ええ〜?居たの?」
「居たんですよ」
「・・・・違ってたろ?」
「ええ、私は違うなんぞぬかしましたがね。まあ、死にたくないって気持ちでして。
まあ、当人も馬鹿じゃなし。ちょっとトロいだけでね。
やっぱ気合ですね。こっちが本気になれば・・・」
「すいません。悪気はなかったんです。酒を呑んだのが悪かったんです。
兄貴に言われて初めて気がつきまして・・・・」
「やだな。同じような人が増えちゃった」
「だから私も言ったでしょ。この人は連れてくるって。当人ですよ」 「あんたまで何言ってんだい。 ・・・・・あんた、当人なの?・・・・じゃあ、確かめとくれ」
「なまじ死に目に会わない方が・・・」
「見ないと困るよ」
「・・・・・・これが俺かい?ちょっと顔が伸びたような・・・」
「死ぬと少し伸びるんだよ」
「ちょっと違うような・・・」
「俺がおめえに顔洗え、ヒゲを剃れって言うだろ?ヒゲ剃る時は鏡見るから、自分の顔が分かるんだよ。俺なんかは、鏡を見てるから自分の顔が分かってる。自分の顔が分かって、おめえの顔も分かってる俺が言ってるんだ。素直に死んでくれよ。 お前だよ、お前だ!」
「俺だぁ〜〜」
「泣いてるよ。何で泣いてるの?」
「この悲しみは死んだ者しか分からない」
「こりゃ困ったね。違うでしょ?」
「当人が見て、当人だって言ってるんだからグズグズ言うことはないだろ!抱け、抱け!」
「・・・・・う〜ん。抱かれてるのは確かに俺だけど、抱いてるのは一体誰なんだろ」
どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。
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