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(No207) 立川談春 独演会 鑑賞記 その3
          

 平成22年12月26日(日)、NHK大阪ホールの鑑賞メモ。

 



立川 談春 「芝浜」(1)


 (中入り後。いったん真っ暗になるのは同じ。マクラなしにいきなり本編へ。ちょっ!ちょっ!ちょっ!と亭主を揺り起こすおかみさん)

「商いに行っておくれ!約束じゃないか。100日近く遊んでるんだよ。売り言葉に買い言葉かもしれないが、明日必ず行くから、今日は好きなだけ呑ませろって言うから、あちこち頭さげて用意したんだ。許さないよ」
「いいよぉ。行けねぇ訳があるんだよ。何がって、そりゃそうじゃねえか。道具の手入れもしてないんだ。飯台なんか水が漏るよ。タガがゆるんぢまってる」
「何年魚屋の女房してると思ってんだい。糸底に水ぅ張ってるから一ったらしも水なんか漏れやしないよ」
「包丁、錆びてるだろ」
「あぁたが仕事行ってくれるってゆうから、あたしゃ嬉しくて、ゆうべは夜っぴて研いでたんだ。獲れたてのサンマみたいにピカピカ光ってる。そば殻ん中に突っ込んであるよ」
「草鞋は?」
「出てます」
「・・・・・・・・いいよぉ」
「そんな声出して何だい!腕まで腐っちゃう。了見まで腐っちまうよ。お前さんのために言ってるんだよ」
「・・・・・・・『行ってくれ』の一言でいいじゃねえか。結構です。私のことは考えないでください」
「そんなこと言わないで行っとくれよぉ」

「でもよぉ、銭ねぇだろ。俺ぁ銭はないけど、あんたの目利きで仕入れておくれ、なんてのはヤなんだ」
「分かってるよ。もちろん借りてきた銭だけど、たばこと一緒に置いてある」
「・・・・・・分かったよ」
「行ってくれるの?じゃあ最後に一つお願いがあるんだけど」
「え?ずいぶんお願いしたよ」
「あの・・・・百日も休んでたんだからさぁ、かちんと来ること、こんちくしょうって思うこと言われると思うんだ。
 河岸の人の性分、分かってるだろうと思うけど、憎まれ口きかれるのは見込みがあるから・・・・だから。
 お願いだから、喧嘩しないでね。

 わらじ、新しくて気持ちいいだろ?」
「・・・・・わらじが新しくて気持ちいいなら、荒物屋の親父は年中笑ってらぁ。
 気持ちいいってぇのは、うめえ肴をニ、三品並べてだな、それを・・・・食わずに呑むことだよ。
 どうだ、景気づけに一杯呑んでから・・・・・・冗談だよ。

(戸を開けて)寒い〜〜。真っ暗だ。
 寝て一番いい心持ちの時分だぜ。

 何で魚屋になんか、なったんだろぉ?生まれついての魚屋じゃねえんだが。 

 でも河岸は嫌いじゃねえんだ。魚がピチピチはねて、磯くせえ風が吹いて。行くまでがイヤなんだ。開けたら、すぐ河岸だといいのに。

 さめぇし、くれぇし。
(犬を見て)あっ、まき屋のアカだ。あれ?尾ぉ巻いてワンワン吠えながら行っちまった。・・・・・・俺の顔、忘れちまったか。
 あ、切通しの鐘だ。
(カ〜〜ン)あら、金が入ってるから音がいいんだ」

「どうしよう!あの人、早く出し過ぎちゃった。怒ってるだろうな。一刻(いっとき)間違えちゃって。
(ドン!ドン!ドン!)
 あっ、あんた?開いてるでしょ?」
「おい!」
「あ、ごめんなさい。私・・・」
「いいから後ろを見ろ!誰も来てねぇか?」
(外へ出て、左右を見て)
「誰もいないよ」
「そうか。じゃあ閉めて、しんばり棒かけろ。
 おめえ、一刻早く俺を出したろ?いや、そんなこたぁどうでもいいんだ。
 それから帰ったって、すぐ出なきゃいけねえから、浜に下りて煙草吸いながら夜明け、きれいだななんて思ってたんだ。

