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(No226) 新春蔵出し!丸ごと立川談志 TV鑑賞記 その2  
          

 一昨年、2009年の正月にやってた番組だが、長いこと観てなかった。

 



立川 談志 「へっつい幽霊」


 編集されていて、本編からいきなり入る。

「いいもんでしてね。お買上げいただきたいですな」
「いいよ。買うよ。いくらだい」
「お買上げいただくんでしたら、ぐっとおまけして、3円で」
「おまけして・・・?じゃあ、おまけしないといくらなんだい」
「え?まあ、まけなきゃ高くいいますけど」
「3円かぁ、安いなぁ。・・・・・・・いくらか、まかんないかい?」
「安くてまけろ・・・ですか?」
「3円にまかんないかな」
「ええ?3円のものを3円?」
「分かんないの?おめえ、ちょっと疎いなぁ」

 


 上方落語では、「おまけして○○円ってことだが、おまけしなきゃ何ぼやねん?」「おまけせなんだら・・・・・○○円」「一緒かい!」というギャグが入るが、それは入らなかった。

 運んだり、据え付けたりする手数料込みで3円というやり取りで竃(へっつい)が売れた。 


 で、道具屋の夫婦が夜中に帳付けしてましてね。深夜の2時頃かな。表の戸をどん!どん!

(頭を傾げ)ん?いい音がしねえな。(舞台の別の場所を扇子で叩いたり、マイクを扇子で叩き)こらぁ、違うな。

 座布団だけありゃあいいからな。後ろの屏風も別に要らねぇし。こいつら、気ぃ使わねぇからな。楽屋なんかも何もねえよ。稲荷寿司が置いてあるだけだよ。


「ああ、道具屋ぁ〜。俺の顔覚えてる?あのへっつい、引き取ってくれ」
「まあ、うちから出たもんですからね。でも、同じ値ってわけにゃあ・・・。1円50銭で。で、どうしたんです?」
「いくらでもいいよ!訳は訊かねぇでくれ」
「じゃあこうしましょう。訳を教えてくれたら、元の3円で引き取りましょう」
「本当かい?じゃあ話すけど、夜中に遠寺の鐘がなったかと思ったら、生温かい風が吹いてきて、へっついから青い火が出たかと思ったら、白い煙で、髪の毛の長げぇこんなの
(手を前に出して幽霊の格好)が出て、金出せぇ、金出せぇって。
 俺ぁ幽霊の追い剥ぎっての初めてだ。とても、あんなのは置いてられねぇから、取って、とって、とって、とって・・・」
「ラッパだね。じゃあ、明日、取りに行きますよ」
「ダメだよ!あんなのがいるとこ帰れやしない」
「じゃあ、今夜はお友だちのところにでも」
「友だち、いねえんだよ。一人も。非常にさみしい男なんだ。
 
(手振りをつけて)ひっじょうにぃ〜〜さびしいい!!」

 
 財津一郎のギャグ。「財津だね」とつぶやいていたが、これは家元らしくない野暮な台詞だと思うな。

 いいへっついなんで、店に置いておくと3円で売れ、すぐ帰ってくる。最初のうちは喜んでいたが、そのうち噂になって全く売れなくなった。
 1円付けて誰かに売って、縁を切ろうかとかみさんと相談してるのを外後架(共同便所)で聞いていたのが遊び人の熊。

 大店の若旦那だが遊びが過ぎて勘当された銀ちゃんを誘って道具屋へ。

「塀越しなんで、間違ってたら勘弁しつくださいよ。1円つけてってのは」
「そりゃ熊さんに取ってもらったら助かりますが。でも、熊さん家
(ち)はうちから近いからねぇ。ここまで来たんだから、ついでに道具屋まで・・・なんてことになったら」 
「俺も向こう傷の熊と呼ばれた男だ。スカーフェイスだよ。後で文句は言わねぇ。銀ちゃんが証人さ」

 
 銀ちゃんと二人でへっついを担いでいると、力仕事なんかしたことがない銀ちゃんがよろけ、へっついをどこかにぶつける。転がり出た「幽霊の卵」。中から出てきたのは300円という大金。

 とりあえずへっついを銀ちゃんの家に担ぎ込んで、金は山分け(150円もらった後「割り前の50銭は?」ってギャグが入る。銀ちゃん、結構金に細かい)。銀ちゃんは吉原、熊は賭場ですっからかん。

 銀ちゃんの家で夜中に・・・・・・出た。

 

「熊さん!あわわ!あんた嘘つきだ。幽霊は全部引き受けたって、ちっとも引き受けてないじゃないか。幽霊が『金返せ、金返せ』って。あたしゃ、幽霊の借金取りって初めて見た」
 熊は、銀ちゃんの実家に行って、「息子が幽霊の金を使い込んだ。このままじゃ命にかかわる」と言って、300円もらってきた。

