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(No221) 上方演芸ホール TV鑑賞記  
          

 平成22年12月5日(日)の上方演芸ホール。

 



笑福亭 伯枝 「へっつい盗人」


 登場するなり「せんと君です!」と言う。せんと君と言い出したのは嫁さんで・・・云々は以前聴いたとおり。

 「竃(へっつい)ゆうても若い人には分からへん。・・・・・今日は説明せんでもよろしいか?」というくすぐりを入れて、説明に入る。

  
 ギャグは多い噺である。

(1) 値安で手軽で嵩高くて、便利なもん・・・・・で、かんな屑を俵に詰めたもの。

(2) 後になって「間に合うたなぁ」と喜ばれるもん・・・・・・で、棺桶。

(3) びっくりするようなもん・・・・・・で、火ぃついたダイナマイト。

(4) 「へっついとお釜とお櫃(ひつ)で50銭」
「どこで買うた?」
「松屋町
(まっちゃまち。ひな人形の店などで有名)
「そら、おもちゃとちゃうのんか?」
「大人用が要るんか?」

(5) 「二人で5円や」
「ほな清やんが4円50銭で、わいが50銭か?」

(6) 「堺の別荘に行けるぞ」
「電車で行くんか?」
「迎えの車が来る」「
「わい、知り合いちゃうけど、泊めてくれるか?」
「いややゆうても連れていかれる」
「大きい別荘か?」
「高いレンガ塀に鉄の扉や」
「何ぞくれるか?」
「とけいのついた鎖くれるで」
「どんな時計や?」
「無期徒刑や」
「そら、ひょっとして監獄ちゃうんか?」
「人聞きの悪いことゆうな。ひょっとせんでも監獄や」

(7) 夜になって、戸を叩きつつ大きな声で「清やん!道具屋へへっつい盗みに行こか!」とリズムをつけて誘う。

(8) 立派な着物を着ているので訊くと、
「大家のところから借りてきた」
「ちゃんと断ったんか?」
「留守やったから猫に断ってきた」
「何てゆうてた?」
「どうぞ借っておくんニャ!」


(9) 慌てたさかい草履と高下駄互い違いに履いてきた。片方脱がんかい!と言われて草履を脱ぐ。

(10) そら「出来心」やのうて「前心」やなぁ。

(11) 荷を運ぶ掛け声で、やたら上ずった声と、力み返った声の両極端しか出せない。高い声と低い声の真ん中は出せんのか?と言われ、高い声と低い声を互い違いに出す。

(12) 戸を開けろ。おっかなびっくり開けてるとかえって大きな音が出るので一気に開けろと言われたがドンガラガッチャドッカーン!!ぷっ〜!ぷっ〜!と物凄い音を立てる。どないしたんやと訊かれ、
「一気に開けたら戸と灯籠のぼんぼりさんがつながってて転がってドンガラガッチャドカーンって」
「それは分かる。その後、ぷっ〜ぷっ〜てゆうたで」
「わい、こけそうになったから、思わず三輪車のラッパつかんでしもた」
「それも分かる。せやけど、ぷっ〜ぷっ〜て2回ゆうたんはなんでや?」
「ああ、あんまりええ音やったさかい、わい、もういっぺんラッパつかんでしもた」

 

 へっついを持ち上げ、荷造りの縄を通せと言ったが「え?どう?」と要領を得ない。苦しくなった清やんが「いっぺんおろすぞ」と言ったが「順調に通ってますよ。もうちょっと」となかなか手を抜かない。ついに指をはさまれ大声を出す。

「何ちゅう大声出すねん!アホ!ボケ!カス!スカタン!」と頭を叩かれ、
「叩かいでもええやないか!そら、わいはアホや!アホやから賢いお前にだまされて、こんなとこへへっつい盗みに来たんや!こうなったら、わいがアホか、アホのわいを連れてきたお前がアホか、道具屋のおっさん起こして訊いてみよやないか」というのがサゲ。 


 ギャグは多いが、ちょっと表情や口調が大げさすぎてあまり笑えなかった。

 


 

笑福亭 松枝 「袈裟御前」

 ほとんどナレーションで進む地噺という形式。

 
 NHKの「ちりとてちん」の影響か、最近女性の落語家が増えまして、上方だけで12人もいてまして。ええことです。華やかですし、楽屋も行儀が良ぉなる。これまでは、むさ苦しい、夏なんか猿股いっちょうで花札とかしてましたが、今や、全員タキシードに蝶ネクタイですからな。