 そしたら、波打ち際でぴちぴちぴち・・・いや、何かゆらゆら浮かんでるものがあったんだ。(「ぴちぴち」とゆうのは先ほど河岸の魚がぴちぴちと言ったのが頭に残ってて言い間違えたのか?財布がぴちぴちっておかしいもんな)

 開けてみな」
「え?開けていいの?」
「開けなきゃ分かんねえだろ」
「革財布?気持ち悪い。ヌメヌメしてる」
「なげぇこと海に浮かんでたから腐ってんだよ」
「あっ!大変だ。銭じゃない。金だよ!」
「数えてみな」
「いいのかい?二分金だよ!

 ちゅーちゅーたこかいな。ちゅーちゅーたこかいな」
「いくらだ?」
「分かんないよぉ!数えてるだけなんだから」
「しょうがねえな。ひとひと・・・・ふたふた・・・・みっちゃ、よっちゃ・・・・・・42両だ」
「どうするの?」
「どうするっておめえ・・・俺が拾ったんだ」
「拾ったてのは、落とした人がいるんだろ?」
「おめえは理を通さねえとしゃべれねえのか?
 落ちてたんだよ。海に落ちてるのは、みんな魚屋のもんだろうが。

 ここはおめえ、喜ぶとこだぜ。これで借金返せるだろ?」
「42両で返せない借金があるもんかね」
「きれいになったところで、残った金で俺は呑むよ」
「呑むの?」
「呑むよ!めでたい時に呑むのが酒だろ?ばんやむを得ず悲しい時にも呑むのが酒だよ」
「じゃあ、のべつ呑むんじゃないか」
「のべつ呑むんだよ!おい!酒屋、行ってこい!」
「酒屋、何すんの?」
「酒屋行ったら、酒を買うんだよ!帰り、みんな呼んでこいよ。今まで俺はなくて使わなかったんだ。義理が悪かった、いつもごちそうになって」
「お酒、呑めりゃいいんでしょ?」
「え?昨日の呑み余り?俺が残した?冷や?燗冷まし?・・・・・・・・・・んまい!こんなうまい酒ねえな。
 昨日は、ああ、明日から働かなきゃいけないってのが頭かすめたんだ。

 42両、呑むのは骨だよ。
・・・・・・・・・・何でぇ、その顔は。おめえだって、好きなもの買えばいいよ。頭の・・・その・・・何だ」
「珊瑚の五分玉?」
「五分玉どころか三尺玉買え。打ち上げ花火みたいなやつ。

 十二単のひな衣装も買えばいい」
「笑われるよ」
「いいじゃねえか。まろは・・・・とか、おじゃるって・・・・・。ぅんまい!

 う〜、すごい、すごい。(何かを手に乗せる)

 まだ、あるの?いけませんねぇ。ハゼ?気がきくなぁ。可愛いとこあるよ。佃煮?

 うまぁ〜〜い!うわぁ〜、ベロベロだよ。真っ赤だぁ」
「弱くなったんじゃないの?」
「おめえ、さっきから差し向かいで怖い、怖いって言ってたが、財布をちらっとのぞいてぴかっ!と金がのぞいた時、どれだけ怖かったか。誰か後ろから来ねえか、芝の浜からうちまで走りどおしだ。

 そこに呑んだもんだから・・・・・・・ぎゅ〜〜っと回って。おい、床、のべてくれ。昼過ぎたら起こしてくれよ、起きたら湯ぅ行くんだ・・・・・・・・・・・」

(と、カ〜カ〜カ〜いびきをかく) 
 

 


 続きます。

 どうも、お退屈さまでした。いつものことですが録音はしてません。殴り書きのメモとうろ覚えの記憶で勝手に再構成してます。聞き違い、記憶違いはご容赦ください。  
 



 

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