 勘当した息子だが、何も言わずにすっ!と金貨で出したってとこは親子の情を感じる。

 お前から耳ぃ揃えて返してやれと言ったが、銀ちゃんは一度会ってるんだ。幽霊に裏を返したり、馴染みになりたくないと熊に頼む。なお、吉原で花魁と初めて会うのを初会、二度目を「裏を返す」、三度目以降が「馴染み」という。

 金をへっついの上に並べて「早く出て来い!」と熊が大声をあげてるので、幽霊も出そびれてしまった。

 幽霊も時間にならないと出てこれない。だけど、インドあたりじゃ昼間っから出るらしいね。夜出ても、黒いから分かんないからって。

「お待ちどう様・・・・・・・」
「何ぃ?天麩羅そば誂えてるんじゃねぇぞ!恨めしやって出てこいよ!」
 

 「別に恨めしいわけじゃないんでさ」と、幽霊がいきさつを打ち明ける。左官の長五郎という男が賭場で儲けた金を、へっついに隠したのだが、当たってる時は恐ろしいもんで、その夜、河豚に当たって死んでしまった。
 地獄の沙汰も金次第、地獄の役人も金が貰いたいので取りに行けと言われ、戻ってきたというのだ。

 ようやくへっついの行き先を探し当てて交渉に入ろうとしても、みんな驚いてしまって話にならない。そこ行くと、親方は強いねと幽霊がおべんちゃら。「こうゆう理由(わけ)ぇ」って、締めの言葉が面白い。

「元はおめえの金かもしれねぇが、俺がいたから、こうして出てきた。全部持っていこうと言うんじゃねえだろうな?いくらか置いてくわなぁ」
「はぁ・・・・。いくらぐらい?」
「まあ、あっさり、半分ずつでどうでぇ?」
「そりゃひどいよ。礼なら五分とか一割って相場が・・・」
「やなら、よせよ。出るとこ出ようか?」
「出るとこ出れないから、苦労してんですよ。何とかならないの?・・・・・そう。じゃあ、どうぞ」
「そうか。お前ぇの気持ちを無にするわけにゃあ行かねぇしな」
「あんたの気持ちだけじゃないか。150円かぁ・・・・・・・。これじゃあ閻魔もあんまりいい顔しねえなぁ。半端になっちまった」
「おう?俺っちも半端だよ。おめえも半端、俺も半端より、どっちかが良くなった方がいいんじゃねえか。どうだ、どっちかに”押っ付けっこ”するってぇのは?」
「はぁはぁはぁ・・・・。
(壷振り)道具はありますか?

 久しぶりだなぁ・・・・・。

 あのぉ・・・・・触らせてもらっていいですか?・・・・・・はぁ、たまらねぇ」
「おう!おう!変な振り方するねぃ!掌ぇ上に向けろぃ」
「仲間の規則
(きめ)で、掌を上に向けちゃいけないことになってんで。だから、朝、顔を洗う時、洗いにくくて仕方ない」
「じゃあ入れるよ。どっちだい?」
「さっきも言ったでしょ。あっしゃぁ長五郎だから、丁しか張ったことがない」
「そうか。で、いくら?」
「150で」
「え?ひとっぱりで?いっぺんに?いい度胸だな」
「いや、いい度胸ってわけじゃねえ。まごまごしてるうちに夜が明けちゃうとどうしようもないんで。
 親方もコマ
(賭け金)合わせてください」
「じゃあ、俺ぁ半に150だ。

・・・・・・じゃあ、開けますよ。五六の半!」
「五六の半?・・・・・・・・あぁ〜〜
(と気を失って後ろへ倒れる。それを抱きとめる熊)
「幽霊のがっかりした顔ってぇのは初めてだ。途中まで送っていこうか?

「親方・・・・。もう一勝負してくれませんか」
「断るよ。おめえにコマがねぇのは分かってる」
「いやあ、あっしも幽霊だ。決して足は出しません」

・・・・・・・・・・てぇのがサゲなんですがね。つまんねぇでしょ。あんまりいいサゲじゃない。笑点の奴でも言えそうだ。笑点ってのは、俺が創ったんだからね。TV局の奴、俺に足向けて寝られねぇ。こんなとこで言ってても仕方ねえけど。

 

「分かったよ。いくらか戻り、やろぉか」
「いえ、すみませんでした。消えます」
「おっ!ボケてきやがった。あ、消えた」
(座布団の下を探り、扇子を取り出す)

 分厚いから分からない。

どん!どん!どん!

「あっ、銀ちゃん。もうちょい早く来たら、珍しいもんが見れたのに」
「いや、隙間から見てました。・・・・・・・熊さん。半分ください」

 


 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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