 あと、襲名もブームでして。東京から「笑福亭松枝師匠様」ゆうて大層な白い封筒が送られてきて、中には手拭いと扇子が入ったぁる。これ、ただそうでっかゆうて受け取るわけにいきまへんからな。返さなあかん。
 私ら同商売ですからな、まあ両方合わせたかてええとこ2000円、特注やゆうても3000円、箱代や郵送料入れたかて原価は4000円もしまへんわ。せやのに、その何倍もの祝儀を渡さないかん。

 これは送り付け商法です。15日以内でもクーリングオフでけん。消費者庁は何してんねん


 実名あげたろか・・・と思たんですが、差し障りもありますんでイニシャルにしときたいと思います。
 ええと・・・・どないなるんかな。三遊亭楽太郎改め三遊亭円楽やから。そうそうSR改めSEですね。

 複数の弟子がいっぺんに改名したもんもおる。殺生でっせ。ええっと・・・・こやつは、・・・・こやつゆうことないけど、桂都丸改め塩鯛。せやから、KT改めKSですな。
 うちの一門にもおります。こら、実名出してもええでしょう。笑福亭枝鶴改め小つる
(腕組みして首をひねる)あれ?逆やったかな?まあ、どっちにしても大した名前やおまへん

 

 

 ええ、本日の落語は並みの落語やございません。そんな風に思われたら心外です。

 祇園精舎の鐘の音・・・・・いかがでございます。平家物語ですよ。どうです、この格調の高さ。若手で”ひらや物語”てゆうた奴がおりましたが。

 ほんまゆうと、サゲがまことにしょうもないんです。どうぞお怒りにならんように。

 時代は平家から源氏へ。貴族の時代から武士の時代へ変わる頃。荒聖(あらひじり)文覚(もんがく)が武家の世を説いた。この文覚上人、もとは遠藤武者盛遠(えんどうむしゃもりとう)という侍でした。摂津の国、渡辺橋の普請や警備を担当しておって開通式、テープカットの時に大群衆の中で一人の絶世の美女とふと目が合うた。

 これがどのくらい絶世の美女なのか、私がみごとに描写してみせましょう。米倉涼子、伊東美咲、松下奈緒、ゲゲゲの女房ですな。それと相武沙希。これを石臼でひいて粉にして、丸い生地にしましてね。上戸彩や堀北真希をスライスにして乗せてこんがりと焼いて・・・・・・最後に山田花子をみじん切りにしてトッピングにしたような。

 この美女が誰あろう、本編の主人公、袈裟御前でございます。

 私もこんな偉い落語家になる前は・・・・・・ま、別に偉くはないですが、昼夜2回興行で、間に長い休みがありますが、金がない。喫茶店に行く、パチンコする・・・ゆうことはできません。何せミナミで人通りは多い。半分が女性で、またその半分は若い女性。通りすがりに10点満点で採点したりしてね。

 ある日、絶世の美女を見つけました。モデルさんでしょうね。素人さんではない。化粧といい、着こなしといい。そしたら、その女性、すれ違うなり、私の顔見て、ぷっ!と笑って「2点」

 この美女が馬上の盛遠ににこっ!と笑み。何せ絶世の美女の笑みですから、ただの笑みやない。上沼恵美子・・・・・ちゃう、ちゃう。
 さっそく嫁に求めると、何と自分のいとこでした。ところが時、既に遅し。源渡
(みなもとのわたる)という武士に嫁いだばかりの新婚でした。

 これで盛遠が潔くきっぱりと想いをたちきってしまっては、噺が終ってしまいます。まだ次の者の用意もできておりません。
 ラブレターを人妻にしたためました。あまりの興奮で「恋しい」と書けずに「変しい」と。
 何通出しても、袈裟御前は中身も見ずに箱に入れてぱちん。何通出しても返事は来ません。
 すると、そこへ三味線が届けられまして。「お母ちゃん、わたい、その三味線が弾きたい」・・・・・・・・すいません。違う落語になってしまいました。今、お笑いになった方は、相当落語に詳しい方でございます。
(もちろん「たちきれ線香」である)

 つまり盛遠は無視された、ふられた、シカトされた。いけないことに盛遠はこれまで家柄も良く苦労せずに出世してきたエリートで、挫折を知りません。誰が悪いんだ!誰も悪くはございません。世の中にはどうしようもないこともあるのです。挫折は人を磨きます。
 私の芸人人生なぞ挫折、挫折の連続でして、ゆがんで、ぐねって、折れ曲がってます。

 誰が悪いんだ。おばさんが悪いと考えたんですね。こんな美女なら、なぜ最初に私の嫁にしてくれなかったのか。袈裟御前が自分の物にならなければ、おばを殺して、腹かっさばく。

 つまり、母親の命を引き換えに不倫を強要した訳ですね。さて、袈裟御前はどうゆう対応をしたでしょうか。次の三つからお選びください。
第一 貞女、両夫にまみえずで、きっぱりと拒絶した。
第二 一度だけなら、と肌を許した。
第三 協議の結果、半分ずつ要求を呑んだ。つまり肌はともかくキスまでは許した。その代わり、母親も半殺しで許してもらった。

 解答は次の通りでした。さほどまでの思し召し。この際、夫を亡き者にしてください。うちの屋敷で入れるようにしておきますから、洗い髪を手がかりに・・・・と。こう聞くと、稀代の悪女のようですが、実はそうではありません。自分自身が犠牲になろうとしていました。そうすれば母親の命は助かる、夫に不貞を働くことにはならない、盛遠の気も済むと。
 いよっ!貞女!日本一!・・・・となるとこですが、今ではあきません。第一、同性から総すかんをくらいます。なぜ、あなたは男性の横暴に屈するのか。そもそも男女共同参画社会とは・・・・・
(と、男女共同参画社会の定義をとうとうと述べる)
 私、こうしたテーマで講演などをいたしております。良かったらご用命ください。落語家さんやったら高いんでは?いえいえ、わたくし、予算に応じてコースを組んでおります。松、竹、梅、並、波の底。いかようにも。・・・・NHKでコマーシャルをしてしまいました

 近ごろの夫婦はおかしいですな。ある夫婦が、ふたりで寝てた。夜中に嫁はんが「えらいこっちゃ。うちの人帰ってきた!」て寝言をゆうた。夫婦で寝てたんでっせ。そしたら、旦那の方が窓から飛んで逃げた・・・・。

 この言葉を聴いて盛遠は頭に血がのぼって。袈裟御前の屋敷に忍び込みました。当時は寝殿作りでございます。気が逸って、早く着きすぎた。一寝入りして待とう・・・とのんきな話ですが。どこで寝るか。寝殿造りで池を掘って、その土で築山をこさえる。泉水、泉の間にある築山で寝よう。盛遠、泉に囲まれて・・・。(ブルーコメッツの「ブルーシャトー」の歌詞「森と泉に囲まれて」)

 屋敷に入り込み、洗い髪を手がかりに、えい!腕がええ。刀が業物。すっぱり落ちた首を抱えてその場を去って、月明かりに照らして、すべてを悟った。

 盛遠は潔く源渡の前へ行き「どうぞ大悪人の首を打ちたまえ」。しかし源渡は「今さら妻の命は戻りません。私は出家して妻の菩提を弔います。あなたも出家していただけませんか」

「盛遠、坊さんになりはったん?」
「そう
(僧)
「源渡さんも、坊さんになったんか?」
「そう」
「ほな、坊さん、二人できはったん?」
「そう、そう」

 

 袈裟御前の菩提を弔う旅に出て、ある宿に泊まった盛遠。ふと見ると袈裟御前がにこりと笑っている。はっ!と思って気がついた。ああ、夢か。まどろんでいると、今度は袈裟御前が悲しそうな顔を。はっ!と思って気がつく。ああ、夢か。さらにまどろんでいると、今度は袈裟御前が恐ろしい顔で斬りかかってきた。またもはっ!と気がついた。うん、やはり夢か。首筋に手を当てると、何やらぬめりが。これは血か!夢ではなかったか!そう思って手を見るとご飯粒が。さては、今朝の御膳であったか。
  

 
 初めて聴く噺。松枝師の手慣れた運びが何とも気持ちいい。

 


 どうも、お退屈さまでした。